水曜日, 11月 29, 2023

早瀬耕著「未必のマクベス」、香港、マカオそしてサイゴンとクアラルンプールといった東南アジアを股にかけ活躍する男、中井優一は某IT企業の営業マンだ。ICチップ入りのカードの拡販が想を来たし遂に支社長に就任する。香港に会社を置くこの会社は関連会社との軋轢に加え本社印刷会社の取締役やからプレッシャーを受け右往左往する展開だ。副社長を殺害して難局を乗り越え、以後順調かと思われるも次々と関連会社の社員が殺害された。しかし優一にとって高校時代に思い描いた鍋島という女性を一貫して20年間も恋愛していたこの一貫性については並みの恋愛小説どころではない。文章も平易で頁を繰る手がとまらない。
中山七里著「能面検事」、大阪地検の検事は喜怒哀楽に始まり一切顔色を変えず只管自分の責任を全うする検察官としての業務を淡々とこなしていくそんな検察官不破俊太郎の下で検察事務官として働くことになった惣領美晴が殺人事件を独自のルートで追い詰め起訴に持ち込んで行く二人の確執を中心に能面検事の素顔を美晴によって徐々に暴いていくのも面白い。その後府警本部で起こった捜査資料の大量紛失事件が勃発この事件で不破は一人で突き止め府警は恐怖のどん底に陥りはては検事の銃撃を伴うまでになった。ここでも不破の手段は絶妙で犯人を特定する。
藤崎翔著「逆転美人」、小さい頃から可愛いと皆に言われた少女は大人になって益々美人となり、小学生中学生高校生といわず陰湿な虐めを受けた優子は居たたまれなくなり高校を中退しキャバクラへそこで知り合った不動産屋の男と遂に結婚し一児を設けた。そして二人は保険金殺人を共謀して彼女の祖父そして前夫の子供香織に重症を負わせ歩行困難にそんな折彼女の勉強を見てくれている教師に共謀殺人を感ずかれ教師も殺害と殺人を重ねた。その後美人故辛酸を舐めた優子の反省を手記という形で出版しないかと持ち掛けられ承諾した、前半はこんな推移で物語は進行し後半は実際に手記を書いたのは香織であるという事実を明白にし香織の殺人への暴露が始まる。この特異な形態のミステリーには唖然とするしかない。実に面白い。
田島斗志之著「黒百合」、 戦後の混乱期に夏休み東京から神戸は六甲の別荘にやって来た少年進は友達として2人と知り合い仄かな恋心抱きながら夏休みを過ごす。戦前のドイツでの旅行に付き添った時のヒトラーに支配されたドイツの情景やらが生々しく描かれている、そこで知り合った二十歳の女性一人旅だというそれが戦後に思わぬ邂逅につながる。ここに描かれてる翁は宝塚歌劇団の創始者であるという、六甲の山と森の中で静かに繰り広げられる幼い恋愛感情そして殺人が挟まり一挙にミステリーになってゆく。
倉知淳著「過ぎ行く風はみどり色」、例によって猫丸先輩が登場する話、しかも今回は文庫本で600頁近い長編ミステリーなのである。世田谷の豪邸での一室で隠居した老人が不審死を遂げた。事件から数日後に叔父が連れて来た霊媒師と言われた穴山、彼は後日降霊会を開くという事で当日又もや殺人事件が発生当の霊媒師が殺害された。そして最後になって方城家の家政婦のフミが犯人と特定される男を毒を持って殺害と算段重ねでプロットを組み立て冗長性はあるが上手く書き込んでいて面白かった。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 八」、遂に最終巻。ロシアのバルチック艦隊との会戦となり、双方激しく攻防が実施され天才戦略家の秋山真之の指揮のもと片やロジェストヴェンスキー提督率いるバルチック艦隊は迷走し戦艦スワロフは海底に沈み助け出されたロジェストヴェンスキーは負傷し佐世保へと送られた。ロシア軍の完敗だった、欧米各国は脅威の眼で日本軍の勝利に目を向けた。こうして日露戦争戦争は終結し明治の時代の終焉となった。日本の歴史の一時期を二人のまた子規を含めた三人の人生を重ね合わせ約10年という歳月を賭けた時代を著者の執拗な調査と歴史観による大作だった。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 七」、泰天の会戦は激烈を極め、日本側は右往左往し危うく退却することに、しかし救われたのはロシア軍を率いる提督クロポトキンの性格による臆病風による退却に次ぐ退却によって日本軍はまさに救われた。