金曜日, 12月 29, 2023

ギョーム・ミュッソ著「人生は小説」、不思議なミステリーと、最後まで一直線的に結末へ突進していく読者をドキドキさせる感じがまるでないミステリーだ。本書の中盤では何かミステリーから逸脱し話がどこへ行くのだろうか?と不安になる。最後はすべてが明らかになった時に著者のどんでん返し的結末がまっていた。著者独特な異端ミステリーと思える出来栄え。
アガサクリスティ著「秘密組織」、本書はクリスティ作家としての第二作目作品だと、1910年代つまり第一次世界大戦前後のロンドンを舞台にしたミステリー、プロットを始め伏線としては当時の政治状況を随所に取り入れ広範な知識を余す事無く描いている。トミーとタペンスという相性のいい二人が冒険に挑み数々の困難を克服して犯人迫る、ドキドキしながら現在でも読めるミステリー教科書のようだ。
五十嵐律人著「法廷遊戯」、作者は法のプロ即ち弁護士であるという。家庭に恵まれず施設で育った二人正義と美鈴が卒園後に法学部を目指して大学へと、そこの大学での超優秀な馨という同期生と遭遇し三人の複雑な関係が成立し苦悩する。そして馨の父親悟が刑務所で自殺をしたことで、息子である馨の衝撃的な計画を回り遂に裁判となった、この時正義は既に駆け出しの弁護士だった、美鈴の意図馨の計画そして正義の決断とどんでん返し的結末がまっていた。
笹沢佐保著「他殺岬」、誘拐を題材にしたミステリーとしては、想像もつかない最後の結末だ。敏腕のルポライター天知昌二郎の一人息子が誘拐され犯人から五日後の午後9時に息子を殺害するという連絡が入った。これに苦悩する天知は出版社の編集長の田部井と相談して警察に連絡することにした。しかし当初天知の目論んだ犯人環日出夫を納得させる結果を得られなく刻々と時間は過ぎて焦りだけが胸を圧迫する日々だ。プロットといい伏線も良く考えられどんでん返し的結末が最高に面白い。
ロス・トーマス著「愚者の街 下」、 メキシコ湾を望む小さな街スワンカートン、ルシファ・ダイは裏のジン脈を最大限活用して潜り込みとうとう現市長を追い出しネサセリーを市長に据え自分は市長の次席に納まりスワンカートンに巣食う悪漢どもの締め出しにかかった。このミステリーは冗長性を伴い前後の脈絡を掴む要するにジックリ読む必要があると考えた。
ロス・トーマス著「愚者の街 上」、 第二次世界大戦前後の中国香港上海を舞台に諜報員として活動するダイと彼を取り巻く虚々実々の諜報選が繰り広げて遂にある街を腐らせるという珍しい任務に就くこと奈なった。秘密組織セクション2という組織を指揮する大佐の家に寝泊まりしているうちに大佐の一人娘と結婚したが妻を殺害されてしまう。
笹沢佐保著「アリバイの唄」、夜明日出夫シリーズの傑作ミステリーだ。プロットはよく練られていてアリバイ崩しの面白さを堪能できるが、TVドラマの渡瀬恒彦の顔を思い出しながら読んだ。二重にも三重に重なるトリックを夜明がその謎を解きアリバイを崩してゆく面白さに作者の力量を感じぜずにはいられない。
笹沢佐保著「シェイクスピアの誘拐」、 8篇を含む短編集である。正に短編としてこうあるべきという出来栄えであり、読んでいて楽しいし予想のつかない結末をつい期待してしまう内容だ。松本清張と同じく女性の心理描写あるいは女性という人間を深く理解していると思う。ほとんどが女性が主人公になっている短編である。
笹沢佐保著「暗い傾斜」、 何と言っても後半のドンデン返しに感動、プロットといい伏線の考えらた細密な状況設定は感動すべきな描写である。人間の根源的な生に対する作者の視点、女性の理解の深さ正に松本清張を彷彿させる展開にいたく感銘した次第である。
