木曜日, 9月 29, 2022

アンソニー・ホロヴィッツ著「モリアーティ」、非常に巧みなプロットで面白い。ホロヴィッツの作品は何冊か読んでいるが、今回の書はスコットランドヤードのジョーンズ警部、アメリカのピンカートン探偵社の雇われ人チェイスが殺人事件を追う、しかもアメリカでも評判の大悪党とされるディバルーなる人物がイギリスに乗り込んだという設定だ。後半にどんでん返しが待っていた。実はチェイスなる人物はイギリスでも有名なホームズの宿敵モリアーティだったという落ちだ。
宮部みゆき著「楽園 下」、等が描いた火事で焼けた場所に横たわる灰色の女の子、それは紛れもなく土居崎家の茜だったのだ、滋子は各方面の手掛かりから手繰り寄せ真相究明の路を歩む。それは結果的には家族あるいは人間の悲しい側面でしかなかった。日常を丁寧に描く作者の器量はとてつもなく凄い。
宮部みゆき著「楽園 上」、フリーライターの前畑滋子が興味を持ったのは、事故死した荻谷等という少年についてだった、彼は幻視、透視能力を持ったと思わずにはいられない少年だった。少年について調査を進める中で家庭、学校環境、友人関係と進めていくうち、やはり幻視能力があるという信念に変わってきた。
ヴァン・ダイン著「僧正殺人事件」、ある教授宅を中心に次々と発生する連続札事件、検事マーカムの要請でファイロ・ヴァンスそして部長刑事ヒースが捜査に乗り出した。マザーグースの詩を真似て起こる殺人事件、捜査は一向に進展なく手掛かりも掴めない状況が続く、そんな中でも検討つけたチェスの名人が自殺を遂げた、衝撃を受けた捜査班は沈黙しかない状態だった。しかしヴァンスは卓越した推理で滔々犯人を特定した、この書のプロットは完璧といっていい、そして伏線も完璧で最後まで繰らせる力があり古典的名著として歴史に残るだろう。
宮部みゆき著「悲嘆の門 下」、結局連続切断魔として殺害された被害者は個々の事由により殺害されたのだと判明し、孝太郎そして都築は協力して殺害犯を特定し逮捕に漕ぎ着けた。勿論ガラの透視能力を借りて。そして幸太郎は、ガラと共に漆黒の闇に向かって歩進め遂に悲嘆の門到着そこで見たものは全てがフェイクでガラもまた想豫したフェイクだった。プロットといい著者のイマジネーションの素晴らしさに感心しきりだ。
宮部みゆき著「悲嘆の門 中」、幸太郎のバイト先クマーの女社長が殺害された、彼は戦士ガラの力を借りて犯人を特定してガラにより制裁を実行した。しかし依然として全国で展開した連続殺人事件切断魔シリアルキラーの正体を掴めない。物語はオカルト的ホラーの様相みせその中にミステリーが詰め込められいく、ガラとの拘わりそして謎が一層深く浸透してゆく中巻だった。
宮部みゆき著「悲嘆の門 上」、三島幸太郎は友人を通してサイバーパトロールを専門にしている会社にバイトで務めた、ある日突然同僚の森永が行方不明になって調査に乗り出した。その頃新宿に建つ廃墟ビルの屋上に置かれたガーゴイル絡みで不審な動きが町内会で話題となり元刑事の都築も調査に乗り出す、新宿の廃ビル周辺でリヤカーを引き資源ごみを蒐集していた老人がゆくえにもなっている。
井上夢人著「ダレカガナカニイル・・・」、作者は、岡島二人の片割れで二人が別れて井上のソロデビュウー作という事らしい、しかも文庫で700頁もあるという超大作である。内容はモダンSFそして恋愛小説さらに加えてミステリー小説というコングロマリット的小説である。ある警備保障会社に勤める西村の脳に女の意識が突然彼の心の中に突入し、彼は混乱しその原因を究明し意識からその得体の知れない女を追い出そうと努力する。その過程は山梨県に新興宗教まがいの建物を警備する西村らの仕事中の出来事だと判明そこからの展開はこの作品に魅了されぱなっしだ。
