火曜日, 6月 27, 2023

誉田哲也著「ルージュ」、今回も姫川玲子シリーズだ。まず祖師谷残虐事件一家3人を殺害し和室に死体を引き摺り3列に並べ衣服をはぎ取り拳銃で肛門から銃を発射して内臓から頭蓋まで破壊するといった猟奇事件が発生した。当然捜査本部が置かれ玲子たちは加わり捜査に従事することになった。そしてその事件について取材していたフリーライターが殺害された。玲子は仲間たちと必死になって捜査していく過程で28年前に起きた昭島市一家殺害事件と共通するものを感じ出向いて捜査資料を読んで、同一犯だと思わせる記述があった。犯人は外国人と特定され当時日米地位協定の壁で時効になった事件だった。プロットといい伏線の上手さに感銘する出来だ。
誉田哲也著「感染遊戯」、短編集かと思ったら最後で一つの長編として繋がる物語だった。姫川玲子シリーズなので彼女が主人公と思いきや、警視庁殺人課の倉田警部補は長男が交際相手を刺殺して殺害やむなく警官を辞めて警備員として働く傍ら犯罪者を殺害す津と言った鬱屈した人生を送っている。何よりも社会的課題、つまり各省庁のトップエリートの国民の税金をばら撒き使い自ら保身そして幾つもの天下りこれを周到に破滅させるための秘策を企んだ辻内、社会正義としてエリートを殺害する若者と主題は複数ありプロットは良く考えられており面白い。
畠山健二著「おけら長屋 二十」、とうとう二十巻目の完結編だという。初刊から読み進めてここまでの二十巻は笑いと胸に迫る人情を回りおけら長屋の住人の連帯感を面白く可笑しく読めた。著者の発想に完敗だ。こんごまたこんな物語を書いて欲しいと思います。お疲れさまでした。
R・D・ウィングフィールド著「冬のフロスト 下」、殺人事件が重複しにっちもさっちもどうにもならない状況をフロスト警部並びにデントン警察署の人間だれもが認識できるほどだった。そして伝家の宝刀のフロスト警部の頭から浮かんだのは囮作戦だ、女性警官および警部代行の刑事らを娼婦に返送させ車で連れ去られその先を特定するという手筈だったが、情勢警部代行がよもやという連れ去られてしまい。フロスト警部らは仰天同地で何はさておき警部代行の捜査に没頭した。そして見つけた。名探偵のようでもなく秀でた警部でもないフロスト警部というキャラには親近感と思いやりと優しさを感じる、著者の力量が感じられる物語であった。
R・D・ウィングフィールド著「冬のフロスト 上」、ズボラだが人情に厚く部下の面倒見のいいデントン署のフロスト警部は多発する事件の渦中にあった。娼婦の連続殺人事件、小児の誘拐殺害事件とりわけ少女殺人事件の容疑者として勾留したウィーバーなる人物が勾留中に自殺した。そしていもう一人の少女の遺体が発見された。下巻へ
太田忠司著「遺品博物館」、遺品博物館の学芸員と名のる吉田・T・吉夫は、生前書かれた遺言書に従い死者の物語性のある一品を選定し遺品博物館に収蔵するという世にも稀な職業なのである。それぞれ状況の違う家庭を生前遺言者との話合いを基に死後収蔵する一品を決定する。この本の核心は奇異な職業を想像しそこに死者に纏わる家庭及び関係する人間模様を描き様々な様態を作り出す想像力に完敗だ。
今邑彩著「そして誰もいなくなる」、勿論アガサ・クリスティーの著作を念頭に置いてのミステリーだとは誰しも思い浮かぶ、絶海の孤島でインディアン人形が一体づつ消えて行くクリスティの原作どおりではなく、場所は天川学園という高校生の演劇に絡んだ殺人事件つまり連続殺人事件によって女子校生が次々殺害されてゆくといった物語です。しかも殺害方法がなんとクリスティの作と似ているという。そして著者はその連続殺人事件では終わらずどんでん返し的結末を用意していた。なんか無理があるとは思うが中々結末で好感が持てる。
ヘニング・マンケル著「北京から来た男 下」、ビルギッタ・ロスリンは友人と中国へ行くことになりそこでホンクイという女性中国人と知り合い友人として親交を温めた。その後物語は昔の中国の歴史虐げられ無惨な死を迎え歴史に刻まれていくそんな時代背景の中でサンという男性の悲惨な生涯に焦点をを当てその子孫を持つヤ・ルーという中国の若き実業家に焦点をあてる、かれはホンクイの弟だった。中国の現状を憂え、アフリカはモザンビークに進出して大量の中国人を迎え新しい歴史を作るというプロジェクトに乗り出す。しかし姉ホンクイとは意見が合わず、彼女を殺害する。一方ビルギッタ・ロスリンはやはり大量虐殺人の犯人は中国人だと考えは変わらなかった。スウェーデンは元よりアメリカ、中国、アフリカ、ロンドンと世界規模で描かれたミステリーそしてそこで書かれた人種差別、経済格差世界を見据えた優れたミステリーの傑作だと思う。
