月曜日, 11月 28, 2022

ゾラン・ドヴェンカー著「沈黙の少女」、三人称で進行していく物語は一貫して緊張感を孕み読者を離さない。私一人称は平凡な中学校教師である、ある日突然娘が誘拐され行方がようとして不明だ。このことがキッカケで妻とは別居、そして私は自分で見つけると決意する。二人称のきみは、施設からやはり誘拐されたが命は取り留めた。三人称の彼らは誘拐犯であり小児性愛者でサイコパスの軍団だ。これらが複雑に絡み合い物語は進展してゆくドイツミステリーだ。
ジェームズ・M・ケイン著「郵便配達は二度ベルを鳴らす」、放蕩男フランクがふと街道筋の安食堂に立ち寄ったそこにはギリシャ人の亭主と豊満な肉体を持つ妻コーラが営んでいた。亭主に要請され彼フランクはそこの食堂で働くことになり、等々妻コーラと出来てしまった。そして二人は亭主殺害計画を練り実行すること二度目にして遂に殺害に成功する。物語のプロットはごく普通の話題でタイトルとは全然似ていない、人間の真と真理が普通に語れていいる。
クリスチアナ・ブランド著「ジェゼベルの死」、何千人が見守る演劇上での密室殺人事件が起こったたまたま見ていたケント州警部コックリルがスコットランドヤードの警部と共に捜査に乗り出した。そして生首を送りつけられる事件が発生、事態は混沌としたものにヤードもコッキー右往左往するばかりだ。作者の作品は初めてだが、伏線といいトリックさらにプロットといいミステリーとしては完璧ではないかと思う優れた作品だ。
水原秀策著「サウスポー・キラー」、 日本野球界きっての名門オリオールズに入団して2年目のサウスポーの投手である沢村が、ある日暴行を受けそれが二回続いた、その後在らぬ疑いつまり八百長疑惑が持ち上がった。その文章がメールにて複数の新聞社を始め報道機関の送付され、沢村は四面楚歌の状態に陥りしかし自分でケジメを付けるべく調査に乗り出し犯人を特定した、その男は同じ球団の同じサウスポーの三浦だった。このミス大賞受賞作品でそんなに冒険も無いストーリながら楽しく読ませてもらった。
サマンサ・ダウニング著「殺人記念日」、ごく普通の家庭、夫はカントリークラブのテニスコーチそして妻は不動産仲介業をしている、そんな家庭に忍び寄る殺人志向を平々凡々と描いていく。後半はスリルがあり読者のページを繰る手を止めさせない力がある。妻であるミリセントの心の内にある殺人志向を読後考えさせられる。平々凡々とした日常に潜む人間の悪意を見事なまでに描き出している傑作だ。
アガサ・クリスティー著「鏡は横にひび割れて」、ロンドンからほど近い村で、女優マリーナがパーティを催した、そして招待客の老婦人が毒殺された。少し冗長性を感じるがプロットはしっかりしているし伏線も計算された配置だ。ミスマープルの人柄も物語に登場する人間の描き方も詳細だ。ミスマープルのミステリーは初めて読んだがポアロと違った面白さがある。
畠山健二著「本所おけら長屋 十九」、十九巻も続いているおけら長屋は、まず気軽に読める、江戸風俗が解る、長屋の住人それぞれの人情味が解る、そんな物語だ。今回も待ったなしに笑いと涙を誘う、中でも三祐のお英と松吉の祝言まで到達はてはて次巻はどうなることやら楽しみだ。
藤原伊織著「テロリストのパラソル」、70年代大学紛争全盛の時代に全共闘を戦った主人公菊池と親友桑野、その後の人生を辿りながら物語は進展してゆく。アル中の菊池は当時の犯罪歴から島野と名を変え場末で小さなバーでバーテンをして孤高を凌いでいた。ある日何時もの日課で新宿中央公園に散歩に出掛け、バンダン事件に遭遇そして巻き込まれ死んだ中にかっての恋人の名前があった。バーを閉め一人犯人に立ち向かう。様々な過去を背負い生きてゆく人たちの孤独と携える懊悩プロットといい背景といい計算されたシュツエーションに感動。乱歩賞受賞作品は実に面白い。
野沢尚著「破線のマリス」、著名なテレビ局の報道番組編集マンである離婚経験にある女性、遠藤瑤子が手掛けた作品というか報道はテレビ局の番組の視聴率を確実に稼いでいた。ある郵政官僚だという男から渡された一本のテープを基に事件はあらぬ方向へと進展して行く一女性の日常と非日常を巧みに織り交ぜたプロットは読者を離さない。また最後tのどんでん返し的結末も爽快だ。
首藤瓜於著「脳男」、不遇で障害児として生を受けた男の人生を米国から帰国した精神科の医師鷲谷真梨子が賢明に過去を調査し男の人生を解き明かそうとする物語だ。着眼点も素晴らしいそして男に纏わる数多の関連人物を描き出しミステリーとして完結していくプロットは読者を離さない。乱歩賞受賞作品だ。
望月諒子著「殺人者」、フリーのジャーナリストである木部美智子は、上司から取材対象としてしめされたのは関西での殺人事件の取材だった。現地に飛んだ木部は関係する様々な人間に取材し次第に核心に迫ってきていた。それは15年前の事件が切っ掛けで連続殺人事件が起きていると判明、殺害された被害者は高校の同期生でありまた彼らと接点のある被害者だった。プロットが実に上手く出来ていてかつ伏線もよく練られていて本屋で立ち読みで購入した割には正解だった。
クレオ・コイル著「名探偵のコーヒーのいれ方」、100年も続くニューヨークの老舗コーヒーショプの経営者として指名されたクレアはある日従業員でマネージャーのアナベルが階段から足を踏み外し転落し意識不明の重傷を負った。警察では事故として処理したが、クレアは自分で調査しようと決意した。そして競争相手の一味の犯罪だと判明した。コーヒーの香りとミステリーという相乗効果を狙ったライトノベルだ。