笹沢佐保著「後ろ姿の聖像」、巧みなプロットとしっかりとした伏線で描く著者の犯人当ては、読者を悩ませ欺く。殺人を犯し八年間の刑期を終え出所した沖圭一郎は、北海道にいる友人に今後の相談ということで話をしたが断られた、最愛の人アキは死亡し美貌の妹マリとの結婚の夢も見事に瓦解した。そして電車に飛び込み自殺、疑念を深めた経堂署の二人の刑事が必死に捜査する、そして追い詰めた。面白いし傑作だ。
笹沢佐保著「泡の女」、小学校長の父が大洗海岸近くの松林で縊死したと連絡があった、木塚奈津子はその不自然な死に疑問を抱いた、夫の達也が犯人として勾留された。夏子は呆然としんがらも自分で父の縊死を証明して夫達也を釈放するという困難な道を選択せざるを得ない状況に追い込まれ。父の足跡を探り続け遂に昔の教え子との不倫の末に妊娠させたことと掴んだ。その女、千里は夏子の夫達也とも関係を持ち夏子を殺害すべく大洗に誘った。非常に考えられたプロットと伏線で好著であった。
笹沢佐保著「結婚て何さ」、真弓と三枝子は同時に勤めている会社を辞めて鬱憤晴らしに有り金をはたいて飲み屋に出掛けしこたま飲んだ、その場で男と知り合いまた飲んで滔々男が進める旅館に三人で宿泊する羽目になった。翌日男が死んでいた、ここから始まるミステリー小気味よく読者を翻弄して週末へ交換殺人というトリックを滔々看破できなかった。プロットといい伏線といい上手くまとまったミステリーには感銘を受ける。
誉田哲也著「背中の蜘蛛」、警察ミステリーで長編である。第一部、二部、三部と続きそれぞれテーマは違い犯行も勿論犯人も違う、だが捜査する側警察官であり生身の人間警察内部での人間関係そして警察官としての個人そして一国民としての意識にはそれぞれ見解は分かれる。そんな中で人間としての警察官を見牛うことなく追及する著者の真摯な人間に対する愛情を深く感じぜずにはいられない、傑作だ。
大藪春彦著「青春は屍を超えて」、戦後の復興期の目標も無くどこに突き進んだらよいのか混迷の時代に生きる若者の生態を描いた8篇の短編集である。著者の拳銃に対する造詣の深さに 感心するその拳銃を若者が使用して犯罪を犯してゆく不条理な過程を真摯に追及してゆく、当時の世相も垣間見えて懐かしく読みました
アン・クリーヴス著「哀惜」、彼女の作品はぺレス警部シリーズを読んでいたが、今回マシュー・ベン警部の物語は初めてである。イギリス南西部のとある町の警部であるマシュが海岸で殺害さ有れた男サイモンについて捜査を開始、依然として暗中模索の中に捜査班はいるだけだ。町の複合施設に通うそれぞれの人たちの人間描写を丁寧に描きながら事件の関連性を手繰り寄せていく。作者の周到なプロットそして人間描写が素晴らしい最後に判明する犯人は意外な人物だった。

水曜日, 11月 29, 2023

早瀬耕著「未必のマクベス」、香港、マカオそしてサイゴンとクアラルンプールといった東南アジアを股にかけ活躍する男、中井優一は某IT企業の営業マンだ。ICチップ入りのカードの拡販が想を来たし遂に支社長に就任する。香港に会社を置くこの会社は関連会社との軋轢に加え本社印刷会社の取締役やからプレッシャーを受け右往左往する展開だ。副社長を殺害して難局を乗り越え、以後順調かと思われるも次々と関連会社の社員が殺害された。しかし優一にとって高校時代に思い描いた鍋島という女性を一貫して20年間も恋愛していたこの一貫性については並みの恋愛小説どころではない。文章も平易で頁を繰る手がとまらない。
中山七里著「能面検事」、大阪地検の検事は喜怒哀楽に始まり一切顔色を変えず只管自分の責任を全うする検察官としての業務を淡々とこなしていくそんな検察官不破俊太郎の下で検察事務官として働くことになった惣領美晴が殺人事件を独自のルートで追い詰め起訴に持ち込んで行く二人の確執を中心に能面検事の素顔を美晴によって徐々に暴いていくのも面白い。その後府警本部で起こった捜査資料の大量紛失事件が勃発この事件で不破は一人で突き止め府警は恐怖のどん底に陥りはては検事の銃撃を伴うまでになった。ここでも不破の手段は絶妙で犯人を特定する。