ヴァン・ダイン著「グリーン家殺人事件」、大金持ちの邸宅グリーン家には、当主は既に他界しその妻は中風で臥せっている、息子二人と女性が二人そして養女が一人と言った家族構成である。ある夜長女が何者かに射殺された、検事のマーカムと部長刑事のヒースそしてヴァンスが捜査に乗り出した。しかし次に長男のチェスターも射殺され事件は手掛かりさえも無く迷宮を彷徨い捜査の進展も期待できない状況だった。長男に続いて次男とグリーン家を構成する者たちが次々と殺害されてゆく。そしてヴァンスが発見したのは過去の書物犯罪便覧にあった事件の概要とそっくりだときずき事件の真相が明らかにされた。本書はミステリー小説傑作古典だ。
望月諒子著「腐葉土」、高級老人ホームで暮らす一人の老婆笹本弥生、彼女は戦前戦中戦後と希望を持って数々の死体を乗り越え悲惨さに屈することなく生き抜いた、闇市で品物を売り売春宿を経営し数十億円という金を稼いだ。そんな老女が何者かによって殺害された雑誌記者の木部道子、東都新聞の亜川と強調して事件の真相を追及する。複雑で的を得た伏線そしてシッカリした文章力、表現力を伴うプロット500頁を超える大作で傑作ミステリーだ。

土曜日, 8月 27, 2022

A・A・ミルン著「赤い館の秘密」、100年も前に書かれていて何故か乱歩が絶賛したという本書、しかも作者は有名な「クマのぷーさん」を書いた作家だという。ギリンガムは友人を訪ねた屋敷で偶々出くわした殺人事件、これを機に探偵となって事件を解決しようと決意し友人のペヴァリーをワトスン役に設え捜査を開始する。二人とも快活で好青年で二人の掛け合いも魅力を添えている。館の主人の兄彼は放蕩で金を無心にやってくる、そこで主人であるマークは一芝居を打って兄を退散させようと、しかし肝心の兄は殺害され主人のマークは失踪と謎は深まるばかりだ。結末はどんでん返しもなく今では在り来たりの結末となっている。
宮部みゆき著「パーフェクト・ブルー」、 著者自身デビューしてから初の長編ミステリーだ。高校野球界で屈指の投手の殺人事件を機に物語の展開が開始される。そこには大企業の製薬会社が絡みその不正を暴き強請る者、そしてマサという警察犬を引退して蓮見探偵事務所にいる探偵犬の語りで進行するミステリー小説、ひねりが利いていて面白い。結末は意外などんでん返し的だ。
クリムトと北斎の肉筆画を廻る画商、ブローカー投資家そして異国の大統領と虚々実々の汚い手口での攻防は美術界の根の深さを垣間見せる。ある国の文化に立脚した画、その絵を回り凄惨な駆け引きは根底から間違っている。人間の所有欲は果てしなく美術品に投入され悲劇が繰り返される。そんな攻防を製錬な冷めた目で著者はどこまでも見つめ人間の悪の起源を描き出す。望月諒子著「哄う北斎」、
朝倉卓弥著「四日間の奇蹟」、このミスの最優秀作品だという。作者は新人にも拘わらず卓越した文章力及び表現力、描写力を持つ作家であると選考委員が認める程だ。ウィーンの事故での遭遇は取り残された脳に障害がある少女千織と優秀なピアニストとして将来を嘱望されていた青年如月は指を切断し夢を絶たれたこうした二人が共に人生を生きることになった。ある山村の療養所を訪ねた二人は真理子という如月の高校の後輩と出会うそして千織に異変が起きる、真理子がへりの落下事故で負傷した、その真理子は千織に乗り移るという奇跡だ。生きることを真剣に考えさせる作品だった。
