木曜日, 6月 28, 2018

松岡圭祐著「万能鑑定士の事件簿 4」、ノストラダムスの大予言のポスターを回り牛込警察署と凜田莉子と嵯峨、小笠原が奔走する。青年の父はその昔鼠小僧と知れた盗賊の頭だ、その子の青年は父の遺言を元にポスターを探し歩きかつみかんの汁で5億円の在処を書いたとされるポスターの裏を炙りだしたという事件の真相に気づいた。何とも突飛なプロットである。
吉川英治著「親鸞 三」、都、京都から追放され越後に着いた親鸞、この地での布教は徐々に成果を上げ名を轟かせ地方での名は日を追うごとに高まっていった。民衆の中に根を据え共に暮らす、信仰の根源をそこに見出した親鸞の信仰の本質を作者は語る。愚禿を標榜し生に、信仰に、愛に懊悩する親鸞の姿に人間本来の姿をと作者は教えてくれる。全ての人間を救う教えこそ親鸞その人の教義であった。
ドン・ウィンズロウ著「ダ・フォース 上」、著者の最新作だ。今回はニューヨーク市警のノース地区の特捜部の部長刑事デニー・マローンを中心とするフォースと呼称されるチームを中心に市警内部から弁護士と判事、麻薬とギャングを巡る抗争を赤裸々に対処するチームの活躍を描く。薬と銃、賄賂が公然と横行するニューヨーク,市警の内部の実情は凄まじいものがある。


松岡圭祐著「万能鑑定士の事件簿 3」、昔の栄光と喝さいを捨てきれない音楽プロデューサーが、引き起こす詐欺に強請りこの事件に敢然と立ち向かう凜田莉子、著者の科学的に豊富な知識と人間本来の優しさを根底にみるエンターテインメント小説だ。
吉川英治著「親鸞 二」、範円の求道の悩みは深く己が道を極めるために心血を注ぐ修行を繰り返しは見たものの欲を捨てきれず悩みは一層深いものになっていったのである。そんな折に縁あって法然との邂逅が範円の求道を決することになる。彼は決心して月輪卿の末娘、玉日姫を娶る決心をする。新妻を草庵に残してまでも修行する善信(範円)が住まいに帰ってみると叡山との深刻な対立が起きており、師法然への禍を心配する姿が印象的だ。他力念仏を主眼とする法然一派吉水禅房、明恵上人の唱える菩提心、さらに叡山、興福寺の念仏に対する批判は朝廷までに上った。
松岡圭祐著「万能鑑定士の事件簿 Ⅱ」、世間に偽一万円札が大量に出回り、物価が何十倍もに跳ね上がりハイパーインフレになった。警察及び公安全てを総動員したにも拘わらず犯人の行方は依然として知れず日本の経済はどん底に沈んでいく状況に至った。凜田莉子は早稲田大学準教授に偽一万円札の鑑定を依頼したが本物と寸分違いがないと出た。国立印刷局工芸官を警察が身柄を拘束してもなお解明できない偽札の謎、遂に莉子の鑑定眼が閃き犯人を突き止めた。開業時御世話になったリサイクルショップの社長であった。著者の科学の知識とプロットを結びつける思考に思わず笑い。
吉川英治著「親鸞 一」、平安時代に平家絶頂の時代、源家の系譜範剛卿の元で生を受けた幼名を十八公麿(まつまろ)は幼くして異才を放ち9歳の時に比叡山に昇り師となる慈円僧正の元で勉学に励む毎日であった。ここから十八公麿の苦難が始まる。20年間に及ぶ修行を経て京の都に降りた範円が見たものは世俗の人間の欲、儚さやそして社会の現実の荒廃であった。範円の自分の人生への深い懊悩が開始される。遂に再び比叡山に登る決心をする。
中町信著「模倣の殺意」、同県で誕生した作家としての中町なる推理作家の作品は初めてだ。アパートでの青酸カリによる服毒死を遂げた新進の作家坂井正夫を巡って高名な作家の長女中田とルポライターの津久見が各々独自な手法で死の真相を解明しようと調査を開始する。本書終盤に至って初めて坂井正夫なる人物が同姓同名で二人いることに読者は気づく。この同姓同名の作家二人を操り複雑なプロットを体現したのが本書だが余り上手く運んでいるとは思えない。
森博嗣著「探偵伯爵と僕」、小学生新太の夏休みに事件が起きた。友達が誘拐され居なくなった。そんな折ふとした事から伯爵と呼ぶ探偵と出会い新太は伯爵に事件を話し解決を要請する。二人共同で事件の捜査に臨む。小学生新太の一人称で書かれた文章は軽快でテンポよくしかも最後にはどんでん返しまで用意されたプロットは作家の器量を忍ばせる。
歌野晶午著「葉桜の季節に君を思うということ」、厳めしい名前の成瀬将虎の人生つまり著者の人生感をそして生きる勇気と意味を暗示させてくれる書だ。蓬莱倶楽部という高額な偽物を売りつけローンを契約させ多重債務者に仕立て上げる集団、その罠に嵌った女、古屋節子そして保険金殺人の片棒を担がされ身悶えする。成瀬が電車に飛び込んだ節子を救うことになり事件は進展してゆく。複雑なプロットを駆使しながら最後に人生の意味と意義を説く上手い。
今野敏著「曙光の街」、ロシアンマフィアの下でヒットマンとして働いていたヴィクトルは、安アパートで生息吐息の生活をしていた。カってのボスの来訪でヒットマンとして雇われることになった。標的は日本のヤクザの親分の殺害だ。日本に潜り込んだヴィクトルとヤクザと公安外事一課の刑事たちとの戦闘とアクションが展開される。そんな抗争の中で蠢く人物達の人間味と人生の光(曙光)を見出していく様を見事に描き出していく。
柳広司著「ジョーカー・ゲーム」、戦時下日本陸軍参謀本部の結城中佐が作ったスパイ養成組織それがD機関と呼ばれる軍団だ。任地及び任務を与えられ赴任して行くD期間の青年は徹底的に教育され任務を遂行するべく日夜危険を抱えながら日常の生活を送る。上海からロシア敵対国の中で必死に諜報活動を続けるスパイの物語は妙に現実味を帯びて頁を繰り続けさせる。
松岡圭祐著「万能鑑定士の事件簿 Ⅰ」、著者の描き出す美女シリーズは水鏡瑞希、岬美由紀と個性豊かな人物だが真を持つ正義派の女性であった。本書は新たに万能鑑定士としての凜田莉子なる沖縄は波照間島から上京し運よくリサイクルショップの社長瀬戸内との邂逅で目覚めていく莉子の成長過程を記しさらに力士シールやフーズ会社の窃盗を暴くなど才能を発揮していく、次回が期待できる。


