日曜日, 6月 28, 2020

松本清張著「逃亡 上」、江戸で罪で牢に入れられた源次は、ある晩江戸の大火で牢にまで火が及ぶ寸前で出せれ翌日回向院の庭に参集するように言いつけられたが、妖艶な女を助けた為回向院の参集に間に合わなかった。再度縄を打たれたが、番屋の老父卯吉に縄を解かれ逃亡した。だが空腹に耐えられず一軒の家の台所に忍び込み釜から手掬いで飯を食っているところを運悪く見つかり、その家にお世話になることになる。錺師の家だった、ある晩布団の中で聞いた槌の音にキズキ聞き耳を立てたが深追いできなかった。その錺師の家に居着いた源次は次女お蝶と懇ろになり棟梁の配慮もあり錺師の家を二人で逃亡する。思い余って一軒の襤褸屋に入った二人はその家が卯吉の家と解り匿ってもらい、お蝶は卯吉の紹介で松葉屋という小料理屋に務めることになった。松葉屋は下谷の岡っ引き梅三郎の妾お米が女将をする店だった。お蝶は引く手あまたとなり梅三郎もお蝶を何とかしようと目論むが、お蝶は逃れて大川に身を投げた。
スコット・スミス著「シンプル・プラン」、米国オハイオ州での物語だ。ある日父の墓参りに出掛けたハンク兄のジェイコブそして友人のルー、彼らはひょんな事から墜落した軽飛行機の残骸を発見する。その中で見たものは操縦士のカラスに食い荒らされた死体とダッフルバッグに入った現金440マンドルだった。転がり込んだ現金について3人は特にルーは我慢できず分け前を要求する。ハンクの妻サラはより冷静にハンクに指示するが、段々と展開は破滅へと向かいハンクは自らの兄そして数人を殺す。ハンクの心理描写、揺れる心の葛藤、殺人に対する正当化、妻サラとの心理描写と人間の持つ根源的な精神を上手く描いている長編である。
堂場瞬一著「身代わりの空 下」、迷路の中を徒ひたすら進むことを余儀なくされる富山県警と警視庁、就中支援課村野は本来の支援課の仕事と112便で事故死した本井の家族から要望されている半年間の足取りを追跡する仕事だ。そんな家庭で犯人と目される黒沢を拘留した、中々落ちない黒沢そして黒沢のバックと見られる三浦が富山市のホテルに宿泊しているところ突き止め拘留する。ついに二人は落ちた。最後の落ちは収拾するには少し性急さは否めない。刑事として人間として心の通い合いを読むことができる。
堂場瞬一著「身代わりの空 上」富山空港でバードストライクによる緊急着陸によって死傷者が出た、そこには指名手配犯の本井が乗っていた彼は死亡した。警視庁犯罪被害者支援課の村野を始めとする課員が総出で富山に向かう。本井は偽名を使い登場していた家族に立ち会わせて本井と確認させる。被害者支援が開始された。マスコミ対策も。数日後重症の患者という黒沢に接見し確認を取ろうとした課員は絶句する。息子ではないと。偽名を使用した被害者が2名いた。事件は新たな展開へ。
畠山健二著「本所おけら長屋 十四」、最新刊が届いた。例のおけら長屋の物語は、今回4篇だ。人間の底に住む優しと生きるという困難に立ち向かう長屋の面々、万造を初め松吉、鉄斎、大屋、久蔵、金太これらを使い作者は意図も簡単に素晴らしい物語を生み出すセンスは賞賛に値する。今回も読み処満載でほろりとする話ばかりだ。
スコット・トゥロー著「無罪 下」、延々と続く裁判は原告、被告双方知の限り尽くしたが結果は得られない。そんな中で被告ラスティーは交渉し自分の有罪を認める2年間の刑務所生活だ。ある日同僚で原告の検察官トミーが房にやってくる、彼はラスティーについて証拠について、もう一度考え直し遂にイー判事に彼ラスティーが無罪で告訴を取り下げるという。出所したラスティーに息子のナットが本当の事を聞きたいと、なんとどんでん返しが解る殺害されたとし起訴されたが、実は全てを知った妻バーバラが夫ラスティーを殺害する積りだったと。物語に出てくる登場人物の心理描写と人生を達観し懲りない爺の素顔を見事に描き出しいる。
スコット・トゥロー著「無罪 上」、米国地方の判事ラスティー・サビッチは過去に愛人殺害容疑で起訴され辛くも無罪を勝ち取った経歴の持ち主である。精神に障害を持つ数学教師の妻バーバラと家庭を持ち一人息子のナットがいる。現在彼ラスティーは60歳になるのに若い愛人がいてのめり込んでいる。しかし彼の判断から交際を絶つという苦渋の選択する。息子ナットと愛人ナットが交際するとは遂に思いもしなかった。そのアンナを連れ自宅に招いた翌日心臓発作で妻バーバラが死亡した。同じ判事で敵対するトミーとブランドはラスティーを起訴し裁判に持ち込んだ。
松本清張著「彩り河 下」、山越は自分で内偵し調査を進める中で、餌食となり奥多摩の渓谷で鎰死となって崖下で発見された。ホステス山口和子に次いで死体となった。井川は手掛かりを求め捜査に執念を燃やし山越の妻静子に相銀会館に潜り込ませたが意図を見抜かれ彼女もアパートで絞殺死体となった。銀座のクラブの配車係りのジョーと再会し犯人の炙り出しを図る。1980年代の小説とは言え臨場感があり現実の出来事と思えるほど緊迫した状況を作り出す作家の実力を見られた思いである。
松本清張著「彩り河 上」、銀座の華やかなクラブを中心にそこのママさん山口和子、その周りを嗅ぎまわる自称ジャーナリスト山越貞一は和子の周辺を洗いパトロンが誰かを突き止めるべく調査を開始。だが映画館で和子は絞殺された。その後東洋商産の社長が山梨県の奥部で自殺を遂げた。山越は調査を進める中で寿永開発という会社が絡んでいることにきずきさらに調査を進めると相銀社長との不可解な関係に息ついた。実はパトロンはその社長だと見当を付けた。
ヘニング・マンケル著「ファイアウォール 下」、捜査は遅々として進まず事件の関連繋がりと核心が見えてこない。IT技術により捜査は一段と進化し、ヴァランダーのような旧態依然とした捜査官は役立たずとなっていく、そんな孤独を感じ自分に自信が持てなくなり疎外感を感ずる毎日だ。ティネスが死亡した事で、彼の借りているアパートで見つかったのは一台のパソコンだった。厳重に管理されたパソコンに入込むこともできない、そしてモディーンというハッカー少年を見つけ彼の手腕に期待する。そこで朧に解明されたことは20日に何かが起こるしかも関連する情報からすると金に絡んだことだと。そしてアンゴラ来た犯人が登場し刑事ヴァランダーが射殺する。スウェーデン社会の暗い部分、貧富の格差と就職難そして連帯が途絶えて孤立化し孤独と絶望感が犇めく状況を憂えている作者の洞察力の深さを感じる。