IT社長の徒然日記
創業以来30数年、読書を通して思うことを日記として記していきたいと、思いました。オーディオ、ジャズ、ゴルフ、海外旅行、酒その他諸々について。
月曜日, 8月 30, 2021
森博嗣著「女王の百年密室」、ミステリーとファンタジーが融合しsFチックに仕上げた数奇な物語だ。ある日ジャーナリストのミチルは相棒のロボットのロイディと道に迷うが一人の老人の教えでルナティック・シティーと呼称される街に入り女王に謁見する。この街の住人は死を恐れない冷凍保存され再生すると信じている。死そして神、そこに暮らす人々の幸福人生2113年という時代設定何もかもがコミカルでシニカルだ。
皆川博子著「開かせていただき光栄です」、舞台は18世紀のロンドン、外科医ダニエルは5人のそれぞれ個性のある弟子とともに解剖を受け持つ医師だった。ある日見慣れぬ遺体が2体見つかった。一つは妊婦の遺体でもう一つは少年の遺体だ。治安判事を中心に様々な角度から捜査が進められ最後になって行きついたのは容疑者と思しき者二名が死亡したという事実、しかし田舎からロンドンに出てきた文学少年の遺体と見なされ解剖した弟子の一人の容疑がうらずけられ裁判に持ち込まれた、しかしそこにどんでん返しが用意されていた。長編にも拘わらずプロット、そして巧みな伏線が最後に重ね合う手工は感嘆せずにはいられぬ面白さだ。
北山猛邦著「アリス・ミラー城殺人事件」、東北の孤島に集められた探偵10人、アリス・ミラー城は白角という木材業者が島を買い取りそこに建てた城だった。ルディという女性が主催者で鏡つまりアリスミラーを捜すという設定だ。来島した翌日から、次々と殺人事件が発生する。何故殺害されたのか?そして殺害のトリックもまた奇妙な内装を抱えた城の下では判別できない。深まる疑惑そして恐怖次々と発生する殺人、彼らは疑心暗鬼となり互いの信頼は崩壊する。舞台設定といいトリック及びプロット全てが圧巻であり、酸性雨という環境破壊をテーマに殺人動機が解明される。
アガサ・クリスティー著「火曜クラブ」、6人のそれぞれ個性ある人物が火曜日に集い、事件を披露しあい犯人を当てるという趣向つまり火曜クラブが結成されメンバーにはミスマープルも参加していた。個性ある怪事件を次々と推理し当てて行くミスマープルの頭脳を参加者は驚嘆する。中でも最終章の溺死は御大クリスティーの面目躍如の感があり、楽しく読ませてもらった。
金曜日, 7月 30, 2021
米澤穂信著「ボトルネック」,ある日、死んだ彼女に花を手向けに東尋坊に出掛けたリョウは、崖から転落したが無事に金沢に戻っていた。ここから記憶喪失となり今現在いる自分の世界と過去の世界の境界が曖昧になり自己喪失となった。二つの異世界をスライドしながら、一つ一つを確認しながら生きていこうとする。不思議なミステリー小説だ。
アガサ・クリスティー著「死との約束」,アメリカ人家族、裕福なボイトン家の主は女性で絶対君主的な立ち位置で家族を思い通りに支配してきていた。そんな家族が家長の意見で中東はエルサレムに旅行に行くことになった。その旅行中女主人は殺害された。そこに居合わせたのは名探偵ポアロだった。彼の灰色の脳細胞が縦横無尽に活躍して事件を解決へ導く。前半はボイトン家の詳述だが、ちゃんと伏線を張り事件の動機作りをしていて読後読者がそうだったかと思うような、見事な記述だ。
松本清張著「聖獣配列 下」,夜明け前の米国大統領と日本の磯部総理との秘密会談、迎賓館で偶然撮った写真をシュルツとの交渉の最後の切り札として大事に保管、それは骨壺の中であったり銀行の貸金の中であった。しかし徐々に嵌められたと気づき始めた可南子は急遽150万ドルの資金を回収にスイスに飛んだ。V・クンケル銀行の応接室で割り当てられたナンバーが口から出なかった。女性を主人公に据え、心理描写といい伏線プロットといい清張の真骨頂がここにある。
アガサ・クリスティー著「ゼロ時間へ」,海岸沿いの崖の上に建つ館、そこの富豪の女主人トレリシアンその館に三々後後集まった人々、そこで殺人事件が発生する。スコットランドヤードの警視バトルとリーチ警部が乗り込む、捜査は何度も裏切られ中々真犯人に到達できない。最後にどんでん返しが待っている。多数の伏線を用意しプロットは単純だが良く練られたトリック、名探偵ポアロが登場しないが面白い。
松本清張著「聖獣配列 上」,銀座のバーのマダム中上可南子は、数年前米国銀員と二夜を共にした経験がある、今回その議員バートンは米国大統領となっていた。日本の議員の仲介で再度バートンを一夜の閨を共にした可南子は迎賓館で偶々廊下を数人で歩く人たちを写真に収めた。これが日米首脳の秘密会談だと後から知ったが、フィルムの空き函をホテルの部屋の屑入れに捨てたのを気付かなかったことが、可南子の身に次々と起こる災厄、彼女は決心してこの秘密のネガを建てに大統領の側近を強請りに掛けた。そしてロンドンで150万ドルで合意し側近夫妻と共にスイスベルンに向かい無事前渡し金50万ドルをスイスの個人銀行に預金した。
アガサ・クリスティー著「スタイルズ荘の怪事件」,富豪な老婦人が毒殺された。旧友を訪ねたヘイスティングスが偶々居合わせ、近くに旅行で宿泊している顔見知りのポアロに事件を依頼する。登場人物の人間関係の歪みと遺産相続に纏わる根拠をこれでもかと伏線を張り物語は終局へと向かう。ポアロの灰色の頭脳が炸裂し事件は解決へ。1935年の作品でクリスティー執筆の最初の長編ミステリーだという記念すべき作品だという。しかし私はクイーンの作品と比べてしまう。一貫した論理性と面白さはやはりエラリー・クイーンの方が数段上だ。
エラリー・クイーン著「エジプト十字架の秘密」,20世紀初期のこの作品を読んで感動することしきりだ。プロットといい、トリックさらには細かにして多数の伏線と本格と言われる推理小説の全てを網羅している。殺人の被害者が磔にされ首を落とされる衝撃、兄弟愛と破綻、生国での犯罪による米国への逃亡そして事業が当たり裕福になった長兄と次兄但し末弟だけは相変わらずの貧乏である。殺人トリックそしてエラリーの頭脳との勝負はまさに衝撃だ。