アランナ・ナイト著「修道院の第二の殺人」、英国はスコットランド舞台はエジンバラ十数年前セントアンドリュースに行く途中立ち寄った経緯がある古色蒼然として深い歴史を感じさせる街でした。ここにある修道院で教師が崖下に落とされ殺害された、自殺と断定され事件としては解決済みだった。市警のファロ警部は納得がいかず個人として事件を洗いなおす決意を固め息子ヴィンスと共に立ち上がった、事件は思わぬ結果を伴いどんでん返し的に解決する物語だ。シェイクスピア劇を演ずる美貌な女性俳優を中心にファロ警部の心の揺れと共に展開する物語はプロットの出来もいいし伏線も豊かだ。
望月諒子著「蟻の棲み家」、著者の作品は初めてで、女性作家としてはダークでダーティーな作品だ。街娼から生を受けた男吉沢末男そしてその後に生まれた妹芽衣家に男を引き入れ売春で稼ぐ金で生活する一家悲惨な状況でも敢然と妹を守りながら生きる末男この男の人生を興味深く読んだ。そして東京中野での連続女性射殺事件共に子を持つ街娼だった。末男とは対照的に慶大に通う裕福な家に生まれたダメ男長谷川翼この対照が面白い、二人の人生と家庭環境が齎す悪を見事に描き切っている。
法月綸太郎著「キングを探せ」、河川のゴミ拾いでたまたま知り合ったボランティア仲間4人は、意気投合して何度か打合せを重ね殺人計画を練るそして四重交換殺人に落ち着き誰が誰を殺すか順番を決めた。犯人側と法月親子との対決が開始されたが、捜査の初期段階では交換殺人は果たして見えてこない。作者の発想自体は興味があり面白く思うのだが、何故かすっきりしない結末でエラリー・クイーンのようなクリーンな結末とはなっていない。
星新一著「妄想銀行」、短編の短編つまりショート・ショートの話32編が一冊の文庫本に収まっていて、気軽に読めて中々感慨深いものがある。各ショートは実にアイデア一杯で良くこんなアイデアが浮かぶものだと思われるほど豊富なのだ。一気読みですらっと読めてしまう。但しあまり記憶に残らない、そこがまたいいこんな作品を書ける著者の頭脳に感心するばかりだ。
ジェフリー・ディーヴァー著「魔の山」、懸賞金ハンター、コルター・ショーの第二弾は、行方不明者を追跡しとうとうカルト集団オシリス財団が運営する山裾の施設に潜入した。そこでは教祖イーライの指示の元数々の殺人、虐待、強姦が行われていた。脱出を助け、イーライら一味をFBIに渡すことができるのか?ショーの挑戦は果てしなく続く。ディーヴァーの例のどんでん返しは今回はない。
ポール・アルテ著「死が招く」、高名なミステリー作家が自宅で殺害された、料理に顔を突っ込んでしかも煮え立つ油の中に顔を埋め頭部を撃ち抜かれていたのである、そしてその殺害された部屋は完全に密室だった。ハースト警部とその部下カニンガムそして犯罪学者のツイスト博士が捜査に乗り出した。殺人は作家だけでなく、その弟さらに変人と言われる娘といった連続殺人事件が発生する。犯人の頭脳を暴いたのはやはりツイスト博士である。このミステリーはプロットといい伏線といい当に密室殺人の好著であった。
畠山健二著「本所おけら長屋 十八」、今回は3つの短編集である、おけら長屋シリーズも18となって一層面白くなってきている。長屋の住人、万造、松吉、鉄斎、大屋、お染、お咲、金太が織りなす事件を彼ら皆が協力して立ち向かい解決する。人情に裏打ちされた住人の心根は日本人の心を表現していて本当に満足して楽しめる。
ピーター・アントニイ著「衣装戸棚の女」、 戦後英国ミステリーの最高傑作と謡われた作品である。私立探偵ヴェリティの人物描写とりわけユーモア溢れる人物造形、さらに本書中の挿絵は見事だ。複雑で推敲されたプロット幾重にも折り重なる伏線、そして最後のどんでん返しと正に傑作ミステリーだ。密室殺人の面白さに感激だ。
