月曜日, 6月 28, 2021

島田荘司著「写楽 閉じた国の幻 上」、佐藤貞三彼は息子を一瞬の錯誤から死なせてしまう。大手企業の重役で準ミスまでになった娘と結婚した佐藤は息子の喪失から一気に崖から落っこちてしまうほどの転落生活になった。浮世絵研究家を標榜する彼は研究書を一冊上梓していた。息子の事故から訴訟を企てた佐藤側と逆の立場の人間が佐藤の上梓した書について批判したことについて佐藤のS出版社は対抗すべく佐藤に上梓するよう懇願する。佐藤は写楽に行きついた、写楽別人説18世紀末ある年1794年5月から翌年1月末でしか存在しない絵師写楽は平賀源内ではないかと。
歌野晶午著「密室殺人ゲーム王手飛車取り」、従来のミステリーという分野を破壊するプロットにまずは驚く、ネットのチャットをとうしての5名、彼らは各々ハンドルネームを持ちクイズ形式で殺人を行いその動機とか殺害の方法を皆で謎解きをしていくつまり殺人ゲームだ。但し出題した本人が犯人だという特殊性からして従来のミステリーの範疇を完全に突破している。しかし面白いか?問われれば複雑である。
トルーマン・カポーティ著「冷血」、カンザス州の片田舎の牧場主であるクラッター氏一家が押し込み強盗に一家4人が惨殺された。子供2人と夫妻の4人だった。犯人のディックとペリーは逃亡しメキシコへと、転々としながらも遂にカンザスシティに戻って来た。執拗な捜査の結果刑務所で同胞だった証言から2人の犯行が確定された。物証も揃い起訴され州の裁判所で死刑の判決が確定。一般のミステリーここで結末を迎え得るがここから長い、クラッター家に縁のある家族の詳細、また犯人の家族兄弟の詳細と少し飽きる程だ。
綾辻行人著「人形館の殺人」、京都は北白川に建つ古風な洋館それが人形館と呼ばれる館だ。その館に住まう飛龍想一は画家であり死亡した母の妹と二人暮らしだが、洋館側には借家人の二人、さらに祖父の時代からの年老いた管理人夫婦が住んでいる。想一の過去実際に起こした犯行と現実的送付される死を予感される封筒、これらが複雑に絡み合い事件の真相へと。過去の著者の館シリーズでは考えられないプロットが待っている少しドギマギして読んだ。
アーナルデュル・インドリダソン著「湿地」、著者はアイスランド人である。この島は日本の北海道と四国を合計した面積の小国で、しかも火山島であり、溶岩台地と湿地に囲まれ始終天候が悪いという。ある半地下のアパートで発見された老人の死、レイキャビク警察の犯罪捜査官エーレンデュルと2人の刑事による捜査が始まった。死亡した老人の過去を捜査する中で判明した事実が元になり恐ろしくも悲しい事件の結末が浮き彫りにされた。プロットと伏線ともそして文章事態が簡潔で読みやすく、本書も一気読みの傑作だ。
綾辻行人著「緋色の囁き」、和泉冴子は天郵政として、規律の厳しさでは指折りの聖真女学園高等学校に寄宿する全寮制だからだ。この学校の校長は冴子の叔母である。陰鬱なこの学校の雰囲気は冴子の精神世界を翻弄する。そして突然殺人事件が発生するしかし自殺として片づけられ真相は闇の中、さらに連続して殺人事件が発生する生徒が二人、めった刺しにされ殺害された。伏線を張り、プロットして確固たる線を引き週末へと転化するこのミステリーは傑作で30年も前の作品とは思えない一気読みだ。綾辻行人著「緋色の囁き」、
ロバート・ロプレスティ著「休日はコーヒーショップで謎解きを」、著者の作品を読むのは初めてだ。9編からなる短編集だが、中編も含まれている。アメリカを舞台にした小気味よい短編でミステリーつまり本格ミステリーとしては、最後編の赤い封筒ぐたいだ。詩人のデカルドが探偵役となりワトソン役としてコーヒーショップを経営するトマスが活躍するが、伏線といいプロットといい今一の感が否めない。
黒川博行著「騙る」、美術年俸者の編集長の佐保と菊池を中心に骨董屋を介在して海千山千の取引が行われ慣れた手合いで無事に収束させるという物語だ。著者の過去の著作と一線を画す今回の書は、例のユーモアを感じさせず今一だと思わせる。大どんでん返しも無ければ緊張感も無い。
綾辻行人著「黒猫館の殺人」、鮎田冬真なる老人から受領した手紙から江南は、老人を鹿谷門美に紹介することになった。記憶喪失だという老人から渡せられた手記を読み二人で推理し遂には現地へと赴くこととなった。長文の手記その中に複雑で複数の伏線を設定し完璧なプロットが本書を本格ミステリーと呼ばれるものにしている。建築家中村青司により設計された館、黒猫館は実は二つあった。最後の最後でどんでん返しが待っている。
ジョン・ヴァードン著「数字を一つ思い浮かべろ」、ニューヨーク市警を退職した刑事ガーニーは友人の相談を受け脅迫じみた文面・詩に興味を示し捜査に乗り出す。友人の死を知ったガーニーはその後次々と発生した連続殺人事件を依頼され捜査に突き進む。複雑な幾つもの伏線と綿密なプロットは見事でありこれぞ警察ミステリーの頂点を思われる卓越した物語だ。
荻原浩著「噂」、脚首の無い死体が発見され、連続殺人事件として持ち上がった。小暮巡査部長と警視庁の名島女子警部補とのコンビで捜査を担当し日夜聞き込みを開始した。女子高生を集めWOMと呼ばれる口コミ戦略によるプロモーションを企画した会社のリストから殺害された女性がその時集客されたリストに載っていたことが判明。捜査は一段と絞り込まれ遂に犯人が足フェチで企画会社の従業員と判明し逮捕。様々な伏線を用意し殺人ミステリーの悲惨さを感じさせないプロットといいかなりの警察小説としての魅力たっぷりだ。
エラリー・クイーン著「エラリー・クイーンの新冒険」、中短編を含む9篇の短編集で、冒険に続く新冒険という訳である。様々な状況下の設定を作り、エラリークイーンの頭脳が炸裂しながら論理的に事件を解決する見事さには感服する。こうした様々なプロットとトリックと伏線を含めて物語の面白さを楽しめる、海外旅行時に持参して暖か伊南国のベランダで読みたい物語だ。
西村京太郎著「殺しの双曲線」、二組の双生児が織りなす犯罪、一方は東京での強盗及び殺人、もう一方は雪深い宮城のホテルにて推薦された宿泊客が次々と死体となる連続殺人事件そして終盤で二つが連携するという。クリスティーの誰もいなくなったに挑戦する独自のプロットの展開に驚嘆するミステリーだ。
エラリー・クイーン著「シャム双子の秘密」,急峻な渓谷の頂上に立つ館に警視父子は休暇中迷い込んで到達した。下界は猛烈な山火事で逃げ道がなかった為ゼイビア邸にやむなく到着した次第である。ある日、館の主の博士が殺害された警視父子は必死に推理し犯人像を捉えるべく奮闘するそんな中で再度今度は博士の弟が殺害される。二人の被害者が握っていたカードはダイイングメッセージか?迫りくる山火事と犯人追跡というプロットと意外な結末は最高だ。
エラリー・クイーン著「ローマ帽子の秘密」,ニューヨークの劇場で殺人事件が発生し当然の如くクイーン警視父子が現場に駆け付けたが、状況は複雑で該当する犯人像が浮かんでこない。登場人物の設定と緻密な伏線エラリーの極上推理力、本格ミステリーの要件を全て満たしている本書はやはり古典的な推理小説の名著だ。
澤村伊智著「ずうのめ人形」、出版社の社員二人が殺害されたと始まる物語は、実に幻想の世界でこれをホラーと呼ぶという。作者が創作したずうのめ人形は和風で黒い着物をきて顔は赤い糸でぐるぐる巻きにされ呪い殺すそんな人形だ。都市伝説に潜む影そして闇、そこに蠢く人間達の懊悩をホラーかしての物語だ。
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