火曜日, 1月 30, 2024

司馬遼太郎著「峠 下」、遂に継乃助が理想とする一藩として独立国家としての道程を示すことは困難な状況になり、自体は一路戦争へと傾斜していく運命にあった。官軍に一矢報いたが、遂に長岡城は官軍の手に落ちた、継乃助は配送し会津への途中で部下に棺を作らせ火葬させた。一人の侍否人間としての生き方を追求した作品だと思う。若い頃、放蕩遊学を繰り返し思想を育ててきた継乃助にとってこの時代に家を藩を出ることはできなかった運命にあった。超大作であるが非常に面白く読んだ。
司馬遼太郎著「峠 中」、 風雲急を告げる幕末、京都を中心に薩長土藩は朝廷を持ち上げ既に大政奉還をした慶喜は引退を願い出て大阪より江戸へ逃げ帰り蟄居してしまっている。混乱の中長岡藩牧野家の継之助は家老に抜擢され政治家として藩を支えて行くことになり多忙な日々を送り再度江戸へ出て異人とあったりまた福沢諭吉とも親しくして改めて御身の思想を自覚した、どこまでも武士であり長岡藩士であると。江戸に官軍が迫る中継之助も決断せねばならない状況である
司馬遼太郎著「峠 上」、幕末の時代に生きた越後藩牧野家七万五千石は、この時節にあっては裕福のようであった、この班での河井継乃助という当時としては考えられない理論を持った人物がいた。江戸や京都で放浪しこれはと思えば何処へでも出掛けその人物に師として請うという継乃助であった。横花ではスイス人と親交を結び長崎ではオランダ人とそして継乃助は広く世界を見て現状を分析能力に優れ、遂に長岡藩の殿様に請われ登城することに、しかし世の中は不穏になり激動の時代に入っていくことになる。
笹沢佐保著「見かえり峠の落日」、著者の股旅物は今回初めてである。都合5篇の短編集であって、興味深いのは物語の背景が私の住む群馬県あり知れた地名が頻々と出てきて興味深いものがある。渡世人の悲哀と旅行く姿は正に人生を生きる男の世界を哀愁と共に描かれている。当時の時代背景は良く調査されていて勉強になる。
司馬遼太郎著「燃えよ剣 下」、京都での新選組の活動が名を馳せ市井の人々の認識が上がりもはや新選組の知名度頂点を極めた。そんな中においても政変が次々と起こり激しい戦闘を繰り返し幕府軍と官軍の闘争は熾烈を極め遂に新選組は京を離れ江戸に降りることになった、近藤は怪我をし沖田は病床に臥した。著者は土方歳三の目を通して幕末から明治維新の激動の世界と蠢く人間模様を詳細に描いていく、歳三の稀なる人間像を描き幕末の動乱と土方の人生を通して十分人生を学ばせてくれる長編小説だ。
司馬遼太郎著「燃えよ剣 上」、時は江戸末期日野の田舎剣法理心流の兵、近藤勇そして土方歳三が田舎から京に上り新選組として京を仕切るまでに活躍する隊になる話である。土方歳三を中心に物語は展開し、薩長同盟が云々という物騒な時代背景を必死に生きる新選組と組みに関わる人間の機微を詳細に描いてゆく。
司馬遼太郎著「関ケ原 下」、関ケ原の盆地に武装して集結した軍勢は東軍、西軍を合わせ十万余であり日本最大の合戦、その東軍を束ねるは徳川家康であり方や西軍は石田光成であった。巧緻な戦略を遺憾なく発揮した家康の策謀は間諜を使い次々と西軍の諸将に働きかけ寝返りをさせ自軍の重要な戦力とした、一方で光成は計算知能に優れているが孟子の言う義でもって戦争を乗り越えようと全く現場を把握できなかった得意の性格の持ち主だった。家康の知略と胆力に完全に光成は敗れた。戦場に集う武将たちの置かれた状況と右往左往する気持ちの描写力はまさに著者の得意とするとこれである。
司馬遼太郎著「関ケ原 上」、関ケ原合戦に至る家康の野望それを支える老獪な本田正信の知略、秀吉亡き後誓紙を秀頼に捧げ遺訓尊び秀頼を補佐することを誓った豊臣諸侯もまた家康正信の巧緻な戦略の中で次々と家康側に屈していった。著者の人間を描写する鋭さと情景を描く繊細な筆力には何を読んでも感嘆するしかない。
笹沢佐保著「不倫岬」、吉祥寺署捜査一課部補である向坊長一郎は大富豪のサラ金女社長黒柳千秋の殺害現場に立ち会い捜査に乗り出すが、向坊は捜査本部の指針と違う結論を出し独自に捜査を進めることになった、容疑者は死亡した社長の秘書小田切丈二だった。小田切は向坊が妻由紀子と結婚する前の恋人であり、由紀子の体を不妊に貶めた男であった。事件は錯綜して次々と死体となって見つかる異常な状況、しかし向坊の意思は変わらず小田切の飽くなき追及であった。プロットの組み立てさらに複雑な伏線そしてロマンと人生下敷きにした本格ミステリーそして結末は意外な事実を告げる、読者が楽しく読める工夫が何か所にも隠されて最後のぺーじを繰らせる。
笹沢佐保著「逃亡岬」、薬品大手の会社に勤務する九門愛一郎は、銀座のホステスのミサと不倫関係にあった、既に妻とは断絶し彼女は勝手に愛人と仲良くしていた。ミサと別れ話を持ち出し関係は最悪な状況になりアパートを出た、そして間もなくミサは刺殺されたことを知る。そして九門に嫌疑がかかり四苦八苦する中でマンション近く富豪の娘千秋と知り合い一緒に逃亡することになる。ミサのマンションを出て間もなく一人の女性と会話を交わしている途中窓からミサがリンゴを階下に投げた、このことが殺人容疑となった九門を救う方法、つまり名前も判らない女性を探すべく千秋と一緒のアリバイ探しをして何か所も地方を訪れた、遂に彼女の正体がわかるが死体となって佐渡島で発見された。著者の人物描写はに細微に入り入念に描く技術は松本清張を彷彿とさせる、しかし最後の落ちは今一迫力にかける。