土曜日, 1月 29, 2022

コリン・デクスター著「死者たちの礼拝」、英国オックスフォードの教会を舞台にした連続殺人事件に休暇中のモース主任警部が挑むミステリーだ。礼拝中の聖具室の中でモルヒネを飲まされ最中を刺されて死亡、そして尖塔から落下して死亡した神父謎は深まるばかりでモースとルイスのコンビは右往左往するが依然として犯人を特定できない。これらのモースの心理描写はやはりTV ドラマでは出せない小説独特のものである。
エラリー・クイーン著「フォックス家の殺人」、ライツビルという町で起こった十二年前の殺人事件が齎す悲劇を知った故郷の英雄フォックス家のデイヴィーの若妻リンダがエラリーに相談して事件解明に向けてデイヴィーの父ベイヤードの妻殺しの無実を証明するために奮闘する。様々な伏線と主要なプロットは読了して感銘するほど巧みでキレがあると思う。
ジョン・ハットン著「偶然の犯罪」、彼コンラッドは教師である、出張先の帰りにヒッチハイクしている女性を車に乗せた。そして途中で放り出して帰ってしまった。その後で殺人事件が持ち上がり嫌疑を受けたコンラッドはただ茫然として質疑を受け立場上嘘を並べ立てた。学内で人事を巡るゴタゴタの最中に容疑者として執拗に追い回され精神的に追い詰められてゆく心理家庭を実に見事に描写している。
ジェフリー・ディーヴァー著「オクトーバーリスト」、著者の作品は全部読んでいるが、今回注目したのは時間の逆行という新たな手法に果たして強烈なるどんでん返しができるのかと興味を持って読んでみた。結果はリンカーン・ライムシリーズのようなまず爽快感が無い。この小説手法はたいてい叙述的な表現にならざるを得ないし遡り犯人を特定することに余り興味を感じない。
エラリー・クイーン著「レーン最後の事件」、現役を退き探偵事務所を開設したサム警視の元に意外な案件が舞い込んだ。封筒の保管依頼だった。その後ブリタニック博物館でシェイクスピアの稀覯本が盗まれた。稀覯本を回り殺人事件に発展しサム元警視、娘のペイシャンスさらに博物館司書のゴードンらが推理を繰り広げ真相に徐々に迫るが依然として犯人を特定できなかった。そして最後にレーンが身をもって示した犯人とは衝撃的な結末だった。レーン氏が自死した。
コリン・デクスター著「キドリントンから消えた娘」、英国オックスフォード郊外キドリントンからバレリー・テイラーという女性が家出失踪した。失踪して2年数か月経た時点で捜査がモース主任警部の手に渡った。中等学校での校長と教頭そしてフランス語を教える教諭、バレリーの母親、義父と翻弄されるモース主任警部とルイス巡査部長、二転三転しながら懊悩し捜査を繰り返し原点に戻りながら進めていく過程を十分に楽しめる警察物ミステリーだ。
コリン・デクスター著「ウッドストック行最終バス」、テレビでモース警部シリーズをしこたま見ているせいか、読んでいる最中警部とルイスの顔が出てくるが小説の中の二人はちょっと違う感じがする。オックスフォードのパブの庭で女性が強姦され殺害された、モースとルイスコンビが捜査をする中で一転二転と状況が変化し中々犯人を特定することができない。不倫中の大学講師と若い女子そしてモースに愛情を注ぐ女性、複雑な伏線ををたっぷり用意して読者には中々犯人を特定させない巧妙なトリックとプロットが用意され読み応えのある本書である。
ミシェル・ビュッシ著「黒い睡蓮」、フランスのノルマンディー地方のジヴェルニーは、晩年モネが30年間に渡り暮らしていた小村である。ここに睡蓮の池がありモネは多数の絵画をここで描いた。この小村で連続殺人事件が発生する二人の警部の必死の捜査に関わらず犯人を特定することはできなかった。ただセレナック警部は直観から犯人を特定していた。物語は冗長であり、かつ最後のどんでん返しは時間差というかあまりピンとこない結末だ。
真山仁著「神域 下」、宮城県警の楠警部は自分の母もアルツハイマー病を患って徘徊していた。失踪徘徊した老人たちが、次々と遺体となって発見され法医学室で解剖された脳は膨張し頭蓋に罅が入るほどだった。開発中のフェニックス7の人体実験をアルキメデス科学研究所で極秘に人体実験をしていた、そしてフェニックス7は米国サンノゼの研究センターと治験を共同で行うという。県警はアルキメデス科研に踏み込んだが、警察庁でまったを暗い空中分解した。

