日曜日, 4月 02, 2017

雫井脩介著「火の粉」梶間家の周囲そして家族それぞれの人間の心理描写の上手さを実感する小説である。裁判長として勤務していた家長勲が退職し高台に5LDKの家を購入し家族6人で暮らすようになった。勲の祖母の介護は妻尋江が面倒みている。その大変さと祖母の娘満喜子との確執、さらに司法浪人としての雪江の夫俊郎と家族構成もバラエティに富んでいる。そこに隣人として武内なる勲が裁判で判決を下した男が移り住んでくる。ここから梶間家に次々と異変が起こる。絆で結ばれた家族も一度事件が持ち上がると簡単に崩壊していく危うさを感じさせる。ミステリー小説としてのプロットはやや平坦ではあるが、関係する人間の心理描写という意味で圧巻であり。別な意味での恐怖を感じさせる好著である。


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