金曜日, 5月 29, 2020

スティーヴン・キング著「ミスター・メルセデス 下」、叔母の葬儀の最中にジャネルが、サイコ犯人プレイディーによる爆弾で爆破されたのはホッジスのトヨタカローラだった、それを運転していたのは、図らずもジャネルだった。ホッジスは黒人少年ジェロームと精神障害のあるホリーと3人で犯人を特定した。MACで開催されるライブに犯人プレイディーはターゲットを絞り車いすを使って爆弾を携えて侵入する。ホリージェロームの二人によりMACセンターでの犯行と予測し現地に向かう。最終章は警察犯罪小説らしからぬ手に汗握るシーンを提供してくれた好著である。
スティーヴン・キング著「ミスター・メルセデス 上」、退職した元刑事ビル・ホッジスは、退職直前市民センターで夫人のメルセデスベンツを奪い市民の行列の中に突っ込み多数の死傷者を出した犯人サイコキラーについて思いを馳せる。しかしまさかと思うが、退職した今夫人の妹ジャネルから依頼を受け再び個人として捜査を開始した。相棒のジェロームの示唆よりサイコのウェブサイトを知り犯人を煽る。犯人プレイディーが次に描く事件はMACセンターにやってくるバンドのライブに入り込み爆弾で爆破することだ。
アントニイ・バークリー著「毒入りチョコレート事件」、送られたチョコレートによって夫人が死亡した。チョコレートには有毒のベンゼンが巧妙に含まれていた。ロジャー・シェリンガムが主催する「犯罪研究会」は総勢6名、各自がそれぞれの犯罪に対する推論を展開するといったプロットは、今までに無いミステリーとして大きな可能性を広げたと言われた、古典的ミステリーの名著として評価が高い。
貴志祐介著「硝子のハンマー」、上場を目前に控えた介護ビジネスの会社のマンションの最上階の一室で発生した殺人事件、社長の穎原が殺害された。浮上した犯人は専務で長年大番頭さながらに粉骨砕身仕えた久永だった。つまり密室トリックが完璧で社長室への侵入の是非だけでの結論だった。弁護に当たった青砥純子は防犯コンサルでもあり探偵の榎本径を起用し捜査と密室解明に当たる。様々な人物、そして現場の状況の精査と確認がなされた、最後の倒叙部分の犯人像の記述により作者自ら密室のカラクリを明かしていく手法は明快で十二分に楽しめるこれぞミステリーだと感ずる。
桜庭一樹著「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」、ある地方都市は背面に山そして海に面した喉かな田舎町にある日天候して来た女子中学生は海野藻屑という大層変な名前だった。しこも彼女の父は地元の有名人だった。体に無数の痣を付け行動は他の中学生にも理解できなかった。山田なぎさはそんな彼女の唯一の友人となった。彼女の生活も母親一人、兄一人しかも彼女がご飯を作るという貧乏家庭だった。そして藻屑は父により殺害された。平凡な日常の中である日突然起こる不条理は人々の内面意識の底にある何か安心、優しさを想い起させる。
道尾秀介著「ラットマン」、日常の中にある錯誤と錯覚を巧みにプロットの中に組み込み、一人の青年の人生を書いた作者の思惑は見事に結果として結実していたと思う。姫川青年の日常と非日常の中で起きたあるいは体験した事実それは彼の想像を超えたところにあった。そしてそれが、ある地点で彼の脳裏に迫り覚醒させる錯覚から。結局人生はそう悲観したものでもない。幸せは誰にでも掴み取れるチャンスがある。
松本清張著「火の器 下」、イランへの旅は通子にとって研究をさらに推し進め、帰国後の「史脈」という雑誌への投稿にも反映された。石造遺跡就中酒船石については飛鳥時代に既にイラン人が渡来していて酒船石の穿たれた穴は薬を作成する際の壺を現しているという見解を挙げた。ここに至る詳細な論考は作者の力量を凄さを感じさせる。在野の歴史雑誌の通子の論考は予想どおり無視され、四国の私立女子大学への赴任という思わぬ結果を齎した。公費を使いながら私的流用は元より陰湿ないじめという大学内の腐敗した状況は憂える。一方知り合った海津信六を回るミステリー彼の自殺という思わぬ結果を齎した。
塩田武士著「罪の声」、30数年前に関西で発生したグループ企業を襲った誘拐拉致脅迫事件の全貌を解明すべく大日新聞は、文化部の阿久津英二を抜擢した。手掛かり求めて東奔西走するが核心を得るには遠く何時全貌を解明できるかは不透明な期間が無駄に過ぎていった。そんな中で、一縷の望みを託しイギリスに犯人の一人が生存していることを知り単身シェフィールドへ渡る。これはという裏付けが取れないまま帰国するがある情報を入手し事件の関連があると見られる様々な人物との接触を試み事件の核心へと、しかしそこで見たものは犯人それぞれの人生に暗い影を落とし必死にまた社会の深淵に沈んで行く面々だった。松本清張張りの社会派サスペンスといったところか。
貫井徳郎著「乱反射」、街中の混雑した道路の端の街路樹が倒れて二歳になる男児が脳挫傷で死亡した。父親である地元の新聞記者の加山聡は息子が殺されたと信じてその原因は何処にあるのか?記者としての取材に長けた頭脳で原因と考えられる人々に面会し謝罪を求めた。しかし誰一人として認める者はいなかった。その事件に関与したと思われる人物の内面描写に感心して読んだ。微妙な心の揺れをこうまで文章に出来表現できる作者の技量に脱帽だ。
松本清張著「火の器 上」、都内T大学文学部史学科の助手として勤務する高須通子は、奈良・京都旅行に出掛け奈良で遺跡石物郡を見て回ることにした。そこで出会った雑誌編集者たちの中の板根カメラマンと出会う。その晩奈良で事故があり偶然通子が通報し介抱した海津信六は下って通子と同じ大学の助手を務め優秀だと噂され現在奈良で保険勧誘員として生計を立てる独身者だった。奈良県庁前で再会した板根と献血に行き、その後海津からの手紙と通子が雑誌に投稿した小論文について海津の感想の手紙を読み、どうしても海津に会うべく彼の自宅を訪問そして海津の姪の俱子と会い、話の中でイランへの訪問を促す海津に感化されイランへの旅を真剣に検討することになる。通子の恋愛の過去も明かされこれからの展開は下巻に。

日曜日, 4月 26, 2020

伊坂幸太郎著「キャプテンサンダーボルト 下」、蔵王の火口湖通称五色沼に潜む旧陸軍の秘密基地それは生物化学兵器ウイルスを開発する場所だった。井ノ原悠と相場時之は二人で潜り込んだ。地底の旧の基地から水を汲み取り桃沢瞳の待つ仙台市内へそこで巨人怪物と一線を交え相手を叩きのめして、それから銀行強盗すべく立ち振る舞いパチンコ店の社長と遭遇し無事に化学兵器を銀行の地下倉庫へ格納する。このことから窮地を脱した二人だった。奇想天外なプロットは現在流行しパンデミックになっているコロナウイルスとも関連し興味深く読んだ。
伊坂幸太郎著「キャプテンサンダーボルト 上」、何とも不思議な物語だ。お釜と呼ばれる五色沼そこに下って逸った致死率70%という村上病という名の感染症、そのお釜に宝物が眠っているという情報を幼友達の相場時之から聞いた井ノ原悠は情報収集を開始、二人とも金に困っいる。不思議な外国人グループに襲撃されたかと思うと、今度は桃沢瞳という厚労省の薬計管理官に付き纏われる、さて下巻はどうなることやら。
中山七里著「連続殺人鬼カエル男ふたたび」、御前崎教授宅で爆破事件が起きた。渡瀬警部と古手川巡査部長は捜査に乗り出す。そして駅での女性の轢断と連続猟奇殺人が続く、渦中に置かれた稚拙な犯行声明それは世間の言うカエル男だった。カエル男は精神障碍者だ。捜査は杳として進まず暗礁に乗り上げて警察庁、警視庁県警を含め焦りの色が濃くなってくる。カエル男と伏線の矢張り障害者のさゆり、そして障害者を装い母子札事件から仮出所される古沢複数の殺人事件が絡むプロットの最後の仕上げはどんでん返しだった。
歌野昌午著「葉桜の季節に君を想うということ」、探偵事務所を営む成瀬将虎は、同じジムに通う久高愛子より蓬莱倶楽部という悪徳商法を行う会社の調査を依頼される。各地を転々として会場を借り上げ桜を使って、高額な似非商品をローンを組んで売り捌く、さらに次回は自宅を訪ねさらに商品を売り込み自己破産や自殺に追い込み保険金詐欺まで働くといった悪徳ぶりだ。なんでもやろう屋を標榜する将虎は正義感から様々な困難にぶち当たりながらも悪徳商社を追い詰めて行く。彼の人生哲学は前向きで実存主義的だ。やらないうちに諦めるな。だ。
泡坂妻夫著「乱れからくり」、玩具会社の社員が隕石の落下により死亡した。その後死亡した馬割朋浩の身内の者が次々と殺害される殺人事件が発生する。宇内経済研究所といっても企業関連の調査を専らにしている社長一人は宇内舞子そして新入男性社員の勝一人という所帯である。舞子は依頼を受け調査にあたるが、次々と発生する殺人事件に遭遇する。朋浩の住む館は正に迷路で囲まれた邸宅である、そこには江戸時代から連綿と続くからくりの歴史があり莫大な財宝の隠匿の噂もあった。朋浩の死後に起こった4人の殺人は死亡した朋浩の仕業であると舞子は断定。からくりによる殺人。殺人ミステリーとともにからくりの歴史や蘊蓄にも作者の考察は興味を惹かれ第一級のミステリー小説だと思う。
伊坂幸太郎著「フィッシュストーリー」、中短編小説4編の構成である。いずれの作品も著者独自の人間観・世界観が根底にあり、それは優しさであったり、正義感であったりとした展開だ。伊坂ワールドとでも表現できる独特な世界に浸れる小説だ。現実世界の明瞭でないものを描くことにより、見えてくるものそれは最終的には人間そのものではないだろうか。
殊能将之著「ハサミ男」、ハサミ男と世間で名付けられたシリアルキラーである日高は、2人の女子高校生を絞殺後にステンレス製ハサミをやすりで削り首に突き立てるという異常犯罪者は3人目を物色し夜の公園付近まで女高生を付け狙ったが、そこで見たのは死体となって横たえた女高生の姿だった。警視庁並びに管轄警察署の刑事らの必死な捜査でも犯人は挙がらない。警視庁からの犯罪心理分析官として派遣された堀之内の奇妙な言動に気づく管轄刑事達、事件は思わぬ伏線を辿り息つく。
中町信著「模倣の殺意」、何故か?再読となった。推理小説の作家坂井正夫が服毒自殺により死亡した。遺書はなかったが、最後に脱稿した小説の題名どおり7月7日午後7時に実行され死亡した。彼の死を回り小説家津久見と出版社に勤める高名なしょうせの長女中田秋子が独自に解明に向け捜査を行った。結末は意外なものだったが、少々読者の期待を裏切るプロットだ。所謂叙述トリックの先駆けといわれた小説だったということです。
道尾秀介著「カラスの親指」、詐欺師で暴力団に雇われ乗っ取り屋として生きる武沢はある貧乏家庭の夫人を窮地に追い込み自殺させてしまう。ある日上野でひょんなことから知り合いになった女性さらに偶然知り合うテツさんさらにまたもう一人の女性とその恋人貫太郎この5人の柵で生活することになる。ヤクザに付け回される生活から脱却すべく計画を練り事務所に踏み込んだが、結局は失敗に終わる。これらの筋書きを全て承知の上で書いたのは実はテツさんだったと。作者の何とも言えない人間の慈愛と周到に用意されたプロットには脱帽だ。
東野圭吾著「容疑者✕の献身」、ガリレオシリーズ湯川学大学助教授が活躍するものだと思う。このシリーズは初めてなのか不明。石神彼は湯川と大学の同窓生だ。彼の住むアパートの隣に母͡娘が住んでいる。ある晩元亭主が隣に訪ねて来てひと悶着あり母娘は炬燵のコードにより扼殺してしまう。隣で雰囲気を嗅ぎ取った石神は協力を母娘に申し出、遺体を処分する。しかし天才数学者といわれた石神が用意した母娘を守るアリバイ作りは、絶対的愛情を裏に持つ奇想天外なものだった。人間の深い愛情とミステリーのプロットは中々だ。