水曜日, 12月 29, 2021

真山仁著「神域 上」、アルツハイマー型認知症の克服は国家戦略でもある再生先端医療の千峰である。この件について大手IT企業社長が動いて医療センターを大々的に立上げ研究が開始された。医療センター及びアルキメデス科学研究所が目指す再生医療の眼玉はフェニックス7と言われるアルツハイマーを遅延させる投薬だ。その頃東北の宮城市の周辺で俳諧老人の連続死体事件が起こっていた。宮城署が乗り出し捜査に当たるが殺人事件かどうか?判断はまだできなかった。
ロード・ダンセイニ著「二壜の調味料」、エラリー・クイーンが名作と認めた古典的作品で本書は作家が唯一書いたといわれるミステリー集であり、26編もの短編集である。ホームズとワトソンに似せたリンリーとスメザーズはちょっと機転が利いた物語で読者を楽しませてくれる。他にも短編が色々とあり一気読みの感がある。
ケイト・モートン著「湖畔荘 下」、セイディの調査も佳境を迎え、ロンドンに住む作家アリスに面会しコーンウオールのローアンネスの屋敷の鍵を渡してくれたつまり調査しても良いと認めてくれた。屋敷に入り様々な手紙を繰るうちに段々と全貌が明らかになり、それまでの定説が覆った。当時の母親が愛人で庭師のベンと共にセオを匿ったという事実だった。そして終幕でどんでん返しが待っていた、セイディ叔父バーティこそがセオだったと。1930年代と現在とが交互に絡み合い交錯し登場人物の過去にも翻弄されながらの最後のどんでん返しは素晴らしい。
ケイト・モートン著「湖畔荘 上」、英国ロンドンから少し離れた森と湖に囲まれたその屋敷はエダヴェイン一家が1930年代に暮らしていた優雅な屋敷だった。その一家に1歳になる末っ子のセオという男の子が誘拐された。警察始め総出で捜索したが男の子を見つけることができなかった。70年前のこの事件に興味を示したのはロンドン警視庁でミスを犯し上司から休暇を迫られ叔父の住むコーンウオールに来たセイディだった。彼女は未解決事件の情報を図書館から当時担当していた警部まで聞き込みをしたりして事件解決に向け鋭意努力中だ。
アントニイ・バークリー著「ジャンピング・ジェニイ」、古典的名著と言われた本書であるが、少し冗長でありプロットそのものも平坦であり面白みに欠ける、最後にどんでん返しは用意しているが脈絡に欠ける点は否めない。仮想パーティで主催の弟の嫁が屋上で自殺した、そこに参加していたロジャー・シェリンガムは殺人だと断定して犯人に目星を付けその人間を守ろうとする。嫁は分裂症気味で鬱を患い自殺願望があった。しかし裁判では自殺と断定された、そこから最終章にどんでん返しが起きた。しかし脈絡がない。、
ドロシー・L・セイヤーズ著「誰の死体?」、1920年代の作品だという。ある朝発見されたのは浴槽で仰向けにされた遺体だった。当然英国ではスコットランドヤードの警部が早速事件の捜査を開始、しかし手掛かりも無く途方に暮れていた。スコットランドヤードもう一人の警部バーカーはピーター・ウィムジイ卿に取り次ぎ二人で事件の解明に乗り出す。シャーロックホームズを彷彿とさせる探偵は勿論ウィムジイ卿で雇用人のバンターがワトソン役だ。今ではプロットも在り来たりなものだが当時は画期的なミステリーだったに違いない。
真山仁著「トリガー 下」、韓国のスーパースターであり検事そして現大統領の姪のキム・セリョンが凶弾に倒れ、日本・韓国双方の捜査が開始されたが、北朝鮮及び米国と日本の防衛システムを揺るがす民間の軍事受託会社に防衛を委ねるそしてそのカネをばら撒き覇権を競う軍事会社の陰謀と目まぐるしく展開する物語は圧巻である。スパイ小説として一読に値する価値を本書は提供してくれる。著者の周到な調査と思考の上で組み立てられたプロットは圧巻である。
真山仁著「トリガー 上」、2020年東京オリンピックが舞台となった事件だった。韓国の大スターであり韓国地検の検事で馬術でのオリンピック参加を決めていた。馬場に入場して間もなく500m先からスナイパーによる狙撃によって額を撃ち抜かれその場に倒れ即死だった。韓国地検と日本の警察の軋轢の中、事件の真相究明すべく警視庁特別斑が始動。元外事課で今はカウンセラーの冴木、北朝鮮の工作員、米国大使館と物語は壮大で小気味よい文章とともに楽しめる。
松岡圭祐著「千里眼 優しい悪魔 下」、新シリーズの最終巻のこの書は、岬美由紀とメフィストコンサルティングのダビデ及びジェニファーレインとの相関を締めくくる巻となった。様々な事件の中でスーパーヒロイン美由紀が全力で戦い勝利してきた経緯そのものが美由紀の信念だ。弱きを助け困窮している者に救いの手を、そして何よりも著者の破天荒なセッティングは度肝を抜かれまた苦笑せざるを得ないことが、やはり岬美由紀を通して直に感じられるエンタメ小説の究極だ。
セバスチアン・ジャプリゾ著「シンデレラの罠」、不思議なミステリーと言っていいと思う。物語の進捗の語り手が変化し続け登場人物がつまりドかミか判別できなくなる。しかしこの物語の真意は、莫大な遺産相続にともない、もたげた殺意その底辺には遺産を持つ叔母への愛情の獲得争いといったいたって現実的な命題があるのが主題だと思う。語る人称を変える技法にどんなメリットがあるのか今一不明だ。
ギョーム・ミュッソ著「ブルックリンの少女」、人気作家のラファエルと医師のアンナは恋愛関係にあり、既にアンナのお腹には二人の結晶が宿っていた。アンナの過去を知るべく問い詰めたラファエルはアンナが差し出した写真を見て仰天し彼女の元を去った。後からアンナを追いかけたが捕まらず、そのまま深い闇の中に沈んで行くのだった。アンナを探し出すべく捜査に乗り出し、近所の元有名警部マルクの協力の下に関わりあるとされる人物を一人一人その過去をそして行く着いた先は正にどんでん返しそのものだった。ニューヨークとパリを舞台に様々な登場人物を描きそして頁を最後まで繰らせる迫力は著者の持つ圧倒的な力量そのものだ。
ウィリアム・L・デアンドリア著「ホッグ連続殺人」、40年も前の作品だが、その面白さつまり本格ミステリーとしての要素を余すところなく備えたミステリーだ。プロットも最後のどんでん返しも現代にも通ずる面白さを持っている。またイタリア人の犯罪学専門の教授とアメリカで探偵業を営む教授の教え子がタッグを組んで連続殺人事件を解決する設定も素晴らしい。
松本清張著「鴎外の婢」、「書道教授」、銀行の渉外担当の川上はパチンコが趣味で良く行きつけの店内でバーに勤める女と知り合いになった文子という名の女であった、懇ろになり勿論遊び半分で肉体関係となった。文子は金を川上に要求し、終いには友人仲間とバーを出店するこになったと言い大金を要求してきた。そんな地獄の日々を過ごす中で渉外で回った場所に書道教授の看板を掲げる家があり、川上は書道をすることにした。そして妻の着物を買った後、空き巣に入られ着物を盗まれた妻保子の執念から犯人が特定できた。しかし妻の証言から文子を殺害した夫の犯行がバレてしまった。男の心理状態を伏線に著者独特の語りは圧巻だ。 「鴎外の婢」、編集者から依頼され明治の文豪の回りのエピソードを書いている浜村は、つと浮かんだ発想を基に九州に旅することにした。鴎外が小倉に住んだ3年間の時、鴎外の面倒見た家政婦モトに纏わる話を書くためだった。旅館に宿泊し主人も古代史ファンと聞いて話をしたが、その後モトの縁戚のハツの行方に気にかかり行方を追う内に旅館主と恋仲になり妊娠したハツは殺害されたのではと思いある土地を掘り返した結果骸骨が無数に出てきた、古戦場の跡だったのだ。しかしその無数の骸骨の中にハツの死骸があったのではないかと。
松岡圭祐著「千里眼 優しい悪魔 上」、スーパー女子岬美由紀、元航空自衛隊空尉で優れた動体視力を見つけ臨床心理士に転身しカウンセラーとして悩める人々を救っている毎日だ。そんな美由紀の身に度重なる危機が及ぶメフィストコンサルティング傘下のジェニファーレインそしてダビデの魔の手が迫る。
アントニイ・バークリー著「ジャンピング・ジェニイ」、古典的名著と言われた本書であるが、少し冗長でありプロットそのものも平坦であり面白みに欠ける、最後にどんでん返しは用意しているが脈絡に欠ける点は否めない。仮想パーティで主催の弟の嫁が屋上で自殺した、そこに参加していたロジャー・シェリンガムは殺人だと断定して犯人に目星を付けその人間を守ろうとする。嫁は分裂症気味で鬱を患い自殺願望があった。しかし裁判では自殺と断定された、そこから最終章にどんでん返しが起きた。しかし脈絡がない。

