日曜日, 10月 30, 2022

真保裕一著「連鎖」、検疫所のGメンである羽川は、友人でジャーナリストである竹脇が車ごと海に飛び込んで救出され意識不明の重体だと聞かされ、果たして竹脇は何を探っていたのかを知りたいと竹脇の痕跡を辿ることにした。そこで調査に乗り出した結果、商事会社や卸売り業者、運送業者さらに赤崎組といったヤクザが複雑に絡み合い貿易でコンテナを利用した不正取引の実態が明るみに出た。そして最後のどんでん返しが検疫所の情報を流出していたのは所の課長であったことが判明。検疫所というミステリーの舞台として珍しい設定で伏線の複雑さ最後のどんでん返しを含むプロットは乱歩賞作品に相応しい。
川田弥一郎著「白く長い廊下」、病院勤務の外科医窪島典之は、手術を終え病棟に行く途中で息を詰まらせ死亡した患者に死亡の原因に不信を抱き独自に調査することにした。そして死亡した患者の妻から訴えられ総額一億円もの賠償を請求され草角会長らも腐心して支払いに応じたのであった。調査は薬剤師のちずると共に二人で行う過程で発見したのは看護師の榊田十和子の存在だった、患者の運搬途中で患者に注入している管の栓を捜査して死にいたる措置をしたことが分かった。患者の妻良美と榊田は繋がっていたのだ、作家が医師だけに専門用語や病院内の事情も交えリアリティに富んだミステリーだ。
赤井三尋著「翳りゆく夏」、乱歩賞受賞作品である。嬰児誘拐をテーマに大手新聞社関わる複雑な伏線を用意しプロットを進めてゆくベーじをくる手を止めさせない迫力があり圧巻だった。最後のどんでん返しも強力で圧巻だ。人生の機微も盛り込みミステリーとしても文学作品としても優秀だ。
文学部教授のニッキイと群検事がおりなす様々な事件を教授は卓越した頭脳で解決してゆく、軽快な文章とともに団欒中のひと時を至福してくれる名著である。ホームズと違って直接捜査に加わらず群検事の話からその卓抜な頭脳で解決してしまう安楽椅子探偵と故障すべき名探偵なのである。ハリイ・ケメルマン著「九マイルは遠すぎる」、
新野剛志著「八月のマルクス」、元お笑い芸人だった笠原は今はスキャンダルの後芸能界を去り、家賃収入を当てに細々と暮らしていた、ある日訪ねて来た相方だった立川は末期がんだと笠原に告げ数日後に失踪した。笠原は古巣の芸能プロの屋部から立川に関わる人物達と次々と接触していき、発見したのは5年前に若手芸人グルーチョ・マサのロケ中の突然死だった。マサの死に絡む両親の元へ未だに寂寥に苛まれ夫婦で苦悶に強いられ復讐に燃える両親の姿を目にしたマサに関わる人物が殺害されていた。芸人社会の殺人をテーマに複雑な伏線を用意してプロットが完結していく面白さこれぞ乱歩賞受賞作品に相応しい。
桐野夏生著「顔に降りかかる雨」、 友人でルポライターの燿子が失踪したしかもヤクザ紛いの会社の金1億円とともに、ミロは勝手に捜査に乗り出した。恋人の成瀬と彼を取り巻く人物燿子を取り巻く人物としかし杳として彼女の行方は不明のままだ。ベルリンの壁崩壊の東ドイツを舞台にしたネオナチが絡む殺人事件、密かに潜航する日本の裏社会、様々な伏線を絡ませプロットを確実な展開にそして最後にどんでん返しが待っていた、乱歩賞受賞作品に相応しい作品だ。
会社の同僚で元愛人関係にあった木島の妻が、自宅マンションで殺害された、恨みを持つ者として澟子は容疑者リストに掲載された。保安士と働く澟子は意を決し捜査に乗り出した。流通業界、大手スーパーやコンビニ業界の裏側から実に良く調査しプロットを固めている、そこに現代社会での男女の悲哀を混ぜさらに犯人の過去の境遇を重ね物語の厚みを増し終盤へ乱歩賞受賞作品だ。 渡辺容子著「左手に告げるなかれ」、
中嶋博行著「検察捜査」、 著名な弁護士が拷問の末殺害された、担当検事は若干28歳の岩崎検事及び伊藤事務官になった。色々と捜査を進めて行く中で殺害された西垣弁護士を取り巻く状況が少しづつ判明しそれは検察をも引き込んだ体制云々と言った際どいものだった。江戸川乱歩賞受賞作品でるだけに、読み応えがあり検察官を知る上で面白い。
福井晴敏著「トウェルブ Y.O.」、作者の圧倒的な才能の豊かさを感じさせる作品である。江戸川乱歩賞を受賞作品である本書は、自衛隊員の日本を救うという矜持で全力で国家権力の破壊を実行してゆく熱血漢の隊員たち生きる意味を教えてくれるミステリーだ。プロットはそんなに複雑ではないが、伏線というか自衛隊を知り尽くしたあらゆる事に圧倒される。
宮部みゆき著「悲嘆の門 下」、結局連続切断魔として殺害された被害者は個々の事由により殺害されたのだと判明し、孝太郎そして都築は協力して殺害犯を特定し逮捕に漕ぎ着けた。勿論ガラの透視能力を借りて。そして幸太郎は、ガラと共に漆黒の闇に向かって歩進め遂に悲嘆の門到着そこで見たものは全てがフェイクでガラもまた想豫したフェイクだった。プロットといい著者のイマジネーションの素晴らしさに感心しきりだ。
宮部みゆき著「悲嘆の門 中」、幸太郎のバイト先クマーの女社長が殺害された、彼は戦士ガラの力を借りて犯人を特定してガラにより制裁を実行した。しかし依然として全国で展開した連続殺人事件切断魔シリアルキラーの正体を掴めない。物語はオカルト的ホラーの様相みせその中にミステリーが詰め込められいく、ガラとの拘わりそして謎が一層深く浸透してゆく中巻だった。
井上夢人著「ダレカガナカニイル・・・」、作者は、岡島二人の片割れで二人が別れて井上のソロデビュウー作という事らしい、しかも文庫で700頁もあるという超大作である。内容はモダンSFそして恋愛小説さらに加えてミステリー小説というコングロマリット的小説である。ある警備保障会社に勤める西村の脳に女の意識が突然彼の心の中に突入し、彼は混乱しその原因を究明し意識からその得体の知れない女を追い出そうと努力する。その過程は山梨県に新興宗教まがいの建物を警備する西村らの仕事中の出来事だと判明そこからの展開はこの作品に魅了されぱなっしだ。
アンドリュー・メイン著「生物学探偵 セオ・クレイ 街の狩人」、 ロサンゼルス郊外で息子の失踪の相談を受けたセオが捜査に乗り出した、深い闇に次々とぶち当たり真相に迫るべく奮闘するセオはヒューマニストだ。小児性愛で連続殺人鬼を追い詰める、そこには政府要人も絡んだ殺人事件だった。