伊坂幸太郎著「キャプテンサンダーボルト 下」、
蔵王の火口湖通称五色沼に潜む旧陸軍の秘密基地それは生物化学兵器ウイルスを開発する場所だった。井ノ原悠と相場時之は二人で潜り込んだ。地底の旧の基地から水を汲み取り桃沢瞳の待つ仙台市内へそこで巨人怪物と一線を交え相手を叩きのめして、それから銀行強盗すべく立ち振る舞いパチンコ店の社長と遭遇し無事に化学兵器を銀行の地下倉庫へ格納する。このことから窮地を脱した二人だった。奇想天外なプロットは現在流行しパンデミックになっているコロナウイルスとも関連し興味深く読んだ。
伊坂幸太郎著「キャプテンサンダーボルト 上」、
何とも不思議な物語だ。お釜と呼ばれる五色沼そこに下って逸った致死率70%という村上病という名の感染症、そのお釜に宝物が眠っているという情報を幼友達の相場時之から聞いた井ノ原悠は情報収集を開始、二人とも金に困っいる。不思議な外国人グループに襲撃されたかと思うと、今度は桃沢瞳という厚労省の薬計管理官に付き纏われる、さて下巻はどうなることやら。
中山七里著「連続殺人鬼カエル男ふたたび」、
御前崎教授宅で爆破事件が起きた。渡瀬警部と古手川巡査部長は捜査に乗り出す。そして駅での女性の轢断と連続猟奇殺人が続く、渦中に置かれた稚拙な犯行声明それは世間の言うカエル男だった。カエル男は精神障碍者だ。捜査は杳として進まず暗礁に乗り上げて警察庁、警視庁県警を含め焦りの色が濃くなってくる。カエル男と伏線の矢張り障害者のさゆり、そして障害者を装い母子札事件から仮出所される古沢複数の殺人事件が絡むプロットの最後の仕上げはどんでん返しだった。
歌野昌午著「葉桜の季節に君を想うということ」、
探偵事務所を営む成瀬将虎は、同じジムに通う久高愛子より蓬莱倶楽部という悪徳商法を行う会社の調査を依頼される。各地を転々として会場を借り上げ桜を使って、高額な似非商品をローンを組んで売り捌く、さらに次回は自宅を訪ねさらに商品を売り込み自己破産や自殺に追い込み保険金詐欺まで働くといった悪徳ぶりだ。なんでもやろう屋を標榜する将虎は正義感から様々な困難にぶち当たりながらも悪徳商社を追い詰めて行く。彼の人生哲学は前向きで実存主義的だ。やらないうちに諦めるな。だ。
泡坂妻夫著「乱れからくり」、
玩具会社の社員が隕石の落下により死亡した。その後死亡した馬割朋浩の身内の者が次々と殺害される殺人事件が発生する。宇内経済研究所といっても企業関連の調査を専らにしている社長一人は宇内舞子そして新入男性社員の勝一人という所帯である。舞子は依頼を受け調査にあたるが、次々と発生する殺人事件に遭遇する。朋浩の住む館は正に迷路で囲まれた邸宅である、そこには江戸時代から連綿と続くからくりの歴史があり莫大な財宝の隠匿の噂もあった。朋浩の死後に起こった4人の殺人は死亡した朋浩の仕業であると舞子は断定。からくりによる殺人。殺人ミステリーとともにからくりの歴史や蘊蓄にも作者の考察は興味を惹かれ第一級のミステリー小説だと思う。
伊坂幸太郎著「フィッシュストーリー」、
中短編小説4編の構成である。いずれの作品も著者独自の人間観・世界観が根底にあり、それは優しさであったり、正義感であったりとした展開だ。伊坂ワールドとでも表現できる独特な世界に浸れる小説だ。現実世界の明瞭でないものを描くことにより、見えてくるものそれは最終的には人間そのものではないだろうか。
殊能将之著「ハサミ男」、
ハサミ男と世間で名付けられたシリアルキラーである日高は、2人の女子高校生を絞殺後にステンレス製ハサミをやすりで削り首に突き立てるという異常犯罪者は3人目を物色し夜の公園付近まで女高生を付け狙ったが、そこで見たのは死体となって横たえた女高生の姿だった。警視庁並びに管轄警察署の刑事らの必死な捜査でも犯人は挙がらない。警視庁からの犯罪心理分析官として派遣された堀之内の奇妙な言動に気づく管轄刑事達、事件は思わぬ伏線を辿り息つく。
中町信著「模倣の殺意」、
何故か?再読となった。推理小説の作家坂井正夫が服毒自殺により死亡した。遺書はなかったが、最後に脱稿した小説の題名どおり7月7日午後7時に実行され死亡した。彼の死を回り小説家津久見と出版社に勤める高名なしょうせの長女中田秋子が独自に解明に向け捜査を行った。結末は意外なものだったが、少々読者の期待を裏切るプロットだ。所謂叙述トリックの先駆けといわれた小説だったということです。
道尾秀介著「カラスの親指」、
詐欺師で暴力団に雇われ乗っ取り屋として生きる武沢はある貧乏家庭の夫人を窮地に追い込み自殺させてしまう。ある日上野でひょんなことから知り合いになった女性さらに偶然知り合うテツさんさらにまたもう一人の女性とその恋人貫太郎この5人の柵で生活することになる。ヤクザに付け回される生活から脱却すべく計画を練り事務所に踏み込んだが、結局は失敗に終わる。これらの筋書きを全て承知の上で書いたのは実はテツさんだったと。作者の何とも言えない人間の慈愛と周到に用意されたプロットには脱帽だ。
東野圭吾著「容疑者✕の献身」、
ガリレオシリーズ湯川学大学助教授が活躍するものだと思う。このシリーズは初めてなのか不明。石神彼は湯川と大学の同窓生だ。彼の住むアパートの隣に母͡娘が住んでいる。ある晩元亭主が隣に訪ねて来てひと悶着あり母娘は炬燵のコードにより扼殺してしまう。隣で雰囲気を嗅ぎ取った石神は協力を母娘に申し出、遺体を処分する。しかし天才数学者といわれた石神が用意した母娘を守るアリバイ作りは、絶対的愛情を裏に持つ奇想天外なものだった。人間の深い愛情とミステリーのプロットは中々だ。