日曜日, 11月 28, 2021

ドロシー・L・セイヤーズ著「誰の死体?」、1920年代の作品だという。ある朝発見されたのは浴槽で仰向けにされた遺体だった。当然英国ではスコットランドヤードの警部が早速事件の捜査を開始、しかし手掛かりも無く途方に暮れていた。スコットランドヤードもう一人の警部バーカーはピーター・ウィムジイ卿に取り次ぎ二人で事件の解明に乗り出す。シャーロックホームズを彷彿とさせる探偵は勿論ウィムジイ卿で雇用人のバンターがワトソン役だ。今ではプロットも在り来たりなものだが当時は画期的なミステリーだったに違いない。
真山仁著「トリガー 下」、韓国のスーパースターであり検事そして現大統領の姪のキム・セリョンが凶弾に倒れ、日本・韓国双方の捜査が開始されたが、北朝鮮及び米国と日本の防衛システムを揺るがす民間の軍事受託会社に防衛を委ねるそしてそのカネをばら撒き覇権を競う軍事会社の陰謀と目まぐるしく展開する物語は圧巻である。スパイ小説として一読に値する価値を本書は提供してくれる。著者の周到な調査と思考の上で組み立てられたプロットは圧巻である。
真山仁著「トリガー 上」、2020年東京オリンピックが舞台となった事件だった。韓国の大スターであり韓国地検の検事で馬術でのオリンピック参加を決めていた。馬場に入場して間もなく500m先からスナイパーによる狙撃によって額を撃ち抜かれその場に倒れ即死だった。韓国地検と日本の警察の軋轢の中、事件の真相究明すべく警視庁特別斑が始動。元外事課で今はカウンセラーの冴木、北朝鮮の工作員、米国大使館と物語は壮大で小気味よい文章とともに楽しめる。
松岡圭祐著「千里眼 優しい悪魔 下」、新シリーズの最終巻のこの書は、岬美由紀とメフィストコンサルティングのダビデ及びジェニファーレインとの相関を締めくくる巻となった。様々な事件の中でスーパーヒロイン美由紀が全力で戦い勝利してきた経緯そのものが美由紀の信念だ。弱きを助け困窮している者に救いの手を、そして何よりも著者の破天荒なセッティングは度肝を抜かれまた苦笑せざるを得ないことが、やはり岬美由紀を通して直に感じられるエンタメ小説の究極だ。
セバスチアン・ジャプリゾ著「シンデレラの罠」、不思議なミステリーと言っていいと思う。物語の進捗の語り手が変化し続け登場人物がつまりドかミか判別できなくなる。しかしこの物語の真意は、莫大な遺産相続にともない、もたげた殺意その底辺には遺産を持つ叔母への愛情の獲得争いといったいたって現実的な命題があるのが主題だと思う。語る人称を変える技法にどんなメリットがあるのか今一不明だ。
ギョーム・ミュッソ著「ブルックリンの少女」、人気作家のラファエルと医師のアンナは恋愛関係にあり、既にアンナのお腹には二人の結晶が宿っていた。アンナの過去を知るべく問い詰めたラファエルはアンナが差し出した写真を見て仰天し彼女の元を去った。後からアンナを追いかけたが捕まらず、そのまま深い闇の中に沈んで行くのだった。アンナを探し出すべく捜査に乗り出し、近所の元有名警部マルクの協力の下に関わりあるとされる人物を一人一人その過去をそして行く着いた先は正にどんでん返しそのものだった。ニューヨークとパリを舞台に様々な登場人物を描きそして頁を最後まで繰らせる迫力は著者の持つ圧倒的な力量そのものだ。
ウィリアム・L・デアンドリア著「ホッグ連続殺人」、40年も前の作品だが、その面白さつまり本格ミステリーとしての要素を余すところなく備えたミステリーだ。プロットも最後のどんでん返しも現代にも通ずる面白さを持っている。またイタリア人の犯罪学専門の教授とアメリカで探偵業を営む教授の教え子がタッグを組んで連続殺人事件を解決する設定も素晴らしい。
松本清張著「鴎外の婢」、「書道教授」、銀行の渉外担当の川上はパチンコが趣味で良く行きつけの店内でバーに勤める女と知り合いになった文子という名の女であった、懇ろになり勿論遊び半分で肉体関係となった。文子は金を川上に要求し、終いには友人仲間とバーを出店するこになったと言い大金を要求してきた。そんな地獄の日々を過ごす中で渉外で回った場所に書道教授の看板を掲げる家があり、川上は書道をすることにした。そして妻の着物を買った後、空き巣に入られ着物を盗まれた妻保子の執念から犯人が特定できた。しかし妻の証言から文子を殺害した夫の犯行がバレてしまった。男の心理状態を伏線に著者独特の語りは圧巻だ。 「鴎外の婢」、編集者から依頼され明治の文豪の回りのエピソードを書いている浜村は、つと浮かんだ発想を基に九州に旅することにした。鴎外が小倉に住んだ3年間の時、鴎外の面倒見た家政婦モトに纏わる話を書くためだった。旅館に宿泊し主人も古代史ファンと聞いて話をしたが、その後モトの縁戚のハツの行方に気にかかり行方を追う内に旅館主と恋仲になり妊娠したハツは殺害されたのではと思いある土地を掘り返した結果骸骨が無数に出てきた、古戦場の跡だったのだ。しかしその無数の骸骨の中にハツの死骸があったのではないかと。
松岡圭祐著「千里眼 優しい悪魔 上」、スーパー女子岬美由紀、元航空自衛隊空尉で優れた動体視力を見つけ臨床心理士に転身しカウンセラーとして悩める人々を救っている毎日だ。そんな美由紀の身に度重なる危機が及ぶメフィストコンサルティング傘下のジェニファーレインそしてダビデの魔の手が迫る。
アルネ・ダール著「時計仕掛けの歪んだ罠」、スウェーデンはストックホルムの犯罪捜査犯の警部サム・べリエルは、少女連続誘拐事件を捜査していた。有力な情報を基に踏み込んだが、もぬけの殻だった。そんな折スウェーデン公安警察の警部モリー・ブロームその捜査に当たっていた。二人は統合して組織を無視して捜査に没頭する。そこで浮かんだのは中学生の頃、いじめにあった男ヴィリアム・ラーションに思い当たり次々と困難を突破して漸く追い詰めた。長編ながら全編に緊張が漂いページを繰らせる力が漲っている、作者の力量を思い知らされる好著だ。