東直己著「探偵はバーにいる」、札幌はすすき野を中心に物語が進行する。主人公(俺)は北大の後輩からの依頼により後輩原田の彼女麗子を捜索することになる。探偵稼業をしている俺は常にウイスキーを煽りバーや居酒屋、クラブを探索するが一向に要として足跡が掴めない。すすき野を徘徊しながらチンピラやヤクザと渡り合い捜索している姿は人生を思わせ興味深い、異質はミステリーだ。探偵らしくない探偵の真面目な姿は読者を魅了すること間違いなしだ。
エラリー・クイーン著「Zの悲劇」、上院議員とその兄弟のフォーセット医師が刺殺された。事件を契機にサム警視と娘パティが懸命な捜査にも関わらず事件の真相は庸として知れず遂にドルリー・レーン氏のハムレット荘を訪問し捜査の強力をお願いすることになった。物語はアルゴンキン刑務所を舞台にプロットも素晴らしく結末は読者を煙に巻くどんでん返しとなる。

水曜日, 5月 30, 2018

乾くるみ著「イニシエーション・ラブ」、福井から静岡の大学へ入学した鈴木君は、歯科衛生士となるべく専門学校生の成岡繭子と付き合うことになった。淡い青春の伊吹が走馬灯のように脳裏に浮かぶ恋愛物語は自分の年齢を改めて感じさせてくれる。この物語の中に青春の全てが、若き人生のすべてがあるような感じすらする。
門田泰明著「大江戸剣花帳 下」、幕府転覆を画策する手練れの武士・浪人の類が、宗重の前に立ちはだかる。僧侶慈円は剣の師であるまた柳生宗矩やら父酒井忠勝らの援軍を得て見事謀反の浪人共を看破し撃退する。江戸情緒と庶民の生活及び江戸城周辺の地形から歴史共々教えられる絶好の書である。
門田泰明著「大江戸剣花帳 上」、江戸の初期、中でも知られる明暦の大火の頃浪人宗重は徳川の重鎮酒井讃岐守忠勝の妾の子である。端正な顔立ちと文武両道を極めた浪人宗重が御三家の一つ紀州藩を離脱した浪人達を追う。著者の時代ミステリーは江戸時代の風情を殊の外読者に解かりやすく解説し町人の生活、恋愛事情と面白く読ませてくれる。好著である。
松岡圭祐著「ヒトラーの試写室」、太平洋戦争が進行する時代に一人の青年がヒトラーの戦時下のドイツに渡り生きた史実に基ずく物語りである。青年は柴田彰といい家業の大工見習いをしていたが家を出、たまたま東宝の前身となる特撮技術研究所なる場所で特撮を作る模型作りのバイトをしていた。話はドイツへ飛び、ヒトラーを及び関係する大臣はプロパガンダの為、映画制作を目論んでいた。そんな折ヒトラー以下ナチス軍上層部が見た日本映画の特撮技術に感銘を受け技術者を招聘したその抜擢されたのが柴田だった。ドイツに於ける戦争高揚映画作りに精を出す青年とゲシュタポ監視下で生きそして敗戦と戦時下のドイツでの辛酸を舐めた人生の苦悩、それでも人間を信じる著者の心意を強く感じる作品だ。
アガサ・クリスティー著「杉の柩」、1940年のクリスティーの作だという。富豪の老婦人が息を引き取った。遺言書は書かなかったという。この事実を契機にさらに関連した人物の殺人とも自殺とも取れる事件が発生する。老婦人に関係する人物の心理描写と恋愛感情を絡ませ殺人までの考え抜かれたプロットは今読んでも新鮮味を感じさせる作だ。ポアロの灰色の脳細胞がさく裂。
飯島和一著「神無き月十番目の夜」、今でいう茨城県と福島県の県境に近い小生瀬村で起きた江戸は家康により平定された二年余りの時代の物語である。既に戦は遠のき武士達は鉄砲、弓、槍、薙刀から変化を迫られつつあった。検知の報が村に届き検知人及び配下の縄張り人らが村の田に青くなり始めた田に入り込み泥田として踏みつける所業を見た村人の怒りは沸騰した。役人と対峙し戦を目論んだが四百人に及ぶ村人全てを虐殺した触れることのない古い歴史の一端を紐解きミステリーとしても十分は資質を備えた好著である。
キャロライン・B・クーニー著「闇のダイアモンド」、アメリカはニューヨークから200Kmほど離れて暮らすフィンチ一家が、慈善活動によりアフリカから来る難民一家を受け入れる事になった。フィンチ家の長男ジャレッドは難民一家の様子からこの家族はそもそも家族ではないのではと疑念を持つ。物語は米国東部の町に住むキリスト教を信じる家族の日々の生活と家族一人一人の精神構造を交えてアフリカという遠い思い知ることができない家族との交流を描いている。疑念は終盤でダイアモンドの密輸の隠れ蓑として難民としてアメリカに来たことが判明する。
松岡圭祐著「千里眼 運命の暗示 完全版」、拉致された岬美由紀と臨床心理士の嵯峨と警視庁捜査一課の蒲生の3人がヘリから舞い降りた先は中国の農村だった。ここから中国を舞台に第三次世界大戦を阻止しようと岬美由紀と彼ら2人の活躍が始まる。日中をまたにかけ暗躍するコングロマリットの仕掛ける罠を巧みにくぐり抜けて活躍するグローバルエンターテインメント小説というべき著者の発想の豊かさに舌を巻く。
松岡圭祐著「水鏡推理Ⅵ クロノスタシス」、今回のテーマは過労死である。過労死バイオマーカーという菅野医学博士が開発した過労死にPDG値という数値を方程式から求め過労死への判断基準を提供するといった研究だ。文科省の研究公正推進室に在籍する末席事務員の水鏡瑞希が総合職の須藤と一緒に研究結果を検証するタスクを拝命する。先に過労死したとされた財務省主計局の職員の調査から始め紆余曲折の調査からまさか?と思われる事態が判明する。ミステリーとして十分納得のいく以外な展開は頁を捲る速度を加速させる。著者のテーマの調査能力とか多岐にわたるプロットとか感心するばかりだ。
マイ・シューヴァル・ペールヴァールー著「刑事マルティン・ベック ロセアンナ」、スウェーデンの警察小説で出版は1965年だという。スウェーデンのミステリー小説は過去にも何度か読んだがどれもが面白い。本書は50年もまえに上梓された作品とは思えない新鮮さがあり、ストックホルム本庁の殺人課刑事マルティン・ベックを筆頭に主に3人の刑事が殺害犯を追及する捜査する物語だ。本題のロセアンナは運河を巡る観光船内で殺害された若い女性の名前でアメリカ人観光客の一人だった。凌辱され全裸で発見された死体、身元特定もままならず数か月の時間を要し焦る捜査陣、観光客船ということもあり客が撮影されたと思える写真を収集することから突破口となり犯人を追い詰めていく迫力は警察小説の醍醐味だ。