日曜日, 3月 29, 2020

赤川次郎著「マリオネットの罠」、長野県茅野市の山荘は古い洋館でレンガ壁には蔦が配い趣を抱かせる広大な敷地を有していた。館の主は古美術商だという、三人の娘と使用人が男女各1名づつおり、そこに上田修一というフランス旅行から帰って来たフランス語の家庭教師がいた。修一は二人の館の娘、紀子と芳子が出かけた隙に屋敷を見回り偶然地下で追う一人の妹を発見する。親しくなった妹の雅子は修一の計らいで脱出して次々と殺人を犯す。一方姉の紀子は麻薬の闇ルートを束ねるトップとして君臨していた。修一の許嫁と刑事らの情報戦により事件の解明が進んでゆく。この小説のプロットは非常に良く練らていて圧巻だ。
恩田陸著「ユージニア」、田舎町の旧家それも医院で起きた大量毒殺事件が齎す直接の被害者及び家族、友人またその医院の家族医院に務める家政婦等々に与える負の遺産を回り苦悩する人間の物語だ。医院の家族の一人で目の見えない美少女を回り4半世紀を過ぎた今明らかにされる犯人とはやはり少女そして少女に感化された青年による犯行だった。人間の体感と記憶の奥底に潜む疑念そしてそこに自分の人生を重ね合わせ懊悩する人間模様を描いている。
横山秀夫著「ルパンの消息」、高校生3人による期末試験答案用紙強奪作戦、練られたのはいつも屯する喫茶店「ルパン」だったことからルパン作戦と命名した。試験は4日に渡るそして作成も4回実行せねばならない。そして4日目答案用紙があると見なされる金庫を開けた、中から教師の嶺舞子先生の遺体が投げ出された。それからの3人は他殺と断定し捜査よろしく様々な考え巡らし事件を追い詰めたが駄目だった。15年目の時効を迎えた日、刑事の溝呂木が下した決断から急展開となって解決する。複雑な良く出来たプロットを人生の悲哀と希望を感じさせる好著といっていい。
池井戸潤著「果つる底なき」、著者お得意の銀行ものだ、しかし今回の書はミステリー小説だ。銀行と企業の凭れあいと銀行員の上下関係から派閥争いまで、この一冊で銀行が解るほどだ。同僚坂本が不慮の死を遂げ、引き継いだ私主人公は不正送金疑惑を発見した。そこを端緒に次々と追跡する主人公の真摯な生き方、悪を赦さない人間を常に描く著者の信条が見える。好著だ。
有栖川有栖著「46番目の密室」、クリスマスパーティーに集った6人、北軽井沢の推理小説家真壁精一の別荘である。ある夜殺人事件が発生するしかも死亡したのは当の真壁氏と別荘周辺をウロツイテいたと思われる謎の男だった、二人は暖炉に頭を突っ込み灯油を掛けられ顔を酷く損傷していた。参加者の火村助教と有栖川は事件の真相を解明すべく立ち上がる。密室殺人としは絶賛である。
石持浅海著「扉は閉ざされたまま」、大学時代の部活動での分科会のメンバーが絡む成城の別荘後の宿泊施設にての密室殺人事件がテーマだ。伏見が新山を殺害し浴室に閉じ込め溺死として偽装を装う殺人事件。伏見が持参した睡眠薬と風邪薬を混ぜて飲んだ新山は昏睡状態になり、その機を狙って殺害した伏見とメンバーの動向そしてメンバーの中にいた優佳が犯人特定を進め遂に伏見の犯罪と確定する。犯人伏見の殺人動機は今一納得できないが、上手く纏められたミステリー小説だ。
小杉健治著「絆」、弓岡産業の社長である勇一が自宅で殺害された、通報した妻奈緒子は当然嫌疑を掛けられ裁判で被告人として出廷した。被告人奈緒子の弁護を引き受けたのは暫く弁護活動を休止していた原島弁護士だった。被告奈緒子は3人兄弟ですぐ下の弟は軽度の精神薄弱児だった。殺害された奈緒子の夫、さらに愛人と障害者と複座なプロットを見事にカバーする好著だ。
ポーラ・ホーキンズ著「ガール・オン・ザ・トレイン 下」、メガンの死後、レイチェルとトムそして現在の妻アナさらにメガンの死から嫌疑を受け警察の執拗な追及を受け精神的に参っているスコットと四者四用の錯綜した怒り罵声、懊悩がそれぞれに交錯していた。そんな折、レイチェルははっと思い浮かぶトムとメガン二人が親密な関係になっていたのでは?とさらにメガンを殺害したのはトムだと確信した。トムの家でレイチェルは彼を追及し最後に彼女はトムを殺害してしまう。女の妄想というか異常性を見事に表現した作品だ。
伊坂幸太郎著「クジラアタマの王様」、著者のイメージ通りの作品だと思う。現実と夢との相克、夢の中で見たもの事象が現実リアルの世界で実現されてしまう。主人公岸と都議会議員と俳優の小沢との三者が互いに絡み合い物語は複雑怪奇だ。最終章の新型インフルのパンデミック的様相は現実に発生している新型コロナは何故か酷似していて驚愕した。
ポーラ・ホーキンズ著「ガール・オン・ザ・トレイン 上」、著者の本は初めてだ。ロンドンから少し離れた町に住むレイチェルは、離婚をして今は無職しかしキャシーの親切心で彼女にフラットに住んでいる。彼女に解雇された事実を知られない為に毎朝電車でアシュリーからロンドンへ電車通勤して胡麻化している。電車から見える下って住んでいた住居の近くでの家で普段と違う光景が見えた。スコットとメガンの暮らす家でメガンが夫を違う男性とキスをしていた状況を見た。数日後メガンは失踪してそして数週間後に彼女の住まいと10kmも離れていない森の中で死体となって発見された。。
拓未司著「禁断のパンダ」、料理ミステリー小説という新しい発想は著者の調理学校出身という出自からのものか?神戸を舞台にフレンチの料理人を取り巻く様々な人間模様が織りなす殺人事件の底にある人間の業のような得たいの知らない神をも恐れる人間を描いている。欲を言うなら警察刑事コンビを黒川なみに面白く描いてほしかった。
松岡圭祐著「万能鑑定士Qの事件簿 11」,凜田莉子、万能鑑定士Qシリーズ第11作目だ。今回は京都の寺、御隠時に纏わる住職こと水無瀬瞬と莉子との知恵比べとなった。瞬は莉子と同じチープグッズ店で修業した仲だと知った。次々と寺を改革し莫大な利益を上げまさに復興した住職水無瀬がしたのは詐欺師のようなトリックによるものだった。
アンソニー・ホロヴィッツ著「カササギ殺人事件 下」,上巻を読んでから暫く経って下巻が気になり読み始めた次第だ。その一は、ミステリー小説内の事件を廻るアティカス・ピュントの謎解きが進行し、もう一つは現実な私ことスーザンの身の回りや「カササギ殺人事件」の出版や著者アラン・コンウェイとの確執そして最後には同時に物語上と現実の私スーザンの上で起こった事件が一挙に解決するといった複雑精緻なプロットには驚かされる。
松岡圭祐著「万能鑑定士Q 10」,お馴染みの万能鑑定士Q凜田莉子シリーズ第10作目。今回はヤクザが絡みエメラルド不正輸入と売買を豪華客船にて行う組織と警察の対決に割り込んだ莉子の活躍、美容室チェーンで起こるお抱え弁護士の不正、さらに普段お世話になっているチープグッズ店長の騒動と事件満載の痛快解決劇だ。
知念実希人著「ムゲンのi 下」,愛衣は23年前の自分の母親を失った時の犯人、連続殺人魔と事件のデジャブから逃れられないでいる。イレス症候群から三人を覚醒させた現実を見るが心は救われない。自分の妄想に浸り現実世界から夢幻の世界へと移していく自分を理解できないでいる。そんな折、連続殺人魔が院長の袴田と解り漸くデジャブから脱し夢幻から現実世界が繋がった。それは今は無き家族と二匹との愛情に支えられた愛によって叶えらたものだった。