倉知淳著「星降り山荘の殺人」,長編ミステリーの部類に入るこの書は、読みやすく結末は今一の感があるが傑作だ。エンタメ会社で課長補佐を殴った杉下は部署替えを指示されある日星に関する蘊蓄でエンタテイナーの星園詩郎のお供で秩父山中のコテージに行くことになった。そこには売れっ子の女流作家と秘書さらにUFO研究家そして企画した岩岸社長とその部下という面々であった。そしてある朝発見されたのは岩岸社長の遺体である。次の日その部下も殺害された。伏線プロットといいまあまあだがいい感じだ。
東野圭吾著「マスカレード・ホテル」,東京での連続殺人事件が3件発生した。夫々の現場に残された2つの数字が書き込まれた紙片、その意味は次回の殺害現場の緯度と経度だった。そして第四の事件の想定場所がホテルコルテシア東京だった。山岸尚美の勤めるホテルに捜査員が一斉に潜伏し見張っていた。警視庁の新田刑事がフロントクラとして尚美と一緒にフロント業務を担当することになった。終盤捜査は連続殺人事件と思えた殺人事件は個々別々の事件と解ったそして尚美は犯人に部屋で監禁された。長編ミステリーだが、少し冗長性が気になる。
島田荘司著「写楽 閉じた国の幻 下」,その後の佐藤貞三の写楽研究は一向に捗らず遅々として方向を見失いつつあった。写楽は誰だったのか?あの筆使いと臨場感蔦屋重三郎が必死い隠ぺいしている絵師とは?破格の待遇で出版黒雲英刷りの豪華本、蔦屋は既に死期を悟っていて最後の賭けに出たのではないか。そこで思いついたのが長崎出島で東インド会社の商館長一行の江戸参府であった。一行3人の内の一人ラスという若者オランダとインドネシアの混血児に行き当たる。非常に面白く読んだ。
月曜日, 6月 28, 2021
島田荘司著「写楽 閉じた国の幻 上」、佐藤貞三彼は息子を一瞬の錯誤から死なせてしまう。大手企業の重役で準ミスまでになった娘と結婚した佐藤は息子の喪失から一気に崖から落っこちてしまうほどの転落生活になった。浮世絵研究家を標榜する彼は研究書を一冊上梓していた。息子の事故から訴訟を企てた佐藤側と逆の立場の人間が佐藤の上梓した書について批判したことについて佐藤のS出版社は対抗すべく佐藤に上梓するよう懇願する。佐藤は写楽に行きついた、写楽別人説18世紀末ある年1794年5月から翌年1月末でしか存在しない絵師写楽は平賀源内ではないかと。
歌野晶午著「密室殺人ゲーム王手飛車取り」、従来のミステリーという分野を破壊するプロットにまずは驚く、ネットのチャットをとうしての5名、彼らは各々ハンドルネームを持ちクイズ形式で殺人を行いその動機とか殺害の方法を皆で謎解きをしていくつまり殺人ゲームだ。但し出題した本人が犯人だという特殊性からして従来のミステリーの範疇を完全に突破している。しかし面白いか?問われれば複雑である。
トルーマン・カポーティ著「冷血」、カンザス州の片田舎の牧場主であるクラッター氏一家が押し込み強盗に一家4人が惨殺された。子供2人と夫妻の4人だった。犯人のディックとペリーは逃亡しメキシコへと、転々としながらも遂にカンザスシティに戻って来た。執拗な捜査の結果刑務所で同胞だった証言から2人の犯行が確定された。物証も揃い起訴され州の裁判所で死刑の判決が確定。一般のミステリーここで結末を迎え得るがここから長い、クラッター家に縁のある家族の詳細、また犯人の家族兄弟の詳細と少し飽きる程だ。
綾辻行人著「人形館の殺人」、京都は北白川に建つ古風な洋館それが人形館と呼ばれる館だ。その館に住まう飛龍想一は画家であり死亡した母の妹と二人暮らしだが、洋館側には借家人の二人、さらに祖父の時代からの年老いた管理人夫婦が住んでいる。想一の過去実際に起こした犯行と現実的送付される死を予感される封筒、これらが複雑に絡み合い事件の真相へと。過去の著者の館シリーズでは考えられないプロットが待っている少しドギマギして読んだ。
アーナルデュル・インドリダソン著「湿地」、著者はアイスランド人である。この島は日本の北海道と四国を合計した面積の小国で、しかも火山島であり、溶岩台地と湿地に囲まれ始終天候が悪いという。ある半地下のアパートで発見された老人の死、レイキャビク警察の犯罪捜査官エーレンデュルと2人の刑事による捜査が始まった。死亡した老人の過去を捜査する中で判明した事実が元になり恐ろしくも悲しい事件の結末が浮き彫りにされた。プロットと伏線ともそして文章事態が簡潔で読みやすく、本書も一気読みの傑作だ。
綾辻行人著「緋色の囁き」、和泉冴子は天郵政として、規律の厳しさでは指折りの聖真女学園高等学校に寄宿する全寮制だからだ。この学校の校長は冴子の叔母である。陰鬱なこの学校の雰囲気は冴子の精神世界を翻弄する。そして突然殺人事件が発生するしかし自殺として片づけられ真相は闇の中、さらに連続して殺人事件が発生する生徒が二人、めった刺しにされ殺害された。伏線を張り、プロットして確固たる線を引き週末へと転化するこのミステリーは傑作で30年も前の作品とは思えない一気読みだ。綾辻行人著「緋色の囁き」、
ロバート・ロプレスティ著「休日はコーヒーショップで謎解きを」、著者の作品を読むのは初めてだ。9編からなる短編集だが、中編も含まれている。アメリカを舞台にした小気味よい短編でミステリーつまり本格ミステリーとしては、最後編の赤い封筒ぐたいだ。詩人のデカルドが探偵役となりワトソン役としてコーヒーショップを経営するトマスが活躍するが、伏線といいプロットといい今一の感が否めない。
黒川博行著「騙る」、美術年俸者の編集長の佐保と菊池を中心に骨董屋を介在して海千山千の取引が行われ慣れた手合いで無事に収束させるという物語だ。著者の過去の著作と一線を画す今回の書は、例のユーモアを感じさせず今一だと思わせる。大どんでん返しも無ければ緊張感も無い。
綾辻行人著「黒猫館の殺人」、鮎田冬真なる老人から受領した手紙から江南は、老人を鹿谷門美に紹介することになった。記憶喪失だという老人から渡せられた手記を読み二人で推理し遂には現地へと赴くこととなった。長文の手記その中に複雑で複数の伏線を設定し完璧なプロットが本書を本格ミステリーと呼ばれるものにしている。建築家中村青司により設計された館、黒猫館は実は二つあった。最後の最後でどんでん返しが待っている。