藤崎翔著「逆転美人」、小さい頃から可愛いと皆に言われた少女は大人になって益々美人となり、小学生中学生高校生といわず陰湿な虐めを受けた優子は居たたまれなくなり高校を中退しキャバクラへそこで知り合った不動産屋の男と遂に結婚し一児を設けた。そして二人は保険金殺人を共謀して彼女の祖父そして前夫の子供香織に重症を負わせ歩行困難にそんな折彼女の勉強を見てくれている教師に共謀殺人を感ずかれ教師も殺害と殺人を重ねた。その後美人故辛酸を舐めた優子の反省を手記という形で出版しないかと持ち掛けられ承諾した、前半はこんな推移で物語は進行し後半は実際に手記を書いたのは香織であるという事実を明白にし香織の殺人への暴露が始まる。この特異な形態のミステリーには唖然とするしかない。実に面白い。
田島斗志之著「黒百合」、 戦後の混乱期に夏休み東京から神戸は六甲の別荘にやって来た少年進は友達として2人と知り合い仄かな恋心抱きながら夏休みを過ごす。戦前のドイツでの旅行に付き添った時のヒトラーに支配されたドイツの情景やらが生々しく描かれている、そこで知り合った二十歳の女性一人旅だというそれが戦後に思わぬ邂逅につながる。ここに描かれてる翁は宝塚歌劇団の創始者であるという、六甲の山と森の中で静かに繰り広げられる幼い恋愛感情そして殺人が挟まり一挙にミステリーになってゆく。
倉知淳著「過ぎ行く風はみどり色」、例によって猫丸先輩が登場する話、しかも今回は文庫本で600頁近い長編ミステリーなのである。世田谷の豪邸での一室で隠居した老人が不審死を遂げた。事件から数日後に叔父が連れて来た霊媒師と言われた穴山、彼は後日降霊会を開くという事で当日又もや殺人事件が発生当の霊媒師が殺害された。そして最後になって方城家の家政婦のフミが犯人と特定される男を毒を持って殺害と算段重ねでプロットを組み立て冗長性はあるが上手く書き込んでいて面白かった。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 八」、遂に最終巻。ロシアのバルチック艦隊との会戦となり、双方激しく攻防が実施され天才戦略家の秋山真之の指揮のもと片やロジェストヴェンスキー提督率いるバルチック艦隊は迷走し戦艦スワロフは海底に沈み助け出されたロジェストヴェンスキーは負傷し佐世保へと送られた。ロシア軍の完敗だった、欧米各国は脅威の眼で日本軍の勝利に目を向けた。こうして日露戦争戦争は終結し明治の時代の終焉となった。日本の歴史の一時期を二人のまた子規を含めた三人の人生を重ね合わせ約10年という歳月を賭けた時代を著者の執拗な調査と歴史観による大作だった。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 七」、泰天の会戦は激烈を極め、日本側は右往左往し危うく退却することに、しかし救われたのはロシア軍を率いる提督クロポトキンの性格による臆病風による退却に次ぐ退却によって日本軍はまさに救われた。しかし著者の執拗にして素晴らしい調査そして歴史を達観する能力には驚きを隠せない。その頃ロシア軍のバルチック艦隊は一路極東に向かって進軍していたが、この艦隊の総司令官であるロジェストヴェンスキーは奇妙な性格で日本海での決戦を前にして躊躇しその戦略すら下士官やら水平までも不信がられていた。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 六」、辛くも旅順で勝利した日本軍はまさにどん底の闘いであった、借金の上で戦争の装備弾薬を調達し戦地に回すという危ない橋を渡りながら旅順を陥落させたことは日本陸軍にとって朗報であった。ロシア軍はその後も中国清に着々と領土を拡大し遂に泰天に強大な城を築き日本軍との会戦の準備をしてきている、戦力は圧倒的にロシア軍が有利で日本の大本営は苦肉の策で左右展開し攻撃し動揺するロシア軍の中央突破という戦策を考えていた。海上ではロシアのバルチック艦隊はいよいよマダガスカル島から石炭及び食糧の補給を最大限実施して遂に極東に向けて錨をあげた。
