土曜日, 10月 30, 2021

R・D・ウィングフィールド著「夜のフロスト」、デントン警察署のエースフロスト警部の破廉恥な捜査全開の物語で、読んで楽しいミステリーだ。相変わらずよれよれのコートにマフラーそしてタバコを離さずエゲツナイ罵詈雑言の数々新任の部下は家庭崩壊それでも勤務に励むフロスト警部の造形に作者の力量を感ずる。今回も連続老女切り裂き魔事件に果敢に望む警部の捜査が魅力だ。
ピエール・ルメートル著「死のドレスを花婿に」、順風満帆な結婚生活を送っていたソフィーはある日から記憶障害にオークション運営会社の務めを辞めベビーシッターとして働くがそこの家で6歳になる男子を死亡させ自分の責任と思い警察からの逃亡生活が始まる。ある男フランツはソフィーにひとかたならぬ歪んだ愛情を注ぎソフィーをどこまでも追い詰め遂に自分のものにしようと画策するストーカー的愛情を纏い。そして最終章でどんでん返しが待っている。ソフィーは正常者だった。愛情と人生を深く感じさせる本格ミステリーである。
松岡圭祐著「千里眼 ノン・クオリアの終焉」、元自衛官で女性でF15戦闘機を始めて操縦したとされる臨床心理士岬美由紀は、招待状に沿い政府の認可の元役人と道ずれに中国は国際クオリア理研に向かう。そこから波乱な幕開けとなり次々と襲い掛かる魔の手をもろともせず岬美由紀の攻防が始まる。全世界をノン・クオリアの手に核爆発を目論む国際的暴力集団一方でクオリアの存在を信じるメフィストコンサルティングの集団とうの攻防の最中で戦う岬美由紀の姿は圧巻だ。新シリーズの復活に惜しみない賛辞を贈りたい。
R・D・ウィングフィールド著「クリスマスのフロスト」、著者のフロストシリーズ第一作の作品だと。若くて美人の売春婦の娘女児が誘拐された。フロスト警部さらに新人クライブを伴った捜索活動が指導した。同時期にまた連続殺人事件が発生デントン警察署は大わらわだ。著者のフロストの人物象の描写さらに登場する他の人物の造形の見事さに感心する。事件は32年まで遡り殺人事件の犯人を特定する。
アリス・シーボルド著「ラブリー・ボーン」、14歳の少女スージーがトウモロコシ畑でレイプされ殺害されたしかもバラバラ死体となって、その後肘だけ見つかった。天国に上ったスージーは地上の出来事とりわけ家族を見つめ続ける優しい眼差しを注ぎ続ける。家族の一人の死が家族を変える、そして再び家族が一つになり蘇る。家族と愛をテーマにそして特異な天国の描写にも感銘する物語だ。

