日曜日, 1月 29, 2023

佐藤究著「Q J K J Q」、市野家の構成は父、母、兄、妹の4人である。それぞれが殺人を犯した、つまり殺人一家だる。ある日兄が殺害されたしかし妹亜利亜がちょっとの隙に兄の遺体は消えていた。そして母も失踪した。その後、亜利亜が体験したのは、かって暮らしていた記憶そして自分の正体を知る。次々と襲い掛かる不安と謎それは人は何故殺すのか?という人間の根源的な問いに懊悩する亜利亜そして関わる人間たちの生の存在そのものだった。江戸川乱歩賞受賞作品だ。
玖村まゆみ著「完盗オンサイト」、江戸川乱歩賞受賞作品である、しかし発想が馬鹿げていて面白い、乱歩賞受賞作品は色々と趣向の違った作品に出合えて感動する。今回もアマチュアのクライマーを主人公に彼洞に絡む人間達もまたユニークで面白い、なんといってもクライマーが皇居内の三代将軍が愛でた五葉松の盆栽を盗むといったプロットに感動する。
曽根圭介著「地底魚」、日本、中国、アメリカに跨る国際的なスパイ小説である。警視庁公安部外事二課に所属する警部補でる不破を巡る職場内の人間との軋轢さらに警察庁から移動してきた凸井理事官、中国との情報漏洩と盛りだくさんな内容は読者を翻弄して行き着く先を見いだせない。
鏑木蓮著「東京ダモイ」、ソ連時代満州から抑留されシベリアに渡った旧日本兵の過酷な生活を描き、その当時起きた中尉惨殺事件と現代で起きた殺人事件の相関を見事にプロット化した本作は乱歩賞受賞作品だ。個人出版を手掛ける薫風堂に電話があり出版依頼だった、そこで営業の槙野が京都府の綾部に向かったそして契約を果たし後日話し合いに来てくれとの依頼を受け槙野が綾部の高津老人宅に着いたが留守だった。そしてそのまま失踪となった。同時期頃にロシアはイルクーツクから来日した老婦人マリアが何者かに殺害された、そして仲介役に若き医師も行方知れずとなった。
高田郁著「ふるさと銀河線」、著者の時代物で澪つくしやあきない世傳を読んでいるが、今回現代ものを読むのは初めてである。短編9編の本書は著者の人に対する人生に対する思いやりと希望と勇気があふれ癒しの世界を堪能するそんなひと時を提供してくれる。
池井戸潤著「シャイロックの子供たち」、メガバンクである東京第一銀行の大田区の住宅街にある長原支店そこに勤務する銀行員の業務及びその家族の物語を巧みな著者支店で描く物語である。短編小説かと思いきや互いに関連して展開してゆく異色な長編といった趣だ、銀行員の日常の業務本部からの過酷な目標に汲々とする支店長以下副支店長、課長、課長代理といった面々悲哀そして行員家族の喜怒哀楽を描いたやはり家族とは人間とは問う作品だ。
翔田寛著「誘拐児」、 よく考察されたプロットそして読者を翻弄する伏線、親と子の絆戦後の混乱の中の誘拐と盛りだくさんの物語だ。誘拐された5歳の男児を巡る様々な人間模様を見事に描いた異色な誘拐犯罪ミステリー、最後のページまで繰らせる迫力があり楽しく読ませていただきました。
下村敦史著「闇に香る嘘」、主人公は全盲であり、彼を取り巻く人間たちの過去は旧満州の時代そして日本に帰国し中国残留孤児から日本人として認知された者たちの相克また彼の娘の子供つまり彼からしたら孫にあたる小学生の少女は重い腎臓病を患い週三日も病院で透析を受けている。過酷な状況の中で実家の岩手帰郷し兄に感じたかすかな不安は実際の兄ではないのでは?という根源的な疑惑であった。全盲の彼が調査にあたり行き着いた結果は自分が中国人の双子の一人だというどんでん返し的結末だった。第60回の江戸川乱歩賞受賞作品だ。
津本陽著「前田利家 下」、秀吉はお拾い男子誕生に狂喜した。この頃は世は秀吉を取り巻く大名のうち関東勢では徳川家康そして北陸の前田利家の二強による拮抗した勢力でからくも保っていた平安である。その後利家は、秀頼の守役に任ぜられ秀吉の絶対的信頼勝ち得ていた、秀吉余命幾ばくかの際に我が子秀頼に家康ら諸大名に忠誠を誓わせ遂に秀吉は薨去した。戦国の世は変わりつつあり、この時分利家も病を患い生末を案じられていた。周到に生前配慮した利家の生き様が語られ死に際の見事さに感嘆した。
レジナルド・ヒル著「骨と沈黙」、ダルジール警視&パスコー警部のシリーズだと解説に書かれていた。ダブジール警視の特異なキャラクターは著者の想像するより読者には強烈な印象を与え入る。英国ヨークシャーでの殺人事件これに奮闘するダルジールとパスコー事件は複雑かつ怪奇で解決の糸口を見つけることが非常に困難な事件だった。そして街中で繰り広げる聖史劇が絡んで最初面くらうがやはり最後のどんでん返し的結末がまっていた。冗長性は否めないが意表突く結末には満足だ。