日曜日, 2月 26, 2023

デニス・ルヘイン著「夜に生きる 下」、遂にジョーはフロリダのタンパ地区を牛耳るギャングのボスとなった。ラム酒密造は莫大な利益を齎しグラシエラとの生活も順風満帆に過ぎていた。刑務所で知り合ったジョーのボスであるマソと遂に一戦を交えることになりマソとその仲間を死の闇へと葬った。ジョーと妻グラシエラはその後キューバ片田舎に住居を持ち地元民とともに煙草を栽培し地域に貢献して生活していて、トマスジョーの幼い息子も元気にしていた、そんな折に妻グラシエラに賞が貰えるということで家族三人でタンパに向かったが途中で妻グラシエラ銃弾を浴びて絶命した。破天荒な主人公のジョー・コグリンの生き様を通して人生の意味御探るミステリーだった。
デニス・ルヘイン著「夜に生きる 上」、米国はボストンのギャングの部下のジョーはボスの愛人エマに魅了され深い中になったが、銀行強盗に及んで捕縛されたが父が軽視正であることから5年の刑期でシャバに出てこられた。刑務所で服役中知り合ったマソという老人はやはり闇のボスだった、服役したジョーをマソは命令を与えられ禁酒法時代にラムを醸造し販路を広げ地域の頂点を目指すべく地元のギャングと手を組み、アメリカ海軍の船から爆薬を掠め取る作戦を実行しようとした。
高田郁著「あきない世傳 金と銀 十三」、江戸は田原町三丁目にある五十鈴屋江戸本店の店主幸は屋敷売り專門の新店を出すべく菊英と一緒に場所探しをしていた、そんな折り知り合いの菊次郎から朗報が漏らされ間口十間と広いが菊英と店を半分づつ分けることにして売買を成立させた。しかし新店舗を開店してから二ヶ月後その家屋敷は二重売買だと判明しまたもや幸の前に苦難が発生した。さらにその後近隣に火災があり浅草太物仲間の店や寄合所が焼けるなど甚大な被害を被り店が並ぶ界隈は暗く客もなく息詰まって何から手をつけたら良いのか途方に暮れる毎日だった。幸は店の蓄え百両を寄合所再建に為に差し出し再建を果たし知恵を出し会話を活気ある通りにすべく幕や昇りさらに店の配置図を一目で確認できる双六として客に提供して喜ばれた。時を同じく音羽屋が大番屋に引きたてられ闕所となり幸の妹、結とともに江戸を去った。著者の考えだす様々な事件、その渦中でも決して自分を見失わず凛とした体で皆に接するその姿こそ人間として生きかたを教えてくれる。
ロジャー・ホッブス著「時限紙幣」、ラスベガスで麻薬常習者の母から世に出た子供は里親に引き取られその後銀行強盗を繰り返す犯罪者となった。名前も明かさず犯罪後は一人静かにギリシャの古典の翻訳に時間を費やす孤独な犯罪者で世間ではゴーストとして犯罪者仲間に知られるようになった。過去と現在を描写して銀行強盗の手口から成就するまでの詳細な描写はまさに度肝を抜く、一人称つまりゴーストによって語れる本書は犯罪小説の原点だ。
ダニエル・フリードマン著「もう年はとれない」、米国はメンフィスでも数十年も前に引退した矍鑠とした元刑事バック・シャツに絡む殺人事件の物語である。第二次世界大戦の折りユダヤ人であるバック・シャツが強制収容所で虐待を受けた、その名はハインリヒ・ジーグラーが生存していて米国にいるという情報を得た彼はナチの金塊を奪って去ったその人だった。孫のビリー通商テキーラはITの知識があり老人とのコンビは最強だ。漸くジーグラーの老人ホームを見つけまんまと金塊を奪ったが、そこにジェニングズ刑事の犯罪計画の二人は餌食となった。そして最終的に怪我をしたバックが療養している病院で殺害されそうになったバックが最後の抵抗はマグナム357でジェニングズを殺害するというオチで愛でたくおわりとなった。