水曜日, 2月 26, 2020

知念実希人著「ムゲンのi 上」、神経精神科付属病院に勤務する識名愛衣彼女は神経科の医師で彼女の患者はイレス症候群という原因不明の病名で40日以上眠ったままの状態だ。そんな時に実家に帰った彼女に祖父母が彼女に告げたマブイグミという言葉が発端になり深い闇の中に侵入し病室の患者のマブイを探し始める。侵入した彼女を援助してくれるのはククルという卯西猫とともに二人の患者のマブイを発見し患者を覚醒させる。現実のリアルと精神世界を交互に描きながらの不思議な物語である。。
伊坂幸太郎著「モダンタイムス 下」、渡辺が向かった盛岡で耳にした情報は、安藤商会やその裏で仕切る安藤潤也について、また遠い親戚であることも判明。物語は多岐に渡り展開し妻佳代子と大石内蔵助や五反田正臣らと学校での小学生惨殺事件の真相を突き止めようと危険な状況を潜り抜けならが核心へと、そこで登場した学校の用務員だった永嶋丈は国会議員になっており、作者の国家観も垣間見せるといった波乱の展開に読者は翻弄されっぱなしといった嬉しい悲鳴だ。
伊坂幸太郎著「モダンタイムス 上」、IT会社に勤務し恐妻家の渡辺は、依頼された案件である会社のシステム変更に回され、そこで発注元のゴッシュという会社を知る。プログラムを分析する内にある検索語を待って誘導するシステムだと理解する。そこからある二つの検索語により検索した人間に不幸が襲い掛かる。渡辺はそんな状況の中で安藤商会なる単語を知り、その商会を知るべく東北は盛岡へと有給を取り出掛ける。。。下巻へと
伊坂幸太郎著「ホワイトラビット」、著者の書を読むのは久しぶりか?恥じてなのか記憶にない。物語は誘拐を業とする犯罪グループ内の抗争に端を発し籠城事件に発展する警察小説だ。場所は宮城県仙台市のノースタウン高級住宅街で起きた籠城事件だ。県警の課長夏之目は過去の自らの犯罪を引き摺りながらも捜査の指揮を執る。グループ内の内ゲバの仲間同士の遣り取りを著者はユーモアを交えて展開させる。
中山七里著「悪徳の輪舞曲」、少年の時少女を殺害し遺体をバラバラにしtその欠片を方々にばら撒いたという御子柴礼司は医療少年院で更生を遂げ、今や弁護士としてそれも悪徳弁護士として名を馳せている。その彼が寄りによって自分の母親を弁護することになった。彼女は再婚相手を自殺に見せかけ謀殺したという事件だ。妹梓から依頼された御子柴が見せた弁論は度肝を抜くものだった。過去に犯歴を持つ弁護士て現実を生きる御子柴の人生を賭しての償いは哀愁をも感じさせる。
太田紫織著「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」、ある日であった事故、そこで櫻子と舘脇が見たのは頭蓋骨だった。新聞記者の八鍬の勧めで捜査を開始した二人は旭川から隣町の芦別へ、骨を限りなく愛す櫻子と高校生で母と二人で暮らす館脇正太郎は法医学者を志望する、この二人のコンビと事件の真相は複雑にしかも血縁も歴史も絡めてのプロットには感服。
降田天著「すみれ屋敷の罪人」、作者降田天は、作家二名のペンネームだという。物語は米国育ちで日本に留学している西ノ森泉という大学生が祖母から依頼され戦中戦後の名門及び貴族としての紫峰家についてさらに近年邸宅の庭で発見された白骨死体についての調査だった。西ノ森は当時紫峰邸にいた使用人、書生らに次々と面会し過去を掘り下げていく。殊に紫峰邸の三姉妹の当時の行動やら書生、使用人との関わり合いを探っていく過程で判別できた事実は余りにも人間の悲しい一面だった。
上遠野浩平著・荒木飛呂彦原作「恥知らずのパープルヘイズ」、本作読んで見たが、この作品は前作品4部を読んだこと前提にしているらしい。イタリアはシチリア島といえば、ゴッドファーザーでも知られるギャングの聖地だ。麻薬売買に明け暮れるギャング同志の抗争、フーゴという少年を中心に仲間あるいは敵と様々な人物が登場する。話は漫画チックであるが勇気と希望と挫折を繰り返しながらも必死で生きる姿を描いている。
青崎有吉著「体育館の殺人」、風が丘高校の旧体育館で起こった殺人事件。そこで作られた密室、このトリックを解決すべく登場するのは学校の裏の使われてない何故か部室で寝起きしているアニメオタクの裏染天馬、強烈なキャラクターを作者は持たせた。天馬が論理的に着々と現実の証拠、証言を積み重ね真相に迫る展開には思わず引き込まれてします。用意周到な計算されたプロットには感服だ。
松岡圭祐著「万能鑑定士Qの事件簿 9」、例の凜田莉子鑑定士シリーズの9作目だ。今回は、フランスはルーブル美術館を訪れた莉子に日本で開催されるレオナルドダヴィンチの「モナ・リザ」展に合わせ臨時学芸員の試験があるという。莉子は見事に突破して理紗とともに六本木の洋館に詰めて様々な試験を受け成長するが、しかしこの試験とは後に窃盗犯のダミーと判明、窮地に陥る莉子をやはり救ったのは週刊角川の小笠原だった。

木曜日, 1月 30, 2020

若竹七海著「さよならの手口」、著者の葉村晶シリーズの長編である。休業中で本屋、Murder Bear Bookshopでバイトしていた葉村に往年の名女優から娘志緒利の捜索の依頼を受ける。元警視庁刑事を退職した探偵が一端捜査をしたことを知ったが、捜索は要として進展せず。女優の過去、フィクサーと呼ばれる男との関係やらと複雑に絡み合い殺人が連続して発生、しかしメゲナイ葉村は満身創痍で立ち向かう複雑なプロットは作者の計算されたものだ。
松岡圭祐著「万能鑑定士Q 8」、凜田莉子鑑定士シリーズ第8作だ。今回は故郷波照間島と竹富島の水不足について一波照間島の議員の発案で台湾の発明家、黄春雲なる人物と接触し簡単にフィルターを通すだけで海水が真水になるという夢のような話に乗り12億円でもって購入した。疑惑を深めて莉子は故郷友人二人と共に台湾に渡り調査を開始した。犯人の意図を見事に捉え12億円の回収に成功し島の財政を救うこととなる。

ジェイン・ハーパー著「渇きと偽り」、オーストラリアはメルボルンから車で6時間以上離れた田舎町キエワラ、ここで生を受けた今現在メルボルン連邦警察に勤務しているアーロン・フォークは、かっての友人から手紙を受け取り親友の葬儀に出席すべく帰郷する。一家惨殺の悲劇は疑惑へと変わり地元の巡査部長とフォークは連携して捜査を進めることになる。捜査は中々進展せず暗中模索の中で一筋の光が見えて徐々に全貌が見えてくる。冗長性は否めないが海外の推理小説に良くある例だろう。
連城三紀彦著「戻り川心中」、大正期から昭和に掛けての暗い時代を背景として書かれた短編5つを載せている。著者の本に接するのは初めてだが、その文章の流れるような美しさと言葉・単語の選択感というかミステリーとして意識する前に感激してしまった。暗い時代背景の元に起こる殺人事件と人間の愛を深く洞察した物語は傑出したものだと感ずる。
ギリアン・フリン著「ゴーン・ガール 下」、結婚生活五周年の日に妻エイミーは、失踪した。次第にマスコミにも知られ騒然となる日々の中、ニックは右往左往する。解雇、悔恨、愛憎とありとあらゆる想念が去来し神経をやられる。全ては、エイミーの考えに考えられた策略だった。結婚生活を破綻させ愛を奪った夫ニックに対する猛烈な復讐心を持つエイミーの闘争心というか戦略は警察、FBIをも打ち砕く凄まじいものだった。夫婦の愛憎、疑念と全ての感情と交錯を含めた類まれな作品でしかも何故か恐怖を感じるミステリー作品だ。
横関大著「グッバイ・ヒーロー 上」、中野区にあるピザ屋でバイトする店員伊庭涼太はバンドを結成し夢を追いかける友人らと一緒に働いている。生来の正義感もつ彼は困っている人がいたら助けなければいけないという性格だ。そんな彼は強盗事件に遭遇しおっさんと呼ばれる過去運び屋をしている50絡みの男と仲良くなる。そこからの展開は想像を絶するユーモア溢れる運びだ。世の中捨てたものじゃない、誰か助けてくれる人がいるという真のユーモアを感じさせるエンターテイメント小説だ。
ギリアン・フリン著「ゴーン・ガール 上」、マンハッタンで裕福な家庭に育ったエイミーと結婚したのはミズーリ州の田舎町で育ったニック・ダン。二人は共にライター物書きとして生活していたが、インターネットの普及やらでリストラされ二人は無職となりニックの田舎町に引っ越すことになった。結婚生活は当初は順調そのもので愛し合う二人の姿を見ることができたが、結婚五周年前妻であるエイミーが失踪した。ニックの置かれた現実の状況とエイミーの日記という形で物語は進行し結婚生活の破綻状況が具に見えてくる。。
原寮著「それまでの明日」、お馴染みの西新宿の渡辺探偵事務所の1人探偵沢崎の事件簿と言ったところだ。ある日依頼された調査を開始した彼が向かったのはサラ金会社ミレニアム・ファイナンス、そこで偶然にも強盗事件に巻き込まれた、管理する店長は行方不明という不信に突き当たる。その後展開するプロットは予測できないもので、ミステリーといえるかどうか微妙である。
堂場瞬一著「第四の壁」、大友鉄、小学三年生の息子と暮らす警視庁刑事総務課に勤務する彼の大学時代の劇団夢厳社で殺人が起こった。主催者が殺害され当時劇団にいた大友が事件を捜査することになった。昔仲間だった彼らとの軋轢と恋愛を含めて様々な想念を織り込み同僚の柴刑事と共に事件に当たる。そこで発覚したのは劇団の脚本「アノニマス」の筋書き通りに事件が進展していることを掴んだ。劇団員相互の嫉妬と相克が背景に。。
横関大著「スマイルメイカー」、著者の何とも言えない奇抜なアイデアとプロットに感服だ。都内を走る3台のタクシー夫々の運転手ドライバー、五味、恵子、袴田の内五味がある日中学生の少年・優を乗車させる、家出して来たという出出しで事件が始まる。悪徳弁護士の優の父親、離婚した弁護士マリ、被害者の元秘書の女性を回りタクシードライバーの活躍が面白い。
横関大著「ルパンの帰還」、和馬の妻となった華と娘で幼稚園に通う杏が乗ったバスがジャックされた。捜査を行う和馬と三雲、それから次々と殺人事件が発生し刑事部長までが爆破の一歩手前で回避という異常事態だ。事件に関与している人物が間宮玲子並びに元刑務官の岩永という二人組と断定された。最終章で明かされた事実は華の叔母にあたる玲子実は三雲家の縁者だと判明した。
堂場瞬一著「アナザーフェイス」、警視庁刑事部総務課に属する大友は、首都銀行の行員の息子6歳が誘拐されたとの情報により捜査一課に助っ人として参入した。現金受け渡しを受け入れ東京ドームに向かうが犯人側の巧妙な策略により犯人はおろか現金一億円までも奪われた。捜査一課一丸となってコンサートの名簿を当たるなでして掴んだ情報元に犯人特定に邁進する。結果は思わぬものとなった。
横関大著「ルパンの娘」、奇想天外な発想とプロット、泥棒一家と警察官一家という相対する家族双方の娘華と和馬が結婚するという。何故か微笑ましい互いの家族像が見える泥棒一家の生態と警察官一家の生態、奇を衒った想定ではあるが、仄々とした家族愛を感じさせるエンターテインメント小説として仕上がっている。
柚木裕子著「蟻の菜園」、現場労働者の親の元で現場に駐車するバンの中で女姉妹は、無戸籍児として育っていった。酒癖の悪いアル中の親は暴力を振るい姉妹を脅えさせる毎日だった。その後二人の姉妹は施設で育つが改心した親の元で引き取られ、さらに親に犯されるという悲惨な人生を歩むこととなる。雑誌社の記者は姉妹の生い立ちを記事にすべく調査を開始する。そこで遭遇した事実は過酷なまでの生き様だった。社会によってこれほどまでに虐げられた姉妹に人生は如何ほどのものか?
東野圭吾著「ラプラスの魔女」、赤熊温泉という場所で硫化水素による死体があがった。元は高名な映画関係者水城義郎だと。一緒にいた妻はただ茫然としていた。苫手温泉でも硫化水素猛毒ガスで元映画俳優が死亡した。義郎の妻千砂都の住居から管轄の刑事が一人捜査に乗り出す。大学で地球環境を教える青江教授は温泉地での事故調査を依頼され赴くそこで遭遇した女性は羽原円華という人物だ。ここからプロットは読者の想像を超える展開となり一気に最終頁まで。

