IT社長の徒然日記
創業以来30数年、読書を通して思うことを日記として記していきたいと、思いました。オーディオ、ジャズ、ゴルフ、海外旅行、酒その他諸々について。
土曜日, 1月 30, 2021
松本清張著「混声の森 下」、柳原学長を漸く落とし学長就任を承諾させ、石田は自らを新理事長へと階段を昇った。交通事故に遭遇し現学長を追い落とし作戦を端から見ていた石田は、強力な理事二人と事務局長の鈴木に任せ知らせを待つだけとなったが、事態は石田の考え通りに進展し安心した。学長の就任式を終え約一か月後に東京へ出向いた学長柳原の口から出た言葉は、石田の放遂であった。
松本清張著「混声の森 上」、若葉学園という女子大の専務理事にのし上がった石田謙一は、理事長の追い落としの野望と策略、私生活ではバーのマダムとの不倫はたまた若いホステスとの不倫、家庭では長男の家庭内暴力との狭間で揺れる男の心情を描き、中年男の悲哀と野望を見事にサスペンスタッチで表現している。
松本清張著「生けるパスカル」、2編を含む短編集である。前半の「六畳の生涯」は、長野から連れ合いを亡くし開業医の長男の6畳間に身を寄せる79歳の老人の物語で寂寥と孤独に苛まれ次第に家政婦に異常な情熱を燃やす老人の心の変化を見事にミステリー風に描いたものだ。後半の「生けるパスカル」はイタリアのノーベル文学賞作家の書いた小説を元に、芸術家の妻の凶暴でヒステリック性に辟易して生活している美術家の妻の殺害に至る経緯を書いたミステリーで共に傑作である。
京極夏彦著「狂骨の夢」、戦中戦後の混乱の中で起きる意外な殺人事件、その裏に伝統と神話に基づく宗教から守り抜こうとする絶対神それは髑髏であった。著者の豊富な蘊蓄とトリック、プロセスが榎木田礼次郎を始め中禅寺秋彦・京極堂作家の関口巽らによって詳細に語られる真実は真っ暗闇の中で灯る蝋燭の様である。超長編小説だ。
有栖川有栖著「臨床犯罪学者・火村英生の推理 Ⅱ」、5編が収録された短編集である。いずれもアリスと火村のコンビが事件を解決する物語だ。プロットといいトリックといい、短編には研ぎ澄まされたアイデアが詰め込まれていて、読者を飽きさせなく気軽に読めるミステリーだ。
松本清張著「翳った旋舞」、R新聞社の新入社員で調査部に配属された三沢順子は、ある日蓄積された写真から取り出して提出した1枚は違う男のものだった。結果、部課長が左遷され順子は責任を負い懊悩する。友人のバーのホステスとの交友、組織の中で生きる女、著者の女性感と悲哀を織り交ぜ、相も変わらず女性心理を極めた一冊だ。
綾辻行人著「鬼面館の殺人 下」、同姓同名の者たちを集めた、鬼面館の主人招待された全員に仮面が配られ顔を隠すことになった。深夜時間は起こった。当主が殺害され首なし手指なしといった死体が朝に発見された。ここで日向の代わりに招待された門矢門美が、探偵よろしく事件解決に向けまた鬼面館の設計者である中村青司のカラクリを探しつつ探し当てた犯人は意外にも鬼面館の第一世代の当主の身内だった。まあトリックが少し凝りすぎて漫画チックだ。
綾辻行人著「鬼面館の殺人 上」、東京でも場所が不明な程の奥地に建つ鬼面館つまり、鬼面を蒐集しかも鬼才建築家中村青司が設計した建物だという。ひょうんなことから友人日向京介に依頼され鹿谷門美は、鬼面館へと。そして当館の主である影山がある朝殺害された首なし死体でしかも10本の指全てが切断されていた。雪が降り続く鬼面館、果たして犯人は?。