土曜日, 10月 30, 2021

松岡圭祐著「千里眼  堕天使のメモリー」、スーパーヒロイン岬美由紀新シリーズの最終版は、国際的犯罪組織メフィストコンサルティングのジェニファー・レインとの対決そして過去を心理士としての美由紀に悔いの残る西之原夕子人格性記憶障害を持つ彼女を救い出し愛情にきずかせるという困難な行動に及ぶ岬美由紀の波乱万丈の活躍、エンタメ小説でありながら人間をとことん感じさせるところが著者の力量だ。
松岡圭祐著「千里眼 の教室」、今回のテーマは社会風刺か格差社会、学校でのいじめ、総中流意識そんな起きたある病院経営者が提案を切っ掛けに事件が発生する岐阜の片田舎の氏神工業高校で起こった籠城事件だった。氏神工業高校国と名乗り自主独立国家を目指す高校生1000人の意志虐げられた自身の再生を目指す物語だ。臨床心理士の岬美由紀の活躍で平和を取り戻す。
松岡圭祐著「千里眼  美由紀の正体 下」、雪村藍の機転で伊吹に連絡をとり、奇しくも難を逃れた美由紀だった。その後も自分の過去幼少期のデジャブを確認すべくあらゆる手段で目的へまい進する。数々の法規制を突破して遂に辿り着いた先に首謀者を発見した。幼少期の記憶が蘇りさらに怒りがこみ上げた。拉致された幼女を救い出し晴れて裁判に臨んだ美由紀は裁判長の計らいで際どくも無罪を勝ち取ることに成功した。プロットが映画の脚本のように特徴あるシーン描き出し、美由紀の全体像を余すことなく描写する。
松岡圭祐著「千里眼  美由紀の正体 上」、隅田川の花火大会に託けて尺玉を爆発させその記事を予め創刊号に印刷して部数を伸ばすという計画を知った美由紀の行動はまたしても躊躇なく幾つもの法を犯しながら成功理を勝ち取った、しかし裁判で被告人として法廷に立つことになった。休廷の間美由紀は既視感を覚え藍とともに米軍キャンプ地の相模原団地に向かいそこで窮地に立たされ今にも死を待つ身となった。藍の機転でようやく百里基地の伊吹一尉に連絡をとることができた。下巻へ。
ヘニング・マンケル著「ピラミッド」、中短編5編を含むクルト・ヴァランダーシリーズのヴァランダーの警察官として駆け出し28歳頃の物語を含む5編だ。ミステリーとしては今一の感が無くも無い。最後の編ピラミッドは幻のおんぼろ軽飛行機の墜落、手芸用品店のオバーさん姉妹の殺害と事件が勃発し中々捜査の進展が無い中で、糸口を見つけそれを辿り事件解決に向かうが警察小説としても面白みに欠ける。ヴァランダーの性格や妻との別離、親父との交流とこのあたりのサブプロット伏線は面白い。
松岡圭祐著「千里眼  ミッドタウンタワーの迷宮」、千里眼シリーズ第四弾、破天荒な事件が次々と発生し度肝を抜かれるそのプロットや伏線たるや作者の力量を余すところなく披露する出来栄えだ。執筆当時、ミッドタウンは開業寸前だった。旧防衛庁跡地に建ったミッドタウンから超望遠鏡を使い中国大使館で行われている賭博を監視し不正を行う筋書きには恐れ入る。岬美由紀の心情を余すところなく描く今回の作も強烈だ。
ピエール・ルメートル著「傷だらけのカミーユ」、妻を亡くして数年経たパリ警視庁警部カミーユが知り合った女性アンヌ彼女が宝石店へカミーユに送る腕時計を引き取りに行ったまさにその時強盗団に出くわし瀕死の重傷を負った。知り合いの女性の被害を署に申告せず捜査に当たる警部は、独断専行で捜査を開始したが依然として行方を掴むことができなかった。ふと数年前の妻イレーヌの殺害犯人を刑務所に訪れ情報を掴む、それは数年前警察官を辞めた者の犯行だと、カミーユの苦悩それは捜査と愛という忸怩たる格闘だった。
松岡圭祐著「千里眼  水晶体」、岬美由紀は元自衛隊空佐で現在心療カウンセラーとして働いている。今回の事件は旧日本軍が開発されたとする生物兵器「冠魔」カンマと呼称される兵器が盗難に遭いばら撒かれたそして感染した美由紀の友人藍も感染し瀕死の状態だ。国防会議に出た美由紀をまっていたのはF15戦闘機で当時の米兵ハワイに住む、面会しワクチンの製法を聞き出すことだった。無事難局を切り抜けた美由紀はさらに一歩成長した感じだ。
松岡圭祐著「千里眼  ファントム・クオーター」、今回はサイドストーリーを配した岬美由紀の冒険活躍第二弾だ。ロシアンマフィアの一家が企む日本国滅亡及び破壊絶滅計画を阻止する美由紀の活躍だ携帯SAMと呼称される迎撃小型ミサイルをぶっ放しトマホークから発射されるステルス性ミサイルを迎撃し難を逃れた。
松岡圭祐著「千里眼 The Start」、スーパーウーマン岬美由紀の新シリーズだという、だがどこまでが旧でどこまでが新か良く分からない、只管のいつものような乱読である。しかしエンタメ小説として十分楽しめる物語となっていることは間違いない。今回も千里眼を駆使して人の心を読み、麻薬密売から航空機旅客機爆破計画を見事に誰何し未然に食い止める美由紀の活躍には読者を楽しませてくれる。
R・D・ウィングフィールド著「夜のフロスト」、デントン警察署のエースフロスト警部の破廉恥な捜査全開の物語で、読んで楽しいミステリーだ。相変わらずよれよれのコートにマフラーそしてタバコを離さずエゲツナイ罵詈雑言の数々新任の部下は家庭崩壊それでも勤務に励むフロスト警部の造形に作者の力量を感ずる。今回も連続老女切り裂き魔事件に果敢に望む警部の捜査が魅力だ。
ピエール・ルメートル著「死のドレスを花婿に」、順風満帆な結婚生活を送っていたソフィーはある日から記憶障害にオークション運営会社の務めを辞めベビーシッターとして働くがそこの家で6歳になる男子を死亡させ自分の責任と思い警察からの逃亡生活が始まる。ある男フランツはソフィーにひとかたならぬ歪んだ愛情を注ぎソフィーをどこまでも追い詰め遂に自分のものにしようと画策するストーカー的愛情を纏い。そして最終章でどんでん返しが待っている。ソフィーは正常者だった。愛情と人生を深く感じさせる本格ミステリーである。
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松岡圭祐著「千里眼 ノン・クオリアの終焉」、元自衛官で女性でF15戦闘機を始めて操縦したとされる臨床心理士岬美由紀は、招待状に沿い政府の認可の元役人と道ずれに中国は国際クオリア理研に向かう。そこから波乱な幕開けとなり次々と襲い掛かる魔の手をもろともせず岬美由紀の攻防が始まる。全世界をノン・クオリアの手に核爆発を目論む国際的暴力集団一方でクオリアの存在を信じるメフィストコンサルティングの集団とうの攻防の最中で戦う岬美由紀の姿は圧巻だ。新シリーズの復活に惜しみない賛辞を贈りたい。
R・D・ウィングフィールド著「クリスマスのフロスト」、著者のフロストシリーズ第一作の作品だと。若くて美人の売春婦の娘女児が誘拐された。フロスト警部さらに新人クライブを伴った捜索活動が指導した。同時期にまた連続殺人事件が発生デントン警察署は大わらわだ。著者のフロストの人物象の描写さらに登場する他の人物の造形の見事さに感心する。事件は32年まで遡り殺人事件の犯人を特定する。
アリス・シーボルド著「ラブリー・ボーン」、14歳の少女スージーがトウモロコシ畑でレイプされ殺害されたしかもバラバラ死体となって、その後肘だけ見つかった。天国に上ったスージーは地上の出来事とりわけ家族を見つめ続ける優しい眼差しを注ぎ続ける。家族の一人の死が家族を変える、そして再び家族が一つになり蘇る。家族と愛をテーマにそして特異な天国の描写にも感銘する物語だ。