日曜日, 4月 29, 2018

畠山健二著「本所おけら長屋 十」、本所は深川のおけら長屋の住人がからむドタバタ劇を人情味豊に描き読者を安心させる何かを持っている。日本人で良かったと思うそんな気持ちにさせてくれる。江戸の風情と庶民の暮らしさらに連綿と続く日本人の心がこの本にある。

パトリシア・ハイスミス著「キャロル」、1950年代のニューヨークを舞台に若き女性テリーズと美貌のマダムキャロルとの恋愛物語だ。世にいうレズの世界の恋愛といってもそんな異質な感じは全然なくて、直に徹底した二人の就中テリーズの心理を細やかに描き出して先のページを繰らせるサスペンス的な魅力に溢れている。心理描写の徹底した分析はこの本の持つ愛をテーマに人間として成長していく姿を想起させる。
セバスチアン・ジャブリゾ著「シンデレラの罠」、平易な文体ながら、物語で語る人称の不確実性が読者を欺き最後まで殺人犯がどちらともとれる設定になっている。富豪の叔母の遺産を巡る3人の女性の深い心理を描きながら殺人事件の設定を作り上げている。プロットは単純だが、計算しつくされている語り手の人称設定の不確実性が犯人の特定を困難にし読者を迷わせる。
松岡圭祐著「水鏡推理 Ⅴ」、水鏡推理シリーズの第五弾だ。今回瑞希は文科省タスくフォーズより研究公正推進室に移動となった。移動先での様々な出来事に遭遇し持ち前の正義感とともに事件を解明してゆく。核融合炉がからむ熱エネルギーの研究開発と研究者と民間事業者との癒着と予算の要求、さらに不正な株取引にからむ事態に瑞希の追及が開始される。不妊治療から少子化さらに親子・兄弟関係についての著者の幅広い見識に感心する。
松岡圭祐著「水鏡推理 Ⅳ」、著者この水鏡推理シリーズ4冊目を手にした。文科省タスくフォーズに所属する一般事務官水鏡瑞希なる女性の活躍の舞台は今回気象に関するものだ。気象庁天下り先の民間気象会社の不正、これに絡む官僚の予算の不正要求・使用さらに非行少女たちの境遇と親との接点を通して家庭、人生を語る。現代の関心あるテーマを履んだんに盛り込んだプロットは流石だ。
ルネ・ナイト著「夏の沈黙」、英国の女流作家である彼女の作品は初めてだ。つましやかなメゾットに住む家庭ロバートとキャサリン独立した息子は市内のフラットを借りて住んでいる。ある日一冊の本が彼女の元へ送られて来た、本を見た彼女の過去の忌まわしい記憶を鮮明に思い出す。屈辱的な記憶を回り苦悩する母親としてのキャサリンは思い悩む。夫との仲も険悪な状況になり、息子のニコラスとも意思の疎通がうまくいかず八方塞がりとなった。人間の過去は消え去ることはないが、人生の何たるか人間の拙い心をまざまざと見せてくれる作品だ。
カーター・ディクソン著「ユダの窓」、密室で発生した殺人事件、逮捕されたアンズウェルは被告人としてH・M著名な弁護士の元で出廷、プロットというか殺人の密室のトリックはなかなかのものだ。少し冗長性はあるもののカラクリを解き明かす弁護士の手腕は読む者を飽きさせない面白さがある。最終的決着は、まさに人間ドラマ化し落着する。
笹本凌平著「還るべき場所」、登山を通して人間の根源的な愛を描いた長編小説だ。ミステリー部分は多少はあるが、所謂人間小説だ。ヒマラヤK2を目指して公募登山を実施したコンコルディアツアーに応募した初心者を同伴し登攀に賭ける熾烈な状況を想像しながら読める。臨場感は凄いものがある。刻々と変化する天候8000mにも及ぶ高度での酸素の欠乏と疲労と戦いながら登攀を目指す登山者の姿がリアルで極限状況での人間の愛、人生を見事に描いている。
黒川博行著「雨に殺せば」、大阪湾に架かる港大橋上で現金輸送車が襲撃され行員二人が射殺されるという事件が発生した。大阪府警刑事二人、例の黒マメコンビの登場だ。軽快な文章とともに大阪弁のボケと突っ込みが心地よい。尚も続く殺人事件、死体は5人に増え捜査は停滞した。行員の闇金融ばりの不正融資を暴くマメちゃんの必死の捜査で事件は解明へと。
松岡圭祐著「千里眼の死角」、世界統治の野望を描くメフィスト・コンサルティングは、ディフェンダーシステムを駆使し高度な人口知能システムを構築し人類の抹殺を目論む。このリリーズの壮大なプロットはまるでハリウッドの近未来的なエンターテインメントの映画の如く胆い。岬美由紀が対峙することになる悪の枢軸の統治者マリオン・ベロガニア、ここまでくると壮大なエンターテインメントを見る思いだ。
ジェフリー・ディーヴァー著「悪魔の涙」、1通の脅迫状を元に、古巣FBIの文書検査士パーカー・キンケイドはFBIの要請を受け入れ捜査に参加する。未詳はサイコパスだ。多数の人間がいる最中に銃をマシンガンを打ちまくる。残されたメモを詳細に検査する中で、今後の未詳の出没する場所を特定する。そして最後はいつものローラコースター的結末というディーバーの十八番が待っている。リンカーン・ライムシリーズには無い魅力があることは確かだ。
松岡圭祐著「水鏡推理Ⅲ」、栃木県北部の過疎の山村猪狩村へ文科省タスくフォース事務官水鏡瑞希は上司とともに到着。地磁気逆転の層が発見されたとう教授らの真偽の確証を得るため調査開始。そんな折隣村で土が地震により隆起し人顔の塚が表出したとのニュースが入った。この通称人面塚は村の一大テーマパークとなり環境客が押し寄せた。折しも地磁気逆転調査をしていた久保教授のその人面塚を調査してもらい人面塚は紛れもなく自然現象だとのお墨付きをまらった所有者は歓喜した。しかし水鏡は動いた。。
スティーヴン・キング著「ミザリー」、ポール・シェルダンなる著名な作家がある日事故により、看護婦であり熱烈な彼のファンでもある彼女アニーの元で「ミザリー」という彼女を中心に物語を書けと強要され部屋に監禁される密室の物語だ。彼女は過去に数十人の殺害をし、証拠不十分で現在も生きているサイコパスだった。物語はアニーとポールの二人きりの世界で恐怖に慄き苦悩する作家を描く。本当の恐怖スリラーとミステリーが渾然一体となった体感だ。
松岡圭祐著「ヘーメラーの千里眼」、ミステリーだと読んでは少し物足りない。防衛大学及び防衛庁そして航空隊基地と戦闘機パイロットの二人岬美由紀と伊吹直哉との恋愛を織り交ぜる物語だ。自衛隊を見る作者の眼、そこで生きる隊員たちの日常と人生について作者なりの国家感ともいうべき思想を披歴する。訓練中誤って少年を死に至らしめたと絶望の淵に佇む伊吹を身をもって蘇生させる彼女美由紀の愛情と自衛隊内での精神の相克それらが見事に描かれ長編ながら頁を繰らせる力がある。
櫛木里宇著「死刑にいたる病」、大学生の雅也にある日手紙が繰る。シリアルキラーで死刑囚である榛村大和からであった。刑務所に面会に行った彼はキラー榛村か依頼された要件は過去の殺人と一線を画する9件目の殺人は冤罪だと。榛村の過去及び現在まで交流のあった人々との接触を通して榛村の人間性を知ることにより自分もまた過去から現在までの人生を自分自身を知ることになった。設定は面白いが今一ミステリーとしての面白さは薄い。

