月曜日, 4月 29, 2024

夢枕獏著「陰陽師」、 平安時代に十四以下で仕えていた陰陽師こと安倍晴明と源の博雅との掛け合いによる魔物妖物を退治する痛快な物語である。様々な状況設定が中々楽しい場面を描いてくれ鬼が出たり牛車が出て消え後に女人が現れ最後には青炎を吐き出しながら消えて行くといった幻想的な描写が楽しい。
辻村深月著「傲慢と善良」、 東京育ちの西村架(かける)は父親の死亡に伴い小さなビール輸入販売の会社の社長に収まっていた、30代後半になってようやく結婚を意識して婚活する中で知り合った坂庭真実(まみ)と付き合いながらも架は当面結婚はと先延ばしにしていた、真実は群馬県庁で臨時職員としてl働いていた30代の後半の女性で両親からも結婚について日頃からうるさく言われ両親の意見に従い結婚相談所で婚活をしてきた自分で決められない性格の女性だった。その彼女が東京に出て架と知り合い結婚に動き出していながら、ストーカ被害を理由に蒸発してしまう。彼女を追う彼の心理を深く捉えまた真実の心理そして内省を冗長ながら見事に描いた大恋愛小説である
道尾秀介著「鏡の花」、人はそぞれを生き悩みそして与えられた運命や宿命に沿って生き死んで行くそんな人生の機微と情感感じさせてくれる本書の物語である連結短編の構成で別々の様相を呈しているが繋がっている不思議な構成は正に道尾ワールドなのか。それぞれの章で人が死ぬ、事故あるいは病に斃れて取り巻く家族人間の悲しみと何故か背景に自然曼殊沙華や森そして蝶や昆虫を配し効果を生んでいる。
笹沢佐保著「求婚の密室」、トリックと言いプロットといい完璧である。伏線も考え抜かれた密室トリックに繋がり読者を翻弄すること間違いないまでに完璧な密室ミステリーだ。夏の軽井沢で開かれたパーティーある大学教授の引退あるいは誕生会を兼ねたパーティーに招待された13人の客それぞれが過去を持つ身の人々であった、あくる朝パーティーの主催者である教授夫妻が古い倉庫で死体となって発見される。招待客のひとりジャーナリストの天知昌二朗の命推理によって見事解決されるが、読み処満載のミステリーで完璧だ。
中山七里著「ラスプーチンの庭」、犬養隼人及び高千穂明日香刑事シリーズで今回はカリスマを擁するる偽医療団体に絡む物語である。大手の著名な大学附属病院で絶望的な病気で入院している患者が退院し民間の医療団体に転院するという話から事態は暗転していく。患者二名が死亡しさらに高額な医療人も献金ともつかない金を毟り取られ闇に葬られた。この医療団体を主宰する織田豊水という導師を抱えている、そしてある日導師織田が撲殺され犬養刑事の捜査が開始され最終的には大学病院で身内を殺害されたとして積年の恨みを持つ看護師兄弟が浮上する。
笹沢佐保著「招かれざる客」、 初期の作品だと言うが著者の特徴を遺憾なく発揮した作品である。細川マミ子は長崎の片田舎で極貧な生活からはいずり出て来て同郷の鶴飼を頼りに上京してきた、そんな彼女と鶴飼は衝突して彼を殊更に憎むようになり遂に鶴飼を殺害そして事実を隠すために次々と犯罪に手を染め深みに嵌っていくその心理をうまく描写する筆力を著者は持っている
町田そのこ著「52ヘルツのクジラたち」、都会で一人暮らしの若き女性に降りかかる様々な苦難と絶望、出自は妾の子だという貴瑚の絶望感は際限なく己を痛めつけられ死おも希望する状態であった。ふと決断したのはかって祖母が住んでいた大分県の海辺の小さな町へ移住した、そこで言葉を出せない愛(いとし)という13歳の少年と出会う。52ヘルツのクジラとは声を発するが周波数が52ヘルツで他のクジラへ信号が送れない孤独なクジラを意味する、それは少年であり且つまた主人公の態様だった。そんな二人に連帯感が生まれ生への希望が芽生えるといった物語である。