金曜日, 12月 27, 2019

ジェフリー・ディーヴァー著「ブラック・スクリーム」、著者のヒット作、リンカーン・ライムニューヨーク市警顧問と現役捜査官アメリア・サックス刑事シリーズだ。今回は米国で発生した殺人事件を追ってイタリア、ナポリまで遠征し現地警察との合同捜査となる。犯人と目されるコンポーザーと異名をとる男は統合失調症などの精神病患者で音に恐ろしく敏感な男である。犯行は多岐に渡り複雑なプロットを持ち前の微細証拠物件を丁寧に解析しながら捜査の核心に迫るライムの手法はライム独特なもので今回も威力を遺憾なく発揮し捜査を進める。プロットの曖昧さはあるものの十分楽しめた作品だ。
高田郁著「あきない世傳金と銀 七」、江戸田原町に出店した大阪天満の五十鈴屋の七代目女店主「幸」の呉服商いの奮闘を描く物語だ。常に新しきを追及し考えかつ縁を大事に人と人とを繋ぎ下って姑の信条だった言葉「買うての幸せ売っての幸せ」を実践する商いは徐々に江戸の町に受け入れられつつあった。過去の苦難を諸戸もせず人情に厚く商才に長けた女性を描く作者の作品は読者に一服の日本人として憩いを与えてくれる。
横関大著「再会」、小学生4人で沢へ蟹を取りに鬱蒼とした森に向かった。そこで遭遇したのは警官が殺害されつつある現場だった。友人の父親の警官が強盗犯によって殺害された。その後数十年たったある日友人の兄が銃弾を受け殺害され友人の一人の女性が捜査線上に浮かんだ。友達の一人は刑事になった捜査を担当することに神奈川県警から派遣された刑事とともに20数年前の警官殺しの真実が暴かれる。
若竹七海著「悪いうさぎ」、探偵、葉村晶シリーズ失踪した少女の捜索を依頼された葉村が様々な事件に遭遇しながらも事件解決と邁進する。プロットは複雑で多岐に渡り終末を想像できないで、読者を翻弄するところに作者の意図を感じ楽しめるミステリーとなっている。
松本清張著「黒い福音」、昭和三十年代に実際に起こった事件を素材に書き上げた作品だという。東京郊外の教会の神父と国際的な闇取引業者が絡み、若い神父トルベックと生田世津子の許されない恋愛を介在し事件が発生、世津子が殺される。警視庁一丸となって事件捜査に当たり遂にトルベック神父に嫌疑が濃紺になった段階で母国に逃亡されるといった結末だ。闇取引と許容できない恋愛を絡め殺人ミステリーといったプロットは見事だ。
堂場瞬一著「高速の罠」、高速バスで里帰りをしていた大友刑事の息子優斗がパーキングで拉致された。事件はその後佐久インター付近のフェンスにバスが突っ込み乗客一人が死亡するといった結末だった。しこもバスはネットを介して無理やり操作させられ事故を引き起こした。バスの運行会社信越バスの捜査と共に遂に大友刑事も捜査に参画する羽目になる。信越バスは8年前にも事故を起こし当時の運転者は出所後に自殺している。プロットは従前どおりの結末で被害者家族の復讐で結論づけるが、最終章は読ませる迫力がある。
松本清張著「時間の習俗」、相模湖畔で夜殺害された交通関係の会社の社長そして同伴した女性の失踪から事件が始まる。警視庁捜査一課警部補の三原が捜査に臨む。さらに九州で発見された男の死体、果たして事件は関連しているのか?作者の綿密なプロットは捜査の壁を乗り越えて行く三原警部補の読者と一体となって捜査が進展していく面白さを余すところなく描き出す。
若竹七海著「静かな炎天」、葉村晶、女探偵シリーズの短編集だ。著者の作品は初めて手に取るが何故かミステリーとして読ませてくれない。古書店の二階に事務所、探偵調査所の探偵葉村、暇な時は本屋を手伝い近所からの依頼に調査するといった一風変わった探偵物語だ。プロットが何故か貧弱でミステリーとしての面白さは無い。
横関大著「ホームズの娘」、ユーモラスであり得ない設定プロットだ。警察一家の息子の警察官の妻は泥棒一家の娘、さらに警視庁に勤務する捜査一課の同僚の新人女性は実家が探偵事務所を経営しているという異色の設定だ。そこで巻き起こす事件もまた奇想天外であり読者を翻弄する。しかし根底にあるのは作者の登場人物たちへの限りない愛情であり人間愛だ。
原寮著「そして夜は甦る」、著者の本は他に読んでいると思うが、設定というかプロットが複雑に入り組んでいて読者を惑わせるに十分な探偵推理小説だ。沢崎探偵の捜索人捜査は意外な展開を見せ、終いには都知事選に絡み知事の兄弟から元警察官の副知事まで登場させ射撃による偽装殺人と片や依頼人奈緒子の結婚前の状況と目まぐるしく展開するプロットはこじ付けをも思わせる。作者の力量を感じさせる作品だ。

松本清張著「徳川家康」、少年少女用に清張が書いた伝記物として、徳川家康の生涯と彼を取り巻く時代の趨勢と種々な人間を描いた作品で、丁寧に解り安く解説した書だ。幼少の頃から母と死別しさらに十数年に渡り今川家に人質として暮らし、織田信長さらに豊臣秀吉に仕え、秀吉の死後も随分と待ってからの天下とりでした。勤勉、実直で忍耐強い家康の生涯を人物像を描き挙げている伝記。
松本清張著「夜行の階段 下」、美容師佐山道夫の暗い闇の殺意とでも言おうか、社長夫人波多野雅子を御岳のドライブに誘い山中で自殺に見せかけ絞殺する。その殺人を見透かしている元女性雑誌編集員枝村幸子は道夫に対して結婚を強要しマネージャーとして美容院の経営全般を取り仕切ることになり、又もや道夫の黒い殺意の上で殺害される。アリバイに利用した福地フジ子もでも殺害しようとしたが、自らも湖の底に沈んだ。道夫を取り巻く女性の生態を作者はこれでもかと描く力量には圧倒される。
アンソニー・ホロヴィッツ著「カササギ殺人事件 上」、英国の片田舎で起きた二つの殺人事件の捜査を協力することとなった余命幾ばくもない名探偵カティス・ビュエントと助手のフレイザー。前は修道院だったという豪邸に住む家政婦メアリーとその主人マグナスが殺害された。マグナスを回る因縁とメアリーと夫を回る確執さらにメアリー子供たちとの絡み合い複雑なプロットに挑むビュエントは家政婦の殺人事件の犯人を特定した。
松本清張著「夜行の階段 上」、美容師佐山道夫はジャーナリズムを最大限活用し徐々に評判を伸ばし務めている美容室も繁盛を極めていた。道夫には二人の愛人がいた。一人は証券会社の社長夫人と雑誌社の編集員である。九州の貧困家庭から出た道夫にとって過去と決別し新たな道を探し今現在の自分を客観的に冷静に見つめる眼が彼にはあった。彼は独立を希望し自由が丘に店を持つため証券会社夫人に多額の金を出資させ目的を果たした。執拗に追いかける夫人は道夫の店の繁盛を知って返済を迫り始めたその時殺意が浮かんだ。
滝田務雄著「田舎の刑事の趣味とお仕事」、ある田舎の小さな警察署そこには署長と課長以下刑事が3人いる、一人は主人公の黒田鈴木刑事、黒田に言わせればバカな白石刑事、もう一人は新人の赤木刑事だ。暇を弄ぶ田舎でも事件が起これば一番に3人は駆けつける、黒田の機転と推理で事件は解決へ、その間3人の会話が軽妙で笑える。脱ミステリーで緩くて少し面白い推理小説だ。