ジョン・ヴァードン著「数字を一つ思い浮かべろ」、ニューヨーク市警を退職した刑事ガーニーは友人の相談を受け脅迫じみた文面・詩に興味を示し捜査に乗り出す。友人の死を知ったガーニーはその後次々と発生した連続殺人事件を依頼され捜査に突き進む。複雑な幾つもの伏線と綿密なプロットは見事でありこれぞ警察ミステリーの頂点を思われる卓越した物語だ。
荻原浩著「噂」、脚首の無い死体が発見され、連続殺人事件として持ち上がった。小暮巡査部長と警視庁の名島女子警部補とのコンビで捜査を担当し日夜聞き込みを開始した。女子高生を集めWOMと呼ばれる口コミ戦略によるプロモーションを企画した会社のリストから殺害された女性がその時集客されたリストに載っていたことが判明。捜査は一段と絞り込まれ遂に犯人が足フェチで企画会社の従業員と判明し逮捕。様々な伏線を用意し殺人ミステリーの悲惨さを感じさせないプロットといいかなりの警察小説としての魅力たっぷりだ。
エラリー・クイーン著「エラリー・クイーンの新冒険」、中短編を含む9篇の短編集で、冒険に続く新冒険という訳である。様々な状況下の設定を作り、エラリークイーンの頭脳が炸裂しながら論理的に事件を解決する見事さには感服する。こうした様々なプロットとトリックと伏線を含めて物語の面白さを楽しめる、海外旅行時に持参して暖か伊南国のベランダで読みたい物語だ。
西村京太郎著「殺しの双曲線」、二組の双生児が織りなす犯罪、一方は東京での強盗及び殺人、もう一方は雪深い宮城のホテルにて推薦された宿泊客が次々と死体となる連続殺人事件そして終盤で二つが連携するという。クリスティーの誰もいなくなったに挑戦する独自のプロットの展開に驚嘆するミステリーだ。
エラリー・クイーン著「シャム双子の秘密」,急峻な渓谷の頂上に立つ館に警視父子は休暇中迷い込んで到達した。下界は猛烈な山火事で逃げ道がなかった為ゼイビア邸にやむなく到着した次第である。ある日、館の主の博士が殺害された警視父子は必死に推理し犯人像を捉えるべく奮闘するそんな中で再度今度は博士の弟が殺害される。二人の被害者が握っていたカードはダイイングメッセージか?迫りくる山火事と犯人追跡というプロットと意外な結末は最高だ。
エラリー・クイーン著「ローマ帽子の秘密」,ニューヨークの劇場で殺人事件が発生し当然の如くクイーン警視父子が現場に駆け付けたが、状況は複雑で該当する犯人像が浮かんでこない。登場人物の設定と緻密な伏線エラリーの極上推理力、本格ミステリーの要件を全て満たしている本書はやはり古典的な推理小説の名著だ。
澤村伊智著「ずうのめ人形」、出版社の社員二人が殺害されたと始まる物語は、実に幻想の世界でこれをホラーと呼ぶという。作者が創作したずうのめ人形は和風で黒い着物をきて顔は赤い糸でぐるぐる巻きにされ呪い殺すそんな人形だ。都市伝説に潜む影そして闇、そこに蠢く人間達の懊悩をホラーかしての物語だ。
土曜日, 5月 29, 2021
エラリー・クイーン著「オランダ靴の秘密」、ある富豪の老婦人が病院のベッドの上で絞殺された、クイーン警視親子は現場に立ち会い検証するが、恐ろしっく手の込んだ殺人事件で一向に成果が上がらぬまま時は過ぎた。その後第二に殺人事件が発生、医師が殺害された。エラリーの頭脳が急転直下の勢いで働き、遂に犯人特定に漕ぎつけた。緻密な伏線と舞台が病院という特赦な場所での殺人事件を思うとプロットが完璧でやはり古典的本格ミステリーの一品だ。
エラリー・クイーン著「エラリー・クイーンの冒険」、クイーン自身が推薦する珠玉の11編の短編集である。どの物語も緻密な伏線を用意し名探偵エラリー・クイーンが見事に解決する傑作ミステリーた。様々なシュチュエーションを用意し読者を楽しませてくれ、クイーンとの対決しながら読み進める楽しさこれに尽きる。
エラリー・クイーン著「フランス白粉の秘密」、デパートのショーウィンドウから発見されたデパートのオーナーの夫人を回り、様々な伏線を用意し、クイーン警視とその息子エラリーの頭脳が回転し解決へ向かう。緻密な伏線を至る所に配置し読者に犯人特定に向け挑戦する本書は本格ミステリーの古典的名作だ。
エラリー・クイーン著「Xの悲劇」、1930年代初頭に上梓されたというこの作品の緻密さには驚嘆させられる。各章に暗示される幾つもの伏線その伏線の組み合わせから推理される事象、主人公ドルリー・レーン氏の卓越した頭脳は遺憾なく発揮され事件の核心へと迫る。まさにミステリーの古典であり一時代を画した作品である。
岡島二人著「クラインの壺」、SF的世界とミステリーを融合し複雑な伏線を用意し読者を翻弄するそんな物語だ。しかも1988年に上梓されたということから作者のSF的発想の素晴らしさに正に驚嘆するしかない。今でこそ現実と仮想、バーチャルとリアルが様々な場面で取り上げられるがMSDOS最盛期にこの発想をしていたとは感服である。
カルロス・ルイス・サフォン著「風の影 下」、スペイン内戦の悲惨な歴史を背景にパリからもどったフリアン・カラックスを待っていたのは愛しい女性の死だった。しかも彼女はフリアンと兄弟だという。ダニエルを中心として関連する人物と背景と歴史の中で右往左往する市民、幾つもの伏線を用意してその中を行ったり来たりする正に本格ミステリーといえる名著だ。
カルロス・ルイス・サフォン著「風の影 上」、1930年代のスペインはバルセロナが舞台、古書店を営む父と共同で仕事をするダニエル少年は、ある日本の墓場と呼称される館で一冊の本に巡り合う著者はフリアン・カラックス彼少年は人生を変える程の感動を胸にし、フリアン・カラックスについて探索しようと思い立ち、その著者に関連する人物・場所を訪れる。
円居挽著「丸太町ルヴォワール」、京都を舞台にしたヴァーチャルなミステリーとでもいおうか、祖父が殺害され古の疑似裁判双龍会に搭乗する龍師と呼称する関係者が論を戦わせ真相に迫るという物語だ。名探偵がいるわけでもなく殺害のトリックも複雑な伏線も無いあるのは叙述トリックのみで展開する異色なミステリーだ。