ヘニング・マンケル著「北京から来た男 上」、スエーデンの片田舎で19人が殺害されるという前代未聞の大量虐殺事件が発生、地元警察はてんやわんやの騒動の中、犯人を特定は要として不明だった。ビルギッタ・ロスリンは女性裁判官彼女の親戚も殺害された事を知り現地を訪れ警察署に出向き情報を収集しようとした。殺害された田舎の住民は全て親戚関係にあった。そして警察は犯人を特定した。下巻に続く。
テリー・ヘイズ著「ピルグリム 3」、遂にピルグリムである私は、女刑事ジュマリを 詰まりバイオテロのサラセンの息子を監禁してサラセンと出逢った。サラセンは屈強な仲間を二人連れピルグリムと対峙、壮絶な格闘の末ようやく傷を追いながらも勝利しサラセンから小瓶に小分けした一万のインフルエンザの瓶の行方を大統領に報告した。この物語は数十カ国に跨る壮大なスケールと正義を貫き勝利するまで自分の意志を完徹する人間の生き方をメインにプロットを組立てた正にこれぞミステリーの真髄だ。
テリー・ヘイズ著「ピルグリム 2」、バイオテロを計画し天然痘に様々な物質を加え大痘瘡を作成したサラセンは山奥で三人を実験台にして成功を確かめた、その後小瓶に液を入れ、もはやばら撒く日を選定し臨戦態勢を確保しつつあった。一方命令を受けトルコに飛んだわたしピルグリムは、そこでサラセンと電話で応答した容疑者をジュマリ女刑事だとする確証を得て彼女の部屋に忍び込んだ。
テリー・ヘイズ著「ピルグリム 1」、米国のあらゆる諜報機関の調査員を監視する組織に属し世界を股にかけ活動していた私は退職を決意し過去の全ての自分の情報を消去したいと方々手を尽くした。一方アフガンでのテロ首謀者サラセンは医療の知識を生かしある施設から天然痘の菌を盗み出し、さらに他の物質を加え新たな菌を生み出し米国に敵対すべく準備を整え中だ。世界を駆け抜ける物語だけに著者の見識の深かさと小気味よい展開には圧倒される。
ヘレン・マクロイ著「逃げる幻」、休暇でスコットランドにやって来たピーター・ダンパーは偶然乗り合わせた機内でネス卿と知り合いしかも彼の領地内に滞在することになっていた。機内でも話が出たが、ジョニー少年のたびたびの家出について意見を求められる、ダンパー精神科医でる。周到に用意された伏線と見事なプロットが光を与え最後までページを繰らせる力がある。第二次大戦直後の複雑な世の中ナチスで訓練された少年の行動が全てを決定する物語だ。
ミネット・ウォルターズ著「養鶏場の殺人/火口箱」、「養鶏場の殺人」 エルシー26歳でやかましく職場の皆に嫌われていた我が強く人の意見を受け入れない頑なな性格をしていたが、そんな彼女が見つけたのはノーマンという二十歳の男性だった。婚期を過ぎていると家庭でも言われているエルシーにとって最大の幸運に歓喜しノーマンの姿を追い、結婚を迫った。ノーマンは田舎に養鶏場を建てそこで業務を開始したが思ったほど売り上げも無く苦心していた、そんな彼の窮地を知っても彼女は相も変わらずノーマンに結婚迫り続けるのだった。そしてある日エルシーが蒸発した、遺体に一部が養鶏場から発見されノーマンは逮捕された、ノーマンは無罪を主張したが認められず断頭台の露と消えた。かれは遺書の中でも無実を書き残した、これをどう捉えるべきか? 「火口箱」 英国の片田舎で二人の殺害事件が起き、同じ村に住む青年が逮捕された。青年の逮捕を廻って様々な意見がでて村は混乱の坩堝になった。シボーンは自分で捜査し警察にも連絡し真相を述べるが事実は意外なところにあった。偏見と因習が取り巻く小さな村での生活を生き生きと描写している。
ジョーダン・ハーパー著「拳銃使いの娘」、刑務所帰りのネイトが目にしたのは妻の死体だった、娘のポリーと共に刑務所内で暗躍するがギャング組織から逃亡する道を選択する。ギャング一味の追尾にも何とか耐え、さらに悪徳保安官の手からも辛うじてネイトは片目を失うほどの怪我を経て生き延びた、ポリー機転を利かせネイトを助けた。プロットは府口説ではないが逃亡中の様々な場面が生き生きと描かれ好感がもてた。