ケイト・モートン著「秘密 下」、ローレルは大学で研究を続けているジェリー末弟と連絡を取り、二人で共同で真相を突き止める決心をした。様々な人間模様を独自の視点で深く掘り下げるその眼には圧倒される。また戦時下のロンドン、郊外の牧歌的情景と眼に見えるような描写に慨嘆する。そしてローレルが母の死後認識した事実それは母ドロシーは実はヴィヴィアンだったという衝撃的事実だった。どんでん返しも見事に決まり結末を見た。プロットといい伏線はたまた描写力そして人間に対する深い意洞察まさにミステリーの基本だ。
ケイト・モートン著「秘密 上」、1940,1960そして2011年の現在を交互に描写していく語り手法で展開してゆく物語はミステリアスであり、興味はに憑かれてページを繰る手がとまらない。母と父そして4人の兄弟姉妹の長女ローレンスは今では女優となり2011年現在老齢な母を病院に見舞いに来ていた、そしてローレンスが胸のうちにある疑問と秘密それは16歳だった頃見た母が訪ねてきた男性をナイフで刺して死亡させたことだった。そして年を重ねても当時の情景が浮かびローレンスはその理由と原因を突き止める決断をしたと同時に母の結婚前の情報も取得すべく決意を新たにするのだった。
竹吉優輔著「襲名犯」、漸く安堵を取り戻した市民が第二のブージャムに遭遇、警察署律子、図書館の兄を殺害された仁そして二人の幼馴染霜野三人は第二の犯人について検討調査する。図書館を取り巻く環境やら警察やらと冗長性は否めないが最後のどんでん返し的結末は見事なまでに収斂し結末を見た。本作品は江戸川乱歩賞受賞作品である、改めて乱歩賞受賞作品は楽しめると思う。栄馬市で発生した連続殺傷事件、首謀者をブージャムと呼ばれ恐怖とともに恐れられた。そして無事犯人が逮捕され死刑台の露となって消えた。
高野史緒著「カラマーゾフの妹」、ドストエフスキーの原著「カラマーゾフの兄弟」の続編を書くという極めて大胆な発想で、しかも江戸川乱歩賞受賞した作品である。13年前父フョードルの殺害事件の見直し再検証をするというイワンは墓を掘り起こし検証を行った頭蓋骨の陥没痕から狂喜は杵だと判明した。腹違いの弟スメルジャコワの証言により殺害されたのはドミートリとして確定して長兄はシベリアへ流刑となり事故でその後に死亡した。イワン特別捜査官として再検証する中であらゆる関連を調査したにも拘わらず真犯人を特定するには至らなかった。その後図らずも父親が一番愛していたアレクセイ・アリョーシャの独白で自分がやったと証言した。18世紀のロシアでのロケットというSFじみた発想といい楽しく読ませてもらった。
川瀬七緒著「よろずのことに気をつけよ」、佐倉真由の祖父が殺害されたその殺害は肉を刻み舌を切断し内蔵はめちゃくちゃという酷さだった、殺害現場つまり祖父宅に残された呪術府・札に記されていた呪文を基に真由は文化人類学者の中澤に辿り着き二人して真由の祖父の殺害の捜査をすることになった。呪術つまり呪いは古くからあり地方では様々な古代の神を祭っている、滔々辿り着いたのは福島の田舎だった、そこに殺害された祖父の過失の過去があった、少し冗長性は否めないが、最後まで頁を繰る力はさすが、江戸川乱歩賞受賞作品だけある。
斎藤詠一著「到達不能極」、江戸川乱歩賞受賞作品は、非常に面白い様々なシチエーションやプロットが目白押しでどれも秀逸である。今回の物語は南極を舞台に科学的見地から情報戦さらに戦後の混乱の中で繰り広げられる人間模様と多彩だ。
川澄浩平著「探偵は友人ではない」、札幌にある中学校の生徒達が繰り広げる物語で、ミステリーとは言えなくもない、ソフトミステリーだ。謎を解決すべく語りかけ役が海砂真史で難問を解決するのが鳥飼歩だ。歩は無類の甘党でケーキを簡単に4個も食べるくらいだ。二人の微妙な関係その感じでていて描写力に感心させられる。