レイフ・GW・ペーション著「許されざる者」、国家犯罪捜査局の元局長ヨハンソンは、ホットドッグの売店の前であろうことか脳溢血で倒れて病院に担ぎ込まれた。病院内で主治医から聞いた話を切っ掛けにコールドケースとなった女児暴行殺害事件について捜査をすると決意する。勝手の同僚ボーらの協力を得て鋭意そして執拗に25年前の事件の犯人を追い詰める、そしてヨハンソンの直観どおり特定できた。しかしヨハンソンは、病気が元で結果を見ることも無く他界してしまう。スウェーデン北欧の傑作ミステリーだ。
ヨハン・テオリン著「黄昏に眠る秋」、北欧はスウェーデンのミステリー小説である、北欧と言えばミレニアムが有名だ、著者の書は初めてだ。スウェーデン北東に浮かエ絵ーランド島舞台に、ある霧の深い夜に家を出た5歳の児童が行方不明に、母親ユリアは自分の子の真相を捜して20数年が経過した。子供が履いていたサンダルが父イエルロフの元え送られてきたことから疎遠だった父と娘ユリアの捜索が開始される。非常に冗長だが、最後のどんでん返しで結末を見事に迎える。
松岡圭祐著「新人作家・杉浦李奈の推論 Ⅲ」、中小出版社の編集者榎島が探り当てた新人作家櫻木沙友里はヒットを飛ばして売れっ子作家になった、しかし榎島との関係が悪化して早急に立て直しを図るべく、ある計画を遂行する。それは櫻木の後継作家募集というタイトルの元に孤島のリゾート施設に8名の新人作家が招集された。しかし当の榎島はトリカブトにより殺害され、奇怪な現象がリゾート施設内に蔓延し李奈の推理が爆発、よく練られたプロットと文学的伏線が絡み合い最後のどんでん返しまで息も付けない。

火曜日, 8月 02, 2022

ネレ・ノイハウス著「深い疵」、著者の作品は初めて読む。重厚でプロットといい伏線も豊かで後半の犯人を追い詰めるオリヴァーとビア刑事の段ではダイナミックに展開する場面に息を呑む思いだ。ドイツの警察小説でオリヴァーとビアシリーズとして上梓されているという。連続殺人事件が発生する、しこも殺害された被害者はナチの新鋭隊員だったと60年前に遡り展開してゆく物語は最後まで落ち着く場所を読者に暗示させない見事なものだ。
東野圭吾著「恋のゴンドラ」、ミステリーだと読み始めて気づいた。本書はミステリーではなく、青春の恋つまり恋愛の駆け引きに右往左往する青春物語だ。登場する6、7人の男女はそれぞれ東京在住でスノーボードを趣味とする仲間で恋の駆け引きをしながら、スキー場でゲレコンやりながらの恋愛ごっこをするといった、何ともミステリーだと。。
宇佐美まこと著「愚者の毒」、「武蔵野陰影」 妹の商売が傾き謝金を背負い家に火を付け夫婦は死んだ。姉の葉子は妹の借金を背負い途方に暮れていた、しかも障害がある甥っ子達也を連れてである。ハローワークで知り合った希美の紹介で中学教師を定年退職した難波家にお手伝いとして就職できた。当主の先生は心も広く、息子も達也に懐いてくれている。ある日達也とキャンプに出掛けている日、先生が狭心症で死亡した、葉子は先生の死を他殺疑ったが。。。 「筑豊挽歌」 筑豊地方の探鉱が廃校になって一酸化炭素中毒患者となった父を抱えて3人の兄弟と生きる希美、これ以上ない貧乏生活の中、母が家出した。父は高利貸しが母を寝取ったと息まき暴れる毎日だ。これ以上我慢できない希美は隣人のユウに相談し父の殺害計画を立てユウが実行した。希美の父と高利貸しの竹丈二人を殺害して奪った金を持って筑豊から逃げた。殺人を犯した過去に苛み暮らし続ける希美の前に再び殺人を犯さざるを得ない状況に入り込み自分の人生の宿命を自覚せずにはいられない。過去から逃げられない人生を描く暗いミステリーだ。 「伊豆溟海」 最終章として伊豆の高級老人ホームに居を移した希美が回想する。難波家に移り住み日々難なく過ごしたある日、筑豊で出会ったヌケガラと遭遇ししかも弁護士として、それからは彼によってすべてが拘束され悲惨な日々を強いられる毎日が続いた。ユウは今はユキオとなって難波家の会社ナンバテックの社長となっている、ユキオとの縁が切れないでいる希美はある日ユキオが悪徳弁護士の車ベンツに細工して死亡させた。作者の伏線はまだまだ続く最後には夫の死、しかもあの達也が、どんでん返し的結末だった。