日曜日, 10月 30, 2022

真保裕一著「連鎖」、検疫所のGメンである羽川は、友人でジャーナリストである竹脇が車ごと海に飛び込んで救出され意識不明の重体だと聞かされ、果たして竹脇は何を探っていたのかを知りたいと竹脇の痕跡を辿ることにした。そこで調査に乗り出した結果、商事会社や卸売り業者、運送業者さらに赤崎組といったヤクザが複雑に絡み合い貿易でコンテナを利用した不正取引の実態が明るみに出た。そして最後のどんでん返しが検疫所の情報を流出していたのは所の課長であったことが判明。検疫所というミステリーの舞台として珍しい設定で伏線の複雑さ最後のどんでん返しを含むプロットは乱歩賞作品に相応しい。
川田弥一郎著「白く長い廊下」、病院勤務の外科医窪島典之は、手術を終え病棟に行く途中で息を詰まらせ死亡した患者に死亡の原因に不信を抱き独自に調査することにした。そして死亡した患者の妻から訴えられ総額一億円もの賠償を請求され草角会長らも腐心して支払いに応じたのであった。調査は薬剤師のちずると共に二人で行う過程で発見したのは看護師の榊田十和子の存在だった、患者の運搬途中で患者に注入している管の栓を捜査して死にいたる措置をしたことが分かった。患者の妻良美と榊田は繋がっていたのだ、作家が医師だけに専門用語や病院内の事情も交えリアリティに富んだミステリーだ。
赤井三尋著「翳りゆく夏」、乱歩賞受賞作品である。嬰児誘拐をテーマに大手新聞社関わる複雑な伏線を用意しプロットを進めてゆくベーじをくる手を止めさせない迫力があり圧巻だった。最後のどんでん返しも強力で圧巻だ。人生の機微も盛り込みミステリーとしても文学作品としても優秀だ。
文学部教授のニッキイと群検事がおりなす様々な事件を教授は卓越した頭脳で解決してゆく、軽快な文章とともに団欒中のひと時を至福してくれる名著である。ホームズと違って直接捜査に加わらず群検事の話からその卓抜な頭脳で解決してしまう安楽椅子探偵と故障すべき名探偵なのである。ハリイ・ケメルマン著「九マイルは遠すぎる」、
新野剛志著「八月のマルクス」、元お笑い芸人だった笠原は今はスキャンダルの後芸能界を去り、家賃収入を当てに細々と暮らしていた、ある日訪ねて来た相方だった立川は末期がんだと笠原に告げ数日後に失踪した。笠原は古巣の芸能プロの屋部から立川に関わる人物達と次々と接触していき、発見したのは5年前に若手芸人グルーチョ・マサのロケ中の突然死だった。マサの死に絡む両親の元へ未だに寂寥に苛まれ夫婦で苦悶に強いられ復讐に燃える両親の姿を目にしたマサに関わる人物が殺害されていた。芸人社会の殺人をテーマに複雑な伏線を用意してプロットが完結していく面白さこれぞ乱歩賞受賞作品に相応しい。
桐野夏生著「顔に降りかかる雨」、 友人でルポライターの燿子が失踪したしかもヤクザ紛いの会社の金1億円とともに、ミロは勝手に捜査に乗り出した。恋人の成瀬と彼を取り巻く人物燿子を取り巻く人物としかし杳として彼女の行方は不明のままだ。ベルリンの壁崩壊の東ドイツを舞台にしたネオナチが絡む殺人事件、密かに潜航する日本の裏社会、様々な伏線を絡ませプロットを確実な展開にそして最後にどんでん返しが待っていた、乱歩賞受賞作品に相応しい作品だ。
会社の同僚で元愛人関係にあった木島の妻が、自宅マンションで殺害された、恨みを持つ者として澟子は容疑者リストに掲載された。保安士と働く澟子は意を決し捜査に乗り出した。流通業界、大手スーパーやコンビニ業界の裏側から実に良く調査しプロットを固めている、そこに現代社会での男女の悲哀を混ぜさらに犯人の過去の境遇を重ね物語の厚みを増し終盤へ乱歩賞受賞作品だ。 渡辺容子著「左手に告げるなかれ」、
中嶋博行著「検察捜査」、 著名な弁護士が拷問の末殺害された、担当検事は若干28歳の岩崎検事及び伊藤事務官になった。色々と捜査を進めて行く中で殺害された西垣弁護士を取り巻く状況が少しづつ判明しそれは検察をも引き込んだ体制云々と言った際どいものだった。江戸川乱歩賞受賞作品でるだけに、読み応えがあり検察官を知る上で面白い。