遠藤武文著「プリズン・トリック」、 選評でも指摘している通り中盤の展開は、無理があり視点が様々に移り変わり読者を困惑させるプロット的には考え抜かれていて最後のどんでん返し的結末も非常に面白い、江戸川乱歩賞受賞作品だ。交通刑務所という異常な場所での殺人事件から出発する本作品は卓越したミステリーとしている。そして社会的問題にも踏み込み、さらに憲法三十九条にもふれる気合のこもった作品である。

日曜日, 1月 29, 2023

佐藤究著「Q J K J Q」、市野家の構成は父、母、兄、妹の4人である。それぞれが殺人を犯した、つまり殺人一家だる。ある日兄が殺害されたしかし妹亜利亜がちょっとの隙に兄の遺体は消えていた。そして母も失踪した。その後、亜利亜が体験したのは、かって暮らしていた記憶そして自分の正体を知る。次々と襲い掛かる不安と謎それは人は何故殺すのか?という人間の根源的な問いに懊悩する亜利亜そして関わる人間たちの生の存在そのものだった。江戸川乱歩賞受賞作品だ。
玖村まゆみ著「完盗オンサイト」、江戸川乱歩賞受賞作品である、しかし発想が馬鹿げていて面白い、乱歩賞受賞作品は色々と趣向の違った作品に出合えて感動する。今回もアマチュアのクライマーを主人公に彼洞に絡む人間達もまたユニークで面白い、なんといってもクライマーが皇居内の三代将軍が愛でた五葉松の盆栽を盗むといったプロットに感動する。
曽根圭介著「地底魚」、日本、中国、アメリカに跨る国際的なスパイ小説である。警視庁公安部外事二課に所属する警部補でる不破を巡る職場内の人間との軋轢さらに警察庁から移動してきた凸井理事官、中国との情報漏洩と盛りだくさんな内容は読者を翻弄して行き着く先を見いだせない。
鏑木蓮著「東京ダモイ」、ソ連時代満州から抑留されシベリアに渡った旧日本兵の過酷な生活を描き、その当時起きた中尉惨殺事件と現代で起きた殺人事件の相関を見事にプロット化した本作は乱歩賞受賞作品だ。個人出版を手掛ける薫風堂に電話があり出版依頼だった、そこで営業の槙野が京都府の綾部に向かったそして契約を果たし後日話し合いに来てくれとの依頼を受け槙野が綾部の高津老人宅に着いたが留守だった。そしてそのまま失踪となった。同時期頃にロシアはイルクーツクから来日した老婦人マリアが何者かに殺害された、そして仲介役に若き医師も行方知れずとなった。
高田郁著「ふるさと銀河線」、著者の時代物で澪つくしやあきない世傳を読んでいるが、今回現代ものを読むのは初めてである。短編9編の本書は著者の人に対する人生に対する思いやりと希望と勇気があふれ癒しの世界を堪能するそんなひと時を提供してくれる。
池井戸潤著「シャイロックの子供たち」、メガバンクである東京第一銀行の大田区の住宅街にある長原支店そこに勤務する銀行員の業務及びその家族の物語を巧みな著者支店で描く物語である。短編小説かと思いきや互いに関連して展開してゆく異色な長編といった趣だ、銀行員の日常の業務本部からの過酷な目標に汲々とする支店長以下副支店長、課長、課長代理といった面々悲哀そして行員家族の喜怒哀楽を描いたやはり家族とは人間とは問う作品だ。
翔田寛著「誘拐児」、 よく考察されたプロットそして読者を翻弄する伏線、親と子の絆戦後の混乱の中の誘拐と盛りだくさんの物語だ。誘拐された5歳の男児を巡る様々な人間模様を見事に描いた異色な誘拐犯罪ミステリー、最後のページまで繰らせる迫力があり楽しく読ませていただきました。
下村敦史著「闇に香る嘘」、主人公は全盲であり、彼を取り巻く人間たちの過去は旧満州の時代そして日本に帰国し中国残留孤児から日本人として認知された者たちの相克また彼の娘の子供つまり彼からしたら孫にあたる小学生の少女は重い腎臓病を患い週三日も病院で透析を受けている。過酷な状況の中で実家の岩手帰郷し兄に感じたかすかな不安は実際の兄ではないのでは?という根源的な疑惑であった。全盲の彼が調査にあたり行き着いた結果は自分が中国人の双子の一人だというどんでん返し的結末だった。第60回の江戸川乱歩賞受賞作品だ。