土曜日, 3月 31, 2018

P・D・ジェイムズ著「策謀と欲望 下」、ホイスッラー連続殺人鬼はあっさりと自害した。連続殺人鬼を追走する物語だと思ったが、作者はバッサリとなんの未練もなく断ち切った。その潔さに感心する。思えば、原子力発電所の小さな田舎町の近隣住民の悲喜こもごも嫉妬や妬みは元より噂、そして暴力と人間が暮らす世界の通常の普通の生活の機微を描きながら中心に据えたテーマは人間の欲望であった。
P・D・ジェイムズ著「策謀と欲望 上」、海沿いの田舎、原子力発電所のある小さな村で次々と起こる連続殺人事件ホイスッラーと呼ばれる犯人の仕業と目され、殺人は惨く惨忍だ。地元警察の刑事が捜査を開始するが、犯人の行方は庸と知れずそんな中発電所の職員がまたもや殺害された。しかし殺害前に目されていたホイスッラーは自害したとされた。事件は迷宮化しつつあった。
米澤穂信著「いまさら翼といわれても」、架空の田舎町、神山町の高校生の青春の会話が主題だ。懐かしい思いが蘇る。徐々に個性を際立たせて大人になる一歩手前の行動と考えを懐かしさと共に思い出し一気に読んでしまう不思議な魅力を持った書だった。
宮部みゆき著「蒲生邸事件」、戦前の2・26事件を題材に、タイムトリップという突飛な発想設定で物語が進んでいく。蒲生憲之という旧陸軍大将・皇道派である家・蒲生邸にタイムトリップした孝史そこでこの蒲生邸の秘密を探り、合わせて事件の渦中に遭遇し現場を具に見ることになる。軍部独裁へと舵を切る日本の現状と必死に生きる庶民の姿は小説らしく、後半部分は既にタイムトリップのことなど忘れてしまう。そんな面白い小説だった。
ジョン・ディクスン・カー著「火刑法廷」、素晴らしい作品だ。プロットもそして謎解きもそこに登場させる人物の配置も見事だ。フィラデルフィアの郊外クリスペンの田舎町の広大な土地を有するデスパレード家そこの当主がヒ素の毒をもられ死亡する。近くに別荘を持つスティーヴンスとデスパレード家の長男マークらとともに霊廟から死体を取り出し毒を盛られた事を実証すべく掘り返した。だが死体は無かった。死体の消失、不倫、魔術めいた家系、犯罪を研究する小説家と伏線にも事欠かない。まさにミステリーの一級品だ。
東野圭吾著「秘密」、杉田平介の平凡な家庭、妻と娘藻奈美との3人でのどこにでむある家庭だ。ある日長野に娘と出掛けた妻直子はバスの事故により娘の藻奈美だけ助かったという事態が発生。そしてミステリーが始まる。娘藻奈美の体に妻直子が宿るという不可思議な状況になった。平介と藻奈美の体をした直子との生活が始まる。娘、妻への愛情と父親としての人間としての嫉妬と苦悩を見事に描いている。ミステリーというより文学的作品だ。
筒井康隆著「ロートレック荘事件」、豪邸とも言われる別荘その建物はロートレック荘というものだった。別荘の所有者木内がロートレック作品の蒐集家で邸内には幾つもの作品が飾られていた。そんな別荘に集まった7人にある日拳銃による殺人事件が発生した。次々と計3人の女性が殺害された。屋敷のカラクリと犯人の鬱屈した精神をプロットとして採用しているが、謎解きは今一だ。
ミシェル・ビュッシ著「彼女のいない飛行機」、イスタンブール空港を飛び立ったエアバスが、フランスとスイス国境の恐山と称される山中に激突した。乗員乗客169名のうち1名の乳児が助かったと地元新聞が報じ話題となった。乗客の中に乳児が二人いて助かったのはどちらの家族の子供かと争いが起きそして一人の探偵が裕福な家族に捜査を依頼されてから18年の歳月が経過した。そして探偵に依頼した契約最後の日に事態は急展開し謎がとける言ったプロットだ。一人の乳児を回り対立する家族そして捜査を依頼された探偵、一方に家族の青年もまた捜査を開始する。様々な状況の中で物語は進む。冗長さは否めないが最後まで繰らせる迫力がある。
