日曜日, 10月 07, 2007

トマス・ハリス「ハンニバルライジング」を読んで。

1940年代第二次大戦のリトアニアに住む幼いハンニバルは、ナチドイツ軍の襲撃に遭遇する。妹ミーシャは、殺戮され食用とされる。この数奇な運命から彼の人生は劇的に変わり、青年期の殺人者へと変貌する。殺人の連鎖とそれは過酷な運命に弄ばれた妹ミーシャに捧ぐ、鎮魂の歌ではなかったろうか。犯人たちへの憎悪があだ討ちとなって、次々と殺人を犯してゆくハンニバルの心にもはやキリストの神は居ないと誓う。ナチに占領されたフランス、大戦後スターリンの大粛清と西欧は悲劇の真っ只中に置かれる。ハンニバルの性格は、悲惨な戦争の中で育まれた数奇な運命としか思えない。キリストの神ではなく日本的な無と沈黙と東洋的な神秘性を作者は追う。

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