木曜日, 11月 28, 2019

須賀しのぶ著「革命前夜」、19世紀後半1989年ベルリンの壁崩壊前の東ドイツドレスデンに留学した日本人学生眞山は、学生仲間らと共に一心に音楽就中ピアノのレッスンに明け暮れる毎日だ。この時期の東独はシュターゼという国家保安院さらに一般民衆による告げ口による徹底した西側の思想取り締まりに躍起となっていた。眞山は気づく過酷な社会でも民衆の生きる力は即音楽そのものの力であると。音楽と人生と社会をテーマに少しミステリーも含む傑作だ。
堂場瞬一著「壊れる心」、警視庁総務部犯罪被害者支援課に在籍する村野警部補、同僚で動機の優里、支援課に初動支援として来ている新人の梓を中心に交通事故に端を発した事件に関わる。被害者は5人大人や子供も2人犠牲となった事件、被害者支援に当たっていた村野らはさらに困難な状況に陥る。被害者の一人がビルに立て籠もり一人の女性を監禁してビルを爆破すると予告してくる。支援として最後まで自分の信念を押し通す男を描く作者の視点に限りなく人間の生と優しさを感じる小説だ。
松本清張著「かげろう絵図 下」、昭和33年から34年に新聞に連載された著者の大作は社会と人間、男と女、権力闘争、派閥抗争等など世の中のありとあらゆる事象を描き尽くし尚且つミステリーで味付けして読者を最後まで引っ張る名著である。江戸中期第11代将軍家斉を中心に大奥での暗躍と堕落それを追及する脇坂淡路守と水野越前守忠邦在野の又佐衛門と新太郎、裏で糸を引くドン石翁とその一派多彩な顔触れを揃えて織りなす江戸絵巻は正に圧巻である。
松本清張著「かげろう絵図 上」、江戸幕府徳川11代将軍家斉を取り巻く、大奥と重臣達さらに旗本らによる権力闘争を軸に物語は展開する。大奥での覇権争い家斉の寵愛を受ける派閥抗争、世継ぎを画策する重臣、旗本と百花繚乱の態で厚みを持たせ歴史ミステリーとも言うべき作者渾身の作だ。上下巻合わせて文庫本1100頁に及ぶ大作である。
堂場瞬一著「破弾」、刑事鳴沢了シリーズだ。30年前の学生闘争の生き残りが発端で殺人事件が発生した。鳴沢と小野寺冴が任務にあたる。二人とも脛に傷を持ち一課の片隅で生きている同僚だ。そんな二人が捜査にあたる。クライマックスは予想外で鳴沢の大学時代の先輩が絡み革青同という闘争組織の内ゲバから殺人を犯したメンバーが浮かび上がる。プロットに少し無理はあるものの中々の迫力ある展開で一気に読ませてくれる。
堂場瞬一著「複合捜査」、埼玉県警に夜間緊急警備班通常NESUが設置され県警一課から指名された若林以下28名が任務にあたる。この中には検証捜査で特命班として活躍した桜内刑事も入っている。埼玉市の中心街で、放火騒ぎが発生しNESUが始動開始、さらに殺人事件が発生若林は捜査に乗り出す。見えてきたのは過去若い警察官を説得して辞めさせた青山という警察官だった。犯人青山は執拗に若林を陥れる策を弄し警備班就中若林に挑戦してきた。終盤の犯人逮捕までの緊迫感は読みごたえ十分だ。
松本清張著「影の車」、者昭和36年頃の雑誌への投稿作品、短編7編である。今まで短編に数多く接しているが、どの作品もモチーフといいプロットといい秀逸である。各短編物語の裏に日常性の中の小さな欠片が人間の根底にある悪を助長させ殺人という結果を齎す。それ故不条理な恐怖を見事に描き出す作者の力量を評価せざるを得ないのである。
堂場瞬一著「潜る女」、刑事総務課に勤務する大友鉄は詐欺事件担当部署の二課の要請で捜査に駆り出された。捜査線上に浮かんだ美人ジムのインストラクター荒川美知留に接触し状況を探ることになった。そんな折に主犯格の男の遺体が発見された。二例目だ。捜査は俄かに緊迫の様相を呈してきた。荒川の動向は一向に犯人と接触を見せない、被害者女性が犯行を自白した。複数の詐欺被害女性らで殺害したと。刑事仲間と詐欺と殺人事件を絡ませたプロットは気が利いていて一気に読める書だ。
堂場瞬一著「時限捜査」、東京板橋で殺害された人物を捜査する警視庁の神谷、その頃大阪では万博公園内の太陽の塔のほか4、5か所で爆発騒ぎがあり警察官が駆り出された。しかし事態は深刻で大阪駅に籠城した犯人が人質を取り立て籠もるという事件が発生、神谷と同じ特命班で活躍した島村が梅田署で署長をしている地域でだ。籠城は数十時間に及び焦りが警察側にも見られた。その頃捜査していた神谷の情報により籠城犯の氏名が明らかになった。いよいよ最終段階になり府警の宣伝頭、射撃の選手下倉の出番となった。東京と大阪を結ぶ犯罪と籠城の緊迫感の描写は圧倒的だ。
堂場瞬一著「凍結捜査」、警察庁の指示の元特命班で活躍した刑事の一人北海道警の安井凜刑事が今回の主役だ。雪の下で頭部を二発銃弾を浴びて絶命した被害者が発見された
その後女性がやはり頭部に二発の銃弾を受け殺害される。事件の捜査は遅々として展開を見せることもない。被害女性の家族の意外な事実、それはロシアとの繋がりだった。ロシアンマフィアのブリアによる犯行と断定できたがその黒幕は依然として不明、北海道らしいロシアとの繋がりを軸に展開していく今回は最終的に結論がでない結果だった。