東野圭吾著「疾風のロンド」、泰鵬大学医科学研究所から盗まれた炭疽菌カプセル以前研究所に勤務していた男の犯行だと分った。彼は長野県の里沢温泉村スキー場に埋めたといって脅迫してきていた。その後犯行に及んだ男は関越道でトラックに轢かれて死亡、研究員の栗林と秀人はスキー場に向かう。ゲレンデを挟んでの攻防はスリルがあり単純だが著者のプロットは的を得た作りといえる。
黒川博行著「蜘蛛の糸」、7編の短編集だ。著者の短編集は確か初めてだと思う。どれも皆面白い。軽妙な文章のタッチは気軽に読めて何故かホットするものがある。大阪弁でのやり取りも何故か違和感もなくすんなりと受け入れることができる。それぞれの背景の著者の蘊蓄は調査の確かさを認識する。

日曜日, 2月 25, 2018

黒川博行著「暗闇のセレナーデ」、著者の初期の作品だ。美術界取り分け彫刻界の組織である立彫会の副理事長の加川昌の失踪とその妻の自殺未遂から端を発した事件の真相を美大の女子の二人美和と冴子そして西宮北署の刑事が追う。彫刻界、美術界の裏で動く闇を鋭く描きまた当時の美大生の生活もリアルに描写している。著者が美大出という事情も相まって鋭い。事件捜査は一転二転と犯人は用として特定できず巧妙な計画的な犯行をメインにプロットは読者を十分堪能させる小説だ。
ジェフリー・ディーヴァー著「スティール・キス」、著者のリンカーン・ライムシリーズだ。このシリーズは全て読んでいる。今回は生活の身近にある電子機器あるいは電気器具が凶器に変貌するといった恐怖を犯人未詳40号の手に罹り連続殺人事件を追うライムとアメリアの闘いだ。機器に内蔵された電子デバイスICチップの制御コントローラーをハッキングして意のままに操る犯人を追跡する。ライムのタウンハウスにはいつものメンバーであるクーパーのほかに今回初登場のアーチャーが参戦彼女もまた障害者で車いすを使う。後半の著者のどんでん返しは未詳40号の裏に女性が絡むというプロットだが、今回の作品に関しては今一かな。と思う。
太田愛著「天井の葦 下」、失踪した公安捜査官山波を追って曳舟島に到着した鑓水、相馬、修司ら3人は地元の漁師達の中に入り幸運にも果って絶命した正光の同僚喜重の好意で民家を借り住まうことになった。島を調査するうち山波が隠れている確信を掴む。そんな折公安の調査官が島に乗り込み間一髪のところで漁師に助けられ島を脱出し東京へ向かうことができた。立住の児童ポルノDVD携帯により逮捕され一刻の猶予まない4人は計画を実行する。後半の展開は迫力がある。検察と第二次大戦下での言論統制、秘密保護法による無差別の捕縛と警察庁公安との闘いをテーマにしたプロットは著者の力量の大きさを見る思いだ。
太田愛著「天井の葦 上」、3作目を読むことになった。天井の葦という長編だ。正光という老人が渋谷のスクランブル交差点で天空を指さしながら絶命した。元議員からの依頼で鑓水七雄の興信所に依頼があった。その不遇の死の調査依頼だ。鑓水の興信所で働く繁藤修司とともに調査を開始した。一方二人の盟友相馬亮介は交通課に飛ばされ、現在停職中の身だ。その相馬に公安からやり手前島より鑓水らの委任先を掴めと指示を受諾。警察、公安、政界と鑓水らの興信所を巻き込んだ事件の今後の展開は?