エラリー・クイーン著「Yの悲劇」、事件はニューヨーク湾口から溺死体が発見されたところから始まる。死体の人物は富豪のヨーク・ハッターであった。これを契機にハッター家で次々と殺人事件が発生するサム警部らに招聘されドルリー・レーンが事件に関与するが、一向に進展せず最終盤に至ってレーンはこの事件から手を引くといってハムレット荘に帰ってしまった。その後サム警部とブルーノ判事がハムレット荘を訪れレーンから聞いた犯人は正に驚愕すべき事実であった。緻密なプロットと配置する伏線の妙といい当に古典的名著と呼ぶに相応しい推理小説だ。
岡島二人著「そして扉が閉ざされた」、別荘の物置の地下3mの所に埋設された核シェルターに男女4名が幽閉された。咲子という女性を回る殺人事件を探るべく彼女の母親がシェルターに犯人と思われる4人を閉じ込め、4人の会話の内容をテープレコーダー収録して警察に提出すると考えた策であった。4人はシェルターの中で互いに犯人の行方を語り合い互いを中傷する。堂々巡りの意見が飛び交い一行に犯人捜しは進まない。その男性の1人雄一が全てを解明した自分が咲子を殺したことになった偶然からの出来事だったと。
木曜日, 4月 29, 2021
島田荘司著「異邦の騎士」、目覚めたら公園のベンチの上だった。駐車したと思える車は見つからず完全に意識外につまり記憶が飛んだ。彼は名前もわからずじまいでいたが、ある女性良子と同棲を始めた。記憶障害には人知れず悩んだが良子によって齎される情報に振り回され、そんな時に占命判断という看板から御手洗潔という人物と親しくなった。彼は悍ましい殺人計画の中に組み込まれ代理殺人者に仕立てられつつあった。それを救ったのは例の御手洗だった。どんでん返し的ミステリーで読み応え十分である。
柚木裕子著「最後の証人」、クリニックを営む高瀬光治は、妻美津子と卓の3人である。ある日雨の夜塾からの帰り交通事故に遭いそのまま帰らぬ人なった。一人息子を失った家族の悲しみは天井知らず、妻の美津子は呆けたようになった。加害者の建設会社社長の嶋津は、詫びを入れるでもなく卓の友人の話によれば猛スピードで歩道に突っ込んできてなおかつ加害者は酒の匂いがしたという。不調を訴える妻を大学病院に行かせ検査をした結果癌だと判明し余命は一年だという。夫婦の加害者殺害の計画が遂行され遂に裁判を迎えた。
伊藤祐靖著「邦人奪還」、北朝鮮の拉致被害者6名を奪還すべく、特殊部隊員が潜水艦と軍用ヘリを駆使して北朝鮮領土に侵入し奪還するこの計画が政府に持ち上がり自衛隊員をして救出作戦を実行することに決定した。特戦部隊軍が侵攻を決行した。20数名の犠牲者を出しながらも見事に救出した。緊迫した作戦の筆力、右往左往する政府要人さらに自衛隊幹部の狼狽と保身、国家として果たすべき責任、飛び交うインテリジェンス大国の容赦ない恫喝全てが行き交う中で実行した救出作戦だった。
ウィリアム・ケント・クルーガー著「ありふれた祈り」、米国はミネソタ州の片田舎町に暮らすドラム家、長女アリエル長男フランクそして末っ子のジェイク一家の父ネイサンは牧師であり、母のルースは芸術家肌である。ある日アリエルが殺害され川に置き去りにされた、フランクは犯人を捜すべく調査するが一向に見つからない。隣人のブラント家には勝手母の恋人であって盲目のエミールそして娘のリーゼ、エミールの伝記をタイプしていたアリエル、彼女は次第にエミールに愛情を持ち一夜を共にして妊娠してしまう。そして殺害された。犯人はリーゼだった。牧歌的な雰囲気の描写の中に敬虔な家族の生活、その根底にミステリーが含まれ抒情的な物語だ。
池井戸潤著「アルルカンと道化師」、東京銀行大阪西支店の融資課長の半沢直樹は、担当区域の仙波工藝社から融資を依頼され本部に挙げるが、担保の無いことから却下され途方に暮れる。そんな折に本社も推進するM&Aをジャッカルという会社から仙波工藝社に買収提案を持ち出した西支店の部長らと半沢は戦わざるを得なくなった。しかしある絵画アルルカンとピエロを回り様々な駆け引きを探りあて遂に半沢の倍返しが炸裂した。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 五」、御巣鷹山での大惨事を引き起こした国民航空社内は、新労組で役員に引き上げられためいめいは社内での不正蓄財を重ねさらに政治家及び各部門の官僚とも不正行為をこれでもかと続けていた。ナショナルフラグシップを標榜する国民航空は巨大な巣窟となって520名を喪失した事故の反省もなく不正を繰り返した。財界から就任した国見会長も辞表を出す段になりそして恩地もまたアフリカナイロビへの出向を命じられた。巨悪と戦い疲れ果て人生の無常を感じる恩地の行く先を憂える最後の章であった。
浦賀和宏著「眠りの牢獄」、二つの出来事が、物語として進行して行く。どこと言って普通の青春小説だ。だが物語が進展してゆくに従って殺人事件が発生し知らない相手同士の殺人教唆そして実行される。一人の女性の階段からの墜落事故で病床に横たわる原因犯人を囲って地下室の閉じ込められた3人の男性の血おもって凄惨な様相と最後になってドンで返しの結末。複数の伏線を用意周到に前もって提示したミステリーに新鮮さを覚えた。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 四」、御巣鷹山に激突大破したジャンボ機123便の事故を教訓として、国見会長は会長室を作り各部署から選りすぐりの社員を配置したその中に恩地も抜擢され室の部長待遇となって10余年盥回しで僻地への赴任を漸く回避できた。会長国見の絶対安全、労使協調のスローガンは遅々として進まず、社内の管理職の汚職ピンハネが横行し改めて恩地に撲滅への決意を促すのだった。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 三」,本社勤務となった恩地だったが、閑職に着き日々を送る毎日だったが、ある日それも創立35周年の祝いの途中、国民航空にとって最悪な事態が発生した。ジャンボ機ボーイング747が群馬県上野村の御巣鷹山の尾根に激突し520名もの尊い命が失われた。航空事故を回り騒然となり御巣鷹の尾根は遺体回収のため、群馬県警は元より自衛隊、国民航空社員でごった返し遺体は藤岡市の体育館に収納され遠方より駆けつけた遺族によって身元確認が行われた。49日を過ぎた頃より補償交渉の任に着いた恩地だったが事故の犠牲者は元より家族家庭をも崩壊させた事故の重大さと責任を痛感する事態であった。