大藪春彦著「無法街の死」、人口30万ほどの杉浜市に根城を置く二つの暴力団、協和会と和田組二つの組の抗争が激化する中協和会に雇われたニヒルでダンディな殺し屋高木、トミーガンと呼称される短機関銃を下げ敢然と抗争に立ち向かう。恋人毬子を守り必死に戦う高木の活躍そして最後には警察の銃弾を浴びて絶命する。ハードボイルドな小説である。
笠井潔著「哲学者の密室」、なんと文庫本にして1600頁を超える超長編ミステリーだ。戦中、戦後の二つの幾重に施された密室殺人事件、主人公の日本人青年矢吹駆とフランス警察警視の令嬢ナディアが捜査に敢然と挑む本格推理小説である。パリを舞台に発生した密室殺人事件は戦中ナチが作った絶滅収容所の囚人なかでもその収容所発生した密室殺人事件と密接な関連を示し事件は複雑な様相を呈していた。伏線の多様性そしてその主軸としてハイデッガー哲学その理論こそナチズムの根底の理論だ、その哲学を通して語られるこの物語は正に哲学的だ。プロットはかなり練られていて容易に犯人を特定できない。
櫛木理宇著「鵜頭川村事件」、久しぶりに妻の墓参をしに訪れた鵜頭川村は、依然と変わらず閉ざされた辺境の地であった。親戚に泊まり明日は帰京しようと計画した矢先土砂降りの豪雨に遭い、行く手を阻まれ数日間過ごす羽目に、そして事件は起こった若者が死体となって豪雨の中で発見された。鵜頭川村は閉鎖的で矢萩姓と降谷性の対立を古くから繰り返していた、その対立はこの村のコミュニティの根底にあり若者が自警団と称して決起し次々と狼藉を働き殺人も犯すという暴挙に出た。設定プロットは単純だが、作者の筆力は群を抜いて斬新で迫力があり一気読みの感がある。
東野圭吾著「危険なビーナス」、長編ものだ。今回の物語は、サヴァン症候群という脳の障害に苦悩する人をある研究者彼は主人公手島伯朗の叔父だ、彼の実父一清に脳にパルスを与え障害を緩和したが一清は頭の中に次々と図形が浮かび絵を描くことに題名は「寛恕の網」という奇怪で精緻な絵だった。この絵を回りもう一人の叔父が暗躍し拉致をしたりして何とか先ほどの絵を見つけようと、物語は弟の監禁に始まって警視庁の潜入捜査の為に弟明人の妻になって翻弄す女性楓というちょっと無理があるプロットかなと思う。
今野敏著「任侠浴場」、弱小ヤクザの一家が、潰れそうな銭湯檜湯を再建に手伝いをするという物語だ。ここにあるのは日本人の心だ。人とを取り持つヤクザの世界でも心を持った親分さんがいる。日本人本来の心情を大事に持ち生きて行こうとする男たちを見事なまでに描いていて爽快な気分にさせられる。作者の心情を見る思いだ。
カルメン・モラ著「花嫁殺し」、プロフィールを隠したスペインの女流作家の警察小説でもありミステリーでもある。マドリード市内で惨殺された女性はロマ人で頭蓋に穿孔され蛆虫に蝕まれ絶命していた。事件を担当するスペイン警察特殊犯罪捜査班通称BACが始動する統括する女性刑事エレナが率いる精鋭チームだ。殺害されたロマ人の姉も同様な方法で殺害されていた、深まる謎右往左往するBACの面々結論を求めて頁を繰る手が止まらない。
ジェフリー・アーチャー著「レンブラントをとり返せ」、ずっと以前この著者の本を読んだ覚えがあるが、定かではない。今回の物語はプロットといい伏線といい物語のテンポも良く様々な方面に展開してゆく。彼ウィリアムは父が高名な弁護士であり、姉もまた父同様弁護士と一家で育って父の助言も受け入れず大学では美術を学び果ては警察官にあるという破天荒な人生を選択する。地方巡回警察官を2年勤務後にスコットランドヤード美術骨董捜査班に配属され、持ち前の頭脳と機転で7年前盗難にあったレンブラント傑作を取り戻すべく奮闘する。

