水曜日, 12月 29, 2021

真山仁著「神域 上」、アルツハイマー型認知症の克服は国家戦略でもある再生先端医療の千峰である。この件について大手IT企業社長が動いて医療センターを大々的に立上げ研究が開始された。医療センター及びアルキメデス科学研究所が目指す再生医療の眼玉はフェニックス7と言われるアルツハイマーを遅延させる投薬だ。その頃東北の宮城市の周辺で俳諧老人の連続死体事件が起こっていた。宮城署が乗り出し捜査に当たるが殺人事件かどうか?判断はまだできなかった。
ロード・ダンセイニ著「二壜の調味料」、エラリー・クイーンが名作と認めた古典的作品で本書は作家が唯一書いたといわれるミステリー集であり、26編もの短編集である。ホームズとワトソンに似せたリンリーとスメザーズはちょっと機転が利いた物語で読者を楽しませてくれる。他にも短編が色々とあり一気読みの感がある。
ケイト・モートン著「湖畔荘 下」、セイディの調査も佳境を迎え、ロンドンに住む作家アリスに面会しコーンウオールのローアンネスの屋敷の鍵を渡してくれたつまり調査しても良いと認めてくれた。屋敷に入り様々な手紙を繰るうちに段々と全貌が明らかになり、それまでの定説が覆った。当時の母親が愛人で庭師のベンと共にセオを匿ったという事実だった。そして終幕でどんでん返しが待っていた、セイディ叔父バーティこそがセオだったと。1930年代と現在とが交互に絡み合い交錯し登場人物の過去にも翻弄されながらの最後のどんでん返しは素晴らしい。
ケイト・モートン著「湖畔荘 上」、英国ロンドンから少し離れた森と湖に囲まれたその屋敷はエダヴェイン一家が1930年代に暮らしていた優雅な屋敷だった。その一家に1歳になる末っ子のセオという男の子が誘拐された。警察始め総出で捜索したが男の子を見つけることができなかった。70年前のこの事件に興味を示したのはロンドン警視庁でミスを犯し上司から休暇を迫られ叔父の住むコーンウオールに来たセイディだった。彼女は未解決事件の情報を図書館から当時担当していた警部まで聞き込みをしたりして事件解決に向け鋭意努力中だ。
アントニイ・バークリー著「ジャンピング・ジェニイ」、古典的名著と言われた本書であるが、少し冗長でありプロットそのものも平坦であり面白みに欠ける、最後にどんでん返しは用意しているが脈絡に欠ける点は否めない。仮想パーティで主催の弟の嫁が屋上で自殺した、そこに参加していたロジャー・シェリンガムは殺人だと断定して犯人に目星を付けその人間を守ろうとする。嫁は分裂症気味で鬱を患い自殺願望があった。しかし裁判では自殺と断定された、そこから最終章にどんでん返しが起きた。しかし脈絡がない。、
ドロシー・L・セイヤーズ著「誰の死体?」、1920年代の作品だという。ある朝発見されたのは浴槽で仰向けにされた遺体だった。当然英国ではスコットランドヤードの警部が早速事件の捜査を開始、しかし手掛かりも無く途方に暮れていた。スコットランドヤードもう一人の警部バーカーはピーター・ウィムジイ卿に取り次ぎ二人で事件の解明に乗り出す。シャーロックホームズを彷彿とさせる探偵は勿論ウィムジイ卿で雇用人のバンターがワトソン役だ。今ではプロットも在り来たりなものだが当時は画期的なミステリーだったに違いない。
真山仁著「トリガー 下」、韓国のスーパースターであり検事そして現大統領の姪のキム・セリョンが凶弾に倒れ、日本・韓国双方の捜査が開始されたが、北朝鮮及び米国と日本の防衛システムを揺るがす民間の軍事受託会社に防衛を委ねるそしてそのカネをばら撒き覇権を競う軍事会社の陰謀と目まぐるしく展開する物語は圧巻である。スパイ小説として一読に値する価値を本書は提供してくれる。著者の周到な調査と思考の上で組み立てられたプロットは圧巻である。
真山仁著「トリガー 上」、2020年東京オリンピックが舞台となった事件だった。韓国の大スターであり韓国地検の検事で馬術でのオリンピック参加を決めていた。馬場に入場して間もなく500m先からスナイパーによる狙撃によって額を撃ち抜かれその場に倒れ即死だった。韓国地検と日本の警察の軋轢の中、事件の真相究明すべく警視庁特別斑が始動。元外事課で今はカウンセラーの冴木、北朝鮮の工作員、米国大使館と物語は壮大で小気味よい文章とともに楽しめる。