京極夏彦著「ヒトでなし」,子供を殺害され、離婚され職を失い放浪を続ける慎吾、そこで境遇に気づいた「ヒトでなし」と自分は生きても良いが死んでもいい何にも拘りを持たずただ死ねないから生きている。世の中の全ての想念を捨てヒトでなしとなった。友人の部屋で殺人事件に遭遇する部屋主の祖父のお寺に逃げ込んだ。そして遺体を埋める。殺人に対しても何ら感想はない殺したければ、殺せばいい。死にたければ死ねばいい。まさにこの無情感コソが生きるということなのか。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 二」,テヘラン赴任を受諾し現地に赴き、総務主任として業務に当たる恩地は絶望の中でも精一杯の努力を続ける毎日だった。家族を呼び寄せ生活が始まった。そんな中でさらに恩地を襲ったのはアフリカ大地のケニアへの赴任要請だった。どこまでも痛め付けられ僻地から僻地へと転々と振り回される生活に孤独と絶望を禁じえなかった。そに間に二度も海外で航空機事故を起こした国民航空への批判は強く、国会の場で社長および現組合委員長同席の元で尋問聞き取りが行われ、その席で沢泉委員長は恩地に対する会社の不当人事を指摘した。遂にアフリカを離れ帰国することが叶った。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 一」,ナショナルフラグシップである国民航空で勤務している恩地元は、突然労働組合の委員長を引き受けざるを得なくなり、粉骨砕身組合活動に万進する日々だった。漸く二年の委員長の任期開けを待って会社側から提示された人事異動でパキスタンのカラチへの赴任が決まった総務主任として劣悪な環境下で妻子を呼び寄せ働く毎日だった。二年の赴任期間を後数か月残すのみとなったある日突然イランのテヘランへの移動が決まった。恩地の希望はズタズタに引き裂かれた。
麻耶雄高著「蛍」,京都の山間部にある黒づくめの館、その館は以前6人もの惨殺死体が出た場所であった。大学のサークル6名が館主の了解を得て合宿することになった。そして間もなく館主が探検を胸に刺され殺害された。以降館の奇妙な密室とも思われる構造中で次々と殺人が起き読者の犯人捜しの旅が強要され、結末はあっけに囚われる仕組みだ。伏線といいプロットといいこれぞミステリーといった傑作だ。
恩田陸著「夜のピクニック」,殺人もなければミステリー性も無い、北高という高校での夜の歩行祭、参加している高校生の遣り取りが不思議と心に響き人間の優しさを実感し青春を思い起こさせるそんな物語である。とに角歩く夜通し歩く中で高校生の仲間内での感情やら直に表現して心地よい読後感の爽やかさを実感できる名作ではないか。
松本清張著「花氷」、不動産業を営む粕谷為三は、ある寿司屋で二年前まで同棲していた女性霜井豊代子と偶然顔を合わせた。儲け話を常々希求していた粕谷が得たのは岩槻にある4万坪の国有地の払い下げだった。ブローカーの粕谷自身の手がけた女三人を使い銀行の支店長を抱き込み、代議士に工作を開始した。国有林の払い下げの許可が林野庁長官から降り後は大蔵官僚だけとなって有頂天となって粕谷と黒川支店長の前に来た知らせは却下されたというものだった。
火曜日, 3月 30, 2021
京極夏彦著「神社姫の森」、過去の事件の亡霊とも取れる人物が次々と登場して混乱を来たし、それに心理分析学者であったユングの理論まで持ち出され聊か閉口ぎみになる本書である。妄想に取りつかれ自己を見失い冥府との境界を右往左往するその本人は実は小説家の関口巽だったとは、京極堂の中禅寺秋彦は勿論榎木田礼次郎探偵までが登場するといった態である。
松本清張著「分離の時間」、2編の中短編が載っている中の第一編が、「分離の時間」である。九州出身の代議士八木沢が横浜のホテルで殺害されたこの事件に感心を寄せた土井と週刊誌記者の山岸ともに真相に迫るべく自分たちで捜査に臨んだ。石油会社の社長上杉とその愛人でホモの関係にある洋品店経営の高橋による愛憎が絡んだ殺人事件だった。2編目の作品は「速力の告発」である。1960年代のモータリゼーションが齎す交通事故での大量の死者の排出を電気店経営の木谷彼は妻子を事故で喪失している、自動車ディーラーから通産省を始め官庁にも訴えるのだが当然取り合って貰えず、故意に中古車に細工をしてエンコさせ渋滞を発生させ巻き込まれた運転者にメーカー告発のビラ配りをするといった作戦だ。
服部まゆみ著「この闇と光」、著者の作品を読むのは初めてである。この作品はミステリーとかファンタジーとかSFとか不思議なイメージだ。4歳の時病院から攫われた子供鬱蒼とした森の奥の屋敷それはある小説家の別荘だった。少年は少女として育てられ13歳になり、青山墓地で置き去りにされ発見された。当時盲目だった少年の成長過程で嗅ぎ取る様々な事象は敏感であった。異国のイメージを持って暮らしていた少年にとって発見され日本を知り戸惑いながらさらに成長し、そして少年を攫った犯人に対峙する最後の場面が印象的だ。
辻村深月著「スロウハイツの神様 下」、青春をスロウハイツで過ごしたクリエイター達が、大人になって行く葛藤、ジレンマさらに孤独、疎外感全てを体験しながらも、人間それぞれが持つ優しさ、そして気づかいがこの物語の根底にあり、読後感は清涼そのものである。チヨダ・コーキと赤羽環の心温まる愛情はまさにこの物語の根底にある。
辻村深月著「スロウハイツの神様 上」、脚本家赤羽環が手に入れた古びたアパート名前を「スロウハイツ」といい、そこには有名な漫画家のチヨダ・コーキを始め小説家志望やら画家やらが住んでいる。そしてスロウハイツに入ってくる人、そこから出て行く人ある日環に紹介されて入って来た美女は加々美莉利亜という女性だ。この加々美という女性とチヨダ・コーキとの関係が展開がどうなるのか?下巻へ。
蘇部健一著「六枚のとんかつ」、保険調査員の小野と部下の120kgも体重のある早乙女、この二人が出会う様々な事件をある時は推理作家の古藤の知恵を借りながら解決へと導いていく何とも発想豊かなパロディックなミステリーだ。著者のユーモアを感じさせる面白い作品である。
