月曜日, 11月 30, 2020

松本清張著「影の地帯」,1960年代の長編である。新進気鋭のカメラマン田代利介が、東京へ向かう機内で出会った女性を契機に事件の渦中に引っ張りだされる。銀座のバーのマダムが雑木林で殺害死体となって発見され、さらにタクシー運転手が天竜川の渓谷で殺害された。彼は関連を調査しながら、核心に近づいて行く。政党の領袖とされる代議士の拉致誘拐、マダムの死、運転手の死、さらに友人である雑誌社の部長の失踪、そして全ては繋がった。信州の湖の風景と社会悪と人間の良心とを見事にミステリーの中で描く技量こそ著者の真骨頂だ。

0 件のコメント: