篠田真由美著「原罪の庭」、建築家探偵櫻井京介シリーズ、この書で蒼の正体が明かされる。姉妹等親族関係の血みどろ愛憎がやがて殺人事件として表出し神代教授とともに櫻井京介が登壇する。血の繋がりが、血でもって制裁する横溝正史ばりではないが淀んだ殺人事件の真相は常套句のようだ。著者の作品は冗長性を否めないが、それでも読んで楽しい。
土曜日, 12月 29, 2018
榎本の憲男著「エアー2.0」、ふと工事現場それもオリンピック開催のメイン会場となる国立競技場建設の現場で中谷はおっさんと出会う。建設中にコンクリートの柱に時限爆弾を仕掛けたと言って八百長競馬を要求しまんまと5千万円をせしめる。事は急展開に福島県の原発事故のあった帰宅困難地区に事務所を設け事業を行うというおっさんは地域通貨カンロを造り積極的な投資を行うという。おっさんが開発したエアー2.0は巨大なコンピューターは人間の感情を理解すると言った優れものだ。日本政府とのまた官僚との確執に始まり警視庁をも動かし対峙しながら事業運営を行う中谷は原発事故地の復旧を願う作者の強烈な意図と人間との拘わりを描いた物語だ。
木曜日, 11月 29, 2018
金曜日, 9月 28, 2018
吉村昭著「朱の丸御用船」、史実に基ずく歴史小説だという。大阪より江戸へ米俵を運ぶ御用船幾つもの航路難所を切り抜け江戸へ。歴史の舞台は現三重県の一寒村で起こった現実の騒動である。幕府御用の米を千俵近く積み込み御用米船として出航する定助舟と次三郎船は各港に碇泊しながら江戸へ向かうことに、しかし両船は碇泊地で御用米を売り捌き故意に天候により破船したと偽った。しかしその片割れの船が漂流して名切村沖に漂着し村民総出で米俵を瀬取りし分配した。その事実がバレて役人により調査が開始され、村民は甚大な被害を被ったと。作者は現地に足を運び資料を丹念に調査しまた聞き取り史実其の儘に弥吉という若い漁師を仕立て暗い現実を描きながら希望の光をも書き留めることを忘れない。
木曜日, 8月 30, 2018
エラリー・クイーン著「中途の家」、1930年代のクイーンの代表作とされる本書は、私にとってはベストだと思わせる出来栄えだ。ある男は二重生活、つまり重婚をして日々を最新の注意を払いながら暮らしていた。ある日男は現在の自分を嘘偽りなく話そうと二人の人間に自分の人格を変える目的を持つ家表題にもなっている中途の家へ来るよう手紙を出す。そして彼及び彼女が見たのは殺害された男の死体であった。犯人は女性と断定され公判でも禁固20年の刑に処せられた正妻そして事件の関係者であり正妻の兄であり弁護士を救うためクイーンの灰色の脳細胞が活躍する。当時の面影を残しながら相変わらず人物設定およびプロットの見事さは秀逸でミステリーの本質を突いた名著である。
金曜日, 7月 27, 2018
木曜日, 6月 28, 2018
水曜日, 5月 30, 2018
松岡圭祐著「ヒトラーの試写室」、太平洋戦争が進行する時代に一人の青年がヒトラーの戦時下のドイツに渡り生きた史実に基ずく物語りである。青年は柴田彰といい家業の大工見習いをしていたが家を出、たまたま東宝の前身となる特撮技術研究所なる場所で特撮を作る模型作りのバイトをしていた。話はドイツへ飛び、ヒトラーを及び関係する大臣はプロパガンダの為、映画制作を目論んでいた。そんな折ヒトラー以下ナチス軍上層部が見た日本映画の特撮技術に感銘を受け技術者を招聘したその抜擢されたのが柴田だった。ドイツに於ける戦争高揚映画作りに精を出す青年とゲシュタポ監視下で生きそして敗戦と戦時下のドイツでの辛酸を舐めた人生の苦悩、それでも人間を信じる著者の心意を強く感じる作品だ。
マイ・シューヴァル・ペールヴァールー著「刑事マルティン・ベック ロセアンナ」、スウェーデンの警察小説で出版は1965年だという。スウェーデンのミステリー小説は過去にも何度か読んだがどれもが面白い。本書は50年もまえに上梓された作品とは思えない新鮮さがあり、ストックホルム本庁の殺人課刑事マルティン・ベックを筆頭に主に3人の刑事が殺害犯を追及する捜査する物語だ。本題のロセアンナは運河を巡る観光船内で殺害された若い女性の名前でアメリカ人観光客の一人だった。凌辱され全裸で発見された死体、身元特定もままならず数か月の時間を要し焦る捜査陣、観光客船ということもあり客が撮影されたと思える写真を収集することから突破口となり犯人を追い詰めていく迫力は警察小説の醍醐味だ。
日曜日, 4月 29, 2018
土曜日, 3月 31, 2018
日曜日, 2月 25, 2018
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