倉知淳著「幻獣遁走曲」、5編の短編集である。猫丸先輩と呼称される永遠のアルバイターであり、頭脳明晰にしてあらゆる問題を解決する懐の深さを持つ作者が創造した名探偵集である。猫丸と取り囲む人間達を作者は悪人でなく、通常の普通の人間として描きそこに何ら悪の匂いを感じさせない優しさがある。対して猫丸は平等に接し決して非難するこなく事件を解決する何かこの5編すべてに優しさを感じるのである。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 五」、乃木希典の無能ぶりにあきれ果てた陸軍大将の児玉は、遂に自ら旅順に行く決心をして戦略と共に自ら指揮して203高知を手中にすべく奮闘し奪還した。この奪還は予想外の効果を齎し正に起死回生の逆転劇であった。一望できる旅順湾に停泊中の軍艦を強大な大砲を発狂喜させた。その頃バルチック艦隊は極東に向け南下を続けたが旅順に停泊の艦隊と合同で戦うべき戦艦が絶滅したことを知ると意気消沈し配送まで考えるようになっていた。

日曜日, 10月 29, 2023

大沢在昌著「ダブル・トラップ」、元優秀な諜報員として働いてき今は高級レストランのオーナーとして過ごしている加賀哲の下に一本のテープが送られてきた、そのテープは勝手の同僚である牧野からだった、助けてくれというメッセージだった。急遽宇和島に飛んだ加賀は牧野と合うことはできず工作員のと格闘を余儀なくされズルズルと諜報機関との接触を余儀なくされた。松宮貿易という秘密諜報機関そこに群がる秘密警察海外のテロ組織そして公安、これらの標的にされつつ独自に運命を切り開く加賀の勇気と信念を描いた作品だ。
小泉喜美子著「弁護側の証人」、ミミーローイ彼女はストリッパーであったが、彼氏の彼は大会社の富豪の御曹司だった。結婚を機に彼の自宅へと居を構えそこの住人となった。しかしある日その社長つまり祖父が何者かに机上の文鎮で殴打され殺害され容疑は祖父の部屋へ出入りを目撃された若妻に嫌疑かかり逮捕され裁判となった。美人妻を弁護した清家弁護士の必死の弁護により無実を勝ち取り、夫の杉彦が逮捕されるという事件だった。どんでん返し的結末が甘く何故か頁を繰る手が進まない。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 四」、 貧乏小国日本は日露戦争において、弾薬不足に兵器不足とギリギリの戦での戦いに終始しており、打開すべく道はとざされているかに見えた。精神論で戦うこれが日本の現実だった。海軍は旅順を攻略してくれる陸軍を頼みに外洋で碇泊している、その陸軍の隊を率いるのは乃木希典は如何にしても無能で日本兵をやたらと殺させ大本営の意見も聞かず戦況も偵察せず無益な戦闘を繰り広げている。ロシアのバルチック艦隊が近づきつつある現状である。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 三」、極東の弱小貧乏国家は維新後も藩閥の名残を残しながら海洋国家としての歩みを続け、艦船を海外に発注して着実に帝国主義の路を歩んでいた。そして松山で療養中の正岡子規は日に日に体力の衰えを見せ、遂に帰らぬ人となった。極東を回り列強の各国の駆け引きが盛んになり清国及び朝鮮を廻る動きが活発になり中でもロシアは露骨に侵略の意図を示し日本にとってもこの動静は少なからずロシアに脅威し遂に日露戦争の会戦となり秋山兄妹もそれぞれ戦地に赴いた。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 二」、 日清戦争に勝利した日本は、軍備拡張を目指し中でも軍艦を建造といっても外国への発注であるが整備に本腰を入れ真之は海外の海軍及び造船所を具に観察しながら海戦の戦略を計画していた。好古は35歳になり結婚して子供を設けていた、子規は喀血を繰り返し松山での床に伏していたが精力的に俳句及び短歌について論文を書き発表し続けた。明治期の帝国主義国の清を中心とした列強の動静に著者は可成り詳しく調査して著者独自の歴史観を展開して面白く読んだ。