火曜日, 9月 28, 2021

宮部みゆき著「おまえさん 下」、20数年前の大黒屋でのザク殺しから以降町方平四郎を始め同心、親分手下らが血眼になって捜索したが依然として瓶屋の文乃と哲次郎の行方は不明のままだった。この捕り物に関わる登場人物の身の回りのゴタゴタをユーモアを交えて語る著者の力量に感心する江戸の時代ミステリーとして少し冗長性はあるが傑作だ。
宮部みゆき著「おまえさん 上」、江戸は本所の町方、井筒平四郎は至って怠け同心であるが部下手下には粒ぞろいの精鋭が揃っている同心の間島信之輔、政五郎親分就中美形の少年平四郎の甥っ子の弓乃助は頭脳明晰で物語を面白くしている。町中で辻切りと思われる殺害が連続して発生し捜査に当たる筋から薬問屋に関連している事が判明した。しかし下手人を挙げることは出来ない。。
松本清張著「馬を売る女」、都内の繊維会社に勤務する30歳独身の星野花江は秘書でケチで金をしこたま貯め将来に備えていた、当然社内の評判は良くないさらに同社社員に金を融通して利子を取るというバイトまでしていた。彼女が務める会社社長は馬好きで馬を保有して馬主仲間と連絡を取り合ってレースの予想、分析まで電話でしていた、その電話を花江は盗聴して会員と称して情報を提供して月1万円の会費を取っていた。社長が二次下請け業者に相談を持ち掛け電話を盗聴されているが調査して欲しいと、相談に乗った八田栄吉は調査する段階で星野花江と親密になり遂に殺人に至る。
アガサ・クリスティー著「秘密機関」、トミーとタペンスものの初期の作品である。仕事も金も無く退屈していた二人が考えたのはヤング・アドベンチャラーズという会社で何でも引き受ける調査会社であった。思わぬ仕事が舞い込みそれが発展して国家の秘密機関に接触することなるトミーとタペンスは互いに拉致監禁されるが持ち前の勇気と機転で困難を乗り越えることに成功した。最後でどんでん返しが待っていた秘密機関を牛耳るドンは実は身近にいる人物だった。ミステリーの中にロマンを盛り込み読者を飽きさせない物語だ。
小西晴彦著「モンスター」、著者は35年間も教師を続けていたとプロフィールに書かれていたのには驚いた。事件の現場はまさに学校であり校長が殺害されたからである。道警の田舎の警察署の刑事二人、村雨と加賀が事件を担当し捜査に乗り出す。一方犯人である山川愛の人物像が綴られてゆく。クリスチャンで神を絶対と信じる山川の過去はまさに悲惨で虐げられた過去だった。神からの啓示により次々と殺害し火をつけてゆく。刑事コンビと犯人の人物像が交錯して物語の世界を構築し読者を離さない。
黒川博行著「桃源」、大阪府警泉尾署の刑事コンビ新垣と上坂が大規模詐欺、沈没船をサルベージして財宝を取得という荒ての詐欺を企み、法外な資金を集めくすねという手口だ。捜査にあたる府警のコンビは沈没船の場所を特定し沖縄、宮古、石垣、奄美と渡り証拠を握るべく奮闘するが一向に状況は闇の中、コンビの遣り取りを中心に捜査を続ける何時もの著者の軽快な文章が心地よい。
橘玲著「ダブルマリッジ」、桂木憲一は会社での移動でフィリピンはマニラに数年間滞在中に出会ったマリアと結婚し子供までがいたことを知り、さらに戸籍謄本が書き換えられその子供ケンまでもが載っていた事を知った。本書の物語はここから始まった。現在の妻とは当然発覚してからは疎遠になり娘の茉莉愛にまで疎まれる存在となった。弟が居たという事実を知った茉莉愛は必死になって捜索し突き止めさらにフィリピンまで行って父憲一と結婚していたというマリアを突き止めた。フィリピンには日本人の父を持ち今でもスコーターというわれる貧民街スラムで暮らす子供が十数万人いるという現実をこの小説が突き付けている。
綾辻行人著「びっくり館の殺人」、館シリーズの一作で少年少女向けにい書かれたミステリーだと言う。謎の建築家中村青二が施したびっくり館に住まう老人と子供その子供の俊生と知り合いになる三千也の語りで物語が進む。館で起きた殺人、老人が殺害される。しかし犯人は?三千也の追憶の中で語られる犯人とは。
橘玲著「永遠の旅行者 下」、麻生棋一郎の孫であり20億円の資産の継承者でもある麻生まゆを守る為に奮闘する真鍋恭一そこは日本であり香港でありハワイでありニューヨークであった。国際金融、税務の知識をフル活用しながら徐々に依頼された目的それは孫のまゆへの遺産相続そして日本政府には税金を一銭も払わないという二つの条件の成就を目指して恭一の奮闘は続く。プロットといい複雑な伏線を幾つも用意周到に準備したこのミステリーは本当に楽しい。
橘玲著「永遠の旅行者 上」、弁護士を辞めて日本国籍を捨てパーマネントトラベラーとなった真鍋はハワイに在住し元弁護士として法務や財務の相談業務を私的にしていた、そんな時にカナイという知人から相談を持ち掛けられ乗ることになった。それは老人からの依頼で孫12歳になる女の子を保護し財産を継承させたい父親は失踪して行方不明という案件だった。日本に帰り本人や依頼した老人に接見したり、ゴロツキに狙われている現状に遭遇しまずは香港で口座を開設し資金の手当て相続税対策、遺産相続を念頭に仕事を開始した。