津本陽著「前田利家 下」、秀吉はお拾い男子誕生に狂喜した。この頃は世は秀吉を取り巻く大名のうち関東勢では徳川家康そして北陸の前田利家の二強による拮抗した勢力でからくも保っていた平安である。その後利家は、秀頼の守役に任ぜられ秀吉の絶対的信頼勝ち得ていた、秀吉余命幾ばくかの際に我が子秀頼に家康ら諸大名に忠誠を誓わせ遂に秀吉は薨去した。戦国の世は変わりつつあり、この時分利家も病を患い生末を案じられていた。周到に生前配慮した利家の生き様が語られ死に際の見事さに感嘆した。
レジナルド・ヒル著「骨と沈黙」、ダルジール警視&パスコー警部のシリーズだと解説に書かれていた。ダブジール警視の特異なキャラクターは著者の想像するより読者には強烈な印象を与え入る。英国ヨークシャーでの殺人事件これに奮闘するダルジールとパスコー事件は複雑かつ怪奇で解決の糸口を見つけることが非常に困難な事件だった。そして街中で繰り広げる聖史劇が絡んで最初面くらうがやはり最後のどんでん返し的結末がまっていた。冗長性は否めないが意表突く結末には満足だ。

日曜日, 12月 25, 2022

高田郁著「あきない世傳金と銀 十二」、念願だった太物飽きないから呉服へと浅草太物組合は願いを遂げた。困難辛苦の後の達成感は五十鈴屋店主幸に希望を与え商いも順調に推移した。浴衣と呉服撞木に下げたその様は見事なものになった。江戸での商売はやはり大名家さらに大奥や吉原の廓の花魁が纏う呉服が呉服商の商いを発展させる元であった。そんな折吉原の楼主から五十鈴屋店主に齎されたのは衣装競べという趣向に出店しないかとの相談であった。
ギョーム・ミュッソ著「夜と少女」、南フランスは、コート・ダジュールを舞台に展開する本格ミステリーでどんでん返しあり先の読めない読者を深く惑わす物語に只管感銘を覚える。アメリカはニューヨークで作家生活を送る人気作家トマ・ドウガレが久しぶり凡そ25年ぶり40歳になったいまコートダジュールの高校の記念パーティーに出席するために来仏した。過去の殺人事件の真相を自分の眼で確かめるためだった。複雑な家族関係そしたトマを取り巻く人間達の常軌を逸した行動そして事件は急速に解明されてゆく。仰天プロットと伏線そして展開の速さは著者独自の物で秀逸だ。
津本陽著「前田利家 中」、いよいよ秀吉の健勢は勢いを付け、諸城を開城して天下を取るべく粉塵し諸大名を臣下に抱え強大な勢力となった。利家も秀吉に降り秀吉の近習としては家康と同様に太閤秀吉の側近となった。大阪城及び名古屋城を築城し城下は経済も潤し発展して秀吉の懐には金銀遍く入りこの財貨を使うべく朝鮮半島に派兵し明国を陥れる算段となった。しかし朝鮮も手強く手を焼く結果となった。その頃利家の妾側室のちよに赤子が誕生しまた秀吉にも寧々の方にお子が誕生し秀吉は狂喜乱舞し名古屋から大阪へ帰城した。
高田郁著「あきない世傳金と銀 十一」、五十鈴屋店主の幸が考案した浴衣は予想外に売れに売れた。江戸では大火が続き庶民はそれこそ苦労の連続であった、音羽屋に嫁いだ妹の結との仲も荒んだ状態のままだった。一緒に住む菊英の簪商売もようやっと日の目を見る段になって幸は安堵した。そんな折太物商売仲間に幸が提案したのは浴衣地を仲間の店でも商売したらというものだった。それから相撲に関わる者が五十鈴屋を訪ね勧進大相撲の初日に力士に染め抜きの浴衣を着せたいとの申し出があり苦労して何とか間に合わせ、太物商仲間と共に売り出したところ好評で全て売り切るという事態になり仲間は幸に対しての恩を忘れず呉服も扱える許可を貰おうと提案してくれた。