松本清張著「高台の家」、短編と中短編の2作品が収録されている。「高台の家」と「獄衣の女囚」である。高台の家では、瀟洒な洋館に住まう未亡人と夫を亡くした息子の嫁が織りなす汚れた欲望からの殺人事件、一方獄衣の女囚では男性が住むアパートと隣り合う女性が住むアパートで起こる不可解な連続殺人事件、金銭と愛欲とが混ざり合ういずれも楽しめるミステリーだ。
京極夏彦著「書楼弔堂 炎昼」、破暁と同じく奇妙な3階建ての書舗、弔堂を中心として主である中禅寺を中心として巡る人間夫々に人生感を披露する物語である。今回の弔堂への誘い人は、薩摩藩士の流れを汲む家のお嬢塔子です。彼女が様々な人との邂逅通して弔堂の主人と巡り合うその中には勝海舟を始め後の柳田國男でいるという豪華版です。
松本清張著「風紋」、食品会社に勤める今津は、社史編纂室に移動になった。ここは、会社の掃きだめである。一方会社では、強力な宣伝効果で新しく開発した食品と薬品の融合商品キャメラミンが大ヒットし会社は上向いた。この商品の開発に携わった島田専務、宣伝を企画担当した工藤宣伝部長、社長杠(ゆずりは)と幼友達の大山常務、これらの人間が奏功して絡み合う闇を描いたこの作品は1960年代に書かれたとは思えない印象だ。
京極夏彦著「書楼弔堂 破暁」、鄙びた坂道を登るとそこに三階建ての奇妙な建築物そうそれが書楼弔堂つまり古本屋である。そこの主は僧侶の出自というが誠に知識豊富な俗人である。その書楼に通うようになった暇な御仁は武家の出で高遠彬という、母上妻子が在りながら書楼近くの百姓家に一人暮らしている。弔堂の主人とこの高遠そして間に客人を挟み交わす会話は面白い、その客人というのが勝海舟、泉鏡花など著名人だ。
土曜日, 2月 27, 2021
松本清張著「花実のない森」、サラリーマン梅木隆介がドライブ途中車に乗せた夫婦と思われる二人、その妻とも思われる女性に強く惹かれ、その後に執拗にその女性追い続けることになった。その存在は梅木の人生をも左右する程日々の生活の中で重要な人となっていった。そして岩国に近い街の造り酒屋に行きつき女性の真実の姿を発見して呆然となった。
垣根亮介著「信長の原理」、信長の領土は急速に拡大し天下統一目前で明智光秀の謀反によって殺害される。信長の何が不幸招来させたのか?気性が激しく神仏を無きものと考え、己の力を信ずる稀に見る残酷な性格故、部下の多くは戦に次ぐ戦に狩出せれ、下知に答えずば罷業な制裁を覚悟しなくてはならない。光秀が仕えた信長はそういった人物だった。本能寺での信長の首を討つ覚悟しつつ迷っている光秀、家臣らの意見から思わぬ方向へと。人生の不条理を光秀を愛してやまない著者の快著である。
真山仁著「ダブルギアリング」、保険会社精和生命の生き残り戦略を掛けて、右往左往する人間模様を描いた作品だ。合併を願望する精和と内外のファンド並びに保険会社との駆け引き、金融庁担当者との擦り合わせ、顧客、被保険者の解約ラッシュいよいよ持って破綻が眼前に迫りくるそんな時、内部にいる人間の行動つまり生き方が問われる。
真山仁著「オペレーションZ」、現実の日本社会に警鐘を鳴らす、著者の徹底した調査の上に書き上げた力作だ。財政破綻目前の日本社会を救うべく江島総理が打ち出した歳出半減策、それを担当した財務省職員で組織された「オペレーションZ」が本書の題名となっている。日本の借金は既に1000兆円にも積み上げられ政治は策は無しという体たらく、そこに新型コロナウイルスの蔓延という憂き目に遭遇した日本は本当に大丈夫なのだろうか?読者を本気させる一作だ。
松本清張著「雑草群落 下」、明和製薬社長村上為蔵の絵画に対しうる興味が浮世絵それも肉筆画にあるとの情報得た正平は、和子の友人喜久子が匿っている絵描に浮世絵を書かせたそれも写楽と春信である。文科省技官の鑑定書を入れて無事社長の元に渡した。しかし数日後に明和製薬副社長から引き取りに来てほしいといわれ混乱する正平、自分の愛人和子と息子健吉の仲を疑う、錯綜し混乱する人間関係伏線を幾つも用意し辿り着く結末は。
真山仁著「プライド」、本書は、6編からなる短編集である。主題はプライド、だがプライドは人生そのものに結び付く概念だ。著者は農業に始まり、政界はたまた霞が関の公務員と様々な背景の中で右往左往する人間達をプライドという視点で描いている作品だ。
松本清張著「雑草群落 上」、古美術業界を舞台に都内で店を張る中堅古美術商「草美堂」の主高尾正平は、愛人野村和子を持っていた。彼女は料亭で働いている。正平は兼ねてより明和製薬の社長に取り入り商売をしたいと思っていた矢先、明和製薬の記念パーティーに出席を赦され大阪に赴いた。そこで彼女和子が実は明和製薬社長村上為蔵の隠し子だと判明、何とか彼女を出しにして社長に取り入る魂胆に腐心する。
ダビッド・ラーゲルクランツ著「ミレニアム6 下」、ミカエルは、国防大臣フォシェルが過去ヒマラヤ登頂時に事件の真相を掴む、その真相の結果としてニタ・リマつまりシェルパは真相を知っていた、そして殺害された。その事でミカエルは敵に拉致されアワやガラス工場の溶鉱炉に、その窮地を救ったのはリスベット・サランデルだった。彼ミカエルとサランデルは深い闇の中にも大人の友情を築いていた。これが愛なのか。
ダビッド・ラーゲルクランツ著「ミレニアム6 上」、ジャーナリストのミカエルは、依然としてリスベットと接触を保ち続けていた。ある日浮浪者然とした男が殺害された。その後のDNA鑑定調査でその男はヒマラヤ登頂のシェルパを職業としていた事が判明した。彼の死を調査するうちに、国防大臣まで連鎖する深い闇にミカエルは立ち向かう羽目になる。
京極夏彦著「邪魅の雫」、新書版で800頁を超える超長編作だ。榎木津の叔父から依頼された件、礼次郎の嫁候補の調査に益田は立ち上がる。どうにも解明出来ない連続殺人事件が平塚、大磯管内で発生した。連続殺人事件の様相を呈しているが、独立した事件のようにも見える。そしてこの事件を解決したのは根本は探偵榎木田礼次郎だ、その解釈を務めるのは憑き物落としの京極堂中禅寺だった。女の恋心が事件の奥に潜んでいた、傑作ミステリーだと思う。
