水曜日, 3月 30, 2022

クリスチアナ・ブランド著「招かざる客たちのビュッフェ」、短編集である。作家の才能を遺憾なく発揮した珠玉の作品集である。機智に飛んだプロットそして伏線どの作品にも作家が冷ややかにつまり冷徹に人間を見ていると感じる。そこに横たわる生きることへの不条理性と錯覚が存在すると思える面白さがこの短編集にはある。
宮部みゆき著「ソロモンの偽証 第3部下巻、学校内裁判が改訂されそれぞれ検事側及び弁護側は証人を召喚し真実を追い求めその度に法廷は紛糾しそれでも確実に真実に近づいていく。そして最後のどんでん返しが待っていた。他校からの弁護人神原の証言は自他殺が議論の中心になったこの裁判の決定的証言となって収束する。数多の人物を繰り出しバブル崩壊の日本社会に生けるそれぞれの家族の様子を詳らかに描き最後に生きる道を求めて右往左往する中学生の真剣さを描き出した傑作である大長編ミステリーだ。
宮部みゆき著「ソロモンの偽証 第3部上巻、いよいよ学校内裁判が開始つまり開廷された。双方とも陳述を意見陳述を繰り返したが、三宅樹里の証言による大出君の卓也君の殺害と弁護人の証言との圧倒的な食い違いは果たして真実はどこに存在するのか?著者の圧倒的な想像力と筆力に感服。
宮部みゆき著「ソロモンの偽証 第2部 下巻」、学校内裁判の資料作りで忙しい毎日を過ごしていた生徒達の前に裁判の被告人大出の父親の放火事件から逮捕状が出た。父親が連行された地上げ屋その裏に暴力団も絡んでいるという。また森内先生も隣人の住人から襲撃を受け病院に担ぎ込まれたが幸いに意識が回復し無事だという。告発状を書いた三宅樹里は暫く声が出なかったが、法廷で証言できるやりたいと涼子に声を掛けて来た。いよいよ15日に開廷だ。しかし作者の引っ張りというか伏線を多数用意しここまでの長編に仕立てる技術に驚くばかりだ。
宮部みゆき著「ソロモンの偽証 第2部 上巻」、二人の生徒の死そしてTV報道と事件を廻り慌ただしく周囲が動く中で、藤野涼子は友人に学校内裁判をして真実を捜そうと提案した。そして受け入れられ、その準備に忙しい毎日を送っていた。検事、弁護側と裁判の体制を整えそれぞれの立場で証言を取りに行ったりして準備を進めていた。
宮部みゆき著「ソロモンの偽証 第1部 下巻」、自殺と思われる男子生徒を回り、告発状が3者に届けられいよいよ中学校は騒然となり、就中テレビ局まで報道に乗り出した。報道から学校では保護者集会を開き事態の収拾に取り組んだが一向に収まる気配を見せない。告発状を書いたとされる生徒の一人が交通事故で死亡した。校長は辞任し担任の女性教諭も辞任、そんな折に3人組の主犯格とされた大出の家で放火時間が発生し、事態は混沌とした状態なってきた。
宮部みゆき著「ソロモンの偽証 第1部 上巻」、中学2年生の男子生徒がクリスマスイブの朝、学校の工程の通用門の植え込みに雪に埋もれて死んでいた。この男子生徒の死を契機に学校中が喧噪と疑問に包まれ涼子の父親は警察官だが、たまたま配達された封筒を訝しく思い開けた、そこには男子生徒が自殺だと思われていた内容と異なる他殺だとする文章が綴られていた。そして校舎の屋上から突き落としたのは悪ガキ三人員組だとハッキリと書かれていた。

火曜日, 3月 29, 2022

ブラッドフォード・モロー著「古書贋作師」、ニューヨーク東端の町の部屋で殺人死体が発見されたその死体はウィルの愛するミーガンの兄貴であった。父親は弁護士であり就中凄腕の古書コレクターだった。父親の影響からか早くから書に興味を持ったウィルは贋作師となった。同じ贋作師であるスレイダーという男は殺害されたミーガンの兄貴とは昵懇だった。その彼がウィルの回りに出没し彼を恫喝し苦しめる。そして最後に真相が明になるまさにどんでん返しだ。人間の心理の複雑さ紆余曲折する心、微笑と脅え相反する葛藤人間の全てを描く格好のミステリーだと思う。
ニック・ハーカウェイ著「エンジェルメイカー」、主人公ジョー・スポークは時計修理職人である。彼の父親は間違いなく悪党であるが、何故かジョーは父親とはちょっと違う正義感の持ち主だ。ジョーの悪への闘い、愛人ポリーとの交際、彼の家族へのしがらみ、友人達とうの交渉これらを全て引きずりながら自分の成長も含めて戦う。様々に入り乱れる伏線をそしてそれらを超越した悪との根源的な闘争、700頁を超える超長ロングなミステリーかつ冒険活劇的な書でした。
柚木麻子著「BUTTER」、おじさん達3人も食い物にして殺害した梶井真菜子、出版社の記者である町田里佳は彼女を取材するため、度々東京拘置所を訪れ面会し談話を続けて行く。そして取材対象の彼女の意見で彼女の実家である新潟県阿賀野市まで足を延ばして母親、そして妹にあう。彼女が通っていたフランス料理の料理教室にも通い徹底的に理解しようと努力する。そして最後に記事にして好評を得るが彼女は混乱し記者を外された。取材中に里佳を廻る様々な友人同僚先輩とを廻る人間関係を伏線としてミステリーというより人間を日本社会の根底女同士の友情までもが主題となっている。