長岡弘樹著「傍聞き」、本の題名は「かたえぎき」と読むとおのこと、本書には短編四篇が収録されていて日常の生活、そして登場する人物も普通だがそこに事件が発生するつまりミステリーが絡んで来る。微妙なニュアンスというかつまりミステリーの重さというかが後になってわかるという好著だ。
津本陽著「前田利家 上」、16世紀の戦国時代信長の野望の只中に生きた前田利家の豪儀な性格と槍つかいの名手として知られた男であった、若い妻まつと共に戦乱の中を搔い潜って生きた。信長の容赦ない下知に部下は皆戦々恐々として時を過ごしたのである。明智光秀による謀反で信長は殺害され透かさず天下を取ったのは秀吉であった、親父と信頼してきた柴田勝家は秀吉の命で無残にも自害に追いやられ利家はこれを機に秀吉の下につくことになった。
ジェフリー・ディーヴァー著「スキン・コレクター 下」、タツーアーティスト通称未詳115号の犯罪計画は、壮大で邪悪な企みにあった、それはニューヨークの地下に配置された無数の水道管にポツリヌス菌を投入し一瞬にして毒殺するといった計画だった。リンカーン・ライムとサックスのコンビは未詳の裏を描いて水道管に穴を開けた犯人を死亡させた。しかしその犯人は未詳ではなかった。次々と展開が進み、過去のボーン・コレクターそしてウヲッチメーカーなどが飛び出してきて、そして著者のどんでん返しも秀逸で最後まで楽しめた傑作だった。
ジェフリー・ディーヴァー著「スキン・コレクター 上」、お馴染みの四肢麻痺ながらもニューヨーク市警のコンサルタントを務めるリンカーン・ライムと背丈が180cmもある美人の相棒アメリア・サックス刑事の事件捜査物語だ。今回の事件はタツーアーティストを自称する人間の肌に異常に興味を示すビリー・ヘイヴンが女性を襲い眠らせ麻痺状態で毒物でタツーを施し死に至らしめるといったサイコパスを追跡する物語だ。ニューヨーク市街地の地下で若い女性がターゲットにされ連続殺人事件が発生リンカーンとアメリアそしてニューヨーク市警の若手の科学捜査が開始された。
戸松淳矩著「名探偵は千秋楽に謎を解く」、昭和50年代の作品だというが、面白さと斬新なアイデアは今でも驚きに満ちたプロットそして状況設定が素晴らしい。相撲部屋を中心に描き不動産業者の社長、置屋のおねーさんさらに部屋を取り巻く植木屋、牛乳屋、曹操たる顔触れつまりユーモワミステリーとでもナズケテいいのではないか。
高田郁著「あきない世傳金と銀 十」、妹結に小紋染めを持ち去られ、不調が続く幸五十鈴屋にとって苦難の中にあった。絹織物から太物商売に転じて幸は困難の最中に遭っても創意工夫の路を求め続けるそして浴衣地の藍色と白字抜きの柄、絵描の賢介が必死になって描いた花火の図柄を浴衣にするという試みは遂に江戸中の評判になるほど一世風靡となって幸そして五十鈴屋の従業員一同を満足させるもんだった。困難の中にあっても希望捨てず只管考え実行する幸の心情が見事に花を咲かすそんな今回の物語であった。
まさきとしか著「あの日、君は何をした」、平々凡々な家庭の息子水野大樹が警官に追われ駐車していたトラックに自転車で激突し死亡した。母は大樹が死んだことにより徐々に精神がおかしくなり、遂に関係した人物を次々と殺害する。捜査を担当する刑事二人は綿密な聞き込みから、やがて事件の全貌を掴むことになる。母親と子供の関係をいやでも思い知らされるこれこそが愛情だと言わんばかりだ。そしてミステリーが絡む秀逸だ。