月曜日, 8月 30, 2021

横山秀夫著「クライマーズ・ハイ」,群馬の地方新聞紙北関東新聞社の編集委員悠木を通して、日航機墜落事故の取材から社内のセクショナリズム同僚との駆け引きと息を突かせぬ様々な事象が雪崩を打って引き起こす、文体は軽やかでいて美しい。日航事故を通してはたまた主人公悠木を通して人生を見つめる。間違いなく好著だ。
恩田陸著「麦の海に沈む果実」,東北であろうか湿原に囲まれ青丘と呼ばれる崖の上に建つ壁に囲われた学園、そこに一人の少女理瀬がその年の2月の最終日に入園した。全寮制で特異な授業を行うこの学園で、理瀬の回りで不可思議な殺人が頻発する。冗長性は否めないがファンタジーでミステリーな物語、そして最後はどんでん返しが待っている。プロットといい複雑な伏線といい作者のレベルの高さを伺わせる。
橘玲著「タックスヘイブン」,シンガポールを主要舞台に日本、タイそして中国系の華人、日本のヤクザ、官僚、警察官僚、巨額ファンドを操るファンドマネージャー等金融サスペンスタッチで迫力と文体の軽快さを伴い主人公の古波蔵の知能戦には恐れ入る。そんな中にも男女の機微を盛り込み一層この物語を深いものにしている。痛快ミステリーといったところだ。
エラリー・クイーン著「九尾の猫」,ニューヨークで発生する連続殺人事件、被害者は全て独身でありかつまた女性が圧倒的に多かった。傷心のエラリーは父警視の説得で捜査に乗り出すが、手掛かりらしき物証は一切無く堂々巡りで捜査は難航を余儀なくされる。インド産絹の紐で絞殺する犯人を現行犯で逮捕するしか方法は無いと判断し遂に9回目の犯行に及ぶ犯人を逮捕した。逮捕された犯人は精神異常者の犯行と見た警察に協力した精神科医カザリス氏だった。。まずもって面白い最後のどんでん返しそれに伴う伏線といい見事で読み応えがある。
今邑彩著「いつもの朝に 下」,弟優太の出生の秘密、殺人者の父から生まれたとばかり思っていたが、ある日昔のアルバムを引っ張りだした事で、兄桐人が自分ではと思うようになった。出生の秘密の秘密を知った兄桐人は懊悩し遂に死を決断したその時優太が現れて自ら兄の代わりに首に縄を掛けて死のうとして階段から飛び降りた。一命を取り留めた弟を見て兄桐人は直になっていった。兄妹愛家族愛さらに神について生きることについて示唆に富みかつ小ミステリー的な伏線そして全体を貫くプロットといい完璧だ。
今邑彩著「いつもの朝に 上」、日向沙羅は画家であり、二人の子供桐人と優太を持つ母親だ。ふとした事から優太が赤ん坊のときから持っていたぬいぐるみの中に折り畳んだ手紙が入っていたその情報元に岡山のド田舎に向かった優太を待っていたのは、優太の父は引き取られた牧師の家の家族を惨殺したものだった。果たして弟優太の出生の秘密は?下巻へ続く。
橘玲著「マネーロンダリング」、著者のデビュー作だという。香港を舞台にした資金洗浄に関する金融、税制を始めとする様々な知識が炸裂する。プロットといい伏線といいイズレニシテモ小気味よく物語が展開してゆく。主人公にも好感が持てるし回りを囲むそれぞれの人間描写も好感が持てる。物語を一気読みさせる迫力があるし読後感は正に爽快そのものだ。
アガサ・クリスティー著「おしどり探偵」、トミーとタペンスシリーズの短編集である。まさに軽やかでいてきちんとミステリーらしさをキチンと描いている。クリスティーの能力に完敗だ。どの短編も根底にユーモアを感じさせるミステリーとして仕上げた物語だ。ポアロ登場の長編ミステリーもいいが、トミーとタペンスの短編もまたすごく良い。
乙一著「GOTH」、全6篇の短編であり長編でもある不思議な物語だ。全編に共通して根底にある人間の残虐性、凶暴性それでも人間でいたいと言う希望と欲望が混然一体となっている。オカルト、ホラー、ファンタジーそして少しミステリーという不思議な小説である。
道尾秀介著「鬼の跫音」、6篇短編集である。どの作品の底流にもホラー近いそこはかとなく恐怖が存在する。ホラーでありミステリーである作品群だ。日常に潜む何故か不可思議な恐怖を絶妙なプロットで描き出す作者の短編の面白さはそこにある。
西沢保彦著「人格転移の殺人」、米国のあるショッピングモールで巨大な地震が発生しそこに居合わせた数人がシェルターと思える建物に命からがら避難するそしてそこで不思議な現象が起こるつまり人格転移他人に性格が転移するという。自分の存在自体が消滅するという人間の根源的な生への疑問を読者にぶつけてくる。SF的でありミステリーであり奇想天外なプロットそしてトリック複数の伏線を用意し結末へと。非常に面白い小説だ。
森博嗣著「女王の百年密室」、ミステリーとファンタジーが融合しsFチックに仕上げた数奇な物語だ。ある日ジャーナリストのミチルは相棒のロボットのロイディと道に迷うが一人の老人の教えでルナティック・シティーと呼称される街に入り女王に謁見する。この街の住人は死を恐れない冷凍保存され再生すると信じている。死そして神、そこに暮らす人々の幸福人生2113年という時代設定何もかもがコミカルでシニカルだ。
皆川博子著「開かせていただき光栄です」、舞台は18世紀のロンドン、外科医ダニエルは5人のそれぞれ個性のある弟子とともに解剖を受け持つ医師だった。ある日見慣れぬ遺体が2体見つかった。一つは妊婦の遺体でもう一つは少年の遺体だ。治安判事を中心に様々な角度から捜査が進められ最後になって行きついたのは容疑者と思しき者二名が死亡したという事実、しかし田舎からロンドンに出てきた文学少年の遺体と見なされ解剖した弟子の一人の容疑がうらずけられ裁判に持ち込まれた、しかしそこにどんでん返しが用意されていた。長編にも拘わらずプロット、そして巧みな伏線が最後に重ね合う手工は感嘆せずにはいられぬ面白さだ。
北山猛邦著「アリス・ミラー城殺人事件」、東北の孤島に集められた探偵10人、アリス・ミラー城は白角という木材業者が島を買い取りそこに建てた城だった。ルディという女性が主催者で鏡つまりアリスミラーを捜すという設定だ。来島した翌日から、次々と殺人事件が発生する。何故殺害されたのか?そして殺害のトリックもまた奇妙な内装を抱えた城の下では判別できない。深まる疑惑そして恐怖次々と発生する殺人、彼らは疑心暗鬼となり互いの信頼は崩壊する。舞台設定といいトリック及びプロット全てが圧巻であり、酸性雨という環境破壊をテーマに殺人動機が解明される。
アガサ・クリスティー著「火曜クラブ」、6人のそれぞれ個性ある人物が火曜日に集い、事件を披露しあい犯人を当てるという趣向つまり火曜クラブが結成されメンバーにはミスマープルも参加していた。個性ある怪事件を次々と推理し当てて行くミスマープルの頭脳を参加者は驚嘆する。中でも最終章の溺死は御大クリスティーの面目躍如の感があり、楽しく読ませてもらった。

