金曜日, 6月 28, 2019

山崎豊子著「約束の海」、著者の最後の作品であり当時三部作を考慮していた由。潜水艦くにしおの船務士として乗艦していた花巻朔太郎は訓練後横須賀港に寄港途中で遊漁船と衝突海難事故を起こしてしまう。艦橋に居ながら何一つ救助できなく30名もの一般市民を犠牲にした後悔の念は脳裏を埋め尽くし潜水艦乗りを辞める決心をするが、海軍中尉だった父の戦争体験に触れ思い直し再び自衛隊に留まる決意をする。国民と自衛隊さらに軍隊、装備の必要性云々さらに自衛官の生き様まで描きたかったのだろうか?
松本清張著「砂の器 下」、依然として捜査は膠着状態が続き今西刑事らは任意捜査としてコツコツと続けていた。そんな折、ひょんなことからヌーボーグループの中の一人和賀英良前衛音楽家の自宅での不審な情報元に捜査は新たな段階へ和賀の出生を徹底的に洗う。農水大臣の愛娘との結婚を前に苦悩する犯人の姿が浮上する。著者のプロットは流石としか言いようがない。傑作ミステリーとして太鼓判だ。
松本清張著「砂の器 上」、東京蒲田駅操作場で起きた扼殺事件の被害者は50歳位の男性だが、一向に身元が判明せず警視庁の刑事達の捜査は膠着状態であった。最初はトリスバーで飲んでいた被害者が東北訛りで喋っていたとう情報を元に秋田を今西刑事は訪れたが判明しない。ところが被害者の養子という男が義理の父ではないかという情報を元に判明する。被害者は岡山県在住の男性だった。今西刑事の捜査上に浮かんできたのは前衛グループだった、関連する人間が二人死を遂げ自殺と認定されているが。。
真山仁著「スパイラル」、大手の会社から決意しての再就職先はマジテック株式会社という東大阪市の零細企業だった。その会社の故社長は博士と言われた数々の特許を持つオーナーだった。細々とした受注をこなし乍ら会社を続けていくマジテックは芝野を迎え次男望とともに営業部隊を新設し受注を少しずつ確保しつつあった。そんな折最重要得意先である栄興技研がハゲタカファンドに買収されるという事態になった。風前の灯火となったマジテックは最後のあがきを続けていたそん中朗報が齎された正体はサムライキャピタルファンドの社長鷲津政彦だった。
ガストン・ルルー著「オペラ座の怪人」、19世紀フランスはパリの有名な劇場オペラ座を舞台に跳梁跋扈する怪奇な異人そう怪人が絡む殺人事件と物語のもう一つの要点としての純愛を絡ませたプロットは当時の推理小説ミステリーで評判をとる。巨大なオペラ座の内部は複雑でまだ入ったこともない部屋が幾つもありミステリーを否が応でも盛り立てる。
百田尚樹著「影法師」、江戸時代茅島藩内の幼馴染の二人寛一と彦太郎の生涯に渡る男の友情を悲哀を持って書かれた小説だ。著者の書を久しぶりに手にしたが、相も変わらずプロットといい内容といい絶妙だ。男の友情とはこういうものだと言わんばかりの今や無い友情とうテーマを実に見事に描きつくす絶品だ。
チャールズ・ウィルフォード著「拾った女」、1950年代の米国はサンフランシスコでの物語だ。戦役から帰還しアルバイトをしながら生活するハリーは、ある日ブロンドの美人に遭遇し共に彼の安アパートで生活するこになる。彼女ヘレンの持ち金が無くなり悲惨な生活しかもヘレンは強度おアル中だった、同意の上手首を剃刀の刃で切り自殺しようとするが見事に失敗する。その後再び自殺を試みハリーはヘレンの喉を手で絞め死に至らしめた、ハリーはガス栓を解放し眠ったが朝生きていた。警察に連行され獄舎での生活が始まり遂に裁判の日、ヘレンの死は病気だったと判明する。途轍もなく寂しく侘しい恋愛と簡単にあっけなく死を向かえる女と青年の物語だ。
真山仁著「ハゲタカⅣ グリード 下」、遂にその時はやって来た。リーマンブラザーズの破綻とGCの破綻、陰で糸を引く大物投資家サミュエルとクラリス、ハゲタカファンド鷲津も動く米国に灸をすえるために。国家と米国民を冷めた目で捉える鷲津のスピリッツは何処にあるのか?サムライたる正義感か自己の人生の標榜なのかもしれない。強欲は善だと言い切る男の人生を見た思いだ。
ミネット・ウォルターズ著「悪魔の羽根」、シオラネオネ出身のジャーナリスト、コニーはバグダッドで拉致され暴行を受けるが、3日間で解放された。犯人は特定でき傷心、不安を纏い英国の寒村へと向かった。PTSDに罹り日夜不安と孤独に脅えて暮らす毎日だ。そんな折に、コニーを拉致した犯人が彼女の館に侵入し乱闘の末に犯人は逃亡する。プロットとしてはミステリーとしては貧弱でここまで長編にする必要があったのか?疑問に思う。
麻耶雄嵩著「メルカトルかく語りき」、超探偵とでも呼ぼうか、タキシードにシルクハットという出で立ちの銘探偵ものの短編集である。何故か最終章で読者の期待を見事に裏切るミステリーは今までのミステリーとは全く違う味付けだ。プロットもそれなりだが、感心するほどのものでもない。しかし何故か読んで見たくなるそんな類のミステリーだ。
真山仁著「ハゲタカⅣ グリード 上」、リーマンショック前の米国での金融業界の混乱、大手投資家さらに鷲津率いるハゲタカファンドさらにADとGCを軸に展開する様は激震を予感させるに十分な状況である。果たしてリーマンブラザーズは破綻するのか?現実に破綻となれば鷲津とてその激震の余波がどの範囲否どの位の規模なのか判断できないでいた。サブプライムローンに端を発した米国の金融業界は混乱の極致にいた。果たして政府の援助は?
