金曜日, 12月 22, 2017

ジョン・ディクスン・カー著「皇帝のかぎ煙草入れ」、1940年代の作品でカーの代表作といわれる古典的ミステリーの名著だと。若くて美しい未亡人イヴを回り道路隔てた真向かいの家の主人モーリスが殺害される。前夫アトウッドが殺害された当夜イヴの家に入り込み殺害を目撃したと彼女に伝える。殺人事件の発生からイヴに嫌疑がかかり警察は遂に彼女を拘留する。イギリス人の心理学者キンロスが登場し様々な視点から犯罪を紐解き解決する。カーのこの小説にみるプロットさらに犯人がだれであるかの伏線を周到に用意し読者に挑戦する。まさに古典的名著だ。
黒川博行著「アニーの冷たい朝」、大阪府警シリーズだ。若い女性の扼殺連続殺人事件を追う大阪府警村木班、周辺警察署と協力してサイコパスを執拗に追う。犯人は殺した女性の遺体にドレスを着せ死姦する。物語は犯人と被害者そして警察捜査警部の各々の視点から語られ最後まで緊張状態を保ちつつ終局を迎える。
山本一力著「銀しゃり」、江戸中期幕府からの棄捐令により江戸市中は不景気の最中にあった。そんな中でも鮨職人として独立し店を持つまでになった新吉は全うな商売に勤しむ人情の解る人だった。江戸庶民の暮らしや人間関係そして人生をどう生きるか?を巧みな描写でもって読ませてくれる著者の力量に感服だ。
ダシール・ハメット著「マルタの鷹」、米国ミステリーのハードボイルド小説の始祖と讃えられ古典的名著と呼称される「マルタの鷹」。サンフランシスコに居を構える主人公の私立探偵スペードが依頼を受ける一件から物語は殺人を伴い展開する。黄金の彫像の鷹を巡る攻防に巻き込まれ絶対絶命のピンチをその才覚で切り抜ける映画化された希代の名著だが、今となっては通常のミステリーと変わらない。
池井戸潤著「最終退行」、著者の前歴である銀行マンとして表裏を知り尽くしたプロットの設定はまさに迫真だ。東京第一銀行羽田支店の副支店長である蓮沼を回り支店長さらに同期の銀行マン、愛人の行員との人間関係と組織としての銀行の旧態依然とした体質を細部まで描いている。会長である久遠の不正資金供与とマネーロンダリングを執拗に追及する蓮沼の正義感は圧巻だ。
山本一力著「深川黄表紙掛取り帖」、短編集だ。作者の書は2作目である。江戸は元禄時代の深川を舞台として起こる事件を題材に作者の透徹した人間観が随所に散見され物語の面白さ多少のミステリー性も加わりさらに読者を魅了する。主人公の蔵秀の取り巻きの人間たちの江戸深川庶民を生き生きと描く作者の力量は人間の狭小さを面白く描いている。
ジェイムズ・エルロイ著「ホワイトジャズ」、確か著者の本は読んだ覚えが有るのだが定かではない。今回のミステリーとかハードボイルドとかの範疇を超えた物語だ。そして著者の強烈な文体というべきか単語・短文の羅列は読者を引きずって止まない。ロスアンジェルスを舞台にしたLAPD(ロスアンジェルス市警)と殺人者、麻薬、密売、ポルノ、殺戮、買収とありとあらゆる悪がまかり通る市での抗争さらにLAPD内部での不正を不条理なまでの描写。主人公の警部補で弁護士のデイヴィッド・クラインの血まみれの抗争が読者を最後のページまで繰らせる。
クリスチナ・ブランド著「ジュゼベルの死」、40~50年代に活躍した女性作家のミステリーだ。英国の小劇場で発生した女性の殺人を契機にそこに居合わせたコックリル警部とスコットランドヤードの警部が追及する殺人事件が主なプロットだ。密室殺人を捜査する中で意外にも容疑者全員が自分が犯人だと名乗るという下りは斬新なプロットだ。結末はどんでん返しに近い意表を突く内容で新鮮だ。
山本一力著「赤絵の桜」、著者の作品は初めてだ。損料屋喜八郎始末控えシリーズ第二弾だという。江戸は深川を舞台に損料屋(レンタル業)を営む喜八郎を主人公に様々な事件を解決するといった江戸情緒と人情溢れる物語だ。本書は数編の短編から成っているが相互に関連しあっている。ミステリータッチの編も編まれていて普通に楽しめる。

黒川博行著「勁草」、オレオレ詐欺集団を追う大阪府警特殊詐欺班の刑事、集団は金主と受け子や役回りの若い衆を使い巧みに老人から金を毟り取る。この集団にヤクザが絡み事態は転々とし、遂に殺人事件が発生、刑事らは逃亡する殺人犯を追い沖縄へ。著者の軽妙なタッチの文体はこの書でも圧巻だ。