金曜日, 7月 30, 2021

米澤穂信著「ボトルネック」,ある日、死んだ彼女に花を手向けに東尋坊に出掛けたリョウは、崖から転落したが無事に金沢に戻っていた。ここから記憶喪失となり今現在いる自分の世界と過去の世界の境界が曖昧になり自己喪失となった。二つの異世界をスライドしながら、一つ一つを確認しながら生きていこうとする。不思議なミステリー小説だ。
アガサ・クリスティー著「死との約束」,アメリカ人家族、裕福なボイトン家の主は女性で絶対君主的な立ち位置で家族を思い通りに支配してきていた。そんな家族が家長の意見で中東はエルサレムに旅行に行くことになった。その旅行中女主人は殺害された。そこに居合わせたのは名探偵ポアロだった。彼の灰色の脳細胞が縦横無尽に活躍して事件を解決へ導く。前半はボイトン家の詳述だが、ちゃんと伏線を張り事件の動機作りをしていて読後読者がそうだったかと思うような、見事な記述だ。
松本清張著「聖獣配列 下」,夜明け前の米国大統領と日本の磯部総理との秘密会談、迎賓館で偶然撮った写真をシュルツとの交渉の最後の切り札として大事に保管、それは骨壺の中であったり銀行の貸金の中であった。しかし徐々に嵌められたと気づき始めた可南子は急遽150万ドルの資金を回収にスイスに飛んだ。V・クンケル銀行の応接室で割り当てられたナンバーが口から出なかった。女性を主人公に据え、心理描写といい伏線プロットといい清張の真骨頂がここにある。
アガサ・クリスティー著「ゼロ時間へ」,海岸沿いの崖の上に建つ館、そこの富豪の女主人トレリシアンその館に三々後後集まった人々、そこで殺人事件が発生する。スコットランドヤードの警視バトルとリーチ警部が乗り込む、捜査は何度も裏切られ中々真犯人に到達できない。最後にどんでん返しが待っている。多数の伏線を用意しプロットは単純だが良く練られたトリック、名探偵ポアロが登場しないが面白い。
松本清張著「聖獣配列 上」,銀座のバーのマダム中上可南子は、数年前米国銀員と二夜を共にした経験がある、今回その議員バートンは米国大統領となっていた。日本の議員の仲介で再度バートンを一夜の閨を共にした可南子は迎賓館で偶々廊下を数人で歩く人たちを写真に収めた。これが日米首脳の秘密会談だと後から知ったが、フィルムの空き函をホテルの部屋の屑入れに捨てたのを気付かなかったことが、可南子の身に次々と起こる災厄、彼女は決心してこの秘密のネガを建てに大統領の側近を強請りに掛けた。そしてロンドンで150万ドルで合意し側近夫妻と共にスイスベルンに向かい無事前渡し金50万ドルをスイスの個人銀行に預金した。
アガサ・クリスティー著「スタイルズ荘の怪事件」,富豪な老婦人が毒殺された。旧友を訪ねたヘイスティングスが偶々居合わせ、近くに旅行で宿泊している顔見知りのポアロに事件を依頼する。登場人物の人間関係の歪みと遺産相続に纏わる根拠をこれでもかと伏線を張り物語は終局へと向かう。ポアロの灰色の頭脳が炸裂し事件は解決へ。1935年の作品でクリスティー執筆の最初の長編ミステリーだという記念すべき作品だという。しかし私はクイーンの作品と比べてしまう。一貫した論理性と面白さはやはりエラリー・クイーンの方が数段上だ。
エラリー・クイーン著「エジプト十字架の秘密」,20世紀初期のこの作品を読んで感動することしきりだ。プロットといい、トリックさらには細かにして多数の伏線と本格と言われる推理小説の全てを網羅している。殺人の被害者が磔にされ首を落とされる衝撃、兄弟愛と破綻、生国での犯罪による米国への逃亡そして事業が当たり裕福になった長兄と次兄但し末弟だけは相変わらずの貧乏である。殺人トリックそしてエラリーの頭脳との勝負はまさに衝撃だ。
倉知淳著「星降り山荘の殺人」,長編ミステリーの部類に入るこの書は、読みやすく結末は今一の感があるが傑作だ。エンタメ会社で課長補佐を殴った杉下は部署替えを指示されある日星に関する蘊蓄でエンタテイナーの星園詩郎のお供で秩父山中のコテージに行くことになった。そこには売れっ子の女流作家と秘書さらにUFO研究家そして企画した岩岸社長とその部下という面々であった。そしてある朝発見されたのは岩岸社長の遺体である。次の日その部下も殺害された。伏線プロットといいまあまあだがいい感じだ。
東野圭吾著「マスカレード・ホテル」,東京での連続殺人事件が3件発生した。夫々の現場に残された2つの数字が書き込まれた紙片、その意味は次回の殺害現場の緯度と経度だった。そして第四の事件の想定場所がホテルコルテシア東京だった。山岸尚美の勤めるホテルに捜査員が一斉に潜伏し見張っていた。警視庁の新田刑事がフロントクラとして尚美と一緒にフロント業務を担当することになった。終盤捜査は連続殺人事件と思えた殺人事件は個々別々の事件と解ったそして尚美は犯人に部屋で監禁された。長編ミステリーだが、少し冗長性が気になる。
島田荘司著「写楽 閉じた国の幻 下」,その後の佐藤貞三の写楽研究は一向に捗らず遅々として方向を見失いつつあった。写楽は誰だったのか?あの筆使いと臨場感蔦屋重三郎が必死い隠ぺいしている絵師とは?破格の待遇で出版黒雲英刷りの豪華本、蔦屋は既に死期を悟っていて最後の賭けに出たのではないか。そこで思いついたのが長崎出島で東インド会社の商館長一行の江戸参府であった。一行3人の内の一人ラスという若者オランダとインドネシアの混血児に行き当たる。非常に面白く読んだ。