マイクル・コナリー著「転落の街 下」、市議の息子のホテルからの転落事件は、早々と自殺と断定され決着し、ハリーは未解決殺人事件の捜査に戻る。執拗な捜索の結果犯人を突き止めた37人もの被害者を出した稀に見る殺人犯を逮捕した。上巻では市議とロス市警が絡む事件を取り上げ下巻では未解決、凍結事件を絡ませるコナリーのプロットは見事に成果を出している。
太田愛著「幻夏」、作者の初作「犯罪者」にも登場する3人、警察官の相馬、元TVプロデューサーの鑓水、そして繁藤修司と。少女誘拐事件を契機に相馬の親友水沢尚の失踪を絡ませ事件は複雑な経緯を辿る。尚の父親が冤罪として9年間の刑務所暮らしから帰還しよりによって自らの息子に石段坂で石礫により殺害される。その後尚の母親香苗が鑓水に尚の捜索を依頼しに来て3人の尚の捜索が開始された。著者の巧みなプロットを冤罪をテーマに警察、検察、裁判官と日本の司法機構の矛盾を指摘する。社会派ミステリーを堪能できる一冊だ。


マイクル・コナリー著「転落の街 上」、ロス市内のホテルの上層階から落下し死亡したハービング弁護士事件を回り、ロス市警のハリー・ボッシュ刑事が捜査を開始する。死亡した彼の父親はロス市議会議員だ。倅が父親のコネクションを使い仕事をして来ていたと分る。ハリウッド地区のタクシー営業許可を回り父子は動いていた。息子は元警官でハリウッド分署同僚警官を抱き込み利権を奪おうとしていた。
太田愛著「犯罪者 下」、三人のメルトフェイス症候群の元凶タイタスフーズは、滝川というプロの殺し屋を雇い彼らを追わせる。周到なる計画を実行すべき三人の前に次々と浮かび上がる真実、大企業と政界との癒着、企業内の対立の構図からマスコミを仲介にして巨悪を暴き全国者連絡会に金を渡そうと脅迫する鬼気せまる後半の展開はまさに読み応え十分なミステリーだ。  
太田愛著「犯罪者 上」、白昼の深大寺駅前で拳銃による射殺事件が起こった。殺害された4人と負傷した繁藤修司、警視庁の相馬啓二、前ディレクターの鑓水彼ら3人の犯罪捜査が開始される。事件に深く関係した産廃業者の真崎、彼は幼児のメルトフェイス症候群なる悲惨な状況を作り出す元凶をタイタスフーズなる食品会社の離乳食にあることを突き止める。3人の前に目出し帽の刺客が送り込まれすんでのところで命拾いした修司を助け出す。複雑なプロットだが軽妙な文体とともにリアルに展開する物語だ。
ルシアン・ネイハイム著「シャドー81」、前代未聞の旅客機のハイジャックを扱った作品だ。時期はベトナム戦争末期だ。中古船を買いエンコ空将とグラントは戦闘爆撃機TX75Eを巧みに盗み出し船に積み込みハイジャクを計画する。旅客機の機長や機内の様子、管制官とのやり取りなどまさにリアルで感動する。プロットの完璧さに加えて描写のリアリティーは迫真の描写だ。
山本一力著「赤絵の桜」、短編5編の本書は、江戸中期のレンタル業損料屋喜八郎とその配下が江戸は深川を舞台に活躍する物語だ。喜八郎に男の粋を乗せ下町人情を前面にさらに恋愛について作者の深い思いを乗せ描いている。日本人の感性に訴える秀作だ。
マイクル・コナリー著「罪責の神々 下」、ロス市警麻薬捜査官マルコ、彼の取り巻き調査官らによるハラー弁護士の運転手アールの殺害、さらにハラー自身が高速道路での追突と危機と隣り合わせで弁護する展開だ。本書下巻は法廷での詳細な記録としたたかな弁護を展開するハラー、チームハラーの見事な調査そして事件は意外な結末へと向かい予想だにしない結果となっていく。どこまでも正義を貫き通し弁護を続けるハラー弁護士、著者の秀作だ。
マイクル・コナリー著「罪責の神々 上」、売春のポン引きがエスコート嬢殺害事件で逮捕されその弁護を引き受けることとなった主人公ハラー弁護士、比較的安易な事案として受けた弁護だったが、事態は予想を超え複雑で無数の糸が絡まる状況となった。ロス市警捜査官、メキシコ麻薬カルテルの収監人モイア、モイアの弁護するスライと事件は一つに纏まりつつあった。
内藤了著「ゴールデン・ブラッド」、ゴールデン・ブラッドと呼称される人口血液をテーマに殺人ミステリーが絡む物語だ。ミステリーあり愛、人類のための博愛と最後には「どんでん返し」ありと巧みなプロットには脱帽だ。人間は何のために、どのようにして生きていくのか?という人生の大きなテーマを主題に組み立てられさらにミステリーを絡ませるという面白さは格別だ。
柚月裕子著「孤狼の血」、広島県警呉原署を回り暴力団との格闘をリアルに描いた警察小説だ。ベテラン刑事大上と新人刑事日岡コンビが繰り広げる壮絶な対暴力団との闘いが大上刑事の人間模様とともに展開するプロットは迫力と著者の綿密な調査とが相まって見事に描かれている。

