土曜日, 2月 27, 2021

松本清張著「花実のない森」、サラリーマン梅木隆介がドライブ途中車に乗せた夫婦と思われる二人、その妻とも思われる女性に強く惹かれ、その後に執拗にその女性追い続けることになった。その存在は梅木の人生をも左右する程日々の生活の中で重要な人となっていった。そして岩国に近い街の造り酒屋に行きつき女性の真実の姿を発見して呆然となった。
垣根亮介著「信長の原理」、信長の領土は急速に拡大し天下統一目前で明智光秀の謀反によって殺害される。信長の何が不幸招来させたのか?気性が激しく神仏を無きものと考え、己の力を信ずる稀に見る残酷な性格故、部下の多くは戦に次ぐ戦に狩出せれ、下知に答えずば罷業な制裁を覚悟しなくてはならない。光秀が仕えた信長はそういった人物だった。本能寺での信長の首を討つ覚悟しつつ迷っている光秀、家臣らの意見から思わぬ方向へと。人生の不条理を光秀を愛してやまない著者の快著である。
真山仁著「ダブルギアリング」、保険会社精和生命の生き残り戦略を掛けて、右往左往する人間模様を描いた作品だ。合併を願望する精和と内外のファンド並びに保険会社との駆け引き、金融庁担当者との擦り合わせ、顧客、被保険者の解約ラッシュいよいよ持って破綻が眼前に迫りくるそんな時、内部にいる人間の行動つまり生き方が問われる。
真山仁著「オペレーションZ」、現実の日本社会に警鐘を鳴らす、著者の徹底した調査の上に書き上げた力作だ。財政破綻目前の日本社会を救うべく江島総理が打ち出した歳出半減策、それを担当した財務省職員で組織された「オペレーションZ」が本書の題名となっている。日本の借金は既に1000兆円にも積み上げられ政治は策は無しという体たらく、そこに新型コロナウイルスの蔓延という憂き目に遭遇した日本は本当に大丈夫なのだろうか?読者を本気させる一作だ。
松本清張著「雑草群落 下」、明和製薬社長村上為蔵の絵画に対しうる興味が浮世絵それも肉筆画にあるとの情報得た正平は、和子の友人喜久子が匿っている絵描に浮世絵を書かせたそれも写楽と春信である。文科省技官の鑑定書を入れて無事社長の元に渡した。しかし数日後に明和製薬副社長から引き取りに来てほしいといわれ混乱する正平、自分の愛人和子と息子健吉の仲を疑う、錯綜し混乱する人間関係伏線を幾つも用意し辿り着く結末は。
真山仁著「プライド」、本書は、6編からなる短編集である。主題はプライド、だがプライドは人生そのものに結び付く概念だ。著者は農業に始まり、政界はたまた霞が関の公務員と様々な背景の中で右往左往する人間達をプライドという視点で描いている作品だ。
松本清張著「雑草群落 上」、古美術業界を舞台に都内で店を張る中堅古美術商「草美堂」の主高尾正平は、愛人野村和子を持っていた。彼女は料亭で働いている。正平は兼ねてより明和製薬の社長に取り入り商売をしたいと思っていた矢先、明和製薬の記念パーティーに出席を赦され大阪に赴いた。そこで彼女和子が実は明和製薬社長村上為蔵の隠し子だと判明、何とか彼女を出しにして社長に取り入る魂胆に腐心する。
ダビッド・ラーゲルクランツ著「ミレニアム6 下」、ミカエルは、国防大臣フォシェルが過去ヒマラヤ登頂時に事件の真相を掴む、その真相の結果としてニタ・リマつまりシェルパは真相を知っていた、そして殺害された。その事でミカエルは敵に拉致されアワやガラス工場の溶鉱炉に、その窮地を救ったのはリスベット・サランデルだった。彼ミカエルとサランデルは深い闇の中にも大人の友情を築いていた。これが愛なのか。
ダビッド・ラーゲルクランツ著「ミレニアム6 上」、ジャーナリストのミカエルは、依然としてリスベットと接触を保ち続けていた。ある日浮浪者然とした男が殺害された。その後のDNA鑑定調査でその男はヒマラヤ登頂のシェルパを職業としていた事が判明した。彼の死を調査するうちに、国防大臣まで連鎖する深い闇にミカエルは立ち向かう羽目になる。
京極夏彦著「邪魅の雫」、新書版で800頁を超える超長編作だ。榎木津の叔父から依頼された件、礼次郎の嫁候補の調査に益田は立ち上がる。どうにも解明出来ない連続殺人事件が平塚、大磯管内で発生した。連続殺人事件の様相を呈しているが、独立した事件のようにも見える。そしてこの事件を解決したのは根本は探偵榎木田礼次郎だ、その解釈を務めるのは憑き物落としの京極堂中禅寺だった。女の恋心が事件の奥に潜んでいた、傑作ミステリーだと思う。