月曜日, 6月 28, 2021

島田荘司著「写楽 閉じた国の幻 上」、佐藤貞三彼は息子を一瞬の錯誤から死なせてしまう。大手企業の重役で準ミスまでになった娘と結婚した佐藤は息子の喪失から一気に崖から落っこちてしまうほどの転落生活になった。浮世絵研究家を標榜する彼は研究書を一冊上梓していた。息子の事故から訴訟を企てた佐藤側と逆の立場の人間が佐藤の上梓した書について批判したことについて佐藤のS出版社は対抗すべく佐藤に上梓するよう懇願する。佐藤は写楽に行きついた、写楽別人説18世紀末ある年1794年5月から翌年1月末でしか存在しない絵師写楽は平賀源内ではないかと。
歌野晶午著「密室殺人ゲーム王手飛車取り」、従来のミステリーという分野を破壊するプロットにまずは驚く、ネットのチャットをとうしての5名、彼らは各々ハンドルネームを持ちクイズ形式で殺人を行いその動機とか殺害の方法を皆で謎解きをしていくつまり殺人ゲームだ。但し出題した本人が犯人だという特殊性からして従来のミステリーの範疇を完全に突破している。しかし面白いか?問われれば複雑である。
トルーマン・カポーティ著「冷血」、カンザス州の片田舎の牧場主であるクラッター氏一家が押し込み強盗に一家4人が惨殺された。子供2人と夫妻の4人だった。犯人のディックとペリーは逃亡しメキシコへと、転々としながらも遂にカンザスシティに戻って来た。執拗な捜査の結果刑務所で同胞だった証言から2人の犯行が確定された。物証も揃い起訴され州の裁判所で死刑の判決が確定。一般のミステリーここで結末を迎え得るがここから長い、クラッター家に縁のある家族の詳細、また犯人の家族兄弟の詳細と少し飽きる程だ。
綾辻行人著「人形館の殺人」、京都は北白川に建つ古風な洋館それが人形館と呼ばれる館だ。その館に住まう飛龍想一は画家であり死亡した母の妹と二人暮らしだが、洋館側には借家人の二人、さらに祖父の時代からの年老いた管理人夫婦が住んでいる。想一の過去実際に起こした犯行と現実的送付される死を予感される封筒、これらが複雑に絡み合い事件の真相へと。過去の著者の館シリーズでは考えられないプロットが待っている少しドギマギして読んだ。
アーナルデュル・インドリダソン著「湿地」、著者はアイスランド人である。この島は日本の北海道と四国を合計した面積の小国で、しかも火山島であり、溶岩台地と湿地に囲まれ始終天候が悪いという。ある半地下のアパートで発見された老人の死、レイキャビク警察の犯罪捜査官エーレンデュルと2人の刑事による捜査が始まった。死亡した老人の過去を捜査する中で判明した事実が元になり恐ろしくも悲しい事件の結末が浮き彫りにされた。プロットと伏線ともそして文章事態が簡潔で読みやすく、本書も一気読みの傑作だ。
綾辻行人著「緋色の囁き」、和泉冴子は天郵政として、規律の厳しさでは指折りの聖真女学園高等学校に寄宿する全寮制だからだ。この学校の校長は冴子の叔母である。陰鬱なこの学校の雰囲気は冴子の精神世界を翻弄する。そして突然殺人事件が発生するしかし自殺として片づけられ真相は闇の中、さらに連続して殺人事件が発生する生徒が二人、めった刺しにされ殺害された。伏線を張り、プロットして確固たる線を引き週末へと転化するこのミステリーは傑作で30年も前の作品とは思えない一気読みだ。綾辻行人著「緋色の囁き」、
ロバート・ロプレスティ著「休日はコーヒーショップで謎解きを」、著者の作品を読むのは初めてだ。9編からなる短編集だが、中編も含まれている。アメリカを舞台にした小気味よい短編でミステリーつまり本格ミステリーとしては、最後編の赤い封筒ぐたいだ。詩人のデカルドが探偵役となりワトソン役としてコーヒーショップを経営するトマスが活躍するが、伏線といいプロットといい今一の感が否めない。
黒川博行著「騙る」、美術年俸者の編集長の佐保と菊池を中心に骨董屋を介在して海千山千の取引が行われ慣れた手合いで無事に収束させるという物語だ。著者の過去の著作と一線を画す今回の書は、例のユーモアを感じさせず今一だと思わせる。大どんでん返しも無ければ緊張感も無い。
綾辻行人著「黒猫館の殺人」、鮎田冬真なる老人から受領した手紙から江南は、老人を鹿谷門美に紹介することになった。記憶喪失だという老人から渡せられた手記を読み二人で推理し遂には現地へと赴くこととなった。長文の手記その中に複雑で複数の伏線を設定し完璧なプロットが本書を本格ミステリーと呼ばれるものにしている。建築家中村青司により設計された館、黒猫館は実は二つあった。最後の最後でどんでん返しが待っている。
ジョン・ヴァードン著「数字を一つ思い浮かべろ」、ニューヨーク市警を退職した刑事ガーニーは友人の相談を受け脅迫じみた文面・詩に興味を示し捜査に乗り出す。友人の死を知ったガーニーはその後次々と発生した連続殺人事件を依頼され捜査に突き進む。複雑な幾つもの伏線と綿密なプロットは見事でありこれぞ警察ミステリーの頂点を思われる卓越した物語だ。
荻原浩著「噂」、脚首の無い死体が発見され、連続殺人事件として持ち上がった。小暮巡査部長と警視庁の名島女子警部補とのコンビで捜査を担当し日夜聞き込みを開始した。女子高生を集めWOMと呼ばれる口コミ戦略によるプロモーションを企画した会社のリストから殺害された女性がその時集客されたリストに載っていたことが判明。捜査は一段と絞り込まれ遂に犯人が足フェチで企画会社の従業員と判明し逮捕。様々な伏線を用意し殺人ミステリーの悲惨さを感じさせないプロットといいかなりの警察小説としての魅力たっぷりだ。
エラリー・クイーン著「エラリー・クイーンの新冒険」、中短編を含む9篇の短編集で、冒険に続く新冒険という訳である。様々な状況下の設定を作り、エラリークイーンの頭脳が炸裂しながら論理的に事件を解決する見事さには感服する。こうした様々なプロットとトリックと伏線を含めて物語の面白さを楽しめる、海外旅行時に持参して暖か伊南国のベランダで読みたい物語だ。
西村京太郎著「殺しの双曲線」、二組の双生児が織りなす犯罪、一方は東京での強盗及び殺人、もう一方は雪深い宮城のホテルにて推薦された宿泊客が次々と死体となる連続殺人事件そして終盤で二つが連携するという。クリスティーの誰もいなくなったに挑戦する独自のプロットの展開に驚嘆するミステリーだ。
エラリー・クイーン著「シャム双子の秘密」,急峻な渓谷の頂上に立つ館に警視父子は休暇中迷い込んで到達した。下界は猛烈な山火事で逃げ道がなかった為ゼイビア邸にやむなく到着した次第である。ある日、館の主の博士が殺害された警視父子は必死に推理し犯人像を捉えるべく奮闘するそんな中で再度今度は博士の弟が殺害される。二人の被害者が握っていたカードはダイイングメッセージか?迫りくる山火事と犯人追跡というプロットと意外な結末は最高だ。
エラリー・クイーン著「ローマ帽子の秘密」,ニューヨークの劇場で殺人事件が発生し当然の如くクイーン警視父子が現場に駆け付けたが、状況は複雑で該当する犯人像が浮かんでこない。登場人物の設定と緻密な伏線エラリーの極上推理力、本格ミステリーの要件を全て満たしている本書はやはり古典的な推理小説の名著だ。
澤村伊智著「ずうのめ人形」、出版社の社員二人が殺害されたと始まる物語は、実に幻想の世界でこれをホラーと呼ぶという。作者が創作したずうのめ人形は和風で黒い着物をきて顔は赤い糸でぐるぐる巻きにされ呪い殺すそんな人形だ。都市伝説に潜む影そして闇、そこに蠢く人間達の懊悩をホラーかしての物語だ。
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