高田郁著「あきない世傳 六」、6代目店主であり幸の夫でもある智蔵が倒れそのまま逝ってしまった。幸や奉公人の悲しみは想像を絶するものだった。そんな折、浮上したのが世継ぎつまり跡目だ。天満の組合に図り了承を得たのは期限付きの七代目として幸を認めてもらうことだった。頃合いも江戸への出店を決意してから時が経ち幸は鉄助とお竹を連れて江戸へ乗り込んだ。皆で知恵を出し合い漸く開店へと漕ぎつけたそんな六編だ。
スティーヴ・キャヴァナー著「弁護士の血」、正にあり得ないニューヨークの裁判所爆破という想定外のプロットだが本物に思えてくる著者の力量に感嘆。ロシアンマフィアのドンの殺人罪の裁判の弁護を引き受けることになったエディー・フリン、しかも人質として愛子エイミーが拉致された。愛する娘の為にマフィアのドンの裁判に勝利すべく全知全能を傾注し危機から脱出するといったストーリーだ。
アーナルデュル・インドリダソン著「声」、北欧はアイスランドの作家の作品であると。首都レイキャビク警察の警部を中心とした物語の展開だ。レイキャビクで二番目に大きなホテルのドアマンが地下の倉庫の一室で殺害された。事件の真相はなかなか掴めない。殺害された男の過去が徐々に明らかにされ、少年期著名な合唱団のスターだったと。そして彼に纏わる家族との変遷、さらに捜査に携わる警部の過去と家族との絆さらに別の事件の伏線を配しながら展開してゆく。ミステリー小説だが、この本では家族と人生について改めて考えさせられる。
折原一著「異人たちの館」、文庫本で600頁を超える超大作ミステリー小説だ。しかも何処までも読者を翻弄してやまない複雑なプロットは読者の心理をとことん弄ぶ技巧を凝らした作りだ。ゴーストライターとう主人公というのも独特なものだ。真相は悪までも闇の中を彷徨い伏線が互いに絡み合い犯人は何処までも読者に判別できない不可解さと最後のどんでん返しはジェフリー・ディーヴァーをも彷彿とさせる。絶品だ。

火曜日, 5月 28, 2019

デニス・ルヘイン著「過ぎ去りし世界」、20世紀初頭から第二次大戦までのフロリダはタンパを舞台にギャングが暗躍し殺人と違法賭博、売春そして麻薬と密造といったあらゆる悪を実行する組織から現在は抜けだした。ジョー・コグリンはギャングの連帯組織から狙われている。周辺ギャングと自分の命を懸け生きる人生を描いた作品で不条理な生への希求そして絶望的な孤独との戦いは見事だ。
リサ・マリー・ライス著「真夜中の天使」、宝石の展示会で暴漢が銃を手に発砲しながら宝石を強奪しようとする会場で一人ハーブを奏でる盲目の美女アレグラは元海兵隊員のダグラスに抱き上げられステージの下に潜り込み難を逃れることができた。その時厳つい顔をしたダグラスはすっかりアレグラの虜となってしまう。二人の愛は日ましに強くなっていく。女性作家らしい感情の機微を描く筆法はリンダ・ハワードを彷彿とさせる。ラブロマンスに少しミステリーを絡ませた小説だ。
北方謙三著「血涙 下」、遼軍の武将であり精鋭である石幻果は楊家つまり宗の武将であったという記憶を取り戻し苦悩するが、彼は石幻果として生きる決意をする。戦争を繰り返し疲弊していく人民の悲哀と国を束ねる帝や文人、武人達さらに兄弟、母と子といった戦争の愚を記述しながらも読ませるポイントを幾つも用意された傑作だと思う。
今村昌弘著「屍人荘の殺人」、大学生たちが夏休みの合宿と称して選択したのは山中のペンションだった、名を紫湛荘という。折しも近くでロックフェスが開催されていた。そして事件は早々に発生した。しかもゾンビという人間が感染してゾンビになり紫湛荘にも押し寄せ次々と大学生たちに纏わり噛み殺してゆく。仲間が一人二人と生贄にされ死んでゆく。この状況下で冷静に殺人計画を実行した犯人は少し小實家だ。プロットはシンプルだが、発想は奇抜で斬新だ。ホラーミステリといったところだ。
北方謙三著「血涙 上」、10世紀末の中国北部燕雲16州内での遼軍と宗軍の派遣争いつまり戦を中心に各々の帝を中心に戦争する人々を描いた物語である。遼軍の武将、石幻果は元は宗軍に属していた楊家の武将であったという記憶を無くし今や遼軍の精鋭である。しかし彼は戦闘が続く中で記憶を取り戻し苦悩する。宗軍の精鋭である兄弟、六郎、七郎、妹と戦を交え死闘を繰り返すことに気づき懊悩する。
京極夏彦著「百器徒然袋―風」、榎木津礼次郎探偵シリーズである。ハチャメチャで容姿端麗、頭脳明晰喧嘩は強く元子爵家の出である。今回の物語は全編猫、招き猫を中心に事件が発生し例によって僕こと凡庸な図面引きである本島と燐家の熊男後藤と京極堂の主人中禅寺さらに刑事そして薔薇十字探偵社の下僕益田と和寅らを巻き込む。800頁を超える大作であるが、何故か最後まで読んでしまう面白さがある。
高田郁著「あきない世傳金と銀 五」、大阪天満で呉服屋を営む五十鈴屋そこの店主智蔵の妻幸の采配により順調に売り上げを伸ばしてきている。そんな折呉服商仲間の桔梗屋の主人が倒れた。店を買って欲しいという申し出を受け、五十鈴屋高島店として支店扱いとして経営をすることになった。そんな折幸は流産をしてしまうという波乱の人生だ。常に現実を認識し将来・夢を見て努力する経営の本質は古今東西変わらない。江戸への出店を画策する幸は2年を掛けて調査に乗り出す。
畠山健二著「本所おけら長屋 十二」、最新刊のおけら長屋を早速手に取る。本所亀沢町おけら長屋の住人、大屋の徳兵衛、万造、松吉、八五郎、鉄斎といつもの顔触れが織りなす様々な困難を人情とお節介で解決するこのシリーズは、何とも言えない日本人の心への訴求が散りばめられいている。
篠田真由美著「桜闇」、10編の短編集だ。今まで読んだ中では唯一の短編集である。例によって登場人物は桜井京介、蒼、栗原深春、神代教授という面々である。イスタンブールやらベトナムハノイやらと海外での短編も趣向がある。また福島県の栄螺堂の二重螺旋階段にも興味が沸く、ルーツはなんとレオナルドダヴィンチかもといった面白さは建築の面白さを確実に伝えてくれる。
ジュリー・ガーウッド著「太陽に魅せられた花嫁」、12世紀初頭のイングランドとスコットランドを舞台にしたヒストリカルラブロマンス小説だ。族長として君臨するアレックの元へ嫁いだヘンリー家の末娘ジェイミーはスコットランドの風習に馴染まず様々な困難を繰り返し経験しながら無理やりな結婚から立ち直り次第に夫を愛して行くと同時に生来の機転を発揮して氏族の信頼を勝ち得ていく。女性作家ならでわの微妙な女ごごろの変化を描き盛り上げていくその手法は、リンダ・ハワードを彷彿とさせる。
