月曜日, 4月 29, 2019

A.J.クィネル著「燃える男」、イタリアでの物語、果って幾度となく戦闘経験を積んだ元傭兵クリーシィは既に50歳近くだった。友人グィドーを訪ねた折に紹介された仕事それはボディーガードだった。繊維取引会社を経営する夫妻の一人娘ピンタの警護だった。少女との出会いは彼を変えていった。愛という純粋なもの、愛おしさが浸透しそれに包まれた。だが少女はマフィアに凌辱され死亡、ついに彼は復讐を決意し決戦の地に、二大巨頭マフィアを相手に戦うクリーシィは正に傭兵として蘇る。スパイ小説的だ。
山崎豊子著「大地の子 三」、建設中の宝華製鉄所は、中国内部の権力闘争の具となり建設は一時中断された。夏国鋒と鄧平化との権力闘争は鄧の勝利となり宝華製鉄所は再び建設が開始された。陸一心は妻の月梅の協力もあり、遂に片田舎の病床に伏している妹あつ子を発見し病院に入れることができた。5歳の時に別れた妹は牛馬の如く扱き使われ無残な姿であった。一心は妹に父を探し日本へ連れて行く約束をしたのだった。いつの時代も戦争は最下層の国民を虐げ過酷な運命を背負わせるものだ。
山崎豊子著「大地の子 二」、陸一心は、日本語ができる力量を発揮し党中央へと歩みを進めた。折しも文革後の中国の近代化の礎となるべく最新鋭の大型製鉄所の建設が持ち上がり日本の東洋製鉄の木更津工場を範に計画を推進する機運が持ち上がり、現地での選定作業が開始された。選定されたのは上海にほど近く長江の端であった。日本の東洋製鉄側の上海現地事務所長には松本耕二が付き陸一心、日本名松本勝男との因縁と遭遇を暗に想起させる展開だ。宝華製鉄所と命名された製鉄所の起工式も終了し工事がいよいよ本格的に再開される運びとなった。
竹内明著「スリーパー警視庁公安部外事二課」、外務省員筒美慶太朗と彼を取り巻く公安警察、陰謀渦巻く北朝鮮工作員らの展開が目まぐるしいまでに交錯する。現実のものかと思わせる対日工作を公安が阻止すべく立ち回る。北の若い工作員倉本龍哉、出生の秘密と北に住む日本人の母親との繋がりを伏線として物語は展開してゆく。最後は緊迫した状況を作り出す念の入れようだ。
山崎豊子著「大地の子 一」、中国の田舎で孤児として生きる陸一心は、小学校教師の陸徳志に拾われ中国人として育てられていた。折しも文化大革命時代毛沢東全盛の時代の中国は容赦ない思想統制弾圧が続き中でも日本人孤児は蔑視され続けた。それでも一心は高級中学から大連の工業大学へ進み鉄鋼公司へと就職したが文化大革命の折冤罪を受け内蒙古の労改所へと送られ、およそ人間のできる最低限の心難労苦を受けつつ恩ある両親と会える日を心に暮らす毎日だった。
京極夏彦著「巷説百物語」、主人公山岡百介なる人物が処々を巡りながら奇談珍談を蒐集し読み本を作り上げようとするいわば怪談集である。七編の短編集はどれをとっても面白く作者の死に対する明確な認識を感ずる。現実と冥府の堺、身体は現実であり死ははモノであるという線引きは諸編を通して語り掛ける。人間の剛・果てしない欲望が様々な怪談話の根底にある。
綾辻行人著「Another 下」、転校生の榊原恒一と見崎鳴とのコンビがこのホラーミステリー小説の主人公だ。依然として災厄に見舞われ続ける三年三組、死者が亡き者が忽然と姿を現し闊歩する。そんな人物・現象を鳴の義眼が死の色を見極める。物語の終盤、夏休みの合宿として参加した二人は館の火事に遭遇し危うく命を取り留める。しかし鳴はハッキリと亡き人・死者を見極める、それは恒一の母の妹玲子だった。冗長さはあるが傑作の部類に。
綾辻行人著「Another 上」、著者のホラー・ミステリー作品を読むのは初めてだ。夜見山に父の海外出張の為母の実家に引っ越し、夜見北中3年3組に編入された榊原恒一は此処での学級生活を送るにつれ様々な不思議体験をしてゆく。呪われた3年3組降りかかる災厄そしてクラスの関係者が死亡する。クラスの災厄に対する対策はクラスメイトを亡き者として無視するというこだった。
松岡圭祐著「グアムの探偵 2」、著者のグアムの探偵シリーズ第二弾である。今回も5編の短編が記されている。観光リゾート地の懐深く地道な調査に基づく場所の設定とちょっとした出来事を犯罪に仕立て伏線を巧みに組み合わせ展開していく著者の力量に驚くほかない。グアムに三四度行っているが、通常の観光では出会うことのない地名に感動すら覚える。
篠田真由美著「仮面の島」、著者建築家探偵櫻井京介シリーズの事件簿だ。今回の舞台はイタリアはヴェネツィアだ。例によって京介、神代教授そして後から追っかけヴェネツィア入りする深春と蒼、一人ヴェネツィアの孤島に住まう美人玲子を回り過去を振り返りつつ殺人事件が発生する。有名画家が描いた名画を回り人間の醜悪さと欲望は果てしなく事件の結末は意外な事だった。