土曜日, 1月 27, 2018

黒川博行著「果鋭」、大阪府警の元刑事が監察により退職させられた刑事、伊達と堀内のコンビがヒマラヤ総業とかいう会社の競売屋になってパチンコ業界と暴力団相手に死闘するといった物語だ。語りは軽妙にしてユーモアもあり、かつパチンコ業界やら裏社会を徹底して調査した極めの細かな読者が感心する情報が次々と語られる。面白い。

東野圭吾著「ブルータスの心臓」、大手MM重工に勤務する末永、彼は少年時代貧困と不遇の時を過ごし成長し自分で大学を卒業し現在の職についた。彼は職場の女性と付き合い深い関係にあった、だが彼女は大学時代に二度も堕胎するなど末永一人でなく複数と関係していた。彼女の妊娠を契機に関係持った三人が共謀して殺人計画を立案した。しかし結果は思わぬ方向に展開し仲間の室長が殺害された。さらに仲間の一人も青酸カリによって殺害される。警視庁の必死の捜査にも拘わらず進展は皆無で生きずまる。著者のプロットは素晴らしく読者を最後まで一気に頁を繰らせる力がある。しかし最後の犯人のどんでん返しには性急さが見られ残念だ。
黒川博行著「喧嘩」、例によって建設コンサルの二宮と極道二蝶会の桑原とのコンビが繰り広げる脅し、強請り、恐喝と枚挙に暇がないそんな物語を著者は軽妙にしてどこか憎めない二人の絶妙な間合いを存分に楽しませてくれる。今回は、大阪府議、国会議員、暴力団との争いの真っただ中で巧みに生きる二人の知恵が何とも言えぬ味を出している。

アガサ・クリスティー著「青列車の秘密」、青列車とは、イギリスからフランスへ向けて走るブルートレインの事である。ある列車で若い人妻が殺害される。その列車には名探偵ポアロも乗車していた。警察は夫を犯人として検挙する。事件の真相解明はある富豪からポアロに託された。ロンドン、パリ、リヨンを舞台にロマンスを散り嵌め物語は展開し意外とも思える犯人像をポアロが特定する。小さなどんでん返しとも言うべきクリスティーの初期の傑作だ。

ウイリアム・アイリッシュ著「幻の女」、60年以上も前に上梓されたミステリーの古典的名著と称される作品だ。妻を殺害したとして刑執行を間地かに控えた殺人者・主人公ヘンダースンは友人のロンバードに唯一自分のアリバイを証明できる女を探してくれと頼む。依頼を承諾したロンバードは様々な手段でもって探すが手掛かりは何一つなく迷走する。主人公を除いては友人ロンバードと判事の動静を記述し読者すっかり騙されてしまう。最後に待ち受けるのはどんでん返しとなるプロットがこの時代に既に名著として存在していたとは感慨深く驚きだ。
黒川博行著「落英 下」、和歌山県警で専従捜査班に組み入れられた桐尾と上坂刑事は県警の満井と一緒に捜査に当たる。銀行関係二人の射殺事件を執拗に捜査する彼らは徐々に核心へと迫る。建設ゼネコン、マリコンとヤクザの狭間で暗躍する談合屋巨額の金が闇を舞う。遂に裏で糸を引く人物を特定し背後にいるヤクザとの闘いとなる。ヤクザを脅し談合屋から金を毟り取る。綿密なプロットと裏社会の詳細な取材がリアリティーを伴って読者を離さない。
黒川博行著「落英 上」、大阪府警薬物対策課の刑事二人桐尾と上坂コンビによる薬物・麻薬捜査を捜査ガサ入れ中にチャカ拳銃を発見する。しかもその拳銃は和歌山で銀行福頭取が射殺された時に使用されたトカレフM54と断定された。桐尾と上坂は遂に和歌山県警の定年前の刑事と専従班として職務にあたることになった。例によって裏社会のそのスジを描く筆者の描写は本物で府警コンビも相変わらず面白い、多少の冗長性を感ずるが下巻が楽しみだ。


ジャック・ヒギンズ著「鷲は舞い降りた」、第二次世界大戦中にヒットラー配下のドイツ落下傘部隊が、イギリスのチャーチル首相を拉致するといった壮大な計画の下に海辺の霧深い田舎の村に降下し作戦を実行するといった物語である。作戦を実行する側の軍内部の抗争と冷徹な軍内部の階級闘争、さらに地元の村に先んじて乗り込む男が地元民との軋轢、そして地元娘との恋愛と様々な事象が発生し混沌とした状況に陥る。作戦実行を暴露されたドイツ軍はほぼ全滅の憂き目に会う。後半はその緊迫した状況が読者を最終頁まで繰らせる迫力十分だ。