司馬遼太郎著「坂の上の雲 一」、大政奉還を経て無血革命による明治という時代を生きた伊予松山の秋山兄妹兄は好古で弟は真之そして正岡子規は兄妹にとって親友だった。兄妹とも頭脳明晰で成績も良く兄は陸軍へ弟は海軍へと歩んだ。当時正岡子規は喀血を度々繰り返し医師からは肺結核という当時としては不治の病に罹っていて瀕死の重傷で実家の四畳の間に床へ伏していた。好古はフランスへ留学騎兵術を学ぶため真之は漸く英国に発注した軍艦に乗船し技術を学び始めていた。
加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス 5」、退職警官が居住する通称スメゾン・ド・ポリスには5人元刑事やら科警研出の人物その5人と柳町北署の牧野ひより刑事とのタッグでこれまで事件を解決してきていた。今回は短編4編という形で提供されています、実に様々なネタを考えて作り出す作者の能力というか想像力に感心するばかりです。今回はメゾン・ド・ポリスの成り立ちが、伊達によって明らかにされ人間味のある人生を達観した者の温かさがそこにありました。
加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス 4」、退職警官が居住する通称スメゾン・ド・ポリスには5人元刑事やら科警研出の人物その5人と柳町北署の牧野ひより刑事とのタッグでこれまで事件を解決してきていた。今回は短編5編という形で提供されています、実に様々なネタを考えて作り出す作者の能力というか想像力に感心するばかりです。退職刑事の中にどっぷりと漬かりこんだ牧野ひよりの成長する姿が微笑ましいかぎりです。
加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス 3」、 退職警官が居住する通称スメゾン・ド・ポリスには5人元刑事やら科警研出の人物その5人と柳町北署の牧野ひより刑事とのタッグでこれまで事件を解決してきていた。今回は爆弾魔との対決3作目にして初めての長編だ。病院やら公園と囮の偽爆弾を仕掛ける犯人を捜査しているのはひよりと退職刑事だ、そして挽弾魔の味とはスメゾン・ド・ポリスの一人迫田の息子が勤務する水族館の建設だった、環境破壊と生物を苦しめる事業について批判的な集団を摘発する。そして間一髪ひよりは命拾いする、テンポのある展開に思わず引き込まれあっという間に読了。
マイクル・コナリー著「バッドラックムーン 下」、ホテルの警備主任グリマルディの依頼を受けたジャック・カーチは執拗にキャシーを追跡し彼女の元の相棒であり異父兄にあたるレオ・レンフロを血祭りにあげた。そしてカーチは刑務所でキャシーが生んだ娘(養女となっている)ジョデーを拉致誘拐し車でラスベガスに向かいホテルのスウィートに投宿した、グリマルディと連絡を取りながらキャシー来るのをホテルの部屋でジョディと一緒に待ち二人を自殺に見せかけて殺害する予定だ、キャシーは天井裏から部屋に侵入しジョディを奪い逃走、そしてカーチはグリマルディ一味まんまと騙され危うく殺されるところ逆に彼ら一味を銃殺してのけた、無事ラスベガスを脱出してジョディを送り届け走り去った。
加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス 2」、退職刑事のシェアハウス通称メゾン・ド・ポリスには5人の元刑事やら科捜研にいた分析官が居住し所轄の牧野ひより刑事と共に様々な事件を解決シリーズで今回は2巻目である。犯罪の設定やらプロットといい実に味付けが微妙で一気読みの感があり楽しく読むことができる。窮地に陥るひよりを退職刑事達つまり人生の先輩が導きながらひよりの成長を見守る構図となっている。悪に対して敢然と戦う姿勢にひよりも全力投球で立ち向かう。
