木曜日, 4月 29, 2021

島田荘司著「異邦の騎士」、目覚めたら公園のベンチの上だった。駐車したと思える車は見つからず完全に意識外につまり記憶が飛んだ。彼は名前もわからずじまいでいたが、ある女性良子と同棲を始めた。記憶障害には人知れず悩んだが良子によって齎される情報に振り回され、そんな時に占命判断という看板から御手洗潔という人物と親しくなった。彼は悍ましい殺人計画の中に組み込まれ代理殺人者に仕立てられつつあった。それを救ったのは例の御手洗だった。どんでん返し的ミステリーで読み応え十分である。
柚木裕子著「最後の証人」、クリニックを営む高瀬光治は、妻美津子と卓の3人である。ある日雨の夜塾からの帰り交通事故に遭いそのまま帰らぬ人なった。一人息子を失った家族の悲しみは天井知らず、妻の美津子は呆けたようになった。加害者の建設会社社長の嶋津は、詫びを入れるでもなく卓の友人の話によれば猛スピードで歩道に突っ込んできてなおかつ加害者は酒の匂いがしたという。不調を訴える妻を大学病院に行かせ検査をした結果癌だと判明し余命は一年だという。夫婦の加害者殺害の計画が遂行され遂に裁判を迎えた。
伊藤祐靖著「邦人奪還」、北朝鮮の拉致被害者6名を奪還すべく、特殊部隊員が潜水艦と軍用ヘリを駆使して北朝鮮領土に侵入し奪還するこの計画が政府に持ち上がり自衛隊員をして救出作戦を実行することに決定した。特戦部隊軍が侵攻を決行した。20数名の犠牲者を出しながらも見事に救出した。緊迫した作戦の筆力、右往左往する政府要人さらに自衛隊幹部の狼狽と保身、国家として果たすべき責任、飛び交うインテリジェンス大国の容赦ない恫喝全てが行き交う中で実行した救出作戦だった。
ウィリアム・ケント・クルーガー著「ありふれた祈り」、米国はミネソタ州の片田舎町に暮らすドラム家、長女アリエル長男フランクそして末っ子のジェイク一家の父ネイサンは牧師であり、母のルースは芸術家肌である。ある日アリエルが殺害され川に置き去りにされた、フランクは犯人を捜すべく調査するが一向に見つからない。隣人のブラント家には勝手母の恋人であって盲目のエミールそして娘のリーゼ、エミールの伝記をタイプしていたアリエル、彼女は次第にエミールに愛情を持ち一夜を共にして妊娠してしまう。そして殺害された。犯人はリーゼだった。牧歌的な雰囲気の描写の中に敬虔な家族の生活、その根底にミステリーが含まれ抒情的な物語だ。
池井戸潤著「アルルカンと道化師」、東京銀行大阪西支店の融資課長の半沢直樹は、担当区域の仙波工藝社から融資を依頼され本部に挙げるが、担保の無いことから却下され途方に暮れる。そんな折に本社も推進するM&Aをジャッカルという会社から仙波工藝社に買収提案を持ち出した西支店の部長らと半沢は戦わざるを得なくなった。しかしある絵画アルルカンとピエロを回り様々な駆け引きを探りあて遂に半沢の倍返しが炸裂した。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 五」、御巣鷹山での大惨事を引き起こした国民航空社内は、新労組で役員に引き上げられためいめいは社内での不正蓄財を重ねさらに政治家及び各部門の官僚とも不正行為をこれでもかと続けていた。ナショナルフラグシップを標榜する国民航空は巨大な巣窟となって520名を喪失した事故の反省もなく不正を繰り返した。財界から就任した国見会長も辞表を出す段になりそして恩地もまたアフリカナイロビへの出向を命じられた。巨悪と戦い疲れ果て人生の無常を感じる恩地の行く先を憂える最後の章であった。
浦賀和宏著「眠りの牢獄」、二つの出来事が、物語として進行して行く。どこと言って普通の青春小説だ。だが物語が進展してゆくに従って殺人事件が発生し知らない相手同士の殺人教唆そして実行される。一人の女性の階段からの墜落事故で病床に横たわる原因犯人を囲って地下室の閉じ込められた3人の男性の血おもって凄惨な様相と最後になってドンで返しの結末。複数の伏線を用意周到に前もって提示したミステリーに新鮮さを覚えた。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 四」、御巣鷹山に激突大破したジャンボ機123便の事故を教訓として、国見会長は会長室を作り各部署から選りすぐりの社員を配置したその中に恩地も抜擢され室の部長待遇となって10余年盥回しで僻地への赴任を漸く回避できた。