松本清張著「アムステルダム運河殺人事件」、中短編2編だる。一方は「アムステルダム運河殺人事件」と「セント・アンドリュースの事件」である。著者は1964年に現地を取材して書いた作品だ。運河に浮かんだジュラルミンのスーツケースに詰め込まれたバラバラ死体事件、そしてセントアンドリュースでの友人ら3人で出かけゴルフをしたその夜殺害された事件、いずれの事件も警察が見切りと付けた事件だ。想像巡らした犯人捜しが面白い。なおセントアンドリュースには、20数年前に訪れゴルフを2ラウンドしていて、懐かしい思い出読んだ。
綾辻行人著「水車館の殺人」、以前著者の作品「十角館の殺人」を読んだが、今回はその二作目に当たる作品だ。舞台は近畿地方の山の中に建つ西欧の古代の城を彷彿させる三連水車の回る水車館、勿論設計は例の設計家である。館の当主は交通事故により今は忌まわしい傷跡を隠すため白い仮面を着けている、他には清純美貌の妻、執事、家政婦といった面々だ。年に一度藤沼画伯の作品を見に訪問する3人、訪れた日の夜は嵐であった。その夜殺人事件が発生する家政婦だった。その後次々と発生する殺人事件、数多の伏線を用意し最後はどんでん返しという本書は清張以降の若手の本格推理小説と認識されている。
京極夏彦著「鉄鼠の檻」、思わずため息が出る程分厚い文庫本である、多分1300頁を超える大作だ。舞台は箱根湯本から山側に歩いて数時間の所にある禅寺、妙恚寺だ。各宗派を含むまあ禅寺という寺、寺の手前に老舗の宿がありそこも今回の舞台になっている。寺の禅僧の一人が殺害され宿の庭の柏の樹の上に置かれた、不審な事件とみて元から寺の取材に来ていた京極堂の妹敦子と鳥口に加え役者が勢ぞろいする京極堂、関口、探偵榎木田礼次郎禅僧が次々と殺害され連続僧侶殺人事件に発展する。そして禅という宗教が持つ特殊な背景と事情が重なる事件だった。作者の蘊蓄には恐れ入る。
松本清張著「象の白い脚」、1960年代後半、舞台はラオスで都市はビエンチャンだ。作家志望の友人石田が、ビエンチャンを訪れ取材中に何者かに殺害された。友人の谷口はその5か月後ビエンチャンに乗り込んだ、当時は政情不安と貧困の渦巻く国で共産軍と米軍の支援する政府軍との戦闘が起きていた。友人の死を回り精力的に嗅ぎまわる谷口は徐々に解明の糸口を発見した。しかし彼もまた溺死体となってメコン川に浮かんだ。
高橋克彦著「かげゑ歌麿」、江戸の名絵師歌麿、奢侈・贅沢を禁ずる振れを出した老中松平定信、そんな江戸市中で歌麿の描く美人画もご法度となった。実の娘ゆうとの再会、娘との絵の協演を夢見る歌麿に刺客の手が伸びる。弟子の春朗、平賀源内、料理やの蘭郎、そして火盗改めの一之進らの援護で娘ゆうとの再会を果たす。
畠山健二著「本所おけら長屋 十五」、最新刊が上梓された。15冊目である。例によっておけら長屋に住む面々鉄斎、万造、松吉、お染にお咲等々が引き起こす事件や長屋の住人に関連する人達の面倒事を人情を交え人生の教訓としながら温かく解決してゆくそんな物語で落涙するほど素晴らしい。
松本清張著「黒の回廊」、ヨーロッパを周遊する女性のみの団体ローズ・ツアーを企画した王冠旅行者の添乗員、門田そして旅先で講師を務める江木奈岐子、彼女は旅行作家である出発直前となって江木は急な要件で辞退し代わりに土方悦子を推薦する事態となったが、ツアーは無事出発できた。アンカレッジからロンドンそしてスコットランドと、湖の畔の宿に着いたその夜事件が起きた。旅行者の2人の女性が溺死体で発見され地元警察とスコットランドヤードが動き真相解明に当たった。そして犯人は過去の忌まわしい経歴が暴露された。ヨーロッパの旅情を感じさせるミステリーだ。
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