金曜日, 11月 04, 2016

黒川博行著「キャッツアイはころがった」、著者の出世作でミステリー大賞に輝いた作品だ。湖で発見された死体の口からキャツアイが転がり出た。さらに京都での大学生の死体、大阪での浮浪者の死体とこの殺人事件は広域捜査の対象となった。殺された大学生の級友が犯人を捜す、広域捜査官の捜査と著者のプロットは冴えを見せ軽快な文体と軽妙な関西弁の語り口が、読者を最終ページへと繰らせる。


火曜日, 11月 01, 2016

高橋克彦著「鬼」、平安時代の京の都で出没する鬼をテーマに陰陽師の悪霊怨霊払いをテーマにした物語だ。短編5編からなる本書は、権力を志向する者たちと取り巻く悪霊の狭間で活躍する陰陽師、滋岳川人、弓削是雄、安部晴明といった人々の登場である。いつの世も恐ろしきは、人の心である。



東野圭吾著「魔球」、高校野球に絡んだ殺人事件、貧困に喘ぐ家庭で暮らす天才的野球少年の苦悩と苦闘の渦中で発生した殺人事件を刑事が追う。少年の生い立ちを含め様々な伏線プロットを用意し事件の真相に迫る。著者の軽快な文体が最後まで楽しませてくれる佳作だ。



東野圭吾著「11文字の殺人」、Y島という離島で行われた殺人、その殺人を調査した女性推理作家と友人の冬子がその謎を追走する。クルーザーでY島へ行った人々を調査する過程で様々な予期せぬ殺人が次々と実行される。著者の軽快な文体とあいまって読者を一気に最終ページまで繰らせる魅力がある。



新海誠著「君の名は」、空想と現実のファンタジーとでも言ったら良いのだろうか?そして青春の妄想と忘却、希望、恋愛。忘却いな現実の中に生まれ育った故郷がある糸守町、神社、湖、役場の防災無線と。生き続けることそれは一種ファンタジーだ。



高橋克彦著「だましゑ歌麿」、江戸で絵師を絡めた殺人事件が発生する。歌麿の伴侶おりよが、無残な形で殺害される。南町奉行所の仙波一之進が事件の捜査に乗り出す。世は松平定信のお触れによる緊縮そして贅沢禁止だ。妻を殺害された絵師歌麿を始めとして版元蔦屋、南町、北町奉行所を交えての混沌とした状況の中で仙波遂に犯人を特定する。火付け盗賊改の中山であった。



又吉直樹著「火花」、お笑い芸人同志の付き合いの中で、主人公徳永と別の漫才師神谷との情感と寂寥感がひしひしと伝わってくる人生物語だ。少し欠陥のある神谷を徳永が見つめる眼は冷静で人生の悲哀と孤独と様々な関連を振りまきながら生きて行く。生きるとはこういつことかもしれない。



スタンダール著「赤と黒」下巻、ジュリヤンは、レーナル家を離れ、神父の推薦でラ・モール邸の公爵の執事として採用される。1830年代のフランスの貴族階級の様々な社会情勢を背景として物語は進む。ジュリヤンはその公爵の娘ラ・モール嬢に恋心を抱き煩悶する。作者がレーナル夫人と対象的に描くこの公爵令嬢は、自尊心が強く我儘でかつ純粋さを持ち合わせた性格だった。この恋愛によりジュリヤンは破滅へと突き進む。当時の階級下層の出身のジュリヤンと公爵令嬢、さらにレーナル夫人との恋愛を通して社会の偏見と闘い死に至る主人公の物語だ。



スタンダール著「赤と黒」上巻、1830年代フランス片田舎ヴぇりエールでの若きジュリヤンは、貧民層の生まれだが、その容姿と頭脳は飛び抜けて素晴らしく神学校生活からレーナル家の家庭教師へ。その家の美しい夫人と恋に落ち苦悩と煩悩さらに神への不信の生活を送る。そしてパリの神学校に移住しそこでかれジュリヤンは才能を発揮する。



門田泰明著「皇帝の剣」上巻、著者の書は本書が初めてである。浮世絵宗次日月抄シリーズの一作だと思う。江戸の長屋に住む天才浮世絵師宗次が、京の都の天皇の命で江戸から京都へと赴く。京では滞在中様々な苦難が待ち受けている。そして天皇に仙洞御所にて拝謁できるまでが上巻である。