しかし著者の執拗にして素晴らしい調査そして歴史を達観する能力には驚きを隠せない。その頃ロシア軍のバルチック艦隊は一路極東に向かって進軍していたが、この艦隊の総司令官であるロジェストヴェンスキーは奇妙な性格で日本海での決戦を前にして躊躇しその戦略すら下士官やら水平までも不信がられていた。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 六」、辛くも旅順で勝利した日本軍はまさにどん底の闘いであった、借金の上で戦争の装備弾薬を調達し戦地に回すという危ない橋を渡りながら旅順を陥落させたことは日本陸軍にとって朗報であった。ロシア軍はその後も中国清に着々と領土を拡大し遂に泰天に強大な城を築き日本軍との会戦の準備をしてきている、戦力は圧倒的にロシア軍が有利で日本の大本営は苦肉の策で左右展開し攻撃し動揺するロシア軍の中央突破という戦策を考えていた。海上ではロシアのバルチック艦隊はいよいよマダガスカル島から石炭及び食糧の補給を最大限実施して遂に極東に向けて錨をあげた。
倉知淳著「幻獣遁走曲」、5編の短編集である。猫丸先輩と呼称される永遠のアルバイターであり、頭脳明晰にしてあらゆる問題を解決する懐の深さを持つ作者が創造した名探偵集である。猫丸と取り囲む人間達を作者は悪人でなく、通常の普通の人間として描きそこに何ら悪の匂いを感じさせない優しさがある。対して猫丸は平等に接し決して非難するこなく事件を解決する何かこの5編すべてに優しさを感じるのである。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 五」、乃木希典の無能ぶりにあきれ果てた陸軍大将の児玉は、遂に自ら旅順に行く決心をして戦略と共に自ら指揮して203高知を手中にすべく奮闘し奪還した。この奪還は予想外の効果を齎し正に起死回生の逆転劇であった。一望できる旅順湾に停泊中の軍艦を強大な大砲を発狂喜させた。その頃バルチック艦隊は極東に向け南下を続けたが旅順に停泊の艦隊と合同で戦うべき戦艦が絶滅したことを知ると意気消沈し配送まで考えるようになっていた。

日曜日, 10月 29, 2023

大沢在昌著「ダブル・トラップ」、元優秀な諜報員として働いてき今は高級レストランのオーナーとして過ごしている加賀哲の下に一本のテープが送られてきた、そのテープは勝手の同僚である牧野からだった、助けてくれというメッセージだった。急遽宇和島に飛んだ加賀は牧野と合うことはできず工作員のと格闘を余儀なくされズルズルと諜報機関との接触を余儀なくされた。松宮貿易という秘密諜報機関そこに群がる秘密警察海外のテロ組織そして公安、これらの標的にされつつ独自に運命を切り開く加賀の勇気と信念を描いた作品だ。
小泉喜美子著「弁護側の証人」、ミミーローイ彼女はストリッパーであったが、彼氏の彼は大会社の富豪の御曹司だった。結婚を機に彼の自宅へと居を構えそこの住人となった。しかしある日その社長つまり祖父が何者かに机上の文鎮で殴打され殺害され容疑は祖父の部屋へ出入りを目撃された若妻に嫌疑かかり逮捕され裁判となった。美人妻を弁護した清家弁護士の必死の弁護により無実を勝ち取り、夫の杉彦が逮捕されるという事件だった。どんでん返し的結末が甘く何故か頁を繰る手が進まない。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 四」、 貧乏小国日本は日露戦争において、弾薬不足に兵器不足とギリギリの戦での戦いに終始しており、打開すべく道はとざされているかに見えた。精神論で戦うこれが日本の現実だった。海軍は旅順を攻略してくれる陸軍を頼みに外洋で碇泊している、その陸軍の隊を率いるのは乃木希典は如何にしても無能で日本兵をやたらと殺させ大本営の意見も聞かず戦況も偵察せず無益な戦闘を繰り広げている。ロシアのバルチック艦隊が近づきつつある現状である。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 三」、極東の弱小貧乏国家は維新後も藩閥の名残を残しながら海洋国家としての歩みを続け、艦船を海外に発注して着実に帝国主義の路を歩んでいた。