マイクル・コナリー著「バッドラックムーン 上」、窃盗の罪で刑務所に5年間服役し仮釈放中のキャシーは、再び強盗を計画しロサンジェルスからラスベガスへと、カジノに潜入し周到に用意した様々な機器を持ち込みある運搬人の宿泊する部屋に設置し自分は相向かいの部屋に投宿した。そして日付が変わり真夜中を過ぎ午前3時近く眠っているターゲットの部屋に侵入5万ドルの現金を掴みずらかろうとしたところで眠っていたターゲットが目を覚ます瞬間9ミリ口径の拳銃で射殺し早々にホテルをでてボクスターに乗りずらかった。ホテルの警備支配人に現金を取り返すべく依頼された私立探偵のカーチは察策捜索に動き出し、窃盗した人物を特定した。
加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス」、柳町北署の刑事槙野ひよりと退職警官が住むシェアハウスでメゾン・ド・ポリスに住む5人の叔父さん達と協力して事件の捜査をし解決に導くそんな物語だ。様々な特技を持ちそれを発揮し捜査に生かす事件も実に気の利いたもので、本当に楽しく読める本である。
池波正太郎著「雲霧仁左衛門 後編」、雲霧仁左衛門の最後の盗目を前に江戸での著名菓子補を襲う計画を建てた雲霧一味は仲間配下を江戸に参集させ火付盗賊改との熾烈な情報合戦を展開ついに雲霧一味の陰謀を解明した火付盗賊改に暴かれた。この間、虚々実々の展開は読者を翻弄して楽しくページを繰らせてくれる迫力に圧倒された。そんな展開の中で仁左衛門とお千代との恋愛初め配下を思う仁左衛門の器量の深さ盗賊改めの武士の間の信頼関係等人間を描くことを忘れない著者に人間の深い洞察には感服やはりTVドラマも面白いが原作にも感動。
畠山健二著「本所おけら長屋 外伝」、20巻を読了して、本屋で見かけたこの書つまり外伝も素晴らしい仕上がりに感服、本所おけら長屋の住人たちの人情と優しさ人間はこうじゃなきゃという人生の指標がいたるところに潜みつくづく著者の筆力に拍手を送ってしまいます。

木曜日, 9月 28, 2023

池波正太郎著「雲霧仁左衛門 前編」、雲霧仁左衛門はNHKのドラマを見て面白かったので原作を読んでみようかと思った次第である。読んでみてこれはドラマが数段上で脚本家力量をまざまざと感じだせてくれた。江戸で盗人一味として知られた雲切一味が次の標的としたのは尾州名古屋の地であった、そこで暗躍していたのは同じ稼業の一味暁だった。雲切配下の寝返り知った仁左衛門は突然松屋を襲い五千両の略奪にまんまと成功した、一方江戸より長屋の地に出向した火付け盗賊改め一行は雲霧仁左衛門一味を捉えるべく執念を燃やし雲切一味に近ずきつつあった。
東野圭吾著「祈りの幕が下りる時」、 日本橋署の捜査一課加賀恭一郎が体験した事件は、過去彼に係わる事だった。実の母親の死それは彼女が暮らす仙台の出来事だった。彼女の知人関係は実に悲惨な人生を抱え苦しんでいる過去そして現在だった。そこに横たわるのは貧困だった、何とか乗り越えようと必死の努力の先にあるのはつかの間の安寧と幸福だった、そして過去の出来事の復讐が始まり敢え無くその軍門に下った。人生とは格も悲惨で何と悲しいことなのか?著者のプロットは読者のページを繰らせる手を止めず最後まで最後のページまで一気呵成に進める、幸著である。
東野圭吾著「新参者」、離婚してこれからという40代の女性がマンションで考察された。彼女の交際範囲また離婚の原因と加賀刑事は詳細な捜査を開始、日本橋署の刑事として些細な疑問にも足で稼ぐ彼独特な捜査手法を駆使し犯人を追い詰めて行く捜査手法だ。一人の女性の殺人事件を契機に辛抱強く捜査を続ける加賀の姿勢を著者はプロットは単純ながら描きとうすことで読者の関心を最大限引き出した感がある。
