土曜日, 1月 30, 2010

ドン・ウィンズロウ著「犬の力」下巻を読んで。

いよいよ、物語は佳境に入る。様々な抗争を経て、遂に麻薬カルテルの親玉アダン・バレーラと特別捜査官アート・ケラーの戦いは最終章へと。娼婦ノーラの密告により、アダン・バレーラの企みを悉く粉砕するアート、密輸、権力との癒着、暴力抗争、陰謀、暗躍あらゆる人間世界の悪の象徴そのものを「犬の力」と言うのだそうだ。この犬の力に真っ向から生命を賭して立ち向かうアート・ケラーの根源的力が、即ち神の力ではないか。この種の血で血を洗う物語にしては、読後の清涼感は何なのであろうか。著者の力量を感じさせる正に五つ星の娯楽小説である。

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