山本一力著「だいこん」、大工安治の元に生を受けたつばきは、幼い頃から酒好きで博打好きな父親の借金だらけの赤貧の家庭で育った。ヤクザの伸介の取り立てさらに食うものにも困窮するどん底の生活を家族5人で耐え忍んだ。そんな中母親みのぶが蕎麦屋に奉公することになり、母親の立ち振る舞いを実際に見たつばきは将来の自分の姿を科さねる。細腕繁盛記でもある本書は江戸庶民の人情ふれあいの中に人間の生とは何か?生きるとは?読者に問いかける。忘れかけた日本人の心をもう一度原点に立ち換えさせてくれるそんな物語である。
黒川博行著「八号古墳に消えて」、考古学会を舞台に暗部を詳細なデータ収集を元に物語のプロットを設定する。殺人事件の連鎖の中で追う大阪府警に黒マメコンビ二人の刑事の活躍が本書でも如何なく発揮され面白い。大阪弁の何とも言えない二人の刑事の会話に思わず苦笑する。常に物語の背景の綿密な調査データの正確さを著者の書から感銘を受け面白さを実感する。

金曜日, 12月 22, 2017

ジョン・ディクスン・カー著「皇帝のかぎ煙草入れ」、1940年代の作品でカーの代表作といわれる古典的ミステリーの名著だと。若くて美しい未亡人イヴを回り道路隔てた真向かいの家の主人モーリスが殺害される。前夫アトウッドが殺害された当夜イヴの家に入り込み殺害を目撃したと彼女に伝える。殺人事件の発生からイヴに嫌疑がかかり警察は遂に彼女を拘留する。イギリス人の心理学者キンロスが登場し様々な視点から犯罪を紐解き解決する。カーのこの小説にみるプロットさらに犯人がだれであるかの伏線を周到に用意し読者に挑戦する。まさに古典的名著だ。
黒川博行著「アニーの冷たい朝」、大阪府警シリーズだ。若い女性の扼殺連続殺人事件を追う大阪府警村木班、周辺警察署と協力してサイコパスを執拗に追う。犯人は殺した女性の遺体にドレスを着せ死姦する。物語は犯人と被害者そして警察捜査警部の各々の視点から語られ最後まで緊張状態を保ちつつ終局を迎える。
山本一力著「銀しゃり」、江戸中期幕府からの棄捐令により江戸市中は不景気の最中にあった。そんな中でも鮨職人として独立し店を持つまでになった新吉は全うな商売に勤しむ人情の解る人だった。江戸庶民の暮らしや人間関係そして人生をどう生きるか?を巧みな描写でもって読ませてくれる著者の力量に感服だ。
ダシール・ハメット著「マルタの鷹」、米国ミステリーのハードボイルド小説の始祖と讃えられ古典的名著と呼称される「マルタの鷹」。サンフランシスコに居を構える主人公の私立探偵スペードが依頼を受ける一件から物語は殺人を伴い展開する。黄金の彫像の鷹を巡る攻防に巻き込まれ絶対絶命のピンチをその才覚で切り抜ける映画化された希代の名著だが、今となっては通常のミステリーと変わらない。
池井戸潤著「最終退行」、著者の前歴である銀行マンとして表裏を知り尽くしたプロットの設定はまさに迫真だ。東京第一銀行羽田支店の副支店長である蓮沼を回り支店長さらに同期の銀行マン、愛人の行員との人間関係と組織としての銀行の旧態依然とした体質を細部まで描いている。会長である久遠の不正資金供与とマネーロンダリングを執拗に追及する蓮沼の正義感は圧巻だ。
山本一力著「深川黄表紙掛取り帖」、短編集だ。作者の書は2作目である。江戸は元禄時代の深川を舞台として起こる事件を題材に作者の透徹した人間観が随所に散見され物語の面白さ多少のミステリー性も加わりさらに読者を魅了する。主人公の蔵秀の取り巻きの人間たちの江戸深川庶民を生き生きと描く作者の力量は人間の狭小さを面白く描いている。
ジェイムズ・エルロイ著「ホワイトジャズ」、確か著者の本は読んだ覚えが有るのだが定かではない。今回のミステリーとかハードボイルドとかの範疇を超えた物語だ。そして著者の強烈な文体というべきか単語・短文の羅列は読者を引きずって止まない。ロスアンジェルスを舞台にしたLAPD(ロスアンジェルス市警)と殺人者、麻薬、密売、ポルノ、殺戮、買収とありとあらゆる悪がまかり通る市での抗争さらにLAPD内部での不正を不条理なまでの描写。主人公の警部補で弁護士のデイヴィッド・クラインの血まみれの抗争が読者を最後のページまで繰らせる。
クリスチナ・ブランド著「ジュゼベルの死」、40~50年代に活躍した女性作家のミステリーだ。英国の小劇場で発生した女性の殺人を契機にそこに居合わせたコックリル警部とスコットランドヤードの警部が追及する殺人事件が主なプロットだ。密室殺人を捜査する中で意外にも容疑者全員が自分が犯人だと名乗るという下りは斬新なプロットだ。結末はどんでん返しに近い意表を突く内容で新鮮だ。
山本一力著「赤絵の桜」、著者の作品は初めてだ。損料屋喜八郎始末控えシリーズ第二弾だという。江戸は深川を舞台に損料屋(レンタル業)を営む喜八郎を主人公に様々な事件を解決するといった江戸情緒と人情溢れる物語だ。本書は数編の短編から成っているが相互に関連しあっている。ミステリータッチの編も編まれていて普通に楽しめる。

黒川博行著「勁草」、オレオレ詐欺集団を追う大阪府警特殊詐欺班の刑事、集団は金主と受け子や役回りの若い衆を使い巧みに老人から金を毟り取る。この集団にヤクザが絡み事態は転々とし、遂に殺人事件が発生、刑事らは逃亡する殺人犯を追い沖縄へ。著者の軽妙なタッチの文体はこの書でも圧巻だ。