日曜日, 7月 30, 2023

誉田哲也著「ノーマンズランド」、例によって姫川玲子シリーズである、今回殺人事件が錯綜する中で、なんと拉致被害者まで出てくる始末である冒頭の高校生男女の交際から始まりその女子高校生がある日北朝鮮工作員に拉致され船上から身投げし自殺するといったエピソードまで盛り沢山の企画だ。著者の才能は留まることを知らず読者を実に魅了してくれる。
中山七里著「作家刑事毒島」、シチュエーションを変えた5編の短編集である、登場人物は同じで出版界また新人作家を夢見る志望者を元刑事で現在も指導員なる地位にいて、ミステリー作家毒島真理彼の殺人事件を解決する能力たるやまさに名探偵だ。業界の裏に潜む暗い部分を余すと来なく暴露し作家志望者をぼろ糞に言いながら彼毒島の心優しいさうした者達への激励もこめた作品だ。
誉田哲也著「インデックス」、8編を含む短編集で、数々の事件と向き合ってきた姫川玲子のその後の様な回想を交えた事件が完結に綴られ誉田ファンとしては息抜きに丁度良いという感想だ。各々の短編でも姫川玲子の人間を描き切っているところが、何より素晴らしいと思う。簡潔な文体はここでも圧倒的に気持ち良い。
誉田哲也著「ブルーマーダー」、暴力団組長が殺害された事に端を発した今回の物語は、警察組織を揺るがす大事件に発展していった。池袋署に勤務する姫川玲子管内で発生した殺人事件を担当することになった。ヤクザの組織内の攻防、警察組織内の攻防と配される役者は少ないが著者の巧みなテクニックで生き生きとした物語に仕上がっている。正義感の強い玲子の回りの警察官との友情、かって恋した警察官いずれも簡潔な文体とも相まって息を突かせず最終章へと導かれる気持ちよさ最高です。
柴田祐紀著「60%」、中国は福建省のマヒアと日本で蔓延るヤクザ組織の首領と警察組織との攻防をリアルに描き出す著者の力量に唖然とするしかない。ヤクザが経営する会社名それが60%だ、中国との麻薬取引により莫大な資金を基にその資金を洗浄うつまりマネーロンダリングするそして投資をするという会社だ。無機質な抗争ではなく悪まで人間と人間の抗争をこれでもかというほど描いてゆく。
中町信著「暗闇の殺意」、 短編集である、七編の短編勿論全てがミステリーである。トリッキーなプロットもあるが、ほとんどが平凡なトリックで文章にも迫力が欠け読んでいくペースが中々速まらない。密室を取り扱った作品もトリックは平凡で何ら新鮮味のない内容だった。
誉田哲也著「インジブルレイン」、今回も警視庁捜査一課の姫川玲子シリーズの一冊である、暴力団絡みの時間が発生しその後の展開に独断で捜査を進める玲子の感が当たり意外な展開へと進んでいく。9年前に姉を殺され現在下級の組に所属する犯人に強い恨みを持つ青年の殺害に対する強い意志、そして最後に付き合った女性のお腹に自分の子供を宿し一人孤独に自殺する男の人生、玲子もヤクザに好意を持つという意外な一面を見せる今回の物語はプロット伏線といい完璧だ。
誉田哲也著「シンメトリー」、短編集で収録されている7編のそれぞれの物語は著者独特の語り口はダイナミックで読者を引きつける魅力がある。初めての短編に接したが、警察ミステリーとしての魅力を十分に発揮していると思う。
誉田哲也著「ストロベリーナイト」、強烈な出だしから始まる今回の姫川玲子シリーズの第一弾だと。今回も二人の被害者が確認され玲子は捜査に忙殺されっぱなしだ、そして荒川河川沿いの漕艇場で青いビニールシートに包まれた遺体が少なくとも9体発見され 捜査は暗中模索の状況になった。文体が簡潔で状況を適切に表現しプロットと言い、伏線も強烈だ。警察ミステリー小説の至高を貫いている。
誉田哲也著「ソウルケイジ」、川河川敷の バンの中から切断された手首が発見された。D N A鑑定やら指紋やらと捜査一課各班がそれぞれ役割を与えられ一斉に捜査に乗り出した、勿論姫川玲子も同様だ。捜査は遅々として進まず、被害者と思われる周辺人物から情報を得て深掘りに向かう。人物描写は丁寧に描き、また文章は簡潔にして迫力があり冗長性は否めないものの最後までページをくらせる力がある。プロットは少々無理もあるが全般的にはミステリー警察ミステリーとして上手く纏まっている。