日曜日, 5月 29, 2022

アン・クリーヴス著「地の告発」、お馴染みのイングランドの北方のシェトランド諸島の警部ぺレスシリーズである。今回は前回の殺人犯と目されていたマグナム・テイトの葬儀に出席中に発生した地すべり、その崩れた土砂の中で発見されたのは赤いドレスを着た女性だった。しかも検死の結果絞殺による殺人だと判明、一躍被害者の情報探るべく本土からリーヴス捜査官らを招き展開する捜査の中で被害者元女優だと判明。シェトランドの風土それは人間関係をも支配する過酷な環境を描きながら事件を結末へと導くプロットは英国ミステリーの神髄と思えるものだ。
大江戸科学捜査ー八丁堀のおゆうー北斎に聞いてみろ、今回は、優香の友人で分析オタクの宇多川から依頼された件、内容は美術館を開館させる事になりメインの美術品として江戸浮世絵北斎の真贋鑑定だった。真贋鑑定を調査する中でおゆうは江戸の今贋作が作られその事で、2人も殺害される事件が持ち上がっていて伝三郎をはじめ町方の捜査中であった。今回は北斎や滝沢馬琴やらを含み見事なプロットで感心させられた。
キャロル・オコンネル著「クリスマスに少女は還る」、正に長編警察捜査小説だ、ミステリーを間に挟み奔放に展開するその醍醐味は別格だ。湖の岸のボート小屋で誘拐された二人の少女サディーとグウェンそして監禁拉致された場所はキノコを栽培する四階建ての工場だった。必死に捜査を開始する地元警察署の警部とニューヨーク州警察そしてFBI捜査官依然として犯人の特定も少女二人の行方も判明しない。本書に描かれているのはミステリーというより生への飽くなき欲望、個々の登場人物の造形を緻密に描き出して展開する好著だ。
大江戸科学捜査ー八丁堀のおゆうー千両富くじ根津の夢、お馴染みに顔ぶれで事件の解決に奔走する同新鵜飼伝三郎、源七親分そして江戸時代にタイプスリプしたおゆう、平成の科学捜査で伝三郎支える影の捜査官だ。今回は盗賊一味による蔵破りを発端に一味のやり手弥吉が僧侶に化けて町方に目の届かぬ寺社地からの悪巧みを一網打尽として解決する痛快ライトミステーとしてプロットともにうまく纏めている傑作だ。
M・W・クレイヴン著「ストーンサークルの殺人」、英国ダガー賞に輝いた長編ミステリーだ。ストーンサークルでの老人の杭に繋がれた焼死体、地元警察署の警部ポーは休職中だったが、捜査に引っ張り出され上司フリンとともに捜査にあたることに。本格始動した捜査でポーが指名した女性ブラッドショーは天才児だったが引っ込み思案で虐められる性格の持ち主、彼女とポーのタッグは本書を楽しませてくれたもう一つの魅力だ。捜査は26年前の男児売買まで遡りそこから一つ一つ手繰り寄せ事件解決へと。最後には現役警察官でありポーの友人だった男が犯人と解る。
ロス・マクドナルド著「さむけ」、結婚して1日足らずで失踪した夫から捜索の依頼を受けたリュウ・アーチャーは私立探偵だ、捜索する中で次々と明るみに出る真実それは女と男強欲そして金、さらに家庭へと連鎖する負のスパイラルである。アーチャー私立探偵はもちろん主人公だが、もう一人大学教授のロイ・ブラッドショーも特異な性格、嘘で固め母親の元と恋人の元と二重生活をしている、母親はまた富豪で彼女の息子を溺愛するといった家族に悲劇にも視点を据え物語を展開する。
アガサ・クリスティー著「アクロイド殺し」、富豪の家主がある夜殺害された、探検が胸に突き刺さっていた。富豪の姪のフローラに依頼されたポアロが捜査を開始した。地元の医師シェパード氏と共に捜査に奔走する毎日だ。そしてポアロの灰色の脳細胞が炸裂する。事件は意外な結末へと収束する。ミステリーの古典的な本書は今でも色をうしなく事なく堂々とその地位を揺るぎないものにしている。彼女アガサの作品は現在でも名著の位置を確保している。
佐々木譲著「沈黙法廷」、前半は警察小説で後半は法廷小説という括りでかつ長編ミステリーだ。独自でヘルパー家事代行サービスを行う山本美紀が訪問した北区赤羽の独居老人宅を要請により訪問、その後その老人が死体となって発見された。赤羽署が捜査に潜入し状況証拠しか無いにも拘わらず彼女の起訴を決定、ここから物語は法廷闘争へと移行し検察側弁護側双方の弁論が展開され最終的には彼女は無罪を勝ち取ることになった。やはり子供の頃の貧困は大人になっても貧困状態のままだ、社会がそれらの人々に寄り添うことはない。
山本巧次著「八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤」、おゆうは、平成の東京では関口優佳と名のる元OLだった。祖母の死とともに家屋を引き継いだその家にはタイムトンネルがあり200年前の徳川家斉の時代にワープできる何とも秘密を抱えた家だった。江戸ではこ洒落た家に住む捕り物の補助助っ人をするといった面白い設定で、今回の話は小藩の世継ぎに関して御落胤が居たという設定で小藩やら奉行者果ては城内まで巻き込んだ騒動に来てんがきいて未来人のおゆうが活躍する。
山本巧次著「八丁堀のおゆう」、ファンタスティックミステリーとでも言おうか奇抜な発想としっかりとした文体と相まって無難に親しめるミステリーに仕上がっている。おゆうは平成の東京から江戸中期徳川家斉の時代にワープした時の名前だ。定回り同心の鵜飼伝三郎や岡っ引きの源七らを手伝い捜査に当たるというのが主題だ。今回は薬問屋回りで藤屋という薬種問屋の大店の長男坊の死を回り店主より死因の特定を依頼され捜査に当たる。奉行所の役人から上の方の役人、盗賊を交えて多彩な顔触れの中で犯人を特定するといった面白い展開が続く、最後にはどんでん返し的結末がまっている。