デイヴィッド・ベニオフ著「卵をめぐる祖父の戦争」、1940年代大戦中のロシア・レニングラードでのヒトラー率いるドイツ軍とロシア軍の包囲戦中の物語だ。レニングラードの惨状は目に余り窮状は到底想像を絶する事態、そんな中でレフとコーリャは軍の秘密警察に拿捕されたが、大佐は娘の結婚式に必要な卵一ダース5日後に持ってくるよう指示を与え放免する。二人の過酷な旅が始まる。様々な危難を突破して卵を略取したが、友人を凶弾に倒れレフ一人が大佐に卵を渡すという非現実的な物語だ。既に本書タイトルからして戦争の愚かさを想起させるファンタジー小説である。
トーマス・カポーティ著「夜の樹」、著者の短編9編が綴られている短編集だ。陰と陽が入り混じった不思議な作品群だ。陰鬱で孤独な状況を描いたかと思うと、故郷の小さな町の心温まる出来事を描いてホットさせてくれる。それはつまり人間の表と裏、二面性は作者の人生の経験に根差しているらしい。どうしようもない暗闇、それを見つめる人間とその心をそこはかとなく描く著者20台の作品だという。
黒木亮著「国家とハイエナ」、貧国の債権を格安で買い漁り国家に対して債務弁済の訴訟を起こして莫大な利益を上げる米国のハイエナファンドと債務国との闘争戦争を著者ならではの調査と手法で描きあげる物語はドキュメンタリーやミステリーにも匹敵する。ハイエナファンドは莫大な資金を投じてロビー活動を支援し自分たちの利益をまた高額な弁護士費用を支払い勝訴するこのような図式は金融市場を崩壊させかねない危機を招く恐れがある。世界に貧困が存在する限り解決できない問題だ。
山崎豊子著「大地の子 四」、妹あつ子と巡り合った陸一心は余りにも悲惨な運命の中で生きた妹に滂沱の涙を流すのみだった。妹が死亡し葬式の最中、一心は初めて父松本耕司・日本側東洋製鉄の上海所長と巡り合った。宝華製鉄所が中国政治指導部の内紛の具にされ2年後の完成の筈が7年の歳月を経て漸く完成した。著者は3年の歳月を中国での現地取材に費やしたという。戦争が様々な悲劇を生み国民に過酷な運命を強いるその戦争を激しく非難する。名著長編傑作小説だ。
浦賀和宏著「彼女は存在しない」、解離性同一性障害といった精神疾患をネタにサイコ的ミステリーとした本書はやや冗長性はあるものの頁を繰る手が止まらない。兄妹とその友人さらにフリーの小説家という限定された人間関係の中で殺人事件を起こし犯人は特定されたかに見えて定かではないという錯綜する病理下で展開する物語は稀有な存在だ。

月曜日, 4月 29, 2019

A.J.クィネル著「燃える男」、イタリアでの物語、果って幾度となく戦闘経験を積んだ元傭兵クリーシィは既に50歳近くだった。友人グィドーを訪ねた折に紹介された仕事それはボディーガードだった。繊維取引会社を経営する夫妻の一人娘ピンタの警護だった。少女との出会いは彼を変えていった。愛という純粋なもの、愛おしさが浸透しそれに包まれた。だが少女はマフィアに凌辱され死亡、ついに彼は復讐を決意し決戦の地に、二大巨頭マフィアを相手に戦うクリーシィは正に傭兵として蘇る。スパイ小説的だ。
山崎豊子著「大地の子 三」、建設中の宝華製鉄所は、中国内部の権力闘争の具となり建設は一時中断された。夏国鋒と鄧平化との権力闘争は鄧の勝利となり宝華製鉄所は再び建設が開始された。陸一心は妻の月梅の協力もあり、遂に片田舎の病床に伏している妹あつ子を発見し病院に入れることができた。5歳の時に別れた妹は牛馬の如く扱き使われ無残な姿であった。一心は妹に父を探し日本へ連れて行く約束をしたのだった。いつの時代も戦争は最下層の国民を虐げ過酷な運命を背負わせるものだ。
山崎豊子著「大地の子 二」、陸一心は、日本語ができる力量を発揮し党中央へと歩みを進めた。折しも文革後の中国の近代化の礎となるべく最新鋭の大型製鉄所の建設が持ち上がり日本の東洋製鉄の木更津工場を範に計画を推進する機運が持ち上がり、現地での選定作業が開始された。選定されたのは上海にほど近く長江の端であった。日本の東洋製鉄側の上海現地事務所長には松本耕二が付き陸一心、日本名松本勝男との因縁と遭遇を暗に想起させる展開だ。宝華製鉄所と命名された製鉄所の起工式も終了し工事がいよいよ本格的に再開される運びとなった。
竹内明著「スリーパー警視庁公安部外事二課」、外務省員筒美慶太朗と彼を取り巻く公安警察、陰謀渦巻く北朝鮮工作員らの展開が目まぐるしいまでに交錯する。現実のものかと思わせる対日工作を公安が阻止すべく立ち回る。北の若い工作員倉本龍哉、出生の秘密と北に住む日本人の母親との繋がりを伏線として物語は展開してゆく。最後は緊迫した状況を作り出す念の入れようだ。
山崎豊子著「大地の子 一」、中国の田舎で孤児として生きる陸一心は、小学校教師の陸徳志に拾われ中国人として育てられていた。折しも文化大革命時代毛沢東全盛の時代の中国は容赦ない思想統制弾圧が続き中でも日本人孤児は蔑視され続けた。それでも一心は高級中学から大連の工業大学へ進み鉄鋼公司へと就職したが文化大革命の折冤罪を受け内蒙古の労改所へと送られ、およそ人間のできる最低限の心難労苦を受けつつ恩ある両親と会える日を心に暮らす毎日だった。
京極夏彦著「巷説百物語」、主人公山岡百介なる人物が処々を巡りながら奇談珍談を蒐集し読み本を作り上げようとするいわば怪談集である。七編の短編集はどれをとっても面白く作者の死に対する明確な認識を感ずる。現実と冥府の堺、身体は現実であり死ははモノであるという線引きは諸編を通して語り掛ける。人間の剛・果てしない欲望が様々な怪談話の根底にある。
綾辻行人著「Another 下」、転校生の榊原恒一と見崎鳴とのコンビがこのホラーミステリー小説の主人公だ。依然として災厄に見舞われ続ける三年三組、死者が亡き者が忽然と姿を現し闊歩する。そんな人物・現象を鳴の義眼が死の色を見極める。物語の終盤、夏休みの合宿として参加した二人は館の火事に遭遇し危うく命を取り留める。しかし鳴はハッキリと亡き人・死者を見極める、それは恒一の母の妹玲子だった。冗長さはあるが傑作の部類に。
綾辻行人著「Another 上」、著者のホラー・ミステリー作品を読むのは初めてだ。夜見山に父の海外出張の為母の実家に引っ越し、夜見北中3年3組に編入された榊原恒一は此処での学級生活を送るにつれ様々な不思議体験をしてゆく。呪われた3年3組降りかかる災厄そしてクラスの関係者が死亡する。クラスの災厄に対する対策はクラスメイトを亡き者として無視するというこだった。