水曜日, 11月 08, 2017

アイラ・レヴィン著「死の接吻」、戦後アメリカミステリー界に燦然と登場した20歳代の稀有な新人作家が書いた「死の接吻」は衝撃を持って迎えられた作品でエドガーズ賞に輝いたと。今読んでもなんら古めかしさは無く新鮮だ。主人公の大学生バッドが恋人の妊娠を切っ掛けに殺人を犯してから始まるミステリーはこの小説以来何度もテーマに昇り多数の作家が書きあげている。打算的な青年の殺人、最後は自分自身を死に追いやる運命を作者はその心理状況からも見事に描写している。
鷹羽十九哉著「私が写楽だ」、著者の本は初めてだ。十返舎一九と江戸小娘頭脳明晰にして美人おりきが織りなす、数多怪事件を解決する痛快ミステリーだ。北斎やら多数の江戸の有名人を登場させ物語の面白さを増長させるその描写は著者ならではで、またプロットも各編ごとに素晴らしい。



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黒川博行著「繚乱」、大阪府警を退職した元デカ2人、伊達と堀内が競売屋に職を置きパチンコ店の物件に関わる調査を開始、その過程で殺人恐喝などヤクザが絡む複雑な糸を解して行くといった物語だ。ヤクザ、銀行関係者、元府警OB、新地のホステスとこれでもかという裏を抉り出す痛快なミステリーだ。元デカ伊達と堀内は何故か憎めない人間に描く著者の描写に感嘆。
エラリー・クイーン著「エジプト十字架の謎」、ある村の交差点で首なし磔死体が発見される。その死体はまさに大文字の「T」型をしており謎の殺人事件として登場しクイーンの興味を引くこととなる。捜査に従事したクイーンの元でさらなる連続首なし殺人事件が発生する。少し冗長性は否めないが卓越した推理プロットは古典的名著と呼ばれる著者の代表作だ。
松本清張著「黒川の手帳 下」、予備校のトップとの駆け引きを成功し料亭「梅村」の土地を手に入れたと思い銀座の大きな店を買い取る決意をした元子だったが、突然梅村の土地を手に入れることができなくなった。元子は窮地に立たされた。そして銀座の裏の世界の元に対する逆襲が練られ元子を潰しに罹ったのだ。著者の当時の銀座のバーを巡り蠢く闇のの世界を抉り、一人の女性の野望を描いた社会派然とした作品だった。
黒川博行著「てとろどときしん」、著者の初期の傑作短編集だ。どれも秀作で、読者を飽きさせない著者独特な簡潔にして迫力ある文章は軽快だ。すでにこの当時警察ミステリーの芽生えががあり、刑事のコンビの大阪弁を介しての絶妙ともいえる遣り取りはまさに大阪漫才をルーツに展開したものとみえる。
黒川博行著「疫病神」、「破門」に至る第一作目の作品である。二蝶会のイケイケのヤクザ桑原とフリーの自営業の二宮のコンビ第一作目だ。事は産業廃棄物場建設に伴うゴタゴタに巻き込まれる二人、ゼネコン、ヤクザの組対立するまた組とプレーヤーが続々と顔を揃えシノギを巡る攻防は熾烈だ。そんな物語の中でも桑原と二宮のそこはかとない人間の暖かさを上手く描写する作者の技量には感服。そして軽快で面白い。
松本清張著「黒川の手帳 上」、東京の銀行員の原口元子は、勤務先の銀行から大金をせしめて退社し銀座のママになった。所詮素人の水商売の経営では早晩息詰まる。次のターゲットが産婦人科医院長だ。産婦人科医院に勤務する院長の手のついた婦長から脱税の内容を聞き出し架空口座名義のリストを種に強請る。この手口で5千万円をせしめた。次のターゲットは医科大学専門の予備校のトップだ。
村上春樹著「騎士団長殺し 第2部」、ますます第二部になって物語は、観念イデアの世界に突入して行く。現実と非現実の境界があやふやになり条理と不条理がない交ぜになって混沌した世界の中で生を見出してゆく。自身の存在は不確かな不確実な世界を彷徨い苦悩する。人の人生とはそういったものかもしれない。存在を確かめる何かを求めて生きる人生とはそうなのだろうか?
今野敏著「欠落」、本書は警察小説である。警察小説といえば、黒川博行である。今回釧路空港で買い求めた書だ。誘拐事件が発生し人質交換要員として新人のSITの大石が出向く。さらに管内での殺人事件が発生本部が設置され地道な捜査が開始される。だが永として被害者の情報が引き出せない。そこに沖縄那覇での殺人事件さらに三鷹署内での殺人事件と連鎖情報が加わり、事件の様相が一変する。公安を管轄する警察庁からの警視正の捜査本部への派遣と事件は公安がらみと発展し宇田川巡査部長は通常の殺人事件でないと悟る。幕切れはあっけないが、通常の警察業務を管轄する捜査官らと公安との駆け引きを題材に物語が急展開してゆく。