木曜日, 1月 30, 2020

若竹七海著「さよならの手口」、著者の葉村晶シリーズの長編である。休業中で本屋、Murder Bear Bookshopでバイトしていた葉村に往年の名女優から娘志緒利の捜索の依頼を受ける。元警視庁刑事を退職した探偵が一端捜査をしたことを知ったが、捜索は要として進展せず。女優の過去、フィクサーと呼ばれる男との関係やらと複雑に絡み合い殺人が連続して発生、しかしメゲナイ葉村は満身創痍で立ち向かう複雑なプロットは作者の計算されたものだ。
松岡圭祐著「万能鑑定士Q 8」、凜田莉子鑑定士シリーズ第8作だ。今回は故郷波照間島と竹富島の水不足について一波照間島の議員の発案で台湾の発明家、黄春雲なる人物と接触し簡単にフィルターを通すだけで海水が真水になるという夢のような話に乗り12億円でもって購入した。疑惑を深めて莉子は故郷友人二人と共に台湾に渡り調査を開始した。犯人の意図を見事に捉え12億円の回収に成功し島の財政を救うこととなる。

ジェイン・ハーパー著「渇きと偽り」、オーストラリアはメルボルンから車で6時間以上離れた田舎町キエワラ、ここで生を受けた今現在メルボルン連邦警察に勤務しているアーロン・フォークは、かっての友人から手紙を受け取り親友の葬儀に出席すべく帰郷する。一家惨殺の悲劇は疑惑へと変わり地元の巡査部長とフォークは連携して捜査を進めることになる。捜査は中々進展せず暗中模索の中で一筋の光が見えて徐々に全貌が見えてくる。冗長性は否めないが海外の推理小説に良くある例だろう。
連城三紀彦著「戻り川心中」、大正期から昭和に掛けての暗い時代を背景として書かれた短編5つを載せている。著者の本に接するのは初めてだが、その文章の流れるような美しさと言葉・単語の選択感というかミステリーとして意識する前に感激してしまった。暗い時代背景の元に起こる殺人事件と人間の愛を深く洞察した物語は傑出したものだと感ずる。
ギリアン・フリン著「ゴーン・ガール 下」、結婚生活五周年の日に妻エイミーは、失踪した。次第にマスコミにも知られ騒然となる日々の中、ニックは右往左往する。解雇、悔恨、愛憎とありとあらゆる想念が去来し神経をやられる。全ては、エイミーの考えに考えられた策略だった。結婚生活を破綻させ愛を奪った夫ニックに対する猛烈な復讐心を持つエイミーの闘争心というか戦略は警察、FBIをも打ち砕く凄まじいものだった。夫婦の愛憎、疑念と全ての感情と交錯を含めた類まれな作品でしかも何故か恐怖を感じるミステリー作品だ。
横関大著「グッバイ・ヒーロー 上」、中野区にあるピザ屋でバイトする店員伊庭涼太はバンドを結成し夢を追いかける友人らと一緒に働いている。生来の正義感もつ彼は困っている人がいたら助けなければいけないという性格だ。そんな彼は強盗事件に遭遇しおっさんと呼ばれる過去運び屋をしている50絡みの男と仲良くなる。そこからの展開は想像を絶するユーモア溢れる運びだ。世の中捨てたものじゃない、誰か助けてくれる人がいるという真のユーモアを感じさせるエンターテイメント小説だ。
ギリアン・フリン著「ゴーン・ガール 上」、マンハッタンで裕福な家庭に育ったエイミーと結婚したのはミズーリ州の田舎町で育ったニック・ダン。二人は共にライター物書きとして生活していたが、インターネットの普及やらでリストラされ二人は無職となりニックの田舎町に引っ越すことになった。結婚生活は当初は順調そのもので愛し合う二人の姿を見ることができたが、結婚五周年前妻であるエイミーが失踪した。ニックの置かれた現実の状況とエイミーの日記という形で物語は進行し結婚生活の破綻状況が具に見えてくる。。