マイクル・コナリー著「素晴らしき世界 下」、 ロス市警を抜けフェルナンデス市警の予備警察官そしてロス市警の夜勤勤務の女性警察犬バラードとのタッグは9年前の街娼クレイトン少女の拉致殺害の事件について執拗な捜査を続け、遂に犯人にたどり着いた。犯人は清掃業者で拉致後に漂白剤に付け焼却炉に放り込むといった惨忍な手口で彼女を殺害していた。
マイクル・コナリー著「素晴らしき世界 上」、ロス市警を引退し現在フェルナンデス市警の臨時雇刑事として働いているハリー・ボッシュはロス市警時代に起きた未解決事件について一人単独で捜査すべく当時9年前の聞き取り調査カードを捲る作業に没頭していた、その様子を見たレネイ・バラードロス市警の夜勤勤務の女性警官はボッシュと知り合い一緒に捜査するこちに同意し二人で分担しカード情報を調べ始めた。
中山七里著「切り裂きジャックの告白」、私の中で社会派ミステリーとしての著者は確実に評価を上げてきている。そして今回は移植手術つまり臓器移植という難題に対して正面から挑戦し生と死つまりドナーとレシピエント提供する側と受ける側双方の苦悩を描き出してこれを殺人事件に絡ませ病床で臓器提供を待つ自身の娘をもつ警視庁刑事部捜査一課刑事犬養隼人が解決するというプロットが物語に奥行きを与え最後のどんでん返しに繋がる設定だ読み応えのある内容になっている。
中山七里著「カインの傲慢」、日本社会での永遠の課題、今回は臓器移植をテーマに貧困という要素も加え生と死という主題に犬養隼人刑事と明日香助手を交え犯人を追走する物語はプロットといい伏線も鮮やかに嵌りこんでの傑作だ。貧困家庭での臓器売買は売るものは自分の体しかないという状況での結果に読者を釘ずけにする。現代社会での格差にも言及し一段と社会性を帯びた描写は清張なみに素晴らしい。
中山七里著「ハーメルンの誘拐魔」、警視庁の刑事犬養隼人彼がこの誘拐事件の捜査の中心となり犯人を追う、子宮頸がんワクチンの副反応に悩む家族を主題に産婦人科協会および製薬会社そして厚労省が絡む利害と癒着が副反応が確認しているにも関わらずワクチン接種の義務化を推奨するとう状況でハーメルンの笛吹という犯人が次々と誘拐をする。ストリー自体は面白いが、どんでん返しは想像上で判断できるレベルでイマイチではないだろうか。
細谷正充編「江戸の漫遊力」、時代物股旅物で著名な9名の作家の短編を収録した短編集である。テーマは江戸時代の旅である、お伊勢参りあり富士講ありと多彩である、人々は気楽に或いは決死の形相でというように旅人は様々であり、それは人の人生に通ずるのである。
松嶋智左著「出署拒否」、 警務課教養係の巡査部長である野路が任されたのは、成績優秀で警察官になって二年の友枝が出署を拒否しているという彼を見舞い説得工作だ。そんな折に事件が起きる一人暮らしの老女が土鍋で頭を殴られ死亡した、彼女の息子も階段から落ち頭を石にぶっつけて死んだ。野路と友枝は相談して警察署に知れず捜査を開始した。プロットにも新鮮味はなく平凡な伏線と相俟って興味を失わせてしまうようだ。
ジェレミー・ドロンフィールド著「飛蝗の農場」、 サイコロジカルスリラーと呼称される分野に当てはまるそうである、まず関連の無い描写が次々と展開され読者を翻弄する。プロットはどうなっているかと疑問のまま読み進めて行くと展開が収束して一つの筋に向かって突き進むそこにはおどろおどろしい内容になって最後に向かう。元刑事と双子の兄弟の確執に収束してゆく。