森博嗣著[数奇にして模型]、西之園萌絵と大学助教授の犀川創平シリーズの長編ミステリーだ。N工大の実験棟で女性が殺害された、同じ時刻公会堂で実施された模型の交換会の会場の片隅で首のない死体が発見された。萌絵と犀川は様々な状況下で翻弄されながら事件の真相に近づいていく、一人の大学生の夢と妄想を体現すべく仕組まれたものだった。プロットは凝ったものではなく、伏線を豊富に散りばめた体裁でぐんぐんと読者を引き込んでいく筆力は著者の持つ類を見ない能力だ。
東野圭吾著「卒業」、卒業を前にした学生が体験する密室殺人事件が発生、加賀と沙都子は協力して事件について調査を開始、女子学生同士の確執と男子学生との恋愛それらが混ざり合い事件は複雑な様相を呈し解決は困難を極める。著者の殺人現場の設定が学校から離れた今回のように茶会の席で毒を飲まされ殺害される又はアパートで一人手首を切って自殺と青春ミステリーにありがちな安易な設定を避け、絡み合う伏線とミステリーとして仕上がりに納得。
西之園萌絵と大学助教授犀川創平シリーズの一冊で、中でも文庫本で860頁を超える大作である。著者の小気味良い文体と相まって快適に読書ができるのは有難い。長崎のある場所に建設されたユーロパークはヨーロッパの建築を模倣して建てられた壮大なドリームアイランドでありこの施設の中にナノクラフトというIT企業の本社及び研究所も併設されている。萌絵はこのナノクラフトに出資している関係で社長の塙とは面識がありこの施設に招待を受け現地に友人二人と赴いた。しかしそこで見たのは殺人事件だった。あとから参上した犀川と共に事件解明に向けて乗り出すが、施設そのものはVR等最新のテクノロジーで覆われ実態が中々掴めない、その施設に住まうという真賀田四季という天才科学者と出会う、現代版魑魅魍魎の世界が展開され思わぬ結果となった。森博嗣著[有限と微小のパン]、
東野圭吾著「どちらかが彼女を殺した」、愛知県豊橋署の交通課に勤務する👮警察官和泉の妹園子は東京で一人暮らし、ある日園子から不吉と思われる電話を受け心配した兄の康正lは急遽妹を訪ね発見したのは妹の死体だった。勿論康正は犯人特定へ独自の捜査を行い必ず捕まえることを妹に誓う。現場は練馬警察署管内であり当然加賀恭一郎刑事が捜査に乗り出す。物証が中々集まらず捜査は暗中模索の状態であり特定が困難とされた。
東野圭吾著「赤い指」、公園のトイレで女の子死体が発見されたその死体は近所に住む前原家の長男によって殺害されたものだった。前原昭夫は妻八重子と相談し痴呆が進んでいる母親にその責任つまり犯人として警察に連絡する案を実行した、妻と長男と3人で口裏を合わせ万事抜かりなく行くと思ったが、思わぬところで水が漏れた。家族内での緊張感が伝わり面白かった、加賀恭一郎刑事のしたたかな捜査に完敗だ。
東野圭吾著「私が彼を殺した」、高名な作家兼映画製作という男が、結婚式場バージンロードを歩いている途中で倒れそのまま息をひきとたそれは新郎が常日頃服用していた鼻炎薬そのカプセルの中に毒薬が仕込まれていたと判明した。彼穂高は女性との確執がとかく多く冷淡で、その彼に轢かれた神林美和子はよりによって結婚することになり、兄の貴弘がっかりさせる。緻密に練られたプロット、愛憎、兄妹間の愛情、怨嗟と人間の持つ暗い裏を描写しながらミステリーと仕立てていく筆力はさすがだ。
東野圭吾著「麒麟の翼」、一人の中学生の父親が日本橋近辺でナイフで刺され殺害された、そして現場近くでいた若い男が殺害された男の金品を盗み自動車に接触して亡くなった。事件としては単純な構造だったが、加賀恭一郎は不信に思い捜査を続行し殺害された男の足取りを掴み、そこから事件の全貌へと迫り遂に犯人を特定するという、警察ミステリーの王道行く物語だった。