土曜日, 8月 07, 2010

ウンベルト・エーコ著「薔薇の名前」上巻を読んで。

著者ウンベルトは、イタリアの哲学者でもあり小説家である。14世紀、教皇と法王との宗教対立を背景に描かれたミステリー長編小説である。イタリア北部を中心に当時ヨーロッパの修道士、修練士の名前はミステリーとしては、あまり出てこない長ったらしい名前は読者を辟易させるに十分だ。精緻な歴史的な背景描写とアビニョンにある壮麗で複雑な数学的要素を取り入れた建築である物語つまり殺人現場であるメルク修道院の中で暮らす修道士の生活を通して、腐敗した宗教の実態が細かく記述されており小説とは思えぬ背景描写は、読者にとっては余りありがたくない。フランシスコ会修道士ウィリアムと修練士アドソが、調停の為メルク修道院に派遣されてから直ぐに殺人事件が発生する。修道院長に全権を委任され事件捜査解明にあたる二人は、修道院の秘密を次々と明るみに出すが、解明に至らぬまま次々と修道士が殺害され未だ、殺人犯人の特定ができずに。修道院の複雑な建物設計にかかわる殺人ミステリーというと、綾辻の暗黒館の殺人を思い出す。

1 件のコメント:

yes_no さんのコメント...

映画化されています。

宗教腐敗の映像表現と、主演ショーン・コネリーの演技が見事でした。