火曜日, 6月 28, 2022

有栖川有栖著「菩提樹荘の殺人」、本書は4篇の短編ミステリーだ。英都大学准教授の火村は犯罪学を専門として警察に協力する稀有な存在だ、そしてもう一人作家有栖川・アリスも同様に火村と同じ立場にいる。表題の菩提樹荘の殺人では売れっ子といっても歳は54歳のアンチエイジング提唱者が自分の別荘の池の畔で全裸で殺害された。しかし伏線が脆弱でプロット自体面白みに欠ける作品だった。
松岡圭祐著「新人作家・杉浦李奈の推論」、著者の新たなシリーズの第一弾を読む。ライトミステリー作家杉浦李奈を主人公とした物語だ。作中様々な作家が登場する芥川龍之介、太宰治らを引用して、今回の事件は偽作つまりコピーだ。対談での相手が出稿した書は盗作と判断され著者が殺害された事により李奈がドキュメンタリーとして疑問を追いかけ結果として捜査する形になった。プロットの本筋は平凡だが伏線とそれを取り巻く環境を細かく描写して読者を魅了する。
ロス・トーマス著「神が忘れた町」、罠に嵌り刑務所暮らしとなった元最高裁判事アデア彼は元弁護士と共に米国の小さな町ドウランゴに向かった。その町は若い女市長ヒキンズと警察署長との愛人関係で運営されていた。そこで連続殺人事件が発生した、市長再選を目論む市長と警察署長は戦い、アデアとヴァインズも事件に絡まり右往左往する。目まぐるしく展開する事件と小気味よい会話文章と相まっての物語の展開は秀逸で楽しめる。
大江戸科学捜査ー八丁堀のおゆうーステイホームは江戸で、今回の騒動は、市中での拐かしつまり3歳くらいの男の子誘拐である。材木問屋の信濃屋は大店でその主人が病に臥せり承継者を考えて騒ぎ出したのは、自分には孫がいると。これにより身内縁者が右往左往し躍起なって孫を探すという事態が誘拐を誘発した。おゆうは宇多川を使いDNA鑑定を駆使して犯人を追い詰める、江戸と東京を跨いだハイブリット捜査だ。
ジョセフィン・ティ著「時の娘」、ロンドン警視庁の警部グラントは病院のベッドの中で、知人の女優が持ち込んだ顔写真の中にリチャード三世のがあった。興味を惹かれ歴史書の類を読み進めるうちに没頭するようになる。世の中で悪の権化と言われるリチャード三世について読み進め彼リチャード三世の真実の姿を発見する。警部いやミステリーとしての歴史探偵として難問に挑戦し真実に迫る面白さがこの書にはある。
大江戸科学捜査ー八丁堀のおゆうー妖刀は怪盗を招く、今回の物語は、名刀村正が絡んだ事件だ。例によって南町奉行所軍団におゆうが絡み殺人事件の捜査が開始された。今回も領有宇多川が江戸に現れおゆうの手助けをする。名刀がある旗本家から盗賊により持ち出されさらに長屋に住む浪人が殺害された。かつネズミ小僧並に盗んだ金子を貧乏長屋の住人に分け与えるという不可解さだ。プロットも良いしなかなか楽しめる。
ドン・ウィンズロウ著「ザ・ボーダー 下」、貧困、略奪、強姦、殺傷その根底にある麻薬ドラッグは進化を遂げクラックからメタンフェタミンそしてヘロインへと、そしてメキシコ周辺で栽培製造されアメリカへ流入する。ドラッグにる死亡は女子供まで蔓延し多数の死者を数えるアメリカ、そこに登場するのは主人公で麻薬取締局局長であるアート・ケラー著者が描写するケラー潔癖で揺ぎ無き信念を持ち悪と勇気をもって対峙するヒーローだ。ケラーの人生こそが生きる勇気を鼓舞してくれる。壮大な社会悪麻薬との闘争その悪にはアメリカの議員はじめ大統領まで弾劾して行くケラーの正義感に拍手だ。