原寮著「それまでの明日」、お馴染みの西新宿の渡辺探偵事務所の1人探偵沢崎の事件簿と言ったところだ。ある日依頼された調査を開始した彼が向かったのはサラ金会社ミレニアム・ファイナンス、そこで偶然にも強盗事件に巻き込まれた、管理する店長は行方不明という不信に突き当たる。その後展開するプロットは予測できないもので、ミステリーといえるかどうか微妙である。
堂場瞬一著「第四の壁」、大友鉄、小学三年生の息子と暮らす警視庁刑事総務課に勤務する彼の大学時代の劇団夢厳社で殺人が起こった。主催者が殺害され当時劇団にいた大友が事件を捜査することになった。昔仲間だった彼らとの軋轢と恋愛を含めて様々な想念を織り込み同僚の柴刑事と共に事件に当たる。そこで発覚したのは劇団の脚本「アノニマス」の筋書き通りに事件が進展していることを掴んだ。劇団員相互の嫉妬と相克が背景に。。
横関大著「スマイルメイカー」、著者の何とも言えない奇抜なアイデアとプロットに感服だ。都内を走る3台のタクシー夫々の運転手ドライバー、五味、恵子、袴田の内五味がある日中学生の少年・優を乗車させる、家出して来たという出出しで事件が始まる。悪徳弁護士の優の父親、離婚した弁護士マリ、被害者の元秘書の女性を回りタクシードライバーの活躍が面白い。
横関大著「ルパンの帰還」、和馬の妻となった華と娘で幼稚園に通う杏が乗ったバスがジャックされた。捜査を行う和馬と三雲、それから次々と殺人事件が発生し刑事部長までが爆破の一歩手前で回避という異常事態だ。事件に関与している人物が間宮玲子並びに元刑務官の岩永という二人組と断定された。最終章で明かされた事実は華の叔母にあたる玲子実は三雲家の縁者だと判明した。
堂場瞬一著「アナザーフェイス」、警視庁刑事部総務課に属する大友は、首都銀行の行員の息子6歳が誘拐されたとの情報により捜査一課に助っ人として参入した。現金受け渡しを受け入れ東京ドームに向かうが犯人側の巧妙な策略により犯人はおろか現金一億円までも奪われた。捜査一課一丸となってコンサートの名簿を当たるなでして掴んだ情報元に犯人特定に邁進する。結果は思わぬものとなった。
横関大著「ルパンの娘」、奇想天外な発想とプロット、泥棒一家と警察官一家という相対する家族双方の娘華と和馬が結婚するという。何故か微笑ましい互いの家族像が見える泥棒一家の生態と警察官一家の生態、奇を衒った想定ではあるが、仄々とした家族愛を感じさせるエンターテインメント小説として仕上がっている。
柚木裕子著「蟻の菜園」、現場労働者の親の元で現場に駐車するバンの中で女姉妹は、無戸籍児として育っていった。酒癖の悪いアル中の親は暴力を振るい姉妹を脅えさせる毎日だった。その後二人の姉妹は施設で育つが改心した親の元で引き取られ、さらに親に犯されるという悲惨な人生を歩むこととなる。雑誌社の記者は姉妹の生い立ちを記事にすべく調査を開始する。そこで遭遇した事実は過酷なまでの生き様だった。社会によってこれほどまでに虐げられた姉妹に人生は如何ほどのものか?
東野圭吾著「ラプラスの魔女」、赤熊温泉という場所で硫化水素による死体があがった。元は高名な映画関係者水城義郎だと。一緒にいた妻はただ茫然としていた。苫手温泉でも硫化水素猛毒ガスで元映画俳優が死亡した。義郎の妻千砂都の住居から管轄の刑事が一人捜査に乗り出す。大学で地球環境を教える青江教授は温泉地での事故調査を依頼され赴くそこで遭遇した女性は羽原円華という人物だ。ここからプロットは読者の想像を超える展開となり一気に最終頁まで。