松岡圭祐著「グアムの探偵 2」、著者のグアムの探偵シリーズ第二弾である。今回も5編の短編が記されている。観光リゾート地の懐深く地道な調査に基づく場所の設定とちょっとした出来事を犯罪に仕立て伏線を巧みに組み合わせ展開していく著者の力量に驚くほかない。グアムに三四度行っているが、通常の観光では出会うことのない地名に感動すら覚える。
篠田真由美著「仮面の島」、著者建築家探偵櫻井京介シリーズの事件簿だ。今回の舞台はイタリアはヴェネツィアだ。例によって京介、神代教授そして後から追っかけヴェネツィア入りする深春と蒼、一人ヴェネツィアの孤島に住まう美人玲子を回り過去を振り返りつつ殺人事件が発生する。有名画家が描いた名画を回り人間の醜悪さと欲望は果てしなく事件の結末は意外な事だった。

金曜日, 3月 29, 2019

篠田真由美著「仮面の島」、著者建築家探偵櫻井京介シリーズの事件簿だ。今回の舞台はイタリアはヴェネツィアだ。例によって京介、神代教授そして後から追っかけヴェネツィア入りする深春と蒼、一人ヴェネツィアの孤島に住まう美人玲子を回り過去を振り返りつつ殺人事件が発生する。有名画家が描いた名画を回り人間の醜悪さと欲望は果てしなく事件の結末は意外な事だった。
松岡圭祐著「グアムの探偵」、著者の新シリーズ、今回の現場はグアム島だ。イーストマウンテン・リサーチ社これが探偵事務所でゲンゾー爺さん息子のデニスそして孫のレイと3人の日系アメリカ人で経営する事務所だ。グアムは米国準州ながら探偵の地位は驚くほど高い刑事事件にも調査ができるし拳銃も携帯可能だという。そんな探偵事務所に持ち込まれる事件を扱う5編が本書の第一巻だ。グアムの地名やら生活やらが描かれ面白い。
黒木亮著「鉄のあけぼの 下」、正に日本の鉄鋼業の幕開けを担った西山弥太郎の奮闘を描いた物語だ。壮大な夢を持ち幅広い知見を武器に大胆と不屈の精神で実現して行く西山の生涯は、戦前戦後を通じて日本の重工業化の原動力となり焼け野原からの復興の原資となった。74歳の生涯を鉄一筋に生きた西山の人生の奇跡を著者は詳細に調査を敢行し見事に結実させた名著で感慨深いものが残る。
黒木亮著「鉄のあけぼの 上」、これは戦前・戦中・戦後の激動の時代を先取りし鉄鋼生産、製鉄所の建設に人命を賭した男達の物語である。川崎製鉄所・川鉄の技術者として後の社長である西山弥太郎の奮闘を描いた物語だ。千葉の京浜工業地帯の先駆けとなる場所に最新鋭の設備を構えた製鉄所の建設を決した西山を先頭に川鉄の各従業員の奮闘を描き戦後の日本の重工業の発展に寄与した史実に基づいた小説だ。
ハビエル・シエラ著「失われた天使 下」、驚くことに、彼著者シエラは作中の光とともに天国の階段に昇り昇天するトルコのアララト山に登頂さえしたという冒険家だ。この作品は宗教的だがファンタジー・ミステリーを履んだんに織り交ぜた物語だ。ノアの箱舟により絶滅した人類が再び生還し神との交信を通して昇天してゆくといったプロットは各地の念入りな調査に加え幅広い情報その他を可能な限り織り交ぜた力作だ。
ハビエル・シエラ著「失われた天使 上」、著者はスペイン人作家であり、情報科学も専攻していることからして物語を展開する基本構造を提供している。謎の石・宇宙の石それはアダマンダと交渉し古来エリザベス朝時代よりヒロイン家に伝わる伝説の石、この石は現実と天国を繋ぐ石だと言われている。強力な電磁波を発生し宇宙の衛星からでも確認できる。アダマンダを回りヒロイン夫が拉致された。NSAから米国大統領までさらにスペイン警察まで巻き込んだ事件の捜査が続く。下巻へ。
篠田真由美著「聖女の塔」、建築家探偵櫻井京介シリーズの事件簿、今回の物語は新宗教団による殺人及び計画を櫻井京介が暴くというストーリーだ。長崎県の五島付近の波手島・無人島を巡る隠れキリシタンの歴史をも登場させ展開の伏線を巧みに絡ませ蒼とさらに京介の過去の一部を紹介させながらの物語にしている。シリーズは各巻とも独立した展開になっているが、今回は過去の事件絡みの登場人物を登場させストーリーに厚み持たせている。
篠田真由美著「失楽の街」、建築家探偵櫻井京介シリーズの事件簿だ。舞台は東京である。次から次へと爆弾を仕掛けて行く爆弾魔を警視庁、公安が追跡するが要として犯人が特定されず事件は死傷者を出しながら緊迫した状況となってゆく。複数の伏線・プロットが織りなす今回の物語はミステリーとしても面白い。京介の卓越した推理と人生の悲哀を含めて友情と信頼の大切さを思わせる。
ELジェイムズ「フィフティ・シェイズ・ダーカー 下」、アナスタシアとクリスチャンの二人の恋愛から結婚へ至る感情の起伏を綴ったこの物語は、彼クリスチャンが過去また現在に続く精神疾患を患っていたことを明かす。しかしアナは彼の行動と心理を理解しようとして奮闘する明るい前向きな姿勢に徐々に心を開き愛情を持って接するクリスチャンの変化を著者は愛情を込めて描いていく。
松岡圭祐著「特等添乗員αの難事件 3」、特等添乗員αシリーズ3作目だ。相変わらず絢奈のラテラルシンキングが冴えわたる。今回は、香港からトルコと海外添乗員を務める絢奈の水平思考が爆裂する。さらに後半には国会議員の壱条家をピンチから救出するといった活躍を見せる。ライトノベルになるのであろうか、このシリーズは気軽に読める正に暇つぶしに持ってこいだ。
黒木亮著「巨大投資銀行 下」、桂木はやまとFGの投資部門で辣腕を振るい業績の向上に寄与し常務の席についた。広島生まれの桂木のトレーダーとしての人生は東都銀行からニューヨーク投資銀行へさらに日本に帰りと有為転変としていく中で遂にりずむFGの会長兼CEOに懇願され抜擢された。サラリーマンの終盤で彼が思ったのは日本の将来あるべき姿の銀行を造り貢献したいという広義な欲求であった。著者の業界の細密な描写は驚嘆すべきものだ。
ELジェイムズ「フィフティ・シェイズ・ダーカー 中」、アナアスタシアとグレイとの結婚生活が始まった。男と女、二人の脆く激しい感情のぶつかり合い、交錯する愛情と不安これこそが愛そのものである、と作者が示す心の揺れ、この先は何処へ行くのだろうか?若き経営者であり富豪のかれグレイと結婚したアナは果たしてこの感情の起伏を乗り越え愛を育んでいけるのだろうか?