大江戸科学捜査ー八丁堀のおゆうー北からの黒船、南町奉行所定廻同心鵜飼伝三郎チームおゆう、源七その配下らが活躍する今回の事件はロシアから訪れた外国人を巡る騒動に巻き込まれた事件である。プロットしてはまあまあですが、伏線が少し弱くワクワク感がイマイチない。
大江戸科学捜査ー八丁堀のおゆうードローン江戸を翔ぶ、東京と江戸をタイムスリップする優香こと八丁堀で十手をもつおゆう、今回は江戸の大店の蔵に入る強盗事件を発端に大店それぞれの主人の過去をそして寺社奉行の欲望らが絡まり豊富な伏線を用意し読む者を飽きさせない著者のタグ稀なる才能に拍手だ。何より同胞でオタクの宇多川まで江戸に引っ張り出しスタンガンやらドローンを使い捜査を進める方法もアイデアに富んだ伏線だ。
ドン・ウィンズロウ著「ザ・ボーダー 上」、著者の作品は長編が多いが、今回のは上下巻文庫本で1500頁に及ぶ最長編だ。物語はメキシコを中心にまたアメリカへの麻薬の流入を防ぐ麻薬取締局長アート・ケラーを中心に彼を取り巻く人物、勿論メキシコでの麻薬ビジネスを行うカルテルとの攻防と伏線が多数織りなすこの物語は何処に行き着くのか見当もつかない。
アン・クリーヴス著「水の葬送」、英国は最北端、シェトランド群島は大小100の島からなる北海油田、ガスの産地でもある。ジミー・ぺレス警部シリーズで非常に良く出来たミステリーだ。伏線といいプロットといい最高。例によって殺人事件が発生、地元の新聞社からロンドンの大手新聞社の記者が殺害され、本部インヴァネスから登場するウィロー・リーヴス警部を中心にまだ妻の死から立ち直れないでいるぺレス警部との捜査が進んでいく。
アン・クリーヴス著「空の幻像」、今回も舞台は英国最北端シェトランド島での物語で、地元出身の結婚披露宴にロンドンから出席したTV企画会社のエレノアが失踪し翌日浜辺で死体となって発見された。地元警察署の警部ぺレス、サンディーそしてインバネスかの警部らと捜査を進めるも依然として正体不明だ。登場人物がディテールを語り小説本体のプロットは落ち着き先が見えない、そこに地元で伝承されているリジーなる幽霊話を絡め事件の真相を一層闇に包む手法は作者ならではのミステリーだ。
宮部みゆき著「長い長い殺人」、面白いことに登場人物の財布が所有者のディテールを語り殺人事件の物語が展開してゆくという奇抜なアイデアである。プロットそのものは当時としては妥当だったかも知れないが、今では陳腐で面白さはほとんど無いと言っていい。
アガサ・クリスティー著「そして誰もいなくなった」、1939年の著作だと言われても信じられないほど、この書は魅力に溢れている。現代にも通じる正にミステリーの古典的名著と言っていい作品だ。絶海の孤島兵隊島、その島に招待された10人の客は脛に傷を持つ面々だった、そして一人づつ殺害されていく、童謡の詩にあるように。殺人だったとしても法の世界で正に見逃された殺人者、これらの人々を弾劾し死に追いやるというプロットの素晴らしさ、嫌みやオカルト的でもなく殺人が実行され、読者を一気に最後まで読ませるミステリーの原点がここにある。
ロビン・ハサウェイ著「フェニモア先生、人形を診る」、彼女の作品を読むのは初めてだ。米国はフィラデルフィア郊外の地元の富豪で名士のパンオースト家はドールハウスで有名だ。この一家の住人そして家族を廻る連続殺人事件が発生する、しかもドールハウスの人形に示唆を与えてフェニモア心臓外科医は個人診療所を経営しパンコースト家のかかりつけ医だ。先生が事件に乗り出すが、複雑に絡まり合うこの事件の真相が一向に見えてこない。そして勇敢な看護士ドイルの手を借りて事件を解決する物語だ。今一伏線が弱く犯人当ては難しい。