金曜日, 9月 28, 2018

ギャビン・ライアル著「深夜プラスⅠ」、著者の作品は初めてだ。長編ミステリーとはいかないエンターテインメント小説或いは冒険小説的風合いだ。マガンハルト弁護士は暴行罪の汚名を着せられたが、自己の所有する会社の株主会に出席するため警察の追手を逃れスイスとオーストリアに挟まれた小国リヒテンシュタインに向かうため、二人のガンマンを雇い弁護士の秘書と4人で行くことになった。スイス国境付近での銃撃線を辛くも突破し目的地に辿り着くことになった。だがそこで判明したのはガンマンを手配したはずの人物が実は殺し屋だった。小さなどんでん返しで終わる。
ジェイムズ・P・ホーガン著「星を継ぐもの」、舞台は地球の2029年、月で人類と恐ろしく似た人骨が発見された。2万5千年前の化石だ。アメリカのナブコム研究所に集められた広範な科学者の研究が始まった。人骨化石から手帳が発見されルナリアン人と判定されその言葉も研究されいよいよ人類の起源まで遡る壮大な研究が熱を帯びた。木星探査機に乗り込んだ科学者が出した結論は、火星にほど近いミネルヴァで成長したルナリアンは地球に降り立ちネアンデルタール人を駆使し人類の基礎を築いたとの研究成果を発表した。久しぶりのSF長編ミステリーだった。
イーデン・フィルポッツ著「赤毛のレドメイン家」、1922年の著作でミステリー小説の古典的傑作だと。長編ミステリーの部類で英国とイタリアを舞台に繰り広げられる殺人事件、それを追うヤードつまりロンドン警視庁の敏腕刑事マーク・ブレンドンとの格闘だ。しかしブレンドンは美しい女性の虜に事件は複雑なプロットを経て最終的にイタリアのコモ湖の近くで決着することになる。アメリカ人の探偵ピーターつまり真打を登場させる作者の配慮は素晴らしく現代に十分通用する読み応えのあるミステリー小説だった。
アガサ・クリスティー著「ABC殺人事件」、後世に伝えられるほどの名トリック・プロットと言われる本書は彼女の1930年代の長編ミステリーだ。ABCという名前のアルファベット順に無差別殺人が発生する。現場に居合わせのは貧しいストッキング行商の男だった。真犯人は偽の殺人者を仕立て自分の目的の殺人を実行するといったプロットは世界のミステリー小説作家を虜にした作品としての不朽の名作だ。
松岡圭祐著「万能鑑定士Qの事件簿 Ⅵ」、今回は、雨森華連という名うての女性詐欺師と凜田莉子との全面対決だ。警視庁の警部ら莉子に対して尻尾を掴まれることなく次々と詐欺を巧妙に繰り返す華連そんな詐欺師を相手に莉子の頭脳が挑戦するユニークなミステリーというか小説だ。
真梨幸子著「殺人鬼フジコの衝動」、過去実際に起きった殺人事件・猟奇的な殺人事件を題材にして書いたというミステリーだ。フジコは小学生だった頃両親が殺害され叔母の元へと行くことになった。殺されたフジコの父母は所謂見栄っ張りで家庭を子供を顧みないダメ夫婦だった。そんな環境で成長したフジコにとって叔母の家から通う小学校でまたまた事件、フジコが殺害したのだ。成長してゆくにつれフジコは坂を転げ落ちるように転落してゆく。そして殺人を繰り返す。幼い頃の家庭環境と超神経質な性格とブスに生まれた悲運がここまで殺人を犯してゆく過程は一つ間違えれば誰でもフジコになる可能性を否定できない。
三戸政和著「サラリーマンは300万円で会社を買いなさい」、日本全国で中小企業は380万社あるという。そのうち50%以上が事業承継に苦慮している現状とサラリーマンの今後の人生を考え極端だが現実味のある提案と受け取れる。会社を買うつまりM&Aにも色々と手法があることが提示されている。黒字倒産を余儀なくされている中小企業も多いという現実に会社つまり売りたい会社を見つけ内容を精査し展開するにはかなりの努力が必要だと感ずる。
吉村昭著「朱の丸御用船」、史実に基ずく歴史小説だという。大阪より江戸へ米俵を運ぶ御用船幾つもの航路難所を切り抜け江戸へ。歴史の舞台は現三重県の一寒村で起こった現実の騒動である。幕府御用の米を千俵近く積み込み御用米船として出航する定助舟と次三郎船は各港に碇泊しながら江戸へ向かうことに、しかし両船は碇泊地で御用米を売り捌き故意に天候により破船したと偽った。しかしその片割れの船が漂流して名切村沖に漂着し村民総出で米俵を瀬取りし分配した。その事実がバレて役人により調査が開始され、村民は甚大な被害を被ったと。作者は現地に足を運び資料を丹念に調査しまた聞き取り史実其の儘に弥吉という若い漁師を仕立て暗い現実を描きながら希望の光をも書き留めることを忘れない。
ジェームズ・ロインズ著「ギルドの系譜 下」、米国大統領ギャント一族の系図は遥か数千年前にも及ぶ家系と判明した。サウスキャロライナに広大な土地を所有し秘密研究所を持ち、遺伝学・DNAの研究からロボットまで研究は多岐に渡る。しかし一貫した目標は家系を死守することにあった。女系のみが血統を引き継ぐとされ、シグマや大統領を追い詰めた真の犯人が判明した。物語は場所を変え想像を遥かに超えるさまざまな展開を見せ終章では行きつく暇もなく進んでいく、圧倒的な迫力はこのシリーズの特徴だと。

ジェームズ・ロインズ著「ギルドの系譜 上」、米国大統領選の娘アマンダが誘拐拉致された。シグマフォースは捜査を開始。アフリカ・ドバイと執拗に敵を追撃する。しかしアマンダの行方は依然として判明しない。そんな中で隊員に迫りくる危機シグマの隊長ペインターはようやくギルドの仕業と判断する。しかも大統領命令で即刻シグマの捜査を打ち切れと。各隊員の危機と今後の展開が興味を引く。