黒木亮著「巨大投資銀行 上」、大手銀行やら米国の投資銀行を主体に息づまる債権や株式らの売買攻防が展開され、その渦中で蠢く人間の欲望と落胆が入交り一進一退を繰り返す。著者の業界の深部にまで及ぶ詳細な調査は読む者を圧倒する。銀行や証券会社の日々の活動はまさに激動で息つく暇もないと言った様相だ。神経をすり減らし只管利益を貪る人間模様は広い大地の地上で巣くうまさに蟻のようである。
松岡圭祐著「特等添乗員αの難事件 2」、ラテラルシンキングつまり水平思考を具現化し添乗員として活躍するシリーズ第二弾、今回は壱条那沖の家族との遭遇やら姉乃愛との和解と盛沢山だ。ツアーガイドとして香港に乗り込んだ冒険までもプラスアルファだ。ラテラルシンキングは留まることを知らず絶好調だ。
リンダ・ハワード著「美しい標的」、さすがに女流作家らしく、女性この物語ではクレアの感情の機微を見事に描き出している。一度離婚を経験し臆病になっているクレアそんな彼女を見染めたのは投資ファンド会社副社長のマックス、二人は幾多のすれ違いを重ねながら徐々に心を開き互いに傷つきながらも愛の成就に向かって進む。著者の得意とするラブロマンス小説の真骨頂だ。

水曜日, 2月 27, 2019

ELジェイムズ「フィフティ・シェイズ・ダーカー 上」、イギリスの女性作家である彼女の作品は勿論初めてだ。会社の経営者でもあるグレイとその恋人スティール・アナスタシア二人の出会いから恋人同士となってゆく過程、グレイの少年期の謎をちらつかせながら今後の展開が非常に気になる。二人の過去ははっきりしない。ただ愛し合う二人の関係、どこにミステリーが潜んでいるのか楽しみだ。
ダヴィド・ラーゲルクランツ著「ミレニアム5 下」、リスベット・サランデルの過去の謎が解き明かされるかと思いきや、様々なプロットの伏線が織りなす混沌とした物語の展開に翻弄され、最終章まで一気に繰らせる迫力がある。まだこの「ミレニアム」は続きがありそうな予感がする。著者のジャーナリスティックな視点は人間社会また人間の根源的な生きるを問う姿勢が表現されいる。
門井慶喜著「家康江戸を建てる」、豊臣秀吉により関八州へ入封を命じられた徳川家康、当時江戸は湿地帯で河川は氾濫し作物も碌に作れぬ土地だった。家康の命でいよいよ江戸大改革、大都市計画が始まった。先ずは大川である河川の迂回やら金座銀座の設立と貨幣鋳造、江戸城の新築石垣済みと白壁の漆喰塗と等々各々の現場で働く者達の材料の入手やら運搬といった諸事に光を当て江戸の開府に伴うダイナミックな躍動が生生しく語れてている。
松岡圭祐著「特等添乗員αの難事件 2」、著者のシリーズ物鑑定士Qを数冊読んだ。今回は添乗員αというライトミステリーだ。中卒の問題児朝倉絢奈が添乗員を目指す中で出会った厚生省キャリア官僚の青年壱条那沖、彼との遭遇は彼女絢奈の人生を変える契機となった。国会議員の息子である那沖の執事の指導受け晴れて添乗員となった絢奈の思考はラテラルシンキングという類まれな能力を持ち困難な状況を瞬時に解決する能力を次々と発揮してゆく。小気味よい痛快さは健在だ。そして特等添乗員αが誕生する。
ダヴィド・ラーゲルクランツ著「ミレニアム5 上」、刑務所に収容されたリスベットは、後見人である老人の訪問を受けた。しばらくして老人は殺害された。息も絶え絶えの最中、ミカエル・ヴイルムクヴィストが老人の部屋にやってきた。必死な看護を続けたが絶命した。ストックホルム警察やら怪しげな研究所さらに関連する様々な人物が浮上し交錯する。前作に続きリスベット・サランデルの謎はさらに深まってきた。下巻が楽しみだ。
佐々木護著「ストックホルムの密使 下」、ストックホルムの公使である大和田は原爆投下とソ連の対日戦始動との極秘情報を森とコワルスキーに託した。二人は2万キロの困難な旅を続け遂に秘密情報を届けたが、戦局は一進一退の状況だとし今だ戦争終結を認めず経線を主張する軍部。既に沖縄戦の敗北、原爆投下の状況でなお戦争護持を主張する人々、情報は錯綜し天皇の終結宣言までの道のりを克明に描く作者の調査は史実と小説の中の人物の配置そしてプロットは戦争とは何か?人間とは?を改めて提起させる名著だと思う。
アガサ・クリスティー著「ゼロ時間へ」、海岸べりの断崖絶壁の上に建つ館、その主人である彼女は富豪であり病になっている。そこに夏を少しばかり過ぎた季節に友人達がやってくる。それぞれの人間模様が展開される。そして館の主が殺害される。通常はポアロが出てくると期待したが、この物語はスコットランドヤードの警視と警部である。殺人の手口は今となっては平凡で見劣りがする。小説全体を通して冗長であり、目新しさはない。
佐々木護著「ストックホルムの密使 上」、第二次世界大戦を背景に日本帝国陸海軍司令部、さらにドイツ、パリそしてスウェーデンのストックホルムの公使らの情報が様々な形で入り乱れる中、日本軍部は情報統制を欠き戦争終結を模索し右往左往する事態となっていた。戦争終結を模索する良識ある軍内部の人々と戦争護持する推進派との間での葛藤が続いている。ストックホルムの公使大和田はポーランド人のスパイを使い情報収集の中で新たに米大統領に就任したトルーマンは先ごろ開発された原子爆弾を日本に投下すること決定した。大和田公使は原爆投下前に戦争終結宣言をすべきと緊急の暗号文を打電するが果たして?
篠田真由美著「胡蝶の鏡」、京都四条家の令嬢彰子(あきらこ)とベトナムはハノイのレ家に纏わる過去の凄惨な殺人事件を回り建築家探偵櫻井京介と栗山三春が果敢に謎を解明すべくハノイへ。そこにはベトナムの歴史に隠されたレ家の秘密が、今回は海外ということで期待したが今一である。
伊園旬著「ブレイクスルー・トライアル」、北海道は美瑛にあるIT企業の研究所で実施されることになったトライアル競技、様々な情報及びセキュリティを突破してマーカを制限時間内に持ち帰るというテーマだ。参加したチームは様々で銃撃やら倒壊、爆破までシリアスな状況を巧みに描きつつ、人間関係のドラマを同時に描く、そしてユーモアも散りばめたサスペン・ミステリーだ。
山崎豊子著「華麗なる一族 下」、銀行合併を着実に目論む万表大介は、実子である長男が専務を務める阪神特殊鋼を画策を持って倒産に追い込み、大同銀行三雲頭取を失脚させた。閨閥結婚を主に取り仕切る相子の手は銀行合併へと繋がる手練手管であった。しかし破綻した自社・阪神特殊鋼の痛手から一人果って猪狩りをした山中で猟銃により自らの命を絶った。この事件以来華麗なる一族の前途が微妙になってゆく。合併ははしたが、家族は離散して行く羽目に。著者の周到な取材調査の上に繰り広げる人間ドラマはまさに圧巻である。
松岡圭祐著「探偵の探偵 Ⅲ」、執拗に妹咲良を死に葬った犯人を捜し続けて奮闘する玲奈、探偵社スマ・リサーチの対探偵課の社員として悪徳探偵を容赦のない鉄拳を下す。そんな渦中で事件発生、過去DVの被害にあった市村凜、彼女こそが玲奈が探していた井本を葬った犯人と判明、死闘を繰り返し遂に仕留めた。玲奈を処々の状況から会社を辞めざるを得なくなり退社、残った琴葉は対探偵課で引き続き仕事をするという。今後の展開は如何に。
リンダ・ハワード著「炎のコスタリカ」、南米はコスタリカ、ジャングルに囲まれ囚われの身となったジェーンは彼女の父親から依頼を受け救出するべく現地に赴いたのは元諜報工作員グラントだ。脱出劇が開始された。執拗にして残虐なトレイゴ一味との格闘の末遂に脱出を果たした。逃走中様々な困難に直面し危険を潜り抜けながらいつしか二人は愛に目覚めてゆく。ラブロマンスと適度なライトミステリーとでも形容する物語だ。この雰囲気は著者の独壇場だ。
山崎豊子著「華麗なる一族 上」、神戸の資産家であり阪神銀行の頭取である万俵家を中心に子供たちあるいは親戚や会社の部下連を含めた関係を著者の豊富な知識と銀行、から大蔵省を含めた綿密な取材は物語の確実性と現実性をも想起させる。また万俵の家庭生活の妻妾同禽という特殊な状況も見事に描き出し物語に花を添える形になっている。官庁主導の金融再編の流れに合併を目論む万俵の様々な工作を精神状況をもまさにミステリーとも思える展開だ。下巻が楽しみだ。
ダヴィド・ラーゲルクランツ著「ミレニアム4 下」、読了後感じたのはスティーグ・ラーソンのミレニアム3部作を超える素晴らしい出来だという印象である。スウェーデンのミステリーの傑作として残る名作だ。ミカエル・ブルムクヴィストとリスベット・サランデルとの距離感といい名コンビだ。さらに自閉症だが天才的数学的能力を発揮するアウグストを配置した物語の展開は見事だ。

火曜日, 1月 29, 2019

真山仁著「ハーディ 下」、日光のリゾートホテル・ミカド代表松平貴子はフランスリゾート運営グループから、何とかミカドホテルを取り戻すべく奮闘する。舞台は香港、パリ、東京と日光そこにグループ代表やら関係者さらに香港の大富豪・将陽明そして中国国家組織が渾然一体となって死闘を繰り広げる。今回はサムライキャピタルの鷲津の出番はない。
真山仁著「ハーディ 上」、日光のリゾートホテル・ミカドはフランスの企業に買収され雇われ支配人として松平貴子は働いている。何とかミカドホテルを元の鞘に納めるべく奮闘している貴子の前に香港の大富豪・将陽明がホテルを取り戻してやるいって現れた。工作を進めて行く中で、将がファンドを通してフランス企業を買収をサムライキャピタルの鷲津に依頼したいと申し出た。
ダヴィド・ラーゲルクランツ著「ミレニアム4 上」、スティーグ・ラーソンのミレニアム3部作を読んだのは数年前だ。北欧はスウェーデンのミステリーだという、十分楽しめる作品で一気に読んだ覚えが有る。ラーソン亡き後、著者を変えて第四部としてミレニアムが復活した。AI人工知能研究の第一人者の殺害を回り情報は錯綜しリスベットが再び姿を現しハッキングを続ける。ミカエルは果たして犯人を追跡し辿り着けるだろうか?
篠田真由美著「美貌の帳」、伊豆の富豪の当主を巡る意外な展開に過去、私が読んだ著者にない発想とプロットに少し驚きを感じた。当主と芙蓉とう役者との愛と裏切りに端を発しあろうことかその姉との間にできた娘と京介の友人さらに友人の兄と娘暁子との確執と人間関係は複雑に絡み合い人間の持つ夢と醜悪さをさらけ出しながら物語は展開して行く。
リンダ・ハワード著「凍える心の奥に」、ロリーは生まれ育ったメイン州の片田舎に家を売却するため戻ってきた。町で居るところを麻薬常習者の二人に目を付けられ尾行され家に入り込まれ男に危うくレイプされかかる。下界はアイスストームにより雨氷が降り続き木々の枝が凍り付きミシミシと音を立てて木が倒れてゆく、そんな渦中で帰省した高校時代のガブリエルは彼女を助けるべく山の家に出掛け死闘繰り返し遂に撃退する。死を目前に死闘の中で着実に昔の彼と彼女ロリーは恋に落ちて行く、著者のミステリーと恋愛を絡ませての物語だ。
山崎豊子著「不毛地帯 5」、遂に最終巻である。シベリア抑留時代の不毛とそれに次ぐ砂漠の中での石油採掘の赤い不毛地帯と膨大な取材資料もとに構成されたサスペンス的要素を存分に盛り込んだこの小説は圧巻である。作者が描きたいと思う日本人、つまり主人公壱岐正の男としての日本人としての生き方に誰しも感銘を覚えるに違いない。
篠田真由美著「月蝕の窓」、建築家探偵櫻井京介シリーズのミステリーだ。今回は那須高原で展開される陰惨な事件である。アメリカでセラピストとして経験を積み、日本で治療にあたった青年と血族つまり血の繋がりから翻弄される少女を初め親族間で起きる陰惨な事件の結末は意外な展開となった。櫻井京介一人後半で深春は出てくるが
真山仁著「レッドゾーン 下」、日本のビッグモーター・アカマ自動車買収劇が佳境を迎える。中国のコッカファンドと結託する香港の大富豪、片やアカマ自動車を支援する鷲津政彦率いるサムライキャピタルの丁々発止の展開が魔弾無く続く。経済小説でありながら、日本を本当に憂う鷲津政彦は愛国主義者でありグローバルスタンダードな人物だで愛国小説であり、経済ミステリー小説だ。
リンダ・ハワード著「ダイヤモンドの海」、レイチェルの住む海沿いの海岸に打ち上げられた男性はまだ意識があり咄嗟に彼女の判断は警察や救急隊に連絡をせず、自宅からシートを持ち出し愛犬と共に男性を引っ張り上げ自分のベッドで介抱を続ける。男性は政府機関の諜報員と判明するが、二人は段々と寄り添い愛し合うようになる。追ってを交わしながら二人の生活は互いに必要とされる同士となる。恋愛とサスペンスの絶妙のコンビネーションが彼女リンダの持ち味だ。
真山仁著「レッド 上」、ものづくり大国ニッポンの巨大自動車メーカーである「アカマ自動車」をターゲットに買収を仕掛ける中国・賀集団、鷲津政彦がどう臨むのか。後半ですでにTOBの意思を明らかにした賀、そんな渦中でカカマの総帥としの周平翁がレース中に事故死となった。アカマ・アメリカの翁の甥にあたる副社長太一郎の失政もあり危機に瀕するアカマの今後はそして買収劇の顛末は。

土曜日, 12月 29, 2018

篠田真由美著「原罪の庭」、建築家探偵櫻井京介シリーズ、この書で蒼の正体が明かされる。姉妹等親族関係の血みどろ愛憎がやがて殺人事件として表出し神代教授とともに櫻井京介が登壇する。血の繋がりが、血でもって制裁する横溝正史ばりではないが淀んだ殺人事件の真相は常套句のようだ。著者の作品は冗長性を否めないが、それでも読んで楽しい。
真山仁著「グリード 下」、遂に米国大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻デフォルトとなった。そんな渦中でGC、AD名門企業買収に全神経を集中させ買い叩く、その戦略に絡む巨大投資家サミュエルそして当の各企業の社長以下役員は右往左往し、筋違いの最後の戦略を立てるが既に遅かった。ハゲタカファンド・サムライキャピタルの当主鷲津とそのチームの攻防は経済小説でありながら、まさにミステリー小説だ。
山崎豊子著「不毛地帯 4」、米国自動車大手と日本の自動車の提携を目論んだ壱岐だったが、副社長の怒りを買い交渉の全権が副社長に移行したが結果は惨憺たるものだった。壱岐は、米国支社長から日本へ帰国し外資統括部を率いるナンバー3の専務として業務を遂行する中で浮上したイラン石油鉱区の探鉱と製油所建設の入札を前に競合他社との熾烈な競争、官財界役人を巻き込んだ淀み切った渦の中へと身を挺す。
太朗想史郎著「トギオ」、首都東暁で暮らす主人公は殺人者として生き、様々な人物たちとの拘わり暴力、殺人、ドラッグ、貧困、悪臭など凡そ現実世界の究極を描いた空想とも思えるあり得なく難解で理解できない世界に生きている。背景もプロットも朧で一本筋の通ったところがない。これがミステリー大賞受賞作とは理解できない。
真山仁著「グリード 上」、米国金融危機つまりリーマンショック時の物語だ。ハゲタカファンド鷲津はニューヨークでサムライキャピタルを運営している。危機に際してのファンドや投資銀行の確執が鮮明になって、情報戦が繰り広げられる。巨大な投資の神様と呼称されるストラスバーグとのやり取り、アメリカン・ドリーム社の危機を必死で救済しようとするジャッキー、情報戦を取材しようとする北村となかなか面白い展開だ。
榎本の憲男著「エアー2.0」、ふと工事現場それもオリンピック開催のメイン会場となる国立競技場建設の現場で中谷はおっさんと出会う。建設中にコンクリートの柱に時限爆弾を仕掛けたと言って八百長競馬を要求しまんまと5千万円をせしめる。事は急展開に福島県の原発事故のあった帰宅困難地区に事務所を設け事業を行うというおっさんは地域通貨カンロを造り積極的な投資を行うという。おっさんが開発したエアー2.0は巨大なコンピューターは人間の感情を理解すると言った優れものだ。日本政府とのまた官僚との確執に始まり警視庁をも動かし対峙しながら事業運営を行う中谷は原発事故地の復旧を願う作者の強烈な意図と人間との拘わりを描いた物語だ。
山崎豊子著「不毛地帯 3」、壱岐はアメリカ支社長としてニューヨークで業務を行うようになっていた。妻を交通事故で失い、娘を商売敵の東京商事の鮫島の息子と結婚と有為転変とする壱岐の人生は過酷だ。そんな中でも陶芸家千里との愛は確実に壱岐の領域内に入り遂にニューヨーク出張の折壱岐は彼女を抱くことになる。折しも米国ビッグ3の一社と日本の千代田自動車の提携交渉は熾烈を極め里井副社長を面々とする近畿商事が交渉を開始した。著者の過酷なビジネス環境で生きる壱岐と恋愛を絡めての物語は面白い。