水曜日, 10月 30, 2019

松本清張著「危険な斜面」、6編の短編集である。清張作品の短編は実に見事なまでに人間を描き、社会を描き、その中に潜む人生の寂寥感を漂わせていて、かつミステリー的な面白さを秘めている。短編を綴る技術というか能力は正に天下一品だ。
堂場瞬一著「検証捜査」、伊豆大島に左遷された神谷警部補に非常招集がかかり警察庁特命班という組織に入ることになる。女性暴行・殺害事件の被告として神奈川県警が挙げた犯人が逆転無罪となり県警への捜査を特命班が担うことになった。組織対組織のぶつかり合いと隠ぺい画策と進展が見えないまま別の犯人を捜そうとする神谷警部補、謎が徐々に明かされてゆく過程は冗長さが付き纏うが道警の紅一点安井凜ほあん部長との淡い恋など散りばめて物語にバラエティーを与えている。最終的に警視庁内部の刑事の犯行だと判明する過程が少し短絡的ではないか?
堂場瞬一著「熱欲」、金取引を肴に投資を募るねずみ講まがいの組織K社に関連した人間が殺害される。元刑事で今生活安全課にいる鳴沢了が組織の追及に乗り出した。K社の組織は営業社員を恫喝し利益を上げなければ系列の闇金業者による借入を強要され遂には自殺と逃亡という結果になる。さらに組織を外れた人間を処罰するのに中国マフィアを使うといった手口、これこそが警察小説のセオリー通りのプロットかと思う。
松本清張著「眼の気流」、昭和38年に発表された短編4作品が収められている。いずれも現代で読んでも古臭さは微塵も感じられず推理小説として確たるものを持っている。作品の底流にある男の悲哀と怨嗟そして漠として不安は、高度経済成長期中の孤独感に覆われ四苦八苦する男の姿を見事に描き出している。プロットも多彩であり十分楽しめる作品だ。
畠山健二著「本所おけら長屋 十三」、おけら長屋を中心に寄り添って生きる貧乏でも気持ちがいい仲間、万造、松吉、八五郎、鉄斎、お咲に大屋、魚辰、金三と彼らが巻き起こす様々な事件を人情で解決する物語。作者が描く物語は日本人の心の内に自然と溶け込むように入る。次の物語が待ち遠しいほどだ。
松本清張著「男たちの晩節」、昭和30年前後高度経済成長に向かう社会で働く男たちの悲哀を描いた作品で、今読んで見ても深い感慨と共感を呼ぶことは間違いない。物語の状況設定が巧みでサラリーマンの定年間際、または定年後の悲哀がそれとそこはかとなく絶望が死への憧憬が感じられる短編集である。

上毛新聞社著「ぐんまの自転車さんぽ」、群馬県内を10地区に分けて、それぞれの自転車による散歩道を紹介した本である。名所・旧跡を初め見どころ、味所が紹介されている。またレンタサイクルを主眼としているため、レンタル場所も提示され秋の清々しい青空の下で自転車による群馬県内を巡る自転車による散歩は絶好のプチ旅行だと思う。
松本清張著「霧の旗」、兄の金貸し老婆殺害事件の犯人として逮捕された事件を回り妹桐子は、ナケナシノ金をはたいて状況し刑事事件の弁護で著名な弁護士大塚欽三に弁護を懇請するも大塚弁護士は忙しい、高額な費用として弁護を退けた。桐子はその後状況してバーに勤める。バーの仲間から頼まれ男を監視している最中に奇しくも殺人事件に遭遇しかつ事件の目撃者は大塚弁護士の愛人であった。このことを知った桐子の執拗なまでの復讐が始まった。刑事事件としての裁判また弁護士、人間としての深い真実にも疑問を持って深く洞察する著者の渾身の作である。
松本清張著「黒の様式」、本書には3短編が収納されている。中短編というか、その主題が極めて特色のある設定で著者の頭脳の奥深さを感じる。雑誌への連載というが誠に持って奇抜な主題とその解決方法のプロットには目を見張るものがある。昭和40年代の作品というが今読んで見ても新鮮なミステリーだ。
松本清張著「Dの複合」、著者昭和40年代の作品だと。物書き伊瀬忠隆に飛び込んだ紀行文は雑誌、創刊されたばかりの草枕に掲載され反響を呼んだが、取材は民族学的、あるいは民族伝承を取り込んだ。取材過程で起こる謎の死体遺棄事件は既に殺人の連鎖の渦中に投げ込まれた伊瀬と編集者浜中を取り囲んだ。経度35°緯度135°の線上を只管取材する彼らの前に殺人事件が勃発し真相は闇の世界へ。歴史の隠された謎を追いながら事件の発生は人間の情欲の結論に達する。
松本清張著「黒い画集」、昭和32年から35年までの連載だという。今から50年も前の作品なのに、古臭さは一向に無く現代でも十分通用するミステリーだ。本書には7編の短編が綴られている、男女の愛、就中現代でいう不倫と殺人をテーマにした短編である。そこには男女の心理・嫉妬そして金と物理的な欲が絡み合い殺人事件を生む。日常性の破綻はふとした出来心から取り返しのつかない殺人事件として発展し人間を脆くも破滅させる。
松本清張著「ゼロの焦点」、戦後の混乱の中にいた昭和32年のこと、鵜原憲一は広告会社の営業主任として金沢に赴任していた。彼の生活は20に間は地元で営業し10日間は東京本社へと二重の生活を余儀なくされていた。そんな彼憲一が見合いの末禎子なる女性と結婚することになる。結婚後1か月余りで夫は失踪して要として行方が解らず、禎子は金沢に滞在憲一の後任の本田と共に行方を必死になって捜索する毎日だ。そして金沢から50分かかる断崖絶壁で投身自殺が発覚さらに憲一の兄宗太郎が旅館で殺害され本田も東京で殺害されるといった事件が重なる。プロットは抜群で戦後の混乱に乗じた社会派推理作家の何たるかを知らしめるミステリーだ。
ジョシュ・ラニヨン著「天使の影」、著者の作品を読むのは2冊目だ。LAで本屋を営むアドリアン、実は彼はゲイだ。ある日友人が彼の元を去って殺害された、シリアルキラーは次の殺人へと向かう。死人は手にチェスの駒を握りしめていた。彼は高校時代にチェスクラブにいた事を思い出し、仲間を思い浮かべる。殺害された知人は全て当時チェスクラブにいた者だった。犯人を特定したアドリアンはブルースと名乗る犯人の元へブルースは高校時代の友人だった。絶対絶命の危機をリオーダン刑事に救出された。プロットは単純で冗長だが気軽に読める作品だ。
松本清張著「点と線」、九州は博多近くの海岸で男女の情死による死体が発見される。男性は某役所の課長補佐であり女性は小料理屋の下女であった。折しも役所の斡旋収賄疑惑が持ち上がった最中情死した補佐を回り警視庁の三原刑事が奔走する。浮かび上がったのは安田という人物で小料理屋を良く利用し情死した女性とも昵懇の仲だった。役所にも納品する工具器具備品商であり課長補佐とも見知りの仲だった。このあたりの動機付けが社会派推理作家と言われる所以である。東京駅の13番線から15番線の見通す間隙をといい、安田の妻の肺結核症で臥せっている設定といい推理小説のミステリー小説の面白さを存分に味あえる一品で、これが昭和32年の作だというから驚かされる。
松本清張著「眼の壁」、昭和電業製作所の社員萩崎竜雄の会社では資金繰りに窮した課長が高利貸しから闇金業者のパクリ詐欺に遭い3千万円を喪失した。課長はそれが元で自らの命を絶った。上司の不条理な死を眼にし正義感に燃える萩崎は犯人を特定すべく会社を辞職する覚悟で一人捜査に乗り出した。途中から友人の新聞記者田村と一緒に捜査することになった。そん中会社の顧問弁護士の調査員が拳銃で殺害さらに弁護士も拉致誘拐され行方不明となった。裏で糸を引く右翼の船坂に辿り着いた。必死な捜査で最終的に見えたものは血縁関係からの絆であった。プロットは予想外で面白かった。犯人の動機に見る貧困、社会性を意識したプロットの組み立て、一人捜査に燃える萩崎の正義感、人生をも描くミステリーだった。