そして松山で療養中の正岡子規は日に日に体力の衰えを見せ、遂に帰らぬ人となった。極東を回り列強の各国の駆け引きが盛んになり清国及び朝鮮を廻る動きが活発になり中でもロシアは露骨に侵略の意図を示し日本にとってもこの動静は少なからずロシアに脅威し遂に日露戦争の会戦となり秋山兄妹もそれぞれ戦地に赴いた。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 二」、 日清戦争に勝利した日本は、軍備拡張を目指し中でも軍艦を建造といっても外国への発注であるが整備に本腰を入れ真之は海外の海軍及び造船所を具に観察しながら海戦の戦略を計画していた。好古は35歳になり結婚して子供を設けていた、子規は喀血を繰り返し松山での床に伏していたが精力的に俳句及び短歌について論文を書き発表し続けた。明治期の帝国主義国の清を中心とした列強の動静に著者は可成り詳しく調査して著者独自の歴史観を展開して面白く読んだ。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 一」、大政奉還を経て無血革命による明治という時代を生きた伊予松山の秋山兄妹兄は好古で弟は真之そして正岡子規は兄妹にとって親友だった。兄妹とも頭脳明晰で成績も良く兄は陸軍へ弟は海軍へと歩んだ。当時正岡子規は喀血を度々繰り返し医師からは肺結核という当時としては不治の病に罹っていて瀕死の重傷で実家の四畳の間に床へ伏していた。好古はフランスへ留学騎兵術を学ぶため真之は漸く英国に発注した軍艦に乗船し技術を学び始めていた。
加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス 5」、退職警官が居住する通称スメゾン・ド・ポリスには5人元刑事やら科警研出の人物その5人と柳町北署の牧野ひより刑事とのタッグでこれまで事件を解決してきていた。今回は短編4編という形で提供されています、実に様々なネタを考えて作り出す作者の能力というか想像力に感心するばかりです。今回はメゾン・ド・ポリスの成り立ちが、伊達によって明らかにされ人間味のある人生を達観した者の温かさがそこにありました。
加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス 4」、退職警官が居住する通称スメゾン・ド・ポリスには5人元刑事やら科警研出の人物その5人と柳町北署の牧野ひより刑事とのタッグでこれまで事件を解決してきていた。今回は短編5編という形で提供されています、実に様々なネタを考えて作り出す作者の能力というか想像力に感心するばかりです。退職刑事の中にどっぷりと漬かりこんだ牧野ひよりの成長する姿が微笑ましいかぎりです。
加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス 3」、 退職警官が居住する通称スメゾン・ド・ポリスには5人元刑事やら科警研出の人物その5人と柳町北署の牧野ひより刑事とのタッグでこれまで事件を解決してきていた。今回は爆弾魔との対決3作目にして初めての長編だ。病院やら公園と囮の偽爆弾を仕掛ける犯人を捜査しているのはひよりと退職刑事だ、そして挽弾魔の味とはスメゾン・ド・ポリスの一人迫田の息子が勤務する水族館の建設だった、環境破壊と生物を苦しめる事業について批判的な集団を摘発する。そして間一髪ひよりは命拾いする、テンポのある展開に思わず引き込まれあっという間に読了。
マイクル・コナリー著「バッドラックムーン 下」、ホテルの警備主任グリマルディの依頼を受けたジャック・カーチは執拗にキャシーを追跡し彼女の元の相棒であり異父兄にあたるレオ・レンフロを血祭りにあげた。そしてカーチは刑務所でキャシーが生んだ娘(養女となっている)ジョデーを拉致誘拐し車でラスベガスに向かいホテルのスウィートに投宿した、グリマルディと連絡を取りながらキャシー来るのをホテルの部屋でジョディと一緒に待ち二人を自殺に見せかけて殺害する予定だ、キャシーは天井裏から部屋に侵入しジョディを奪い逃走、そしてカーチはグリマルディ一味まんまと騙され危うく殺されるところ逆に彼ら一味を銃殺してのけた、無事ラスベガスを脱出してジョディを送り届け走り去った。