火曜日, 9月 28, 2021

宮部みゆき著「おまえさん 下」、20数年前の大黒屋でのザク殺しから以降町方平四郎を始め同心、親分手下らが血眼になって捜索したが依然として瓶屋の文乃と哲次郎の行方は不明のままだった。この捕り物に関わる登場人物の身の回りのゴタゴタをユーモアを交えて語る著者の力量に感心する江戸の時代ミステリーとして少し冗長性はあるが傑作だ。
宮部みゆき著「おまえさん 上」、江戸は本所の町方、井筒平四郎は至って怠け同心であるが部下手下には粒ぞろいの精鋭が揃っている同心の間島信之輔、政五郎親分就中美形の少年平四郎の甥っ子の弓乃助は頭脳明晰で物語を面白くしている。町中で辻切りと思われる殺害が連続して発生し捜査に当たる筋から薬問屋に関連している事が判明した。しかし下手人を挙げることは出来ない。。
松本清張著「馬を売る女」、都内の繊維会社に勤務する30歳独身の星野花江は秘書でケチで金をしこたま貯め将来に備えていた、当然社内の評判は良くないさらに同社社員に金を融通して利子を取るというバイトまでしていた。彼女が務める会社社長は馬好きで馬を保有して馬主仲間と連絡を取り合ってレースの予想、分析まで電話でしていた、その電話を花江は盗聴して会員と称して情報を提供して月1万円の会費を取っていた。社長が二次下請け業者に相談を持ち掛け電話を盗聴されているが調査して欲しいと、相談に乗った八田栄吉は調査する段階で星野花江と親密になり遂に殺人に至る。
アガサ・クリスティー著「秘密機関」、トミーとタペンスものの初期の作品である。仕事も金も無く退屈していた二人が考えたのはヤング・アドベンチャラーズという会社で何でも引き受ける調査会社であった。思わぬ仕事が舞い込みそれが発展して国家の秘密機関に接触することなるトミーとタペンスは互いに拉致監禁されるが持ち前の勇気と機転で困難を乗り越えることに成功した。最後でどんでん返しが待っていた秘密機関を牛耳るドンは実は身近にいる人物だった。ミステリーの中にロマンを盛り込み読者を飽きさせない物語だ。
小西晴彦著「モンスター」、著者は35年間も教師を続けていたとプロフィールに書かれていたのには驚いた。事件の現場はまさに学校であり校長が殺害されたからである。道警の田舎の警察署の刑事二人、村雨と加賀が事件を担当し捜査に乗り出す。一方犯人である山川愛の人物像が綴られてゆく。クリスチャンで神を絶対と信じる山川の過去はまさに悲惨で虐げられた過去だった。神からの啓示により次々と殺害し火をつけてゆく。刑事コンビと犯人の人物像が交錯して物語の世界を構築し読者を離さない。
黒川博行著「桃源」、大阪府警泉尾署の刑事コンビ新垣と上坂が大規模詐欺、沈没船をサルベージして財宝を取得という荒ての詐欺を企み、法外な資金を集めくすねという手口だ。捜査にあたる府警のコンビは沈没船の場所を特定し沖縄、宮古、石垣、奄美と渡り証拠を握るべく奮闘するが一向に状況は闇の中、コンビの遣り取りを中心に捜査を続ける何時もの著者の軽快な文章が心地よい。
橘玲著「ダブルマリッジ」、桂木憲一は会社での移動でフィリピンはマニラに数年間滞在中に出会ったマリアと結婚し子供までがいたことを知り、さらに戸籍謄本が書き換えられその子供ケンまでもが載っていた事を知った。本書の物語はここから始まった。現在の妻とは当然発覚してからは疎遠になり娘の茉莉愛にまで疎まれる存在となった。弟が居たという事実を知った茉莉愛は必死になって捜索し突き止めさらにフィリピンまで行って父憲一と結婚していたというマリアを突き止めた。フィリピンには日本人の父を持ち今でもスコーターというわれる貧民街スラムで暮らす子供が十数万人いるという現実をこの小説が突き付けている。
綾辻行人著「びっくり館の殺人」、館シリーズの一作で少年少女向けにい書かれたミステリーだと言う。謎の建築家中村青二が施したびっくり館に住まう老人と子供その子供の俊生と知り合いになる三千也の語りで物語が進む。館で起きた殺人、老人が殺害される。しかし犯人は?三千也の追憶の中で語られる犯人とは。
橘玲著「永遠の旅行者 下」、麻生棋一郎の孫であり20億円の資産の継承者でもある麻生まゆを守る為に奮闘する真鍋恭一そこは日本であり香港でありハワイでありニューヨークであった。国際金融、税務の知識をフル活用しながら徐々に依頼された目的それは孫のまゆへの遺産相続そして日本政府には税金を一銭も払わないという二つの条件の成就を目指して恭一の奮闘は続く。プロットといい複雑な伏線を幾つも用意周到に準備したこのミステリーは本当に楽しい。
橘玲著「永遠の旅行者 上」、弁護士を辞めて日本国籍を捨てパーマネントトラベラーとなった真鍋はハワイに在住し元弁護士として法務や財務の相談業務を私的にしていた、そんな時にカナイという知人から相談を持ち掛けられ乗ることになった。それは老人からの依頼で孫12歳になる女の子を保護し財産を継承させたい父親は失踪して行方不明という案件だった。日本に帰り本人や依頼した老人に接見したり、ゴロツキに狙われている現状に遭遇しまずは香港で口座を開設し資金の手当て相続税対策、遺産相続を念頭に仕事を開始した。

月曜日, 8月 30, 2021

横山秀夫著「クライマーズ・ハイ」,群馬の地方新聞紙北関東新聞社の編集委員悠木を通して、日航機墜落事故の取材から社内のセクショナリズム同僚との駆け引きと息を突かせぬ様々な事象が雪崩を打って引き起こす、文体は軽やかでいて美しい。日航事故を通してはたまた主人公悠木を通して人生を見つめる。間違いなく好著だ。
恩田陸著「麦の海に沈む果実」,東北であろうか湿原に囲まれ青丘と呼ばれる崖の上に建つ壁に囲われた学園、そこに一人の少女理瀬がその年の2月の最終日に入園した。全寮制で特異な授業を行うこの学園で、理瀬の回りで不可思議な殺人が頻発する。冗長性は否めないがファンタジーでミステリーな物語、そして最後はどんでん返しが待っている。プロットといい複雑な伏線といい作者のレベルの高さを伺わせる。
橘玲著「タックスヘイブン」,シンガポールを主要舞台に日本、タイそして中国系の華人、日本のヤクザ、官僚、警察官僚、巨額ファンドを操るファンドマネージャー等金融サスペンスタッチで迫力と文体の軽快さを伴い主人公の古波蔵の知能戦には恐れ入る。そんな中にも男女の機微を盛り込み一層この物語を深いものにしている。痛快ミステリーといったところだ。
エラリー・クイーン著「九尾の猫」,ニューヨークで発生する連続殺人事件、被害者は全て独身でありかつまた女性が圧倒的に多かった。傷心のエラリーは父警視の説得で捜査に乗り出すが、手掛かりらしき物証は一切無く堂々巡りで捜査は難航を余儀なくされる。インド産絹の紐で絞殺する犯人を現行犯で逮捕するしか方法は無いと判断し遂に9回目の犯行に及ぶ犯人を逮捕した。逮捕された犯人は精神異常者の犯行と見た警察に協力した精神科医カザリス氏だった。。まずもって面白い最後のどんでん返しそれに伴う伏線といい見事で読み応えがある。
今邑彩著「いつもの朝に 下」,弟優太の出生の秘密、殺人者の父から生まれたとばかり思っていたが、ある日昔のアルバムを引っ張りだした事で、兄桐人が自分ではと思うようになった。出生の秘密の秘密を知った兄桐人は懊悩し遂に死を決断したその時優太が現れて自ら兄の代わりに首に縄を掛けて死のうとして階段から飛び降りた。一命を取り留めた弟を見て兄桐人は直になっていった。兄妹愛家族愛さらに神について生きることについて示唆に富みかつ小ミステリー的な伏線そして全体を貫くプロットといい完璧だ。
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