土曜日, 1月 30, 2021
松本清張著「混声の森 下」、柳原学長を漸く落とし学長就任を承諾させ、石田は自らを新理事長へと階段を昇った。交通事故に遭遇し現学長を追い落とし作戦を端から見ていた石田は、強力な理事二人と事務局長の鈴木に任せ知らせを待つだけとなったが、事態は石田の考え通りに進展し安心した。学長の就任式を終え約一か月後に東京へ出向いた学長柳原の口から出た言葉は、石田の放遂であった。
松本清張著「混声の森 上」、若葉学園という女子大の専務理事にのし上がった石田謙一は、理事長の追い落としの野望と策略、私生活ではバーのマダムとの不倫はたまた若いホステスとの不倫、家庭では長男の家庭内暴力との狭間で揺れる男の心情を描き、中年男の悲哀と野望を見事にサスペンスタッチで表現している。
松本清張著「生けるパスカル」、2編を含む短編集である。前半の「六畳の生涯」は、長野から連れ合いを亡くし開業医の長男の6畳間に身を寄せる79歳の老人の物語で寂寥と孤独に苛まれ次第に家政婦に異常な情熱を燃やす老人の心の変化を見事にミステリー風に描いたものだ。後半の「生けるパスカル」はイタリアのノーベル文学賞作家の書いた小説を元に、芸術家の妻の凶暴でヒステリック性に辟易して生活している美術家の妻の殺害に至る経緯を書いたミステリーで共に傑作である。
京極夏彦著「狂骨の夢」、戦中戦後の混乱の中で起きる意外な殺人事件、その裏に伝統と神話に基づく宗教から守り抜こうとする絶対神それは髑髏であった。著者の豊富な蘊蓄とトリック、プロセスが榎木田礼次郎を始め中禅寺秋彦・京極堂作家の関口巽らによって詳細に語られる真実は真っ暗闇の中で灯る蝋燭の様である。超長編小説だ。
有栖川有栖著「臨床犯罪学者・火村英生の推理 Ⅱ」、5編が収録された短編集である。いずれもアリスと火村のコンビが事件を解決する物語だ。プロットといいトリックといい、短編には研ぎ澄まされたアイデアが詰め込まれていて、読者を飽きさせなく気軽に読めるミステリーだ。
松本清張著「翳った旋舞」、R新聞社の新入社員で調査部に配属された三沢順子は、ある日蓄積された写真から取り出して提出した1枚は違う男のものだった。結果、部課長が左遷され順子は責任を負い懊悩する。友人のバーのホステスとの交友、組織の中で生きる女、著者の女性感と悲哀を織り交ぜ、相も変わらず女性心理を極めた一冊だ。
綾辻行人著「鬼面館の殺人 下」、同姓同名の者たちを集めた、鬼面館の主人招待された全員に仮面が配られ顔を隠すことになった。深夜時間は起こった。当主が殺害され首なし手指なしといった死体が朝に発見された。ここで日向の代わりに招待された門矢門美が、探偵よろしく事件解決に向けまた鬼面館の設計者である中村青司のカラクリを探しつつ探し当てた犯人は意外にも鬼面館の第一世代の当主の身内だった。まあトリックが少し凝りすぎて漫画チックだ。
綾辻行人著「鬼面館の殺人 上」、東京でも場所が不明な程の奥地に建つ鬼面館つまり、鬼面を蒐集しかも鬼才建築家中村青司が設計した建物だという。ひょうんなことから友人日向京介に依頼され鹿谷門美は、鬼面館へと。そして当館の主である影山がある朝殺害された首なし死体でしかも10本の指全てが切断されていた。雪が降り続く鬼面館、果たして犯人は?。
松本清張著「アムステルダム運河殺人事件」、中短編2編だる。一方は「アムステルダム運河殺人事件」と「セント・アンドリュースの事件」である。著者は1964年に現地を取材して書いた作品だ。運河に浮かんだジュラルミンのスーツケースに詰め込まれたバラバラ死体事件、そしてセントアンドリュースでの友人ら3人で出かけゴルフをしたその夜殺害された事件、いずれの事件も警察が見切りと付けた事件だ。想像巡らした犯人捜しが面白い。なおセントアンドリュースには、20数年前に訪れゴルフを2ラウンドしていて、懐かしい思い出読んだ。
綾辻行人著「水車館の殺人」、以前著者の作品「十角館の殺人」を読んだが、今回はその二作目に当たる作品だ。舞台は近畿地方の山の中に建つ西欧の古代の城を彷彿させる三連水車の回る水車館、勿論設計は例の設計家である。館の当主は交通事故により今は忌まわしい傷跡を隠すため白い仮面を着けている、他には清純美貌の妻、執事、家政婦といった面々だ。年に一度藤沼画伯の作品を見に訪問する3人、訪れた日の夜は嵐であった。その夜殺人事件が発生する家政婦だった。その後次々と発生する殺人事件、数多の伏線を用意し最後はどんでん返しという本書は清張以降の若手の本格推理小説と認識されている。
京極夏彦著「鉄鼠の檻」、思わずため息が出る程分厚い文庫本である、多分1300頁を超える大作だ。舞台は箱根湯本から山側に歩いて数時間の所にある禅寺、妙恚寺だ。各宗派を含むまあ禅寺という寺、寺の手前に老舗の宿がありそこも今回の舞台になっている。寺の禅僧の一人が殺害され宿の庭の柏の樹の上に置かれた、不審な事件とみて元から寺の取材に来ていた京極堂の妹敦子と鳥口に加え役者が勢ぞろいする京極堂、関口、探偵榎木田礼次郎禅僧が次々と殺害され連続僧侶殺人事件に発展する。そして禅という宗教が持つ特殊な背景と事情が重なる事件だった。作者の蘊蓄には恐れ入る。
松本清張著「象の白い脚」、1960年代後半、舞台はラオスで都市はビエンチャンだ。作家志望の友人石田が、ビエンチャンを訪れ取材中に何者かに殺害された。友人の谷口はその5か月後ビエンチャンに乗り込んだ、当時は政情不安と貧困の渦巻く国で共産軍と米軍の支援する政府軍との戦闘が起きていた。友人の死を回り精力的に嗅ぎまわる谷口は徐々に解明の糸口を発見した。しかし彼もまた溺死体となってメコン川に浮かんだ。
高橋克彦著「かげゑ歌麿」、江戸の名絵師歌麿、奢侈・贅沢を禁ずる振れを出した老中松平定信、そんな江戸市中で歌麿の描く美人画もご法度となった。実の娘ゆうとの再会、娘との絵の協演を夢見る歌麿に刺客の手が伸びる。弟子の春朗、平賀源内、料理やの蘭郎、そして火盗改めの一之進らの援護で娘ゆうとの再会を果たす。
畠山健二著「本所おけら長屋 十五」、最新刊が上梓された。15冊目である。例によっておけら長屋に住む面々鉄斎、万造、松吉、お染にお咲等々が引き起こす事件や長屋の住人に関連する人達の面倒事を人情を交え人生の教訓としながら温かく解決してゆくそんな物語で落涙するほど素晴らしい。
松本清張著「黒の回廊」、ヨーロッパを周遊する女性のみの団体ローズ・ツアーを企画した王冠旅行者の添乗員、門田そして旅先で講師を務める江木奈岐子、彼女は旅行作家である出発直前となって江木は急な要件で辞退し代わりに土方悦子を推薦する事態となったが、ツアーは無事出発できた。アンカレッジからロンドンそしてスコットランドと、湖の畔の宿に着いたその夜事件が起きた。旅行者の2人の女性が溺死体で発見され地元警察とスコットランドヤードが動き真相解明に当たった。そして犯人は過去の忌まわしい経歴が暴露された。ヨーロッパの旅情を感じさせるミステリーだ。
水曜日, 12月 30, 2020
市川憂斗著「ジェリーフィッシュは凍らない」
市川憂斗著「ジェリーフィッシュは凍らない」、1980年初頭の設定で、真空気嚢航空艇幅40m高さ20mの航空艇をジェリーフィッシュと呼ぶ。この機体をさらにステルス型に改良開発すべく携わるUFA社の研究開発員たち5名は苦悩していた。そんな折紹介されたのが大学一年生のレベッカという女子学生で彼女は天性的な化学の知識を持ちステルスに使用できる素材の開発を示唆していた。だが、実験室でレイプされ青酸ガスを咥えさせられ殺害された。飛行艇は完成を見航行試験を実施しかし飛行艇の乗組員全員が殺害されるという事件がおこった。F署のマリアと漣刑事二人が捜査に当たり、意外な真犯人に遭遇する。
高橋克彦著「歌麿殺贋事件」
高橋克彦著「歌麿殺贋事件」、短編を再構成したという本書は、歌麿の浮世絵を中心に美術業界の裏側、贋作を取り巻く詐欺などを描き、中でも大学講師の塔馬宗太郎、美人秘書の菜緒子、美術雑誌編集者の杉原という、いつものメンバーが揃い事件を解決する。
高橋克彦著「火怨 下」
高橋克彦著「火怨 下」、遂に田村麻呂が征東将軍として全権を掌握して阿弖流為率いる蝦夷軍を殲滅する作戦に出た。戦も既に二十有余年になり四十近くなった阿弖流為はただ只管無暗に争う事を考え直し蝦夷の民さらに児や孫の幸福を考えて作戦に出る。見事に田村麻呂の裏を欠き成功し自らは京に上り大阪の地にて斬首された。友との友情と民の幸せを想う先導を務める将として何たるかを示す長編小説だ。
高橋克彦著「火怨 上」
高橋克彦著「火怨 上」、平安時代に東北は蝦夷での地元と朝廷派遣軍との戦を描いた物語だ。蝦夷近郊に金が出土された情報は朝廷を喜ばせ大仏等の仏像や寺院の建立に役立つとの理由からこの地を略奪せんと軍を派遣したのである。蝦夷の地元の軍勢にあって阿弖流為を筆頭に母礼ら優秀な人物を揃えた軍勢は数では圧倒的に上回る朝廷軍に策を練り果敢に戦い勝利を収め敵方を撤退させた。
京極夏彦著「陰摩羅鬼の瑕」
京極夏彦著「陰摩羅鬼の瑕」、文庫本にして1200頁に及ぶ長超編ミステリーである。例の人物たちが勢ぞろいする、榎木田礼次郎探偵、小説家関口巽、京極堂中禅寺秋彦達が活躍する。事件は白樺湖畔に建つ瀟洒な洋館で発生する連続殺人事件である。当主由良の新妻は婚約し新婚初夜を過ぎた翌日、決まって殺害されるという事件である。特殊な環境、人間関係の中で生育した当主の鬱屈した人生を反映した事件であった。それにしても長編だ。
高橋克彦著「写楽殺人事件」
高橋克彦著「写楽殺人事件」、たった10か月余りで、140点もの作品を残した浮世絵師東洲斎写楽とは一体誰だったのか?著者のミステリーの主題はここにある。江戸期版元の蔦屋重三郎下で作品を世に問うた写楽。美大に勤務する津田は秋田への旅行で秋田藩が江戸文化深く拘わり秋田蘭画の絵師が写楽と関連しているのではと気づく。浮世絵界の二大派閥勢力の狭間で次々と発生する殺人事件、大学内での陋習、権利と欲が重なる歴史ミステリーだ。
高橋克彦著「広重殺人事件」
高橋克彦著「広重殺人事件」、著者の写楽、北斎に次ぐ広重殺人事件である。広重コロナによる死亡説を覆したのは中学教師の津田だった。深刻な病を負い津田と妻の冴子は東北の立石寺を訪れた時、妻冴子は五大堂から身を投げた。その後大学で浮世絵就中写楽の研究者塔間宋太郎と美術誌の記者である杉原とともに広重の調査に乗り出す。そんな折に津田が自殺した。彼の意を受け継ぎ、突き止めたのは写楽と東北天童との繋がりだった。彼広重は勤皇派で幕府を恐れ天童に滞在していた事実を掴む。そして幕府の手により殺害された。
高橋克彦著「ゴッホ殺人事件 下」
高橋克彦著「ゴッホ殺人事件 下」、東京に戻ってから勝手知ったる大学で浮世絵を研究している塔間と知人の美術専門誌を発刊担当の杉原と共に事件の詳細を追う。由梨子の母の他殺、シュミットの失踪、モサドのサミュエルの殺害と殺人事件が相次ぐ状況は読者を混乱させる。マーゴと共にオルセー美術館に勤務する学芸員ロベールの存在が俄かに浮上する。正にどんでん返しの結末だ。多数の伏線を重ね、詳細なゴッホの調査もとに練られたミステリーには感動だ。
高橋克彦著「ゴッホ殺人事件 上」
高橋克彦著「ゴッホ殺人事件 上」,パリに絵画修復師として在住する加納由梨子は、友人の美術館勤務のマーゴとゴッホの死の真相を探るべくアイントフォーヘンへ自動車で旅に出た。そこで昔のゴッホの記事が載っている雑誌を買わないかと持ち掛けた青年シュミットと出会う。由梨子の母の自殺、スイスはレマン湖の近在で殺害された日系人そしてシュミットも行方不明。パーティの席で友人マーゴが爆弾により殺害された。見えない敵に恐怖する由梨子、ゴッホの絵画を回り暗躍するモサド。
下村敦史著「闇に香る嘘」
下村敦史著「闇に香る嘘」,著者の作品は初めてで、本作品は第60回「江戸川乱歩賞」入選作品だという。第二次世界大戦中満州に渡り苦難の末に帰国した日本人並びに満州に置き去りにされた残留孤児という背景の中で物語展開してゆく。村上和久盲目の父親だ、実は実家の岩手の兄を偽物だと強い疑念を持ち方々に当たり今だ核心ができないで苦悩する姿、周辺に漂う不穏な出来事が彼を翻弄する。様々な伏線を最後の展開で開花させるどんでん返しは、そのプロットといい完璧だ。
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