松岡圭祐著「千里眼 優しい悪魔 下」、新シリーズの最終巻のこの書は、岬美由紀とメフィストコンサルティングのダビデ及びジェニファーレインとの相関を締めくくる巻となった。様々な事件の中でスーパーヒロイン美由紀が全力で戦い勝利してきた経緯そのものが美由紀の信念だ。弱きを助け困窮している者に救いの手を、そして何よりも著者の破天荒なセッティングは度肝を抜かれまた苦笑せざるを得ないことが、やはり岬美由紀を通して直に感じられるエンタメ小説の究極だ。
セバスチアン・ジャプリゾ著「シンデレラの罠」、不思議なミステリーと言っていいと思う。物語の進捗の語り手が変化し続け登場人物がつまりドかミか判別できなくなる。しかしこの物語の真意は、莫大な遺産相続にともない、もたげた殺意その底辺には遺産を持つ叔母への愛情の獲得争いといったいたって現実的な命題があるのが主題だと思う。語る人称を変える技法にどんなメリットがあるのか今一不明だ。
ギョーム・ミュッソ著「ブルックリンの少女」、人気作家のラファエルと医師のアンナは恋愛関係にあり、既にアンナのお腹には二人の結晶が宿っていた。アンナの過去を知るべく問い詰めたラファエルはアンナが差し出した写真を見て仰天し彼女の元を去った。後からアンナを追いかけたが捕まらず、そのまま深い闇の中に沈んで行くのだった。アンナを探し出すべく捜査に乗り出し、近所の元有名警部マルクの協力の下に関わりあるとされる人物を一人一人その過去をそして行く着いた先は正にどんでん返しそのものだった。ニューヨークとパリを舞台に様々な登場人物を描きそして頁を最後まで繰らせる迫力は著者の持つ圧倒的な力量そのものだ。
ウィリアム・L・デアンドリア著「ホッグ連続殺人」、40年も前の作品だが、その面白さつまり本格ミステリーとしての要素を余すところなく備えたミステリーだ。プロットも最後のどんでん返しも現代にも通ずる面白さを持っている。またイタリア人の犯罪学専門の教授とアメリカで探偵業を営む教授の教え子がタッグを組んで連続殺人事件を解決する設定も素晴らしい。
松本清張著「鴎外の婢」、「書道教授」、銀行の渉外担当の川上はパチンコが趣味で良く行きつけの店内でバーに勤める女と知り合いになった文子という名の女であった、懇ろになり勿論遊び半分で肉体関係となった。文子は金を川上に要求し、終いには友人仲間とバーを出店するこになったと言い大金を要求してきた。そんな地獄の日々を過ごす中で渉外で回った場所に書道教授の看板を掲げる家があり、川上は書道をすることにした。そして妻の着物を買った後、空き巣に入られ着物を盗まれた妻保子の執念から犯人が特定できた。しかし妻の証言から文子を殺害した夫の犯行がバレてしまった。男の心理状態を伏線に著者独特の語りは圧巻だ。 「鴎外の婢」、編集者から依頼され明治の文豪の回りのエピソードを書いている浜村は、つと浮かんだ発想を基に九州に旅することにした。鴎外が小倉に住んだ3年間の時、鴎外の面倒見た家政婦モトに纏わる話を書くためだった。旅館に宿泊し主人も古代史ファンと聞いて話をしたが、その後モトの縁戚のハツの行方に気にかかり行方を追う内に旅館主と恋仲になり妊娠したハツは殺害されたのではと思いある土地を掘り返した結果骸骨が無数に出てきた、古戦場の跡だったのだ。しかしその無数の骸骨の中にハツの死骸があったのではないかと。
松岡圭祐著「千里眼 優しい悪魔 上」、スーパー女子岬美由紀、元航空自衛隊空尉で優れた動体視力を見つけ臨床心理士に転身しカウンセラーとして悩める人々を救っている毎日だ。そんな美由紀の身に度重なる危機が及ぶメフィストコンサルティング傘下のジェニファーレインそしてダビデの魔の手が迫る。
アントニイ・バークリー著「ジャンピング・ジェニイ」、古典的名著と言われた本書であるが、少し冗長でありプロットそのものも平坦であり面白みに欠ける、最後にどんでん返しは用意しているが脈絡に欠ける点は否めない。仮想パーティで主催の弟の嫁が屋上で自殺した、そこに参加していたロジャー・シェリンガムは殺人だと断定して犯人に目星を付けその人間を守ろうとする。嫁は分裂症気味で鬱を患い自殺願望があった。しかし裁判では自殺と断定された、そこから最終章にどんでん返しが起きた。しかし脈絡がない。
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