ジョン・ダニング著「死の蔵書」、米国はデンヴァー警察署警部補のジェーンウェイは、警察官ではあるが無類の本好きだ。そんな彼の前に本の掘り出し屋のボビーが死体で見つかった。捜査を進めると次々と難題にぶつかりながらも進行していった。往年の仇であるジャッキーとは相変わらずの間柄で、ある時決闘になり彼を散々殴り倒した後、警察を追われ長年夢だった古書店を開店させた。ある日書店で雇った女性ピンキーと違う書店の店員が殺害されたしかもジェーンウェイの古書店内で、真相を掴めないまま右往左往する。長編であるが物語に色んな作家や作品名が出てきて、十分楽しめた。
ミネット・ウォルターズ著「女彫刻家」、ロズ・リーは、フリーライターで友人アイリズから本の執筆を依頼される、それはオリーヴ・マーチンという女性の犯罪についてだ。ともかく一度彼女に面会しようとロズは刑務所を訪れる。彼女オリーヴはでっぷりとした女性だった。ロズの調査はこの時点から開始され生きたの困難さらにロマンスも絡ませ最後に犯人の特定にいたる、ミステリー&ロマンス小説だ。
高田郁著「あきない世傳金と銀 九」、江戸本店として商売を続けて3年が立ち店も順調に繁盛している五十鈴屋だった。十二支を染めた小紋が売り上げを伸ばしたさなかに事件は起こった、幸の妹結が行方不明となった、見つかった結が起こした行動は意外なもので姉である幸に反旗を翻し日本橋音羽屋に嫁ぐというものだった、しかもそこで呉服屋を営むといった予想外の結末だった。幸の心労は極限に達したが太物商に転落した五十鈴屋を再興すべく必死に知恵を絞る姿を店のもの全員で幸を応援してゆく。
マリナ・Ⅴ・スナイダー著「毒見師イレーナ」、殺人の罪で生きるか死ぬかの選択を迫られたイレーナは、毒見師として生きる決意をした。それは最高司令官のもとで食事の毒見をする仕事だった。日々仕事に打ち込んだイレーナに次々と災難が襲い掛かりその旅に上司のヴァレクに救われる。隣国の魔術に陥った最高司令官を救うべく隣国に乗り込んだイレーナは死闘を繰り返し遂に魔術師を倒した。プロットは冗長性があるものの最後まで読ませる面白さがあった。

月曜日, 11月 28, 2022

ゾラン・ドヴェンカー著「沈黙の少女」、三人称で進行していく物語は一貫して緊張感を孕み読者を離さない。私一人称は平凡な中学校教師である、ある日突然娘が誘拐され行方がようとして不明だ。このことがキッカケで妻とは別居、そして私は自分で見つけると決意する。二人称のきみは、施設からやはり誘拐されたが命は取り留めた。三人称の彼らは誘拐犯であり小児性愛者でサイコパスの軍団だ。これらが複雑に絡み合い物語は進展してゆくドイツミステリーだ。
ジェームズ・M・ケイン著「郵便配達は二度ベルを鳴らす」、放蕩男フランクがふと街道筋の安食堂に立ち寄ったそこにはギリシャ人の亭主と豊満な肉体を持つ妻コーラが営んでいた。亭主に要請され彼フランクはそこの食堂で働くことになり、等々妻コーラと出来てしまった。そして二人は亭主殺害計画を練り実行すること二度目にして遂に殺害に成功する。物語のプロットはごく普通の話題でタイトルとは全然似ていない、人間の真と真理が普通に語れていいる。
クリスチアナ・ブランド著「ジェゼベルの死」、何千人が見守る演劇上での密室殺人事件が起こったたまたま見ていたケント州警部コックリルがスコットランドヤードの警部と共に捜査に乗り出した。そして生首を送りつけられる事件が発生、事態は混沌としたものにヤードもコッキー右往左往するばかりだ。作者の作品は初めてだが、伏線といいトリックさらにプロットといいミステリーとしては完璧ではないかと思う優れた作品だ。
水原秀策著「サウスポー・キラー」、 日本野球界きっての名門オリオールズに入団して2年目のサウスポーの投手である沢村が、ある日暴行を受けそれが二回続いた、その後在らぬ疑いつまり八百長疑惑が持ち上がった。その文章がメールにて複数の新聞社を始め報道機関の送付され、沢村は四面楚歌の状態に陥りしかし自分でケジメを付けるべく調査に乗り出し犯人を特定した、その男は同じ球団の同じサウスポーの三浦だった。このミス大賞受賞作品でそんなに冒険も無いストーリながら楽しく読ませてもらった。
