金曜日, 3月 29, 2019

篠田真由美著「仮面の島」、著者建築家探偵櫻井京介シリーズの事件簿だ。今回の舞台はイタリアはヴェネツィアだ。例によって京介、神代教授そして後から追っかけヴェネツィア入りする深春と蒼、一人ヴェネツィアの孤島に住まう美人玲子を回り過去を振り返りつつ殺人事件が発生する。有名画家が描いた名画を回り人間の醜悪さと欲望は果てしなく事件の結末は意外な事だった。
松岡圭祐著「グアムの探偵」、著者の新シリーズ、今回の現場はグアム島だ。イーストマウンテン・リサーチ社これが探偵事務所でゲンゾー爺さん息子のデニスそして孫のレイと3人の日系アメリカ人で経営する事務所だ。グアムは米国準州ながら探偵の地位は驚くほど高い刑事事件にも調査ができるし拳銃も携帯可能だという。そんな探偵事務所に持ち込まれる事件を扱う5編が本書の第一巻だ。グアムの地名やら生活やらが描かれ面白い。
黒木亮著「鉄のあけぼの 下」、正に日本の鉄鋼業の幕開けを担った西山弥太郎の奮闘を描いた物語だ。壮大な夢を持ち幅広い知見を武器に大胆と不屈の精神で実現して行く西山の生涯は、戦前戦後を通じて日本の重工業化の原動力となり焼け野原からの復興の原資となった。74歳の生涯を鉄一筋に生きた西山の人生の奇跡を著者は詳細に調査を敢行し見事に結実させた名著で感慨深いものが残る。
黒木亮著「鉄のあけぼの 上」、これは戦前・戦中・戦後の激動の時代を先取りし鉄鋼生産、製鉄所の建設に人命を賭した男達の物語である。川崎製鉄所・川鉄の技術者として後の社長である西山弥太郎の奮闘を描いた物語だ。千葉の京浜工業地帯の先駆けとなる場所に最新鋭の設備を構えた製鉄所の建設を決した西山を先頭に川鉄の各従業員の奮闘を描き戦後の日本の重工業の発展に寄与した史実に基づいた小説だ。
ハビエル・シエラ著「失われた天使 下」、驚くことに、彼著者シエラは作中の光とともに天国の階段に昇り昇天するトルコのアララト山に登頂さえしたという冒険家だ。この作品は宗教的だがファンタジー・ミステリーを履んだんに織り交ぜた物語だ。ノアの箱舟により絶滅した人類が再び生還し神との交信を通して昇天してゆくといったプロットは各地の念入りな調査に加え幅広い情報その他を可能な限り織り交ぜた力作だ。
ハビエル・シエラ著「失われた天使 上」、著者はスペイン人作家であり、情報科学も専攻していることからして物語を展開する基本構造を提供している。謎の石・宇宙の石それはアダマンダと交渉し古来エリザベス朝時代よりヒロイン家に伝わる伝説の石、この石は現実と天国を繋ぐ石だと言われている。強力な電磁波を発生し宇宙の衛星からでも確認できる。アダマンダを回りヒロイン夫が拉致された。NSAから米国大統領までさらにスペイン警察まで巻き込んだ事件の捜査が続く。下巻へ。
篠田真由美著「聖女の塔」、建築家探偵櫻井京介シリーズの事件簿、今回の物語は新宗教団による殺人及び計画を櫻井京介が暴くというストーリーだ。長崎県の五島付近の波手島・無人島を巡る隠れキリシタンの歴史をも登場させ展開の伏線を巧みに絡ませ蒼とさらに京介の過去の一部を紹介させながらの物語にしている。シリーズは各巻とも独立した展開になっているが、今回は過去の事件絡みの登場人物を登場させストーリーに厚み持たせている。
篠田真由美著「失楽の街」、建築家探偵櫻井京介シリーズの事件簿だ。舞台は東京である。次から次へと爆弾を仕掛けて行く爆弾魔を警視庁、公安が追跡するが要として犯人が特定されず事件は死傷者を出しながら緊迫した状況となってゆく。複数の伏線・プロットが織りなす今回の物語はミステリーとしても面白い。京介の卓越した推理と人生の悲哀を含めて友情と信頼の大切さを思わせる。
ELジェイムズ「フィフティ・シェイズ・ダーカー 下」、アナスタシアとクリスチャンの二人の恋愛から結婚へ至る感情の起伏を綴ったこの物語は、彼クリスチャンが過去また現在に続く精神疾患を患っていたことを明かす。しかしアナは彼の行動と心理を理解しようとして奮闘する明るい前向きな姿勢に徐々に心を開き愛情を持って接するクリスチャンの変化を著者は愛情を込めて描いていく。
松岡圭祐著「特等添乗員αの難事件 3」、特等添乗員αシリーズ3作目だ。相変わらず絢奈のラテラルシンキングが冴えわたる。今回は、香港からトルコと海外添乗員を務める絢奈の水平思考が爆裂する。さらに後半には国会議員の壱条家をピンチから救出するといった活躍を見せる。ライトノベルになるのであろうか、このシリーズは気軽に読める正に暇つぶしに持ってこいだ。
黒木亮著「巨大投資銀行 下」、桂木はやまとFGの投資部門で辣腕を振るい業績の向上に寄与し常務の席についた。広島生まれの桂木のトレーダーとしての人生は東都銀行からニューヨーク投資銀行へさらに日本に帰りと有為転変としていく中で遂にりずむFGの会長兼CEOに懇願され抜擢された。サラリーマンの終盤で彼が思ったのは日本の将来あるべき姿の銀行を造り貢献したいという広義な欲求であった。著者の業界の細密な描写は驚嘆すべきものだ。
ELジェイムズ「フィフティ・シェイズ・ダーカー 中」、アナアスタシアとグレイとの結婚生活が始まった。男と女、二人の脆く激しい感情のぶつかり合い、交錯する愛情と不安これこそが愛そのものである、と作者が示す心の揺れ、この先は何処へ行くのだろうか?若き経営者であり富豪のかれグレイと結婚したアナは果たしてこの感情の起伏を乗り越え愛を育んでいけるのだろうか?
黒木亮著「巨大投資銀行 上」、大手銀行やら米国の投資銀行を主体に息づまる債権や株式らの売買攻防が展開され、その渦中で蠢く人間の欲望と落胆が入交り一進一退を繰り返す。著者の業界の深部にまで及ぶ詳細な調査は読む者を圧倒する。銀行や証券会社の日々の活動はまさに激動で息つく暇もないと言った様相だ。神経をすり減らし只管利益を貪る人間模様は広い大地の地上で巣くうまさに蟻のようである。
松岡圭祐著「特等添乗員αの難事件 2」、ラテラルシンキングつまり水平思考を具現化し添乗員として活躍するシリーズ第二弾、今回は壱条那沖の家族との遭遇やら姉乃愛との和解と盛沢山だ。ツアーガイドとして香港に乗り込んだ冒険までもプラスアルファだ。ラテラルシンキングは留まることを知らず絶好調だ。
リンダ・ハワード著「美しい標的」、さすがに女流作家らしく、女性この物語ではクレアの感情の機微を見事に描き出している。一度離婚を経験し臆病になっているクレアそんな彼女を見染めたのは投資ファンド会社副社長のマックス、二人は幾多のすれ違いを重ねながら徐々に心を開き互いに傷つきながらも愛の成就に向かって進む。著者の得意とするラブロマンス小説の真骨頂だ。