会長国見の絶対安全、労使協調のスローガンは遅々として進まず、社内の管理職の汚職ピンハネが横行し改めて恩地に撲滅への決意を促すのだった。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 三」,本社勤務となった恩地だったが、閑職に着き日々を送る毎日だったが、ある日それも創立35周年の祝いの途中、国民航空にとって最悪な事態が発生した。ジャンボ機ボーイング747が群馬県上野村の御巣鷹山の尾根に激突し520名もの尊い命が失われた。航空事故を回り騒然となり御巣鷹の尾根は遺体回収のため、群馬県警は元より自衛隊、国民航空社員でごった返し遺体は藤岡市の体育館に収納され遠方より駆けつけた遺族によって身元確認が行われた。49日を過ぎた頃より補償交渉の任に着いた恩地だったが事故の犠牲者は元より家族家庭をも崩壊させた事故の重大さと責任を痛感する事態であった。
京極夏彦著「ヒトでなし」,子供を殺害され、離婚され職を失い放浪を続ける慎吾、そこで境遇に気づいた「ヒトでなし」と自分は生きても良いが死んでもいい何にも拘りを持たずただ死ねないから生きている。世の中の全ての想念を捨てヒトでなしとなった。友人の部屋で殺人事件に遭遇する部屋主の祖父のお寺に逃げ込んだ。そして遺体を埋める。殺人に対しても何ら感想はない殺したければ、殺せばいい。死にたければ死ねばいい。まさにこの無情感コソが生きるということなのか。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 二」,テヘラン赴任を受諾し現地に赴き、総務主任として業務に当たる恩地は絶望の中でも精一杯の努力を続ける毎日だった。家族を呼び寄せ生活が始まった。そんな中でさらに恩地を襲ったのはアフリカ大地のケニアへの赴任要請だった。どこまでも痛め付けられ僻地から僻地へと転々と振り回される生活に孤独と絶望を禁じえなかった。そに間に二度も海外で航空機事故を起こした国民航空への批判は強く、国会の場で社長および現組合委員長同席の元で尋問聞き取りが行われ、その席で沢泉委員長は恩地に対する会社の不当人事を指摘した。遂にアフリカを離れ帰国することが叶った。
山崎豊子著「沈まぬ太陽 一」,ナショナルフラグシップである国民航空で勤務している恩地元は、突然労働組合の委員長を引き受けざるを得なくなり、粉骨砕身組合活動に万進する日々だった。漸く二年の委員長の任期開けを待って会社側から提示された人事異動でパキスタンのカラチへの赴任が決まった総務主任として劣悪な環境下で妻子を呼び寄せ働く毎日だった。二年の赴任期間を後数か月残すのみとなったある日突然イランのテヘランへの移動が決まった。恩地の希望はズタズタに引き裂かれた。
麻耶雄高著「蛍」,京都の山間部にある黒づくめの館、その館は以前6人もの惨殺死体が出た場所であった。大学のサークル6名が館主の了解を得て合宿することになった。そして間もなく館主が探検を胸に刺され殺害された。以降館の奇妙な密室とも思われる構造中で次々と殺人が起き読者の犯人捜しの旅が強要され、結末はあっけに囚われる仕組みだ。伏線といいプロットといいこれぞミステリーといった傑作だ。
恩田陸著「夜のピクニック」,殺人もなければミステリー性も無い、北高という高校での夜の歩行祭、参加している高校生の遣り取りが不思議と心に響き人間の優しさを実感し青春を思い起こさせるそんな物語である。とに角歩く夜通し歩く中で高校生の仲間内での感情やら直に表現して心地よい読後感の爽やかさを実感できる名作ではないか。
松本清張著「花氷」、不動産業を営む粕谷為三は、ある寿司屋で二年前まで同棲していた女性霜井豊代子と偶然顔を合わせた。儲け話を常々希求していた粕谷が得たのは岩槻にある4万坪の国有地の払い下げだった。ブローカーの粕谷自身の手がけた女三人を使い銀行の支店長を抱き込み、代議士に工作を開始した。国有林の払い下げの許可が林野庁長官から降り後は大蔵官僚だけとなって有頂天となって粕谷と黒川支店長の前に来た知らせは却下されたというものだった。
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