サマンサ・ダウニング著「殺人記念日」、ごく普通の家庭、夫はカントリークラブのテニスコーチそして妻は不動産仲介業をしている、そんな家庭に忍び寄る殺人志向を平々凡々と描いていく。後半はスリルがあり読者のページを繰る手を止めさせない力がある。妻であるミリセントの心の内にある殺人志向を読後考えさせられる。平々凡々とした日常に潜む人間の悪意を見事なまでに描き出している傑作だ。
アガサ・クリスティー著「鏡は横にひび割れて」、ロンドンからほど近い村で、女優マリーナがパーティを催した、そして招待客の老婦人が毒殺された。少し冗長性を感じるがプロットはしっかりしているし伏線も計算された配置だ。ミスマープルの人柄も物語に登場する人間の描き方も詳細だ。ミスマープルのミステリーは初めて読んだがポアロと違った面白さがある。
畠山健二著「本所おけら長屋 十九」、十九巻も続いているおけら長屋は、まず気軽に読める、江戸風俗が解る、長屋の住人それぞれの人情味が解る、そんな物語だ。今回も待ったなしに笑いと涙を誘う、中でも三祐のお英と松吉の祝言まで到達はてはて次巻はどうなることやら楽しみだ。
藤原伊織著「テロリストのパラソル」、70年代大学紛争全盛の時代に全共闘を戦った主人公菊池と親友桑野、その後の人生を辿りながら物語は進展してゆく。アル中の菊池は当時の犯罪歴から島野と名を変え場末で小さなバーでバーテンをして孤高を凌いでいた。ある日何時もの日課で新宿中央公園に散歩に出掛け、バンダン事件に遭遇そして巻き込まれ死んだ中にかっての恋人の名前があった。バーを閉め一人犯人に立ち向かう。様々な過去を背負い生きてゆく人たちの孤独と携える懊悩プロットといい背景といい計算されたシュツエーションに感動。乱歩賞受賞作品は実に面白い。
野沢尚著「破線のマリス」、著名なテレビ局の報道番組編集マンである離婚経験にある女性、遠藤瑤子が手掛けた作品というか報道はテレビ局の番組の視聴率を確実に稼いでいた。ある郵政官僚だという男から渡された一本のテープを基に事件はあらぬ方向へと進展して行く一女性の日常と非日常を巧みに織り交ぜたプロットは読者を離さない。また最後tのどんでん返し的結末も爽快だ。
首藤瓜於著「脳男」、不遇で障害児として生を受けた男の人生を米国から帰国した精神科の医師鷲谷真梨子が賢明に過去を調査し男の人生を解き明かそうとする物語だ。着眼点も素晴らしいそして男に纏わる数多の関連人物を描き出しミステリーとして完結していくプロットは読者を離さない。乱歩賞受賞作品だ。
望月諒子著「殺人者」、フリーのジャーナリストである木部美智子は、上司から取材対象としてしめされたのは関西での殺人事件の取材だった。現地に飛んだ木部は関係する様々な人間に取材し次第に核心に迫ってきていた。それは15年前の事件が切っ掛けで連続殺人事件が起きていると判明、殺害された被害者は高校の同期生でありまた彼らと接点のある被害者だった。プロットが実に上手く出来ていてかつ伏線もよく練られていて本屋で立ち読みで購入した割には正解だった。
クレオ・コイル著「名探偵のコーヒーのいれ方」、100年も続くニューヨークの老舗コーヒーショプの経営者として指名されたクレアはある日従業員でマネージャーのアナベルが階段から足を踏み外し転落し意識不明の重傷を負った。警察では事故として処理したが、クレアは自分で調査しようと決意した。そして競争相手の一味の犯罪だと判明した。コーヒーの香りとミステリーという相乗効果を狙ったライトノベルだ。