篠田真由美著「玄い女神」、建築探偵櫻井京介シリーズの第二弾だと。今回の作品は建築とは深い拘わりのないミステリーだ。群馬県の霧積温泉近くの小さなホテルを営む経営者、狩野都からの依頼で引き受けた犯人捜しは十年前インドで起きた仲間の死についてであった。容疑者と思われる数人の友人を招待したホテルでの殺人事件がまた発生した。インドでの生活と一人の人間の愛が貫く執拗さトリックとどんでん返しいう盛沢山なミステリーだ。
山本貴光著「屋上ミサイル」、何か?SF的な小説だ。アメリカの大統領がテロリストに拉致されミサイル発射される危機が全世界に広まっている設定の中での学園ドラマってこれってプロットの設定ありかよと言った印象だ。都内は静寂に包まれ地方への移住を呼びかける政府機関、そんな中で高校生の仲間4人の中の友人が誘拐拉致された。冗長性は否めないが、プロットの奇抜さが目立つ作品だ。
山崎豊子著「不毛地帯 2」、商社マンとして忙殺されている壱岐は社長嘱託付き社員から8年余りで常務に昇格した。商社間の熾烈な競争、政界及び官界の人脈を使ったこれまた熾烈な競争にも元大本営参謀としての壱岐の静かな洞察力は勤め先の近畿商事に莫大な利益を齎した。防衛庁がらみの次期戦闘機も近畿商事の手に落ちた。
リンダ・ハワード著「夜を抱きしめて」、アイダホ州の片田舎トレイル・ストップ周囲を高い山で囲まれた行き止まりの場所、そんな場所でB&Bを営むケイト・ナイチンゲールは夫と死別して今は一人で四歳になる双子の面倒みながら生活している。ある日、宿泊客の男が断りもなく宿を抜け出して戻らない。そんな中で二人の男が銃を持ってB&Bにやってくることから、トレイル・ストップ村を巻き込んで大騒動が始まる。便利屋カルとの恋愛を絡めてミステリータッチで楽しませてくれる作品だ。
篠田真由美著「未明の家」、建築探偵櫻井京介シリーズの第一作だ。1994の作だ。東伊豆町の海に向かう傾斜地に建てられたスペイン風の別荘が今回の舞台だ。そこの主人が死んで孫の理緒から別荘の調査を依頼された京介、事件はそこから始まる。冗長性は否めないが、犯人特定のプロットが性急で少しがっかりもする。日本に存在する洋風建築とミステリーという設定を作者は関連を見事に具現している。
篠田真由美著「翡翠の城」、建築探偵櫻井京介が活躍シリーズで著者のこのシリーズは2冊目だ。日光と群馬県丸沼を舞台とする洋風建築に和風の瓦屋根を持つ碧水郭に纏わるミステリーだ。日光オグラ・ホテルに関連する同族系人物達の確襲を建物の歴史を絡めてのプロットは秀逸で十分楽しめる。少し冗長性は否めないが。
山崎豊子著「不毛地帯 1」、太平洋戦争当時大本営参謀だった壱岐正は、戦後ソ連に抑留され過酷な11年間を過ごし帰還した。ラーゲリと呼称される収容所でのシベリア抑留は精神力と日本帰還の希望を胸に過酷な日々を過ごす毎日だった。帰還後47歳の壱岐が第二の人生を選択したのは、近畿商事という商社であった。繊維取引を初め防衛機器までも貿易する大阪では名だたる商社だ。陸軍大卒の壱岐にとって場違いとも思われる会社であったが、社長の大門の口説きもあって就職する。そして社長大門の随行という立場でアメリカへの出張が決まる。
リンダ・ハワード著「くちづけは眠りの中で」、リリーはCIAの殺人エージェント、ヨーロッパを中心に国家の治安を維持すべく行動する秘密課員だ。イタリアのマフィアのボスサルバトーレをリリーの親友そして子供を殺害した犯人として彼女は毒薬で殺害した。その後彼女は殺害されたマフィアから追われる。そんな中、マフィアのウイルスばら撒きの計画とワクチン製造という飛んでもない利益儲けを企む実態を掴む。彼女と組んで同じ目的を持つ男は実はCIAの課員スウェインだ。二人はワクチン研究所を爆破するといった計画を見事に実行する。プロットといい情感の高い文体といいリーダビリティに優れた作品だ。
深町秋生著「果てしなき渇き」、暴力事件から刑事・警察を退職した藤島が抱えた問題は娘・加奈子の失踪であった。既に妻桐子とは離婚して一人暮らしだ。彼の警察官刑事としての本能なのか必死で捜索する姿は生きる姿を真摯に捉えている。チンピラヤクザとの拘わり薬物・買春組織へと娘の行動が次々と明らかになってゆく。それでも娘を信じ執拗に捜索する父親の姿、最終章は暴力によって娘の仇を討つというスリリングなミステリーだ。
ブラッドレー・ボンド著「ニンジャスレイヤー」、当にコミックの仮想の世界を垣間見た印象だ。作者は外国人らしい。暗躍するニンジャの凄絶な闘争が主題だ。人気漫画の世界は凄い。圧倒される。こんなのを読みたいと思う人間がいるといった感想だ。
リンダ・ハワード著「天使は涙を流さない」、著者の作品2作目だ。ニューヨークを舞台に麻薬王サリナスの愛人ドレアは、30歳を迎え現状から脱却しよと画策する。そんなある日サリナスが雇った殺し屋に体を弄ばれてしまう。彼女は遂にサリナスの元から逃走を企て必死に逃げる。がしかし殺し屋が彼女を追う。遂に逃走中に事故で意識不明の重体へ。再び生還する彼女を迎えたのは殺し屋サイモンだった。愛と生をテーマに一人の女性の不屈の精神をスリリングに表現して読者を飽きさせない。
降田天著「女王はかえらない」、北関東の片田舎町の針山小学校を舞台に起きった殺人事件、小学四年生の児童の純真性と残虐性を見事に描いた作品だ。学級の中での権力闘争そしてカースト的ヒエラルキーが確立しその中で生徒は右往左往する。夏祭りの夜の上った針山が殺害の現場になった。30数人の同級生が二人の対立する少女女王を殺害し沼に沈めた。20年後30歳になった同窓会で明らかとなる殺人の詳細、彼ら全員が漏らさず日常生活を続けるといった稀有なプロットはリーダビリティに富んだミステリーだ。
リンダ・ハワード著「吐息に灼かれて」、ジーナ・モデル彼女が主人公の物語だ。ひょんなことから、GOチーム・民間のテロ対策チームに配属になった彼女の生活と運命まで変化する事態となる。5か月にも及ぶ厳しい訓練に耐え実践に飛行機から飛び降りる落下傘の訓練を終えテロと殺戮の現場シリアに向かう。シリアでの彼女が体験した悲劇がその後の彼女の運命を変えることになる。チームのエースとの恋愛を